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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
74/207

沖縄

MD215年 7/6日 12:00


「それで態々奴等に教えてやったってのか?」


 室内にラーメンを啜る音が響く。


「まあ、そうなるな」


 麺を咀嚼し、スープが喉を通る音が同時に響く。


「正直間抜けとしか言いようが無いっぽい? そんなんでよく管理者に選ばれたっぽい?」


「そりゃお互い様だろ、お前だってよく選ばれたっぽい?」


「これでも猫を被るのは得意っぽい? っていうか永村にどう説明する気か気になるっぽい」


 そして二人はスープを飲み干すと器を同時に机に置いた。


「……怒るよなぁ、やっぱ」


「っていうか既に怒ってたっぽい、まあ頑張れっぽい!」


 田崎は気まずそうな顔をすると、山坂は満面の笑みを作り田崎の背中を叩く。


「お前、俺が怒られるの楽しみたいだけだろ」


「ああ! 他人のそういう不幸が大好きだからな俺は!」


「死ね!」


「その前に永村に殺されてこい」


 山坂はそう言うと、一人で退出していく。

 その後食堂に残されたのは清掃用の小型ロボットと、溜息を吐く田崎だけだった。


「はぁ……しょうがねぇ、行くか」


 田崎は頭を抱え、少しの時間永村へ会いに行く事を躊躇していたが覚悟を決め、立ち上がる。

 するとそこへ扉から山坂が顔を出す。


「忘れてた、お前沖縄攻めるんだろ? 沖縄から来た商人とパイプ繋げておいたから有効活用しろ、話は通してあるから」


「お前やるじゃん!」


「任せてくださいよ! 今日の三時頃に江戸城の下で待ち合わせにしておいたから、適度に怒られてから会って来いや」


 そう言うと山坂は親指からを立て、再び退出していく。


「よし! そんじゃあ、怒られにいくか!」


──────────────────────────────

MD215年 7/6日 15:05


「あちゃー……ちょい遅刻してもうた、いきなり押しかけの商談ぶち込んだんがあかんかったか!」


 マン=モンはそう後悔しながら、自らが乗る浮遊装置の速度を上げた。

 浮遊装置は速度を上げると、梅雨特有のじめじめとした風を彼女の顔へ運んだ。


「ん~、やっぱこっちの空気は好かんなぁ……商売やからしゃーないんやけど、っと、あれか?」


 江戸城に掛かる橋の一つ、北桔橋にマン=モンが差し掛かると彼女の眼前に白衣を着た男とその傍らに立つ白金のゴーレムを見た。

 男は煙草を口に咥えながら何処か遠くを見ていたが、ゴーレムが男へ言葉を掛けたのかマン=モンに気づき、右手を上げた。

 マン=モンもそれに応じるように右手を上げると、男へと近づいていった。


「よぅ、お前が山坂の言ってた──」


「お初にお目にかかります、オギナワから来た商人のマン=モン言います、これからどうぞご贔屓にしてやってください」


 田崎の言葉を遮るように、マン=モンは浮遊装置を地面に着地させると深々と頭を下げる。


「お、おう……俺は田崎──」


「龍次様に、ペス様やな? 山坂様から話聞いてます、何や協力しろ言われまして……何でも協力させてもらうでぇ、お客様は神様よって」


「おぉう、最終戦争が終わってもその言葉は受け継がれているのか……罪深いな三波春夫」


「ミナミ……なんやて?」


 マン=モンは挨拶を終えると浮遊装置を再び浮かべ聞き返す。

 その問いかけに田崎は首を横に振る。

 

「いや、何でもない。 とりあえず山坂の知り合いってのはあんただな?」


「そやそや、ウチに何や聞きたい話があるんやって?」


「その話は私から」


 田崎が頷き、目線を後ろに立つペスへと向ける。

 その視線を受け、ペスが田崎の真横まで進み出ると頭を深く下げる。


「マン=モン様、此度は忙しい中ありがとうございます。 私はペスと申します、以後お見知りおきを」


「おぉ……! ゴーレムやないか、それもこない金キラに光よって……!」


 ペスを一目見た瞬間から、マン=モンの目が輝き出す。

 そしてペスの周囲を飛び回り、値踏みする様に眺める。

 そのままペスへ触れようと彼女が手を伸ばすと、田崎が口を開く。


「おい、馴れ馴れしく触るんじゃねえ」


 田崎の眼光は鋭く、まるで家族に汚れた何かが触れようとしているかのような口調だった。

 マン=モンは田崎の言葉に驚いた顔をし、身を一瞬竦めると元の位置まで浮遊装置ごと移動する。


「マン=モン様、そろそろ宜しいでしょうか」


「え、あっ……おぉっ! ウチ高そうな物見るとついな、すまんすまん。 んでウチに聞きたいことっちゅうんは何や?」


 そして田崎へ謝罪すると、ペスへ今回の用件を聞くのだった。


「はい、今回はオギナワの政治体系や到達するまでの道……オギナワに関するお話を聞かせていただこうかと」


「オギナワの政治体系の話ぃ? あ~……その話でオギナワの連中が死ぬとか言うんやったら、売らんで」


 そう言うマン=モンの顔は、先程田崎の言葉に驚いていた顔ではなく歴戦の商人、そして沖縄の魔族に対する不利益を出すまいという各個たる意思を垣間見せる顔つきだった。

 その顔つきに、田崎は少し驚いた様な顔をした後に口角を上げにやつく。


「ほう? 金にがめつい商人って話を山坂から聞いてたが……そういう顔も出来るのか」


「世辞言うても1イェンも出ぇへんで、そんでどないなんや? ウチは仲間を売る気ぃは無い」


「確約は出来ん、政治形態の穴を突いて支配できるんならそう支配するし、それが出来ないなら今までと同じように支配するだけだが?」


 その返答にマン=モンは顔を顰める。

 しかし少し悩んだ後に、彼女は口を開いた。


「……しゃーないな、情報売ったる。 せやけど前払いや」


「あいよ、それで料金は幾らなんだ? 1000か? 2000か?」


 マン=モンの言葉に田崎は白衣へと手を突っ込み、皮袋を取り出す。

 その皮袋は見た目からでも分かる重量感を有しており、恐らく中には五百円玉がぎっしりと詰め込まれているのだろう。

 だがそれを見たマン=モンは首を横に振る。


「1000万イェンや、びた一文まけへんで」


「1000万!?」


「そうや、そんだけあれば十分や」


 マン=モンはそう言うと、親指と人差し指をくっ付けると銭のポーズを作る。

  

「払わないって言ったら?」


「そん時はウチが逃げてオギナワの仲間にあんた等の事を全部話す、山坂と少し前に組んでたからなぁ? あんた等の選択しそうな手ぇとかある程度は伝えられるんやで?」


「俺やペスがみすみす逃がすとでも?」


「……やってみるか? ウチは出来ると踏んだ事以外はせぇへん女や、あんた後悔するで」


 マン=モンの言葉に田崎は何時の間に持っていたのか、左手に一本の試験管を構え。

 そしてその動きに追従するようにペスも顔の無い顔をマン=モンに固定する。

 一方でマン=モンは浮遊装置の縁を掴みながら、不敵な笑みを見せる。


「ふっ……ふふ、はははは!」


「あ?」


 暫く三人が緊迫した空気を出していると、突然田崎が笑い始める。


「いや、中々芯が通ってると思ってな。 無理やりな要求をこっちがしてた側だったが最終的にそっちがこっちを脅す形になってるのは面白い」


 そして左手に持っていた試験管をポケットへ仕舞い込み、ペスへ警戒を解く様に指示する。


「分かった、お前の要求を呑もう」


「何や急に気持ち悪い……せやけど1000万やで? そない急に用意できるわけ──」


 そう言い掛けると、田崎はペスへ顔を向ける。

 するとペスは一度頷き、彼女の前に閃光が走る。 


「うわっ、な、なんや!?」


 突然の閃光にマン=モンは腕で顔を覆う。

 そして閃光が収まり、腕を顔から除けるとそこには大量の皮袋が並んでいた。

 大量に居並ぶ皮袋もまた先程田崎が持っていた皮袋と同様に中身がぎっしりと詰まっており、マン=モンは思わず汗を垂らし、喉を鳴らす。


「要望通り1000万だ、まあ多少多いかもしれんが」


「ほ、本物やろな?」


「確認してみたらどうだ?」


 田崎は頷き、マン=モンは即座に皮袋へ飛びつき中身を改める。

 皮袋の中には新品の500円硬貨がぎっしり詰まっており、そんな袋が200袋ほど並んでいた。

 マン=モンがその中身の全てを改めるのにおよそ30分を要し、そしてその全てが本物である事が分かると彼女はほくほくの笑みを浮かべるのだった。


「いやー凄いなぁ! 一瞬でほんとに1000万イェンも出すなんて、魔法使いか何かなん?」


「魔法なんて使えねえよ、単なる科学の力だ」


「まあ何でもええわ! こんだけあったら十分や!」


 マン=モンは極上の笑みを浮かべたまま田崎へ向き直る。


「おっ、そうか。 それじゃあ早速情報を──」


「ああ! オギナワ、あんたらに売ったる!」


「は?」


 突然のマン=モンの発言に、田崎は少し固まり。

 ペスはとりあえず頭を下げ、礼を言う。


「ありがとうございますペス様」


「いやええてええて! こないあったら商会ランキングでウチトップやからな!」


「え、ちょっと待ってどう言う事? オギナワって商品として売られてんの?」


 話についていけない田崎は二人の間へ割って入る。

 その顔は本当に理解不能と言ったような表情を浮かべている。


「そやで? オギナワでは売れるもんは何でも買い取れる、物も人も物件も地位も何もかも。 当然オギナワの統治権もや」


「え、こわっ……お金が全ての世界なん?」


「せやせや、商会ランキングトップの男が700万イェン持っとって、今はそいつがオギナワ牛耳っとるんやけど……これだけあればあいつの地位買い取れるわ!」


 そしてマン=モンは皮袋の山の上に銀の鍵を放り投げる。

 銀の鍵は小さな光を放ち、皮袋を消失させる。

 その後地面に落ちた銀の鍵を両手で踏ん張りながら浮遊装置へと引き上げると、本日一番の猫なで声でこう言った。


「オギナワ購入、毎度あり~~♪」


──────────────────────────────


「にっしっしっし……みた? みた? エンドリちゃん」


「きいたきいた、ヴィーサ」


「ちょっと二人とも……遊びに来たんじゃないのよ?」


 そして、田崎達のやり取りを物陰から見つめる3匹の妖精の姿があった。


「それじゃ……!」


「さっそーく!」


「ハンゾーに報告だー!」


 3匹の妖精達は、そう言うと青い光を放ちながら別々の方向へと飛び去っていくのだった。


「ちょ、ちょっと!? ヴィーサ、エンドリ!? どこ行くのよーー!!」


 纏め役、イリオナの受難は続く。



友達の伝で就職先が見つかりそうで、世の中はやっぱり運だなと思ったので初投稿です

ポイントとか感想とかがあると日々の励みになり結果として投稿が速くなるかもしれないので初投稿です


意外な授かり物 青②


ソーサリー


各プレイヤーは全ての手札を捨て、その後捨てたプレイヤーの中で最も多く手札を捨てたプレイヤーと同じ枚数だけカードを引く。


「たなぼたたなぼた! これでオギナワはウチ等のもんや!」

──商人マン=モン

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