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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
63/207

空間管理鍵を使ったら

MD215年 6/16日 18:29


「どうした!? 何が起きたのです!!」


 中泊まり町の手前、平野部の更に奥にて控えていた徳川は突然の事に声を上げた。

 突如日蝕が起きたかと思えば戦場となっていた平野部が、黒いもやの様なものに覆われてしまったのだ。

 その靄は平野部の中心付近を基点にドーム状に膨れ上がっており、異常な黒の霊力を徳川に感じさせた。


「わ、分かりません! 突然日蝕が起きたかと思ったら……!」


「内部の者達はどうなりました、あの中には我が軍のほぼ全てが居たのですよ!」


「あの靄からは高濃度の黒の霊力が発せられているのが確認されていますが、それ以外は」


 徳川の傍に控えていた伝令は沈んだ声で答えた。

 その伝令も中に入った兵士達がどうなったのか想像したのだろう、彼の表情は暗い。


「……分かりました、貴方達は別命あるまでは待機、観測班には何か動きがあったら即座に私に知らせるように伝えておきなさい」


 徳川がそう告げると、伝令は頭を下げ走り去っていく。

 そして伝令と入れ替わりで伊織が徳川の隣へと立つ。

 伊織の表情は極めて明るく、この状況を楽しんでいるようにも見えた。


「いやー凄いでござるなぁ、ここに居ても分かる程の黒の霊力とは」


「虎牙ですか」


「うむ、拙者にござるよ、総理殿」


 徳川は隣に立った伊織の顔を見る事もせず、戦場……もとい靄を見つめていた。


「貴方の所見を聞きましょう、これまでにこの様な状況や魔術、あるいは──魔法の類を見たことは?」


「いやぁござらんなぁ、屍術しじゅつ使い等とは何度か戦った事はあるのでござるが」


「やはり役に立ちませんね」


 伊織の言葉に徳川は冷ややかな言葉を送るが、伊織は笑って流す。


「ハハハ、いやー若干申し訳ない、とはいえあれが何なのかの推測は出来る、あれは恐らく──」


「衰弱の場でしょう」


 伊織の言葉を遮って、背後から女性の声が上がる。

 二人は声がした方へ振り向くと、其処には徳川の副官であり、東京軍の軍師でもある石元が息を切らせながら立っていた。


「申し訳有りません……参戦、遅れました」


「石元!」 


 石元の姿を見た瞬間、徳川は彼女の元へと駆け寄り抱擁した。

 いきなり抱擁された石元は顔を赤面させ、慌てる。


「あ、ああああの! 戦様!?」


「良く無事で居てくれました、怪我はありませんか?」


「は、はい、天照様が戦場に赴く前に後方へ下げていてくれたので……そ、それよりも今の戦場です!」


 石元は赤面しながら徳川の抱擁を解くと、戦場へと向き直った。


「今戦場に掛かっている靄は恐らく衰弱の力でしょう」


「先ほども言っていましたね、その衰弱の力とはどのようなものなのです?」


 石元に抱擁を解かれた徳川は、少し頬を赤らめつつ戦場の方へと向き直り石元へ質問を行う。

 そんな徳川を伊織は笑いながら見ていた。


「要するに触れた物や触れている物を弱らせ、腐らせていく力の事でござるよ」


「貴方には聞いていません」


 石元が説明を行おうとすると、伊織が空気を読まずに発言する。

 すると徳川は豚を見るような目で伊織を睨みつけ、思わず伊織も肝を冷やす。


「そ、それは失礼」


「では石元、説明を」


「は、はい……とはいえ今の虎牙殿の言う事が全てです、触れているものは人間魔族ゴーレムを問わず肉体と精神を腐らせていく力、それが衰弱の力です」


「成る程、ではその力はどの程度の時間触れていたら危険なのです?」


「それは術者の有する霊力の強さ等にもよりますが……あの規模の範囲を覆う力となると、恐らくは数秒で」


「となると、やはり中に居た兵達は既に……」


 徳川の問いかけに石元は頷き、それを見た徳川は顔を俯けると拳を強く握り締め、自らの顔を殴りつける。


「戦様!?」


「総理殿!?」


「東京を治める軍の総数は1万、その3割を率いてこの結果とは……自分が情けない!」


 そして近くにあった旗を手に取ると、頭上へと掲げる。


「この責は戦いが終わった後に果たそう! だが今は! 眼前の敵を全て踏み潰す!!」


「戦様……」


「その意気や良しと言った所でござるな、しかしどうするおつもりで? ここに残っているのは伝令や斥候、それに観測を主とする者達ばかりで戦える者は……」


 伊織が現状東京軍に残された者達について言うと、徳川はすっとその細く美しい指を伊織へ指し示した。


「あ、拙者? ハイ」


「まあ貴方だけに任せると言う事はしません、私も出ます」


「ならば私も!」


 徳川に指名された伊織は一瞬呆けた顔をしたが、ようやく戦えるのが嬉しかったのか笑みを作る。

 そして徳川も出陣の意向を告げると、石元も即座に名乗りを上げる。


「しかしどうやって近づくのでござる? あの靄を避けて通るとなると結構な回り道になるでござるが」


「それに関しては石元、貴方の知恵を借ります」


「はい、それに関してですが靄の横を避けていくのではなくその上を通って行こうかと」


 徳川に最短ルートの提示を求められ、石元は黒い靄を指差す。

 そこへ──。

 

「何か、あの靄……消え始めていませんか?」


──────────────────────────────


「ちっ! しっつけぇ!!」


 山坂は愛用の二挺拳銃である、カウブレードをその光に向かって撃った。

 引き金が引かれると、その銃口の無い銃の先端に描かれた六芒星から紫電が放たれる。

 それは鷹の様な声を上げながら周囲の空気を焼き、奔る。


「ヴィーサ! エンドリ!」


 山坂が銃を構えた瞬間、彼に相対していた三つの光の内、タブレットを持っている一つの光が叫んだ。

 残りの二つの光がその声に呼応するように光の強さを増していく。


「いっくよエンドリちゃん!」


「上がって下がって、 行って戻って、 一回り ―――ざまあみろー!」


「「偏向/Deflection!」」


 二つの光目掛け紫電が迫る。

 だが掛け声と同時に紫電は反転し、山坂へと迫る。

 回避を試みる間も無く山坂の右足は炭化し、バランスを崩して山坂は屋上の床に倒れこむ。 


「ごへぁっ!」


「「やったー!!」」


 呪文が上手く行った事が嬉しいのか、二つの光は手を取り合って喜び合う。


「お、おのれぇ……羽虫どもが!」


「はむしじゃなーい! わたしは妖精のヴィーサ!」


「あたしはエンドリ!」


「私はイリオナ!」


「「「三人揃って! ヴェンディリオン三人衆!」」」


「どうでもいいわそんなもん! それよりそのタブレットを返しやがれ!」


 ポーズを決める妖精三人組を見ながら、山坂は手すりに寄りかかり立ち上がる。


「やーだよ! あっかんべー!」


 山坂の言葉に先ほどヴィーサと名乗った妖精が山坂を小ばかにする。


「ハンゾーをやっつけたあんたの言う事なんて誰が聞くもんか!」


「大体さっきから見てたんだからね! あなたがこのた、たぶれっと……? を使ってあのモヤモヤしたのを出したのは!」


 ヴィーサに続いてエンドリ、イリオナが喋り始める。

 

「だから、こんなものは──こうしちゃう!」


 そして自身の体の倍はあるであろうタブレットを床に落とすと、画面に向かって体当たりを繰り返していく。


「や、やめろ!」


 タブレットへ攻撃を始めたイリオナを止めようと、山坂は銃を構える。

 だがそれを見た残りの妖精二匹は山坂の胸元へ体当たりを行う。


「いってぇ! とはいえこの程度のパワーではこの僕は───はい?」


 妖精二人の体当たりを受け、老朽化していた手すりはその衝撃でへし折れてしまう。

 山坂はゆっくりと地面へ顔を向けると、物凄い勢いで顔を正面へ戻し叫びながら落ちていく。


「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「おぉー……ヴィーサやるね、手すりのろーきゅーかを見抜くなんて」


「えへへへへ、それほどでも、ところでろーきゅーかってなに?」


「さぁ……?」


「ちょっと! 遊んでないでこれ壊すの手伝ってよ!」


 山坂が手すりから落ちた事により、屋上には妖精三人組しか残っておらず、イリオナは残りの二人にタブレットを破壊する為に声を掛ける。

 タブレットはイリオナの力だけでは液晶に罅が入る程度で、妖精一匹では荷が重そうだった。


「あ、ごめーん!」


「よーし! それじゃあわたしたちの力、見せちゃおう!」


 ヴィーサとエンドリが集まってくると、イリオナは再び空中へ舞い上がる。

 そして三人は手を繋ぎ合わせ、青の霊力を高めていく。


「心!」


「霊!」


「破!」


 三人は繋いで手の輪を掲げる、するとその中心に筒の形をした15センチほどの青い物体が生成される。

 そして三人は繋いだ手を同時にタブレットへ向け下ろすと、その筒もまた勢い良くタブレットへと叩きつけられる。

 叩きつけられた筒は青白い発光を放ち爆発──するかに思われたが。


「あれ? ばくはつしないね?」


「おっかしーなー……」


「ちょっと触ってみましょう」


 筒はタブレットの上に置かれたまま爆発せず、不審がる三人はゆっくりと筒へ近づいていく。

 その途中──。


「プロ……ム──承…──転……動」


「何か言った? ヴィーサ、イリオナ?」


「いえ、私は何も?」


 途中聞こえた言葉にエンドリが反応すると、二人へ問い返す。

 イリオナは存ぜぬといった顔で返すが、ヴィーサは。


「うーん、爆発しないなー、そーだ! 蹴ればいいんだ!」


 と一人いつの間にか手を離し、筒を蹴っていた。


「バカ! そんなことしたら──!」


「ん?」


「あら?」


 こうして妖精三人は青い閃光に包まれ、夕焼けに包まれた中泊まり町を照らした。

 ついでにタブレットも破壊し、戦場の靄は晴れるのだった。

 そしてビルの下では、地面に突き刺さった山坂を引き抜こうとアデルとアレーラが奮闘していた。


──────────────────────────────


「いきなり落っこちてきやがって……おまけに片足無くなってるし、何があったんだよ!」


 地面に突き刺さった山坂を引っ張り上げると、アデルは山坂へと叫んだ。

 アデルにはアスファルトの残骸や誇りやらが無数に掛かっており、どうやら山坂が落ちてきたとき直ぐ傍に居たらしい。


「は、羽虫が……」


「羽虫?」


 山坂は口数少なめで、羽虫、羽虫と朦朧とした意識で告げた。

 アデルは羽虫という言葉を聞きアレーラの方を向く。


「羽虫だってよ、羽虫ってー……あの羽虫か?」


「どうなんでしょう……」


 そして再び山坂へ顔を向けようとしたアデルの顔に、夕陽が差し込む。

 夕陽の明るさにアデルは顔を背け、そしてふと気づく。


「ん? 夕陽? あれ、さっきまで夜になってたよな?」


「あ、本当ですね……いつの間にか」


「なぁにぃ!?」


 そこへ山坂が飛び起きると、周囲を見渡し始め頭を抱える。

 

「な、何てこった……黒の太陽で一気に殺しつくす予定だったのに、いやそれよりも戦場はどうなってる!?」


 一頻り頭を抱えた後、山坂は残った左足で器用に立ち上がると戦場の方へ体を向ける。


「戦場? そういやどうなったんだったか……あの靄は晴れたみてーだが、てかそれよりあんたは大丈夫なのかよ」


「大丈夫か大丈夫でないか言えば大丈夫だ!」


「そ、そうか……まあ肩貸すぜ」


「うむ、よきに計らえ」


 片足を無くした山坂を見かねてか、アデルは肩を貸すと山坂は意外なほど素直に応じそのまま二人は戦場の様子が見られる場所へと歩き出す。

 そんな二人を、アレーラは少し居心地の悪そうな顔で見ていた。



またタイトル詐欺か壊れるなぁ

趣味のMTGの大会の為に仲間と遠征したら一人だけ1-3というクソ雑魚ナメクジな結果だったので初投稿です


Psionic Blast / 心霊破 (2)(青)

インスタント


クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。心霊破はそれに4点のダメージを与え、あなたに2点のダメージを与える。

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