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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
68/207

尋問を始めたら

MD215年 6/16日 20:00


「タリブもマンジェニも本当にいねえ……あぁでもカムサは残ってるのか、いやでも何で急にあの二体が消えたんだ?」


 山坂は不思議そうに首を傾げながら、モニターを見つめる。

 地上へと仮初の肉体を送り、それへ意思を送り込むダイブシステム、その部屋から管理者達はメインルームへ移動していた。


「何でも何も……三神の緊急出撃命令はお前の持ってるタブレットから発信されてたぞ」


「えぇ……知らないんだけど」


「え、何その反応は……お前が出撃させたんじゃないの?」


 田崎の質問に山坂は首を横に振って、知らぬ存ぜぬと言う風に手を横に振る。

 

「ってことは山坂君、君もしかして……タブレット取られた?」


「ああ!」


 山坂の小気味良い返事に、田崎の拳が飛ぶ。

 その拳は鳩尾へ綺麗に入り、山坂は悶える。


「ふぉぁっ!」


「う~ん……困ったね、本来なら切り札として残しておく予定だった二体が出撃状態になってる上に君の落ち度ってのは」


 永村は悶える山坂を支えながら、困った顔をする。


「くそう、言い返せない!」


「ったく、そんな体たらくで良くこの計画のメンバーに選ばれたもんだな?」


 田崎は呆れた顔で山坂を罵る。

 それに対して山坂は素知らぬ顔をしながら言い返す。


「ふん、あんな試験なんて物の数じゃあない……そもそも僕は魔族を皆殺しにする為にこの計画に入ったんだ、選ばれて入ってやったんじゃあない」


「お、おう……ともかく、この失態はどう挽回するんだ?」


 山坂の突然の真面目な返答に田崎は驚きつつ、山坂の失態について尋ねる。


「ふん……まあ何とかするが、その前に改めて三神についてのおさらいをしておくべきだな、タリブとマンジェニまではまあギリギリ許される範囲だろうが」


「いや許されねえよ?」


「……ごほん、まあ許される範囲だろうが! カムサだけは絶対に駄目だ、あれを解き放つってことは要するに僕等も不要になるってことだからな」


 田崎の横槍に咳払いをして誤魔化すと、山坂はキーボードを操作しメインモニターに三神のデータを三つ並べて映し出す。

 左から顔の無い頭蓋骨、肘の部分から二又に分かれた腕、足の代わりに生えた無数の触手と言った風貌のマンジェニ。

 右には身体の周囲に浮遊する鋸歯の板や刃、動物や昆虫に類似しながらも不快に逸脱した体型、間接部やわき腹にデタラメに配置された眼という特徴を持つタリブ。

 そして中心には巨大なキノコの中心部に黄色い球体が浮かんでいるカムサ、この三体の怪物が映されていた


「いやぁ相変わらず美的センスを問われる感じだよねこれ、戦う連中は恐怖するだろうけど」


「まあそれ目的だからな、相手が怖がって戦意が下がるなら何でも良い」


「んで、おさらいって言っても今更何を確認するんだ? まさかどういう装置だったのかって事も忘れたってんじゃないだろうな、山坂」


「流石にこれに関しては忘れんよ、これは僕等の悲願達成の為に必要な装置だからな」


 山坂はそう言うと、再びキーボードを操作してマンジェニとタリブ、この二体を拡大する。

 モニターには中心から二体の怪物が振り分けられ、内部に細々とした説明が映し出される。


「とはいえ地上へ転移したこの二体について振り返るのは必要な事だろう? 対策と傾向の為にも」


「好きにしてくれ」


 田崎は納得し切れていないのか、微妙な顔をしながら目を閉じ頷く。

 それを見た山坂は永村へと目を向けると、永村もまた目を閉じながら頷く。


「うむ、では僕が振り返りたかっただけの振り返りを始めるぞ! まずは尖兵たるマンジェニからだ」


 そうして山坂は顔の無い頭蓋骨を持つ怪物、マンジェニを拡大する。

 マンジェニ……人間の頭蓋骨に酷似した頭部を持つ全高2000メートルを超える怪物、この怪物の説明は多々あるが特筆すべき物は以下の通りである。

 ・不滅……マンジェニは破壊されない、仮に太陽の中に打ち込まれてもこの怪物は燃え尽きず、死なず暴れ続ける。

 ・荒廃……三神は霊力並びに魔族を根絶する為に作成された装置である、故に三神は移動や攻撃を行う度に霊力を吸い上げ、吸い上げた箇所あるいは魔族を塵へと返す。

 ・抹消……マンジェニが選んだ自らを害する存在を過去へと遡り存在を抹消する事が出来る、この際過去と現在の齟齬は起きない、理由は不明。


「マンジェニはこんな所か、んで次はタリブだ」


 マンジェニについてのデータを改めて田崎や永村へと説明した山坂は、画面をマンジェニの隣、タリブへと移し変える。

 タリブ……顔の無い球体の頭部を持ち、その頭部の頭上には鋸刃の板が無数に浮かぶ全高3000メートルを越える怪物である。

 ではタリブはどの様な特性を持っているのだろうか。

 ・操作……タリブは時間と空間を操作できる、対象となった物はその存在を自由に作りかえられるだろう、例えそれが何であろうと。

 ・虚空……タリブは一切の操作と干渉を受けない、自らの判断で行動する。

 ・英知……あらゆる知識を霊力から吸収し自らに反映させることが可能、これによりタリブへの魔術的、魔法的干渉は一切行えず、逆にタリブは全ての魔法を行使することが可能。


「って所だな、そしてそれに加えて三神全てには周囲の霊力を内包する生命体を子機へと変える機能がある」


 そして説明を終えると、山坂は拡大していた画面を元に戻し世界地図を表示する。

 地図の上、アフリカ大陸には赤い光点が一つ示されておりそれはしばしば点滅していた。


「んで……これが現在マンジェニが居る場所か、流石にタリブは見つからないか」


「確かアフリカには戦車が変異したワームとかいう生物が跋扈してるんだっけ、ペス?」


 永村はテーブルの上にある湯のみへ手を伸ばしながら、管理者達の拠点を管理しているAI、ペスへと声を掛ける。

 呼びかけにペスは即座に反応し、無機質な、しかし何処と無く女性らしさを感じる声で質問へと答える。


「はい、その認識で正解です、現在アフリカには極少数の魔族、それと大量のワーム、そして魔族から変異した子機の活動が認められています」


「もう子機が生まれてるのか……マンジェニがここから消えたのがおよそ18:30」


「現在時刻は20:04となっておりますので94分が経過している事になります」


 ペスの報告に山坂はげんなりした顔を見せるとキーボードを叩き、後ろで椅子に座っている田崎と永村へ振り返った。


「流石のスペックとしか良い様が無いな」


「全くだな、俺達の楽しみを減らす行動取りやがって……どうすんだよ」


「そうだな……一つは空間管理鍵を使って奴を封印するという手がある、何せ三神は一度動き出したら止まらない様に設定されてるからな」


「確かにあの鍵なら一時しのぎにはなるだろうが……上手く行くと思うか?」


 田崎の問いに山坂は首を横に振る。


「だろうな、鍵を持って行ってもマンジェニに鍵ごと存在を消されて終わりだろうな」


「となると……マンジェニのAIに指示を出すしか無いな」


「指示? 止まってくださいとでも言うつもりか?」


「止まれと言って止まるならここで悩んだりはしてねーんだよなぁ、とはいえそれに近いぞ、進軍スピードを最低にまで落とす様に指示する」


「あー、まあそれなら上手くいくか? つっても結局あれが動いてる事には変わりねえし、何よりタリブはどうすんだ?」


 その問いに山坂は腕組をしながら俯き、唸る。

 そんな山坂を、田崎は冷ややかな目で見ていた。


「あのー、君たち一個良い?」


 そんな時、お茶を飲みながら一人モニターを見ていた永村が声を上げる。

 二人は一斉に永村へ目線を向ける。


「「あ?」」


「二体起動しちゃったのはもうしょうがないんだしさ、もう二体とも放置でいいんじゃない?」


「放置って、お前なぁ」


「当然マンジェニにはさっき山坂君が言ってた様に指示は送るよ、完璧に放置するわけじゃない」


 『それに……』と永村は一旦言葉を切る。


「それに、むしろこれは私等に発破を掛ける良い機会じゃないかな? 目標期間が無いとやっぱだらだらやっちゃうし」


「競争するってこと? 僕は期間定めないでだらだらやってる方が好きなんだよなぁ……」


「俺は良いと思うぞ、だらだらやるよりはそういう目的を持った方がやる気湧くしな」


 山坂は不満げに、田崎は満足げに返すと永村は頷き声を上げる。


「んじゃ第六回管理者会議始めるよー、私の提案に賛成の人は挙手ー」


「賛成」


「めっちゃ消極的に賛成」


 二人の管理者が手を上げるのを見て、永村は満足げな顔をする。


「んじゃ今の方針で決まりと、ペス、早速マンジェニに進軍速度と行動速度を最低値まで落とす様に指示しておいて」


「畏まりました、それと山坂様、先程中泊まり町からこちらへ転移してきた空間管理鍵──正式名称バルザイの隔離室への運搬が終了しました」


「あぁあの鍵そんな名前だったか……んじゃ僕は尋問しにでも行きますかね、お前等はどうする?」


 ペスの言葉に山坂は機械に寄り掛かっていた体を起こす。

 

「俺はパス、ペスの新しいボディ作ったりとか地上の様子見ておきたいし」


「それじゃあ私が同行しようかな、山坂君一人だけだと長老級を殺しちゃうかもしれないし」


「失礼な、死ぬより辛い目に合わせるだけだぞ!」


「それが心配なんだよなぁ……まあ色々尋ねたい事もあるから私が行くよ、隔離室だよね?」


 永村は飲んでいたお茶を飲み干すと、椅子から立ち上がり一足先に歩き始める。


「ああ! んじゃあな田崎、次はお前の番だし精々頑張って殺戮しろよ?」


 山坂は頷きながら、軽く右手を田崎へ上げ、永村と共に部屋から退出していく。

 二人が退出すると、田崎は新しい湯飲みを手に取りお茶を注ぎ、一人地上の情報を見始めるのだった。


「とりあえず東京は抑えたと見て良い、となると次は沖縄かハワイか……防水とか防錆仕様にしないとなペス」


──────────────────────────────


 閃光が私を包んでいた。

 あの瞬間、私は死を覚悟した。

 逃げようと思えば、私は天照様を見捨てて逃げる事が可能だっただろう。

 だが私はそうしなかった、何故なのかは分からない。

 しかし……もしかしたら、私は。


「きゃっ!?」


「あいったぁ!」


 閃光が走った。

 それと同時に私は地面へと二本の足で着地する。

 

「……生きている?」


 私は光に目が眩みながらも、自らの手で私の体を触って確認した。

 まだ感触がある……。

 私の手は確かに私の肌に触り、そして触感を伝えてくる。

 それによく考えれば、今こうやって考えていると言う事自体が既に生きているという証拠だろう。


「あっちゃー……そういや何か長老級庇った女が居たんだったなぁ、やっべー基地に余計なの引き入れちまった」


「あのさぁ」


 ……?

 何だろうか、私の真上から二人の男の声が響く。

 一人は何処かで聞いた事がある声だが、もう一人は聞いたことの無い声だった。

 私は徐々に周囲の明るさに馴染んできた目を開ける。

 そこには白い布を身に纏った男が二人並んで立っていた。


「やぁ、ようこそ人類復興の基点となる基地、エクィローへ」


「歓迎するよ、長老級変異種、天津零時と……予想外の君」



年末なのにお金が全く無くてピンチな上に自信があった場所も落ちたので初投稿です

おいははずかしか!生きていられんご!


飢餓の神、マンジェニ ⑩


伝説のクリーチャー:エクィロー


このクリーチャーを唱えた際、貴方は対戦相手か自身がコントロールする望む数だけのパーマネントを追放しても良い。

そうした場合、そのオーナーの元に0/1の子機トークンを追放した数だけ戦場に出す。

破壊不能(このクリーチャーは破壊するという効果や戦闘で致死ダメージを負っても死亡しない)


このクリーチャーが攻撃する場合、相手は相手の手札の数だけパーマネントを生贄に捧げる。


10/10

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