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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
56/207

制圧した街へ部隊を派遣したら

 西暦2409年、1月11日 15:02


 彼女の紫色の髪が揺れる。

 僕はそれを目で追う。

 彼女は素敵だ……声、見た目もそうだが何よりもその性格が。


「……ドク?」


 あぁ、ノイチェ……君のためなら僕は──


「ドク? ちょっと聞いてる?」


 僕は喜んでこの命を差し出そう──


「……ドク!」


「ハッ!?」


 ノイチェの出した大声で、僕は現実へと引き戻される。

 現実へ引き戻された僕の目の前には、ノイチェの小柄な体が立っていた。

 どうやら彼女を眺めすぎて、自分の目の前に来ていたことにすら気づいていなかったようだ。


「もう、ドク……仕事中なんだからサボってたら駄目よ?」


 ノイチェは呆れたような顔で、僕へと言う。


「あ、あぁ……ごめん、ちょっと考え事をね」


 僕は咄嗟に、彼女に頭を下げ謝る。


「全く、何を考えてたんだか……大方最近買ったエロゲーのことでしょ?」


「ち、違うさ! その……君の事をだね」


 ノイチェのその言葉に、僕はすかさず否定する。


「え? ふふ、そう……嬉しいわ、ドク」


 僕の否定の言葉と、それに付随してきた言葉にノイチェは笑顔を作る。

 あぁ……ノイチェ……やはり君は素晴らしい、こんなにも僕を夢中にさせる。

 

「ごほん、でもドク? そういうのはプライベートの時だけにして? ほら、周りの所員が見ているから」


 ノイチェははにかみながら、僕へと釘を刺す。


「ご、ごめん」


 周りの所員の事など、正直僕はどうでもよかった。

 だがそこで僕の意見を言って彼女に嫌われる事が嫌だった僕は、素直に彼女の言う事を聴くことにした。 


「分かればいいのよ、それで最近魔族について発見された事についてなんだけど……」


 そして、そのまま僕はノイチェの報告を聞く事にした。

 プロテクション能力、呪禁、瞬速、絆魂などのキーワード能力……そういった魔族だけが持つ特有の力についてを。


──────────────────────────────


MD215年 6/9日 15:17


「成る程、では貴方達二人は街二つをおめおめと明け渡し、保身の為にこの江戸城まで帰ってきたと」


 江戸城天守閣にて、御簾を挟んで四人が居た。

 一人は虎牙伊織と呼ばれる侍、その隣には服部半蔵と呼ばれる忍者が。

 茣蓙の向こうには黒髪の女性と銀髪の女性、二人が座っていた。


「そんな事は……」


「弁明は罪と知りなさい、半蔵」


「ぐっ……申し訳ありません」


 半蔵が御簾の向こう側に座す女性の言葉に、思わず言葉を詰まらせる。


「ハハハ、総理様は変わらず手厳しい、拙者達は応戦虚しく敗退したので次の戦の為にこうして報告も兼ねて帰ってきたというのに」


「い、伊織殿……!?」


 女性の言葉に反感を覚えたのか、伊織が嫌味で返す。

 そんな態度を取る伊織に思わず半蔵が口を開く。


「虎牙! 何です、その口の聞き方は! 一体誰の前に座していると思っているのですか! このお方は今の日本を治める10代目総理──」


 その伊織の態度を見て、眉を吊り上げる女性が居た。

 御簾の向こう側、総理と呼ばれた女性の脇に控える銀髪の女性が怒鳴る。


徳川戦とくがわせん様の御前ですよ!」


「確かに総理様の御前ではあるんだが……謂れの無い事で中傷されるのは拙者は好かんなぁ」


 その伊織の反論に、銀髪の女性はいらつきを更に増す。


「その態度……! それが不敬だと言うのです!」


 そしてそんな伊織に耐えかね、女性が刀を抜こうとする。


「止しなさい、石元」


 刀を抜きかけていた女性──石元を、御簾の奥にて座していた女性。

 徳川が制止する。


「しかし!」


「石元……貴女にはいつも世話になっています、そんな貴女を処断させるような真似を私にさせるつもりですか?」


 徳川は閉じていた両目の内、右目だけを薄っすらと開き石元へと視線を向ける。

 その視線に、石元は怯えからか身を竦めると刀に伸びていた手を戻す。


「……申し訳ありませんでした」


「ハハハ、総理様の腹心と言えどやはり総理様に怒られては形無しでござるな」


 石元が謝罪する中、悪びれない伊織は石元をからかう。


「虎牙、貴方も謹みなさい、私達は法の統制の元にあるのです、貴方のそういった言動は処断され得るものです」


「これは失礼、では暫く黙っているとしよう」


 伊織もまた徳川に言い含められると、姿勢を正す。


「では話を戻しましょう、ナカドマリ並びにムツシは北方から来た軍団によって制圧、ムツシに関しては完全に塵となった……そうですね? 半蔵」


 御簾の向こう側から、鋭い視線が半蔵へと向けられる。

 

「ハッ、残りの半蔵からの報告によれば……またムツシを塵へと返した怪物どもは以前南下を続け、我等が領地を等しく塵へと返しているとのこと」


 半蔵は片膝と片手を畳に手を付けた状態で、顔を上げずに話す。

 話を聞いた徳川は、開いていた片目を閉じると溜息を吐く。


「では伊織に問います、貴方は再びその怪物達と対峙して勝利する事が可能ですか?」


 徳川は、恐らくは分かりきっているであろう質問を伊織へ向けて行う。

 当の伊織は、少し逡巡した後にこう答えた。


「勝利というのが決闘としての勝利であるのならば、難しいでござるなぁ……相手は両断しても尚死なぬ不死の怪物故」


「では違う形で問いましょう、どの程度の時間ならば稼ぎ続けられますか?」


 その質問に伊織の眉がぴくりと動く。

 そして口角を僅かに吊り上げる。


「そうですなぁ、一日位ならば凌ぐ事も出来ますが?」


「成る程、では一週間持たせなさい」


「ハハハ! 総理様は相変わらず無茶を仰るでござるなぁ!」


 徳川は伊織の言葉を聞き、その七倍の無茶を投げつける。

 すると伊織は笑みを作り、表の態度は悪態を吐きながら、内心は喜んでいた。


「では改めて貴方達に任を与えます、伊織、貴方は単独で北上しその怪物達を一週間の間、足止めなさい」


「ハハハ、御意に!」


 伊織は笑顔でその任を受諾する。


「次に半蔵、貴方には敵情視察を命じます、あらゆる手を尽くして敵の内情を探りなさい」


「御意」


「そして次に石元、貴方にも任を与えます」


 半蔵が返事をした後、このまま解散の流れかと思っていた石元は思わず驚く。


「わ、私にですか?」


「えぇ、貴方には天照様を連れてきて貰います」


 天照、という単語にその場に居合わせた四人の内三人が驚愕する。


「総理様、それは……!」


「えぇ~? ほんとにござるかぁ?」


「徳川様、本気ですか?」


 三者三様に言葉を発するが、徳川は首を縦に振り肯定する。


「本気ですし、本当ですし、撤回は致しません、あの方に出ていただきます、我々はそれに値する十分な供物を捧げました」


 徳川の言葉にはしっかりとした強い意志が滲み出ていた。

 そして今までに天照に捧げた供物や要望に答えてきたことを思いだす。


「話を戻します、貴方には天照様が居る岩戸……霊山富士へと行ってもらいます、そこで天照様を説得し一週間以内に伊織の救援へ向かいなさい」


「……御意に」


「では各自動き始めなさい、時間はありませんよ」


 石元が命令に同意すると、徳川以外の全員はその場を立つ。

 半蔵、伊織が席を立ち、石元も礼をして部屋を立とうとすると徳川が不意に呼び止める。


「石元……その、気をつけて」


「分かっています、徳川様、貴女の期待には必ず応えて見せます」


 二人はその言葉を交わすと、少しの間見つめあい、石元へ部屋を立つ。


「さて、私も今後の為に備えましょう」


 石元が部屋を出て行って数分の後、女中が襖を開ける。


「総理様、オギナワからマン=モン様がお目通りをとの事ですが……如何致しましょう」


「予定通りですね……彼女のがめつさにはある意味尊敬すら覚えます」


 女中の言葉を聞き、徳川は小声で呟く。


「通しなさい、失礼の無いように」


「はい、畏まりました!」


 女中はそう言うと襖を閉め、マン=モンを迎えに行く。

 暫くすると、何かの浮遊音が響く。

 その浮遊音は廊下を渡り、天守閣へと続く襖の前に着地したのか、廊下の床板と金属がぶつかる音が響く。


「ほな、ちょいと失礼しまっせ~」


 襖の奥から怪しい関西弁が響くと同時に、襖が開かれる。

 開かれた襖の奥には、下半身が土鍋の様な物体に入った女性が頭を下げていた。


「いやぁ、本日はお日柄も良くホンマに──」


「世辞は不要ですマン=モン、顔を上げて本題に入りなさい」


「あ、そうでっか? ほんなら早速本題に入るんやけども……」


 徳川の言葉に、マン=モンは営業スマイルを貼り付けたまま顔を上げる。

 そして下半身が入っているであろう土鍋の中から、一冊の本を取り出す。


「とりあえず、戦争用に米とか味噌、梅干とかの食料ぎょうさん買いまへん? 後はウチの商会の武器とか……何やったら傭兵とかも……」


 そして本を開くと、一方的に買わせたい商品の名前を羅列していく。

 そんないつも通りの彼女に、徳川は呆れた顔をする。


「相変わらずの耳の早さですね、そして一番に商談に来る速度……ある意味称賛に値します」


「お褒めに預かり恐悦至極にございます、っちゅうんやったか? まあ褒めてくれるんなら商品買うてーな~」


 徳川の嫌味に気づいているのかいないのか、マン=モンは笑顔で返すと再び商品を勧めはじめる。

 その言葉に、徳川は溜息を吐くと商談を開始する。

 そして結局商談が終わったのはマン=モンが来てから二時間後となるのだった。


「いやぁ~、徳川様はホンマ太っ腹やなぁ! 今後ともごひいきに! ほな、ウチまた別の商談あるんでこれで失礼しますわ!」


 商談が終わると、マン=モンは再び頭を下げると襖を閉める。

 そして土鍋の縁を両手で掴むと、土鍋は浮かび上がりそのままマン=モンは廊下を浮遊していく。


「ししし、いや~こない仰山買うてくれるとは正直思うてへんかったわ……ホンマ北から攻めてくるっちゅう奴等様様やな」


 マン=モンは先ほどの商談の事を思い返し、一人でほくそえむ。


「しっかし……あない大量に武器や食料買い込むなんて、よっぽどの奴等なんか?」


 ふと、風が頬を撫でている事にマン=モンは気づく。

 物思いに耽っている内に、江戸城の外に出ていたのだ。

 外には彼女を運んできた商隊が並んでおり、彼女の帰還を待っていた。


「おぉ、マン=モン様、どうでした? 今回の商談は!」


 商人の一人と思わしき男が走り寄ってくると、マン=モンは笑みとピースサインで返す。


「ウチを誰やと思うてんねや、マン=モン様やで? 今回の商談も大成功や!」


 その言葉に商人の男は喜ぶ。


「とりあえず米に味噌、戦争に必要な武器や食料、それに素材、兎に角ありったけや!」


「アイアイサー!」


 マン=モンは商人の男へと指示を飛ばす。

 すると男は振り返り、商隊の元へと走っていく。


「しっかし北から来る敵か、もしここの連中が負けたらそん時の取引相手はそいつ等になるわけやし……よし!」


 一人思案を重ねると、突然マン=モンは手を打ち鳴らす。


「ウチの目ぇで確かめてやろうやないか! その北から来る連中っちゅうんを!」


 そしてその日の内にマン=モンは東京の北、札幌へ向け移動を始めるのだった。


──────────────────────────────


「いやぁー! 私の珠のお肌がぁーーー!」


 富士の洞窟の中に、ベルの悲鳴が響き渡る。


「え~、絶対焼けた方が似合うって~、ほらほら~♪」


 妙に明るい声が聞こえたかと思うと、洞窟全体が明るくなる。


「そんでそんで~、日焼けして~、アマちゃんと日光浴してぇ~ちゅっちゅしましょ~?」


「いやぁーーー! だ、誰かーー! 助けてくださいましーーー!」


 そんなやり取りを、ベルは霊山として名高い富士山に連れて来られてから幾度と無く繰り返してきたのだった。

 そして、そのやり取りは彼女が救われるまで続く。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 日焼けなんて美容の敵ですわぁぁーー!!」



書き終わってから部隊を送っている描写をしていないことに気がついたので初投稿です

少しくらい…バレへんか


次:改めて制圧した街へ部隊を送ったら


今更ながらここに書いているテキストについて説明


赤毛の剣士、アデル・レスディン ←キャラクターの名前 キャラクターのマナコスト→赤


クリーチャー;人間、兵士 ←そのキャラクターがどういう性質の存在なのか


レベルアップ (青OR緑OR黒OR白)←キャラクターが有する個人的なキーワード能力


レベル1 2/2

レベル2 3/3 先制攻撃

レベル3 4/4 飛行 警戒 先制攻撃

レベル4 5/5 飛行 警戒 先制攻撃 トランプル


1/1 ←斜線の左にあるのがパワー、右にあるのがタフネス

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