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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
58/207

天照

MD215年 6/11日 08:00


 洞窟の中に嬌声が響く。


「くっ……あ、天照様、どうか、ご助力を」


「え~? どうしよっかな~、アマちゃんこまっちゃ~う」


 そうして、天照は空中に吊られている石元へ近寄ると、脇へと下を這わせる。


「お、お願いします天照様、どうか我等にご助力の程を……」


 天照の舌遣いに、顔を赤く染めながら石元は健気に天照への助力を請う。

 しかし石元の懇願を聞いているのかいないのか、天照は舌を徐々に石元の顔へと這わせていく。


「ふふ……貴女の汗美味しいねぇ」


「あ、天照様……」


 そして舌が石元の耳へと触れ、耳の穴の中へ舌が侵入を果たそうとした時。


「ちょぉっと! あ、貴方達!? 何をしてらっしゃるの!!!」


 部屋の入り口からベルの声が響く。

 天照が顔を向けると、顔を真っ赤にしたベルが足音を立てながら近づいてくる。


「まっっったく! 貴女という人は! こんな陽の高い内から……!」


「あっ、ベルちゃん」


「あっ、じゃありませんわよ! 恥を知りなさい、恥を!」


 そしてベルは天照の顔を両手で掴むと、石元から引き剥がそうとする。


「あ、痛い! 痛いよベルちゃん!」

 

 だがベルが幾ら力を込めても、天照はびくともしない。


「んぐぐぐぐ……相変わらず無駄に力強いですわね貴女は!」


 それでもベルは諦めず、今度は天照を羽交い絞めにして引き剥がそうとする。


「は~な~れ~な~さ~い~! その人は貴女に話があるから来たと言っていたのに、貴女と来たら猥褻な事ばかりして……!」


「え~……んもう、しょうがないなぁ」


 ベルの必死な姿に興醒めしたのか、天照は不服そうな顔を作ると体を石元から離す。

 どんなに力を入れても動かせなかった天照が、自ら動いてくれた事に若干安堵するベルに天照が一言。


「ところでベルちゃん、さっきから胸当たってる」


「───!」


 ベルは顔を更に真っ赤にすると、腕を振り上げる。

 そして、洞窟内に小気味良いビンタの音が響いた。



──────────────────────────────


「それで? 私にお願いがあるって話だったけど……どういう用事? 曇りが多くて不作だから日光をもっと出して欲しいとか?」


 赤くなった頬を擦りながら、向かいに座る石元へ笑みを向ける天照。

 石元と天照は向かい合って座っており、ベルはその間に邪魔にならないよう横に座って天照を見張っていた。


「……いえ、実は天照様自身のご助力が必要なのです」


「ん? どう言う事? あ、もしかしてアマちゃんの美貌が必要~?」


 石元が深刻そうな顔で告げると、天照はその内容を汲み取れず自身の豊満な体を際立たせるようなポーズを取る。

 そんな天照を、ベルが睨む。


「んもう、それで? 一体何がどうしてアマちゃんの力が必要なわけ? 話してみてよ」


 ベルの視線に天照は詰まらなさそうな顔をすると、石元へと真面目な顔で問いかける。


「実は──」


 そして、石元はありのままを語る。

 東京の北、札幌から未知の軍勢が攻めてきている事。

 その中には不死の軍勢が居り、打開手段が無い事。

 更には不死の軍団は生き物や土地を全て白い灰へと変えている事。

 東京の軍も抵抗はしているが、思うように相手に打撃を与えられていない事を。


「なぁるほどなるほど? つまり貴方達だけでは打開できないから、私に働いて欲しいと」


 天照は真面目な顔から一転して、悩むような顔に変わる。


「ん~、どうしよっかな~……私神様だし~、貴方達の言う事聞いてあげなくてもいいしな~」


「そんな……! では我々東京の民はどうなっても良いと仰るのですか!?」


「別にそんな事無いけどぉ……どーしよっかな~、あっ、そうだ!」


 渋るような態度を見せる天照は突然何かを思いついたのか、手を打ち鳴らす。


「ベルちゃんはどう思う? 確か北の方から来たって言ってたよね?」


 と先ほどから黙っていたベルの方へと顔を向ける。

 石元も鋭い目線をベルへと向ける。


「私は……」


 突然の問いかけに、ベルは顔を俯ける。


「ベルちゃんが東京の民を助けてあげてって言うなら、アマちゃん助けに行ってあげてもいいよ~?」


 天照の発言に、ベルは悩む。

 ベルは札幌から来た人間だ、故に今東京を襲っている軍を倒せとは言えない。

 だがこのまま困っている人間を自らの国の為に見捨てる事も出来ない、ベルは揺れていた。

 そこでふと気づき、顔を上げる。


「いえ、そもそもどうして私に丸投げするんですの? 神を名乗るのなら、それ位はご自分で決められては?」


「え~? だってアマちゃん神様だから~、あんまり気軽に人間の戦いに介入しちゃうと今後も私に頼れば良いって考え根付いちゃうから~」


「くっ……、地味に高度な反論をしますわね」


 天照の反論に、再び顔を俯けるベル。

 自分達は戦争をしている、故に誰かが死に誰かが生きるのは当然の事。

 では助けないという選択をするのか?


「……けれど」


 しかし、ベルの中で一つ引っかかる。

 不死の軍団、石元はそう言っていた。

 だがベルの知りえる限り、そんな能力を持った人物は居ない。

 もし、仮にその不死の軍団というのが彼等の遣わしたゴーレムであるのなら。


「決着は、私達の手でつけるべきですわね」


 ベルは高潔な人間だ、ゴーレムによる蹂躙制圧ではなく。

 人間と人間、魔族と魔族による正当な戦いを望む。

 それが後に味方から蔑みを、裏切り者と罵られようとも。

 そう決めると、ベルは顔を上げると交互に二人の顔を見る。


「私はサツホロで部隊を預かる将の身です、ですのでサツホロの兵士を攻撃しろとは言えません」


「……所詮は敵国の将か、貴様が願うだけで我等が民を救えるというのに貴様は──」


 石元はベルの言葉に正論とも嫌味とも取れる言葉を言うが、ベルは更に言葉を続ける。


「しかし、今攻めてきている不死の軍団というのは恐らくサツホロの兵士達ではなく、我々に南方を攻めろと指示した者達の駒でしょう」


 そしてベルは天照の顔を見る。

 その顔は何かを覚悟した人間の顔だった。


「故に、それらを攻撃するなとは私は言えません、これが今の私に出せる最良の選択だと思いますわ」


 そして、天照はそんな顔をした人間が好きだった。


「ふふ、いいんじゃない?」


 天照は笑うと、次に石元へと顔を向けた。


「それで? 貴女はベルちゃんの決定に何か文句があるようだったけど、まだ文句あるの?」


 石元は侮辱の言葉を用意していたまま、口を開いて固まっていたが。

 天照の言葉に口を閉じると、顔を俯け呟いた。


「…………感謝します」


「それじゃ、出発の準備してまずは江戸城までGO-! たまには民に姿を見せないとね!」


 かくして、天照と石元、そして何故かベルまでもが迫り来る敵を倒す為に出発するのだった。


──────────────────────────────


MD215年 6/16日 10:27


 雨。

 降りしきる雨の中、四足歩行の獅子マスティコアが唸りをあげながらぬかるんだ地面を歩いていた。

 獅子の周囲には相変わらず奇妙な、予見者と呼ばれる存在が移動していた。

 捩れた二本の足を器用に前へと進めながら、その胴体の中央に備え付けられた巨大な眼球は眼前に居並ぶ兵士達を眺めていた。

 

「ふむ、今回はそれなりに数を揃えて来たらしいな? ったく、あのクソ侍が逃げたと思ったら今度は雑兵の相手かよ」


 予見者から送られてくる映像を眺めて愚痴をこぼす山坂。

 眼前には少なくとも3000人程度の兵士が並んでおり、数の上では山坂は圧倒的不利な立場だった。

 山坂側の兵力は獅子が80に予見者が20の合計100体である。

 だがそれでも山坂は余裕の笑みを崩さなかった。


「数並べても無意味だってのに……よくやるもんだ」


 山坂はそう言うと、手元に握っていたコントローラーのボタンを押す。

 すると現地の獅子達の尾が一斉に兵士達の方を向く。

 その燃え盛る尾の先端が更に光を放つと、兵士達へ向け強力な熱線を発射する。

 なぎ払うように発射された熱線は、兵士達を蒸発させこの戦いを即座に終わらせた。


「はい弱い! はい終わり! はい前進!」


 熱線が放った余波で周囲には土煙が舞い、予見者のモニターは一時的に前方が見えなくなる。

 そして山坂は自身の勝利を確信し、そのまま獅子達を前進させていく。

 ──だが。


「あん?」


 暫くすると、前方から叫び声のような物が聞こえ始める。

 

「何だ……? 生き残りの悲鳴か何かか?」


 山坂はそれを不審に思い、獅子の歩みを止めた瞬間。

 

「喰らえええええええええ!」


 土煙の中から薙刀を持った女……徳川戦が飛び出してくる。

 徳川の薙刀は獅子の顔を縦に両断するが、獅子は即座に再生し徳川に向けて前足を振り上げる。


「半蔵! 頼む!」


「御意」


 獅子の攻撃が徳川に命中するかといった所で、今度は獅子が振り上げていた腕が切り落とされる。

 そして、腕を切り落とされ体勢を崩した獅子へと続けざまに徳川の薙刀が突き刺さると、獅子は動きを止め地面へと倒れこむと光となって消えていった。


「な、なんだぁ!? 馬鹿な、何でマスティの熱線で死んでねぇ!?」


 その光景を予見者から見ていた山坂は取り乱す。

 本来ならば獅子の攻撃で即座に蒸発していたはずの兵士達が、何故か生きている。

 それに加えて……本来不死身であるはずの獅子が、何故か死んでいくのだ。


「でやああああ!」


 そんな風に山坂がうろたえていると、山坂へと映像を送っていた予見者へ三人の兵士が襲い掛かってくる。

 全員が槍を構え、予見者の目へと槍を突き出す。

 

「ちっ! 雑兵どもが!」


 山坂はコントローラーを操作し、突きを回避すると予見者の両腕に当たる触手──蝕腕とでも呼ぶべき物を振るい、兵士達を攻撃する。

 触腕に当たった兵士達の内二人は一瞬体を輝かせるとそのまま地面へと弾き飛ばされ、もう一人は蝕腕に掴まれ空中へとぶらさげられる。


「ちっ、雑魚が調子に乗りやがって……」


 予見者は右腕に当たる蝕腕を先端から細分化させ、捕まえた兵士の頭部を覆う。


「タダシーー!」


 地面に叩きつけられた兵士の一人が、捕まえられている兵士の名を叫ぶ。


「あん? まだ生きてるのか? 手加減した覚えは無いんだが……」


 山坂はそう呟きながら、タダシと呼ばれた兵士の脳波を読み取るよう予見者へ指示を送る。

 

「おっと、やらせんでござるよ!」


 その言葉と同時に、予見者からの中継が途絶える。

 

「今の声は……!」


 山坂は急いで別の予見者へと繋げる。

 先ほど中継していた予見者の近くに居る予見者へと繋げると、そこには伊織が居た。

 二本の刀を振るい、予見者や獅子を倒していく姿は正に戦鬼と呼ぶに相応しいものだった。


「やっぱりあの野郎か……逃げたと思ったらまた来たのか」


 山坂は忌々しげな顔をすると、今度は中継が途絶えないように今映像を送っている予見者を後方へと下がらせていく。

 予見者は後方へと跳ねながら移動していく最中、日の光を見た。


「うお、まぶしっ! ってあん……? 今日は雨のはずだが、何時の間に──」


 予見者が目を空へと向けると、其処には太陽を覆う厚い雲ではなく、7つの太陽があった。


「雨が上がったか……いや、待てよ? 太陽が7つ? 7つだぁ!?」


 本来の太陽、管理者達が放った5つの太陽、そして7つ目の……。


「さぁー! 皆でばんばん東京へ攻めてくる連中をやっつけちゃおーー!」


 7つ目の太陽こそ、日本を守護する太陽神、天照その人であった。  



投稿ペースは不定期!不定期です!


次:覚醒/Rise


太陽の神、天照  白白白⑤


飛行


あなたがコントロールするクリーチャーは破壊されない。

太陽の神、天照は貴女がコントロールするクリーチャーの総数に等しいパワーとタフネスを持つ。

貴女がコントロールするクリーチャーがクリーチャーに致死ダメージを割り振る場合、それを追放する。


伝説のクリーチャー:○○


★/★

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