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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
71/207

中国

MD215年 7/1日 21:29


 中国、その土地は世界でも最大規模の大きさを誇り、あらゆる人種や知識を受け入れていた。

 それゆえか最終戦争前の中国は社会的に迫害される立場だった魔族を積極的に受け入れていた、これには中国の国家元首が魔族だったというのも大きいだろうが。

 ともあれ中国大陸は魔族を積極的に受け入れた結果、世界最大の魔族大国となっていた。

 それは最終戦争後も変わらず、膨大な龍脈を抱えたこの国家が最終戦争後の地球の覇権を握る、誰もがそう思っていた。

 だが現実はそうではなかった、最終戦争から千年が経過した今でも。


「報告します!」


 荘厳な王宮の内部、贅を尽くしたと言わんばかりに金が溢れる謁見の間に声が響く。

 扉を開き、息を切らしながら男は青ざめた表情で謁見の間に現れる。

 謁見の間の奥にはエイヴンと呼ばれる鳥の魔族が一人立っており、エイヴンは入り口から現れた男へ目を向ける。

 

「……騒々しい」


「も、申し訳有りません、しかしこれは火急を要する事態で……!」


「黄龍様は既にお休みです、それを妨げると言うのであれば北へ行くこととなるが?」


 エイヴンの『北』という単語を聞いた男は、更に顔を青ざめさせると一礼をして謁見の間から退出していく。

 それを確認したエイヴンはやれやれといった顔をしながら、また部屋に一人立ち尽くすのだった。

 そして翌日、エイヴンは男の報告を聞いておくべきだったと後悔する事になる。


『南方、アーフ大陸から侵攻してくるワームを迎撃する部隊、総数3万の内一万の消失』という報告を


 数日後、初めて中国という国は管理者達が送り出した──不慮の事故だが──マンジェニを認識する事となり。

 これから始まる長い長い、マンジェニとの戦いが幕を開けるのだった。


MD215年 7/2日


 南方防衛軍、その1/3を突如失った中国議会は荒れていた。

 伝令の報告によると、6/30の昼、いつものようにワームを押しとどめていた兵士達はある叫び声──ある者によれば金切り声に近いらしい──を聞いたと言う。

 その叫び声が響くと、周囲の草木は一斉に枯れ、ワームは狂ったように暴れた後絶命したと言う。

 南方軍の兵士達がそれを不審に思っていると、再び叫び声が聞こえた時には既に兵士達は消えうせていたと言う。

 

「有り得ん、そんな与太話があるものか!」


「ここは我等が中つ国だぞ! 四聖が守る国にその様な大規模な魔術や魔法を行使出来る者が居る筈が──」


「だが現に兵士達が──」


「本当に消えうせたのかも怪しいものだ、どうせ──」


 等と好き放題に野次や憶測が飛び交い、議会はその役目を果たしていなかった。

 そんな折、議会に槌の音が響く。

 その音が響くとざわめいていた議会がぴたりと静まり、議員達は中央へ目を向ける。

 議員達の目線の先にはエイヴンが立っており、槌はそのエイヴンが握っていた。


「静粛に、黄龍様よりお言葉が届きました」


 エイヴンの言葉に議会は一瞬ざわつき、そして槌の音で再び静まり返る。


「原因を調査し、追加の防衛隊を送るようにとのお言葉です。 ではこれより決を採ります、賛成の者は起立を」


 エイヴンがそう言うと、議員達は一斉に立ち上がり拍手を始める。


「賛成!」


「黄龍様万歳!」


「中つ国に栄光あれ!!」


「賛成多数、黄龍様の意見に異議のある者は居ないようですね、それでは会議を終了します、各自持ち場へ戻るように」 


 議員達の起立を見て、エイヴンは満足したのか槌を二度叩き、満足げに議会を閉幕させる。

 そして1時間後、今度は誰が原因を調査し、追加の防衛隊を編制するのかと言う事で議会が開かれるのだった。


MD215年 8/12日


 マンジェニが確認されてからおよそ1ヵ月が経過していた。

 かの神が確認されてからも中国議会は当初に消失した一万人の防衛軍の補充をしておらず、現在その責任追及のための議会が開かれていた。

 その間にも管理者が送り出した飢餓の神はアフリカ大陸を蹂躙し、既にアフリカ大陸の10%は塵へと帰結していた。

 中国側は未だこの事実を知らず、無意味な会議を延々と繰り返し続けるのだった。


MD215年 9/22日


 この日、ついにアフリカと中国の国境線にある防衛軍とマンジェニの眷属が接触する事になる。

 地を埋め尽くさんばかりの数を誇るマンジェニの軍勢に対し、中国軍南方防衛隊の総数は1万程度であった。

 当初居た数は3万、それをマンジェニの咆哮で一万を消し飛ばし、残りは2万のはずである。

 ではこの1万の差異は何なのかというと、議員の一部が自らの身辺警護の為に呼び戻したのである。

 1人の議員が100人を呼び戻し、それに連鎖するように俺も私もと呼び戻した結果、南方防衛軍の数は減っていった。


 そしてそんな数的不利を抱えたまま眷属達との戦いが始まる。

 マンジェニの眷属達は全て顔の無い頭蓋骨、肘から分かれた2本の腕、足の代わりとなる無数の触手を基本に様々な形が居り、中国の兵士達はその異形に戦意を砕かれていた。

 更に5メートルや10メートルを超える大型の眷属も小型眷属の背後に控え、それらは移動するたびに大地を殺していった。

 そんな状況で小型眷属達と兵士達の戦いが始まる。

 これは最終戦争後の大規模な戦争と言うべき戦いの始まりだったが、この日は戦いと呼ぶほどのものすら起きなかった。


 この日、国境線──通称南門は陥落した。

 その地に居た一万人の兵士達は全て塵となり、大地もまた完全に霊力を失い死に絶えた。

 眷属達が通った後には、彼等の思い出と塵だけが残るのみだった。


MD215年 9/29日


 中国側の戦況は一変した。

 南門が陥落して一週間後、彼等は再び南門へと帰ってきていた。

 大型眷属すら退け、南門には中国の旗が翻っていた。

 何故、どうやって彼等は南門を取り返したのか。

 それには二つの力があった。


「潰しても潰しても沸いてくる……正しく害虫と呼ぶべきか」


 その声の主は四本の足で小型の眷属を踏み潰すと、甲羅の後ろ側から生えている蛇で大型眷属の首をへし折る。

 彼の名は玄武、中国大陸を守護する四聖と呼ばれる聖なる獣。

 亀の姿に蛇の尾を持つ獣、四聖の一体である。

 

「しかし……幼竜と言えどやはり竜は役に立つ、黄龍に感謝すべきか」


 玄武は大型眷属の体を地面に横たえ、小型眷属を叩き潰すと上空へ目を向ける。

 上空には飛行機雲が出来、甲高いジェット音が響いていた。

 その飛行機雲の元は竜と呼ばれる機械生命体であった。

 重油の血を流し、血管はケーブル、羽は金属、それが竜である。


「ゴアアアアアア!」


 竜は唸り、喉を震わせる。

 その叫び声は空を震わせると、翼の下からミサイルを地面へ投下していく。

 ミサイルは地面へ着弾する寸前に分裂し、無数の小型爆弾をばら撒いていく。

 小型爆弾は地面を埋め尽くす眷属を爆殺し、その死体は竜が通った軌跡の通りに並ぶ。

 今回、中国軍が南門を取り返せたのはこの竜と四聖の力によるところが大きかった。


「奴等に暇を与えるな、一気に押しつぶせ!」


 竜の活躍を一頻り玄武は眺めると、兵達を鼓舞する。

 その後数時間の戦闘を経て、中国軍は眷属達との戦いに勝利する事になる。

 この初勝利までに中国が負った人的犠牲は、およそ3万であった。

 その3万の内、100人は自らの為に防衛軍を呼び戻した議員達である。


MD215年 10/1日


「そうですか、いえ報告ご苦労様です、しっかりと休息を取ってくださいね」


 片眼鏡モノクルを掛けた白髪の男──クレケンズはその報告を聞くと、密偵を労い下がらせた。

 彼はティーポットからカップへ紅茶を注ぐと、窓の外を見た。

 外には銀色の月が輝き、星が瞬き、遠い地で行われていた戦いを全く感じさせなかった。


「最近日本やハワイ、それにオーストラリアが忙しないと思っていましたが……彼等が関わっていると考えれば妥当ですね」


 クレケンズは右手でカップを掴み、紅茶を啜る。

 だが彼の頭は世界で起きている事態に想いが行っていた。

 

「……私の実験が完了するまでは楽しませてもらいましょう」


 そしてクレケンズはカップを置くと、机の片隅に置かれている写真立てを手に取る。

 写真立ての中には真ん中に紫色の髪をした155センチ程の笑顔の女性と、右に笑顔クレケンズ。

 その左には……笑顔の山坂が写っていた。


「ねぇ……ノイチェ」


 写真を見つめながら、1人笑うクレケンズの顔は……写真と同じ笑顔だった。



今日上げた奴が良く見たら前書き部分に載っていてミスった事に気づきましたが、直すのが面倒なので初投稿です

そしてFGOでイシュタルがあたらなかったので初初投稿です


中国の話を書いていますが次は当然ハワイです、人魚いいよね…!

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