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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
53/207

東京侵攻について話し合ったら


「先輩……」


 部下が私を見る目は同情に満ちている。

 分かってる、私はそういう道を自分で選び、進んできたということは理解している。

 経済界というのは騙しあいの世界であり、昨日誰かを潰した人間も今日潰されないとは限らない世界なのだと。


「けど、見通しが甘かったかな……」


 まさか、自分が潰される日が来るなんて思っていなかった。

 覚悟もしていなかった。

 自分の資産が奪われていく、命を一瞬で奪われるよりも辛い、そして惨めな時間がこれからの私には待っているのだ。


 そんな風に魔族との経済戦争に負けた私は、二年ほどホームレスへと身を窶していた。

 惨めだった、かつてはアメリカに大邸宅を持ち言い表せない程の財や地位を持っていた私も今ではビニールハウスで雨風を凌ぎ、その日の糧を得るのに必死な生活だ。

 だがそんな境遇に陥っても尚、私は諦めていなかった。


「いつか、必ず……」


 再びあの世界に戻る事を。

 そして転機は訪れた。


「永村博太さん、ですね?」


 そのスーツの男は突然現れ、そして私にこう言った。


「我々と共に、世界を一からやり直しませんか?」



─────────────────────────────


MD215年 6/3日 11:54


「なるほどのう……中々面倒な事態になってしまったようじゃな?」


 渋い顔をした芽衣子は札幌市庁舎の執務室にて、永村から借り受けたタブレットを用いて通話を行っていた。

 タブレットにはコーヒーを飲む永村が映っており、その表情は若干暗めだ。


「えぇ、南方開拓先発隊は壊滅、その隊長は東京を治めるソウリと呼ばれる者の部下に攫われました」


 そして永村は溜息を吐くと。


「更にはその隊長を攫った人物が北方から来る者達を撃滅するようにとの指令を受け、襲い掛かってきたとのことです」


 芽衣子は改めて永村から報告を受けると、座っていた椅子の背もたれに寄りかかる。


「ふ~む、そこまで敵視されておるとはのう……実はお主らが何かちょっかいを掛けたとかではないのか?」


 芽衣子が訝しげな眼差しをモニターの向こうの永村へと向ける。

 永村はその眼差しに対して、首を横に振った。


「まあ情報収集についていったのが山坂君だし、そう言われても仕方が無いとは思いますが今回は違います」


 と、永村は後ろへ振り返る。

 そこには山坂と田崎がペスを伊織に破壊された事に対する言い争いを繰り広げていた。


「だーからー! 俺は悪くないって言ってんだろうが! 大体あんな化け物相手に調査用の素体でなんて戦えるか!」


「だがお前が余計な事言わなかったらペスが壊れる事は無かったんじゃねえのかって言ってるんだよ!」


「あぁ!? しらねえよそんなもんは! 俺は未来が見えるわけじゃないの!」


「てめぇ人の物ぶっ壊しておいてなんだその態度は!?」


「僕じゃないですぅ~、壊したのはあの侍もどきですぅ~」


「てめぇ!」


「やんのかおらぁ!?」


 そして二人はそのまま取っ組み合いを始めてしまう。


「まあ、あんな感じでして」


 永村が芽衣子へ見えるようにタブレットの位置を調節し、二人の喧嘩の様子を見せる。


「なるほどのう……ところであの二人、止めなくてもよいのか?」 


 芽衣子はタブレットを覗き込んだ後、永村へ質問する。


「大丈夫です、あの二人はいつもああやってイチャイチャしてますから」


 特に心配などしていない、これが日常の光景であるとでもいう風に永村が答える。


「イチャイチャのう……? まあお主がそう言うならいいんじゃが」


 困惑した表情で奥の二人を見た芽衣子は、自身を無理やり納得させると別の話題へ切り替える。


「しかし困ったのう……トウキョウの者達に目を付けられているとあってはその者達が攻めてくる可能性もあるのではないかの?」


 芽衣子はタブレットの横に置いてあるサツホロ周辺の地図へと目を向ける。

 地図にはサツホロから南に向かって扇状に線が引かれていた。


「現在南方開拓はここサツホロから南方に扇状に行われておる、新たに再編した軍の者達と民間の者達によってな」


 芽衣子の言葉に永村も別のタブレットを手元に取り寄せると、芽衣子が持っている地図と同じデータを見始める。


「以前行った演説以後民間からの開拓団はかなりの数が開拓を行っているらしいですからね」


「うむ、現在はまだサツホロからあまり離れていない地域で活動しておるがもしトウキョウからこちらへ向かって攻めてくると言う事があるのならば……」


 その発言に永村は深刻な顔をする。


「折角開拓した場所が破壊、もしくは制圧されてしまいますね」


「そこは民間の者達に被害が出ると言う発言が欲しかったんじゃが……」


 そして永村の答えを聞いた芽衣子は、本日二度目の渋い顔をする。


「まあ良いわ、不本意ではあるが儂等はお主達の駒じゃからな、こちらの犠牲を気に掛けろとは言わぬ」


 芽衣子はそう言うと、自らの尾を動かして机の上に載っているペンを手元へ運ぶ。


「さて、それで問題となるのは彼奴等の侵攻があるのかどうか、そして無いとしてもどうやってトウキョウまで進軍するのかじゃな」


「現在の所確認できている情報としてはハコタテから南に進んだ場所、ムツシと呼ばれる村近くにペスを破壊した男が陣取っている様です」


 ペスを破壊した男、という響きに山坂が芽衣子と永村の会話へ割り込むように叫ぶ。

 田崎にコブラツイストを掛けられ、田崎の腕をタップしながら。


「なにぃ!? 陣取ってるって、もしかしてあの男まだ生きてんのか? あ、ちょ、痛い! 田崎ギブギブ! ロープブレイク!」


「あぁ、金剛石すら砕く爆発に耐えたのかどうかはしらないけど生きてるみたいだよ」


「なん……だと……あぁやばい! 折れる! 折れ──あーーーっ!」


「折った!」


 何かが折れるような音と悲鳴、そして田崎の勝ち誇る声が聞こえた後、永村は芽衣子へ話しかける。


「とまあ、話は横に逸れましたがムツシには現在その男が居るみたいです」


「うーむ……となるとそのムツシへ向けて軍を向けるのは止めた方が賢明か、そもそもそのムツシへ通る為に狭い地下通路を通る等自殺行為に等しい気もするしの」


 山坂と田崎のじゃれあいを完全に無視しつつ、芽衣子もまた話し始める。


「ではその反対方向、元々儂等が探す予定じゃったセイカントンネルとやらはどうなのじゃ? 其処を抜けた先には何かあるのかえ?」


 と右手で回していたペンをピタリと止めると、北海道地図の最南端をペンで指し示す。

 芽衣子の言葉を聴いて、永村は若干悩ましげな表情をする。


「うーん、そっちですかー……実はそっちにも何か居るんですよね」


 永村は説明に困ったように説明する。


「何か? 何かって何じゃ、まさかドラゴンでも居るとか言うわけではあるまい?」


「いや、実は軍隊っぽいのが居るのは確認できてるんですがその実体が分からないんですよね、数は1000人程度なのは見えるんですけどその個人個人を調べようとすると靄が掛かったみたいになるというか」


「ふぅむ……ではそやつらの部隊構成は分からぬが少なくとも千人程度の軍が駐留しているということでええのかの?」


「えぇ、それは間違いないかと」


「となると、進軍して戦う場合はそれなりにこちらの被害を考えないといかんのう」


 と、そこまで話すと芽衣子は椅子に思いっきりもたれかかる。

 その表情は気疲れしている様に永村には見えた。


「ふー…やれやれじゃなぁ、蟻の代替戦力確保も急務じゃがそれに加えて南方から進軍してくるかもしれない連中についても考えなければいかんとは」


 芽衣子が椅子にもたれかかるのを見て、永村もまた疲れたような顔をして同じように椅子へもたれかかる。


「ですねぇ、それに青函トンネルを使用して進軍するとして伊織という男が青函トンネル側の連中へ救援へ来ないとも限らない、考える事は色々です」


「じ、実は……代替戦力については案がある、ごはぁっ!」


 そこへ息も絶え絶えと言った感じで、床を這いながら永村に向かい山坂が近づいてくる。


「札幌地下に居た女王蟻の死骸や蟻の生態を調べてみたが、奴等を真の意味で飼いならすのは無理だというのが分かった」


 そして立ち上がると、空間に青白いウィンドウを開き山坂と田崎で調べていた蟻の生態についてのレポートを映し出す。


「連中は基本的には蟻だ、それを札幌の連中は巫女とやらを使って精神を操って制御している訳だ、そうだよな?」


 山坂はタブレットの向こう側に映る芽衣子へ向け、言葉を投げかける。


「……うむ、その通りじゃ」


 芽衣子は知られたくなかった、とでも言うような渋い顔をしながら山坂の問いに頷く。


「でだ、巫女が生きてる間は操れるが当然戦争となると誰かしら死ぬ、巫女が死んで突然乗ってる蟻が敵に回るのだけは避けたい、よって蟻は札幌の防衛以外には向いていない」


「じゃな、サツホロで蟻を操ると言うのなら儂一人で事足りる、ではその代替戦力はどうするのじゃ?」


「それを今から話すんだろうが、これは俺と田崎で話し合ったんだが……子機ドローンを使おうと思う」


 子機という単語に、永村が飲んでいたコーヒーを噴出しそうになる。


「ごほっ! げほっ!! ちょ、ちょっと山坂君!」


 コーヒーが気道に入ったのか、咽る永村。

 そして子機という単語に聞き覚えが無い為、首を傾げる芽衣子。


「あぁ、子機だ、まあ名前は蟻二号とかでもいいぞ、外見はこんな感じでだな──」


 山坂は永村を無視しつつウィンドウをずらしていき、子機のページを開く。

 それは大きさが2メートルほどであり全体的に色は白く、頭部は白骨に覆われたような形をしており、前足と後ろ足の計4本の足の存在が映っていた。 

 その子機はどこか蟻に似ていたが、しかし蟻とは違う生物と無機質の中間の様な存在に芽衣子の目には映った。


「ふぅむ……確かに大きさは問題なさそうじゃが、戦力としては使えるのかの? それに進軍速度なども色々とあるが」


「問題ないぞ、お前達が乗ってた蟻を参考に組み立てた子機だからな、乗り心地に関しては多少違和感はあるかもしれんが兵士達も大して訓練しなくても乗れるようになるだろ」


「ほほ~……そりゃええのう、では何時頃受け取れるんじゃ?」

 

「直ぐにでも送れるぞ、函館の方に送っておくから函館の連中に説明する手紙とか書いておいてくれ」


「相分かった、では早速作ってくるので通信を切るぞ~」


 直ぐにでも、と言う言葉を聞き嬉しくなったのか今まで渋い顔で話していた芽衣子の顔が明るくなる。

 そしてそのまま吉報の手紙を書く為に、明るいトーンのままタブレットでの接続を切るのだった。

 

「ふぅ……とりあえず大体戦力についての説明は終わったな!」


 そして通信が終わった後、エクィローでは仕事をやり遂げた顔をした山坂と今日一番の渋い顔をした永村が居た。


「あのさぁ……山坂君、子機使うって話は私聞いてないんだけど」


「言ってないからな、事後承諾って奴だ! と言うわけで承諾してください」


「えぇ……(困惑)」


 山坂の発言に永村は困惑した表情をすると、暫く考えた後に首を縦に振る。


「しょうがないなぁ、でもいいの? 子機は本来三神の……」


「別にいいだろ事前準備くらいは、……あの伊織って奴よりも強い連中が出てきた場合即座に起動しなきゃいけない事態があるかもしれんからな」


 山坂はそう言うと、少し目を閉じこの間の伊織との戦いを思い出す。


「田崎君とも話し合ったってんならいいんだけどさ、そういえばその伊織って人だけど足止めとかはどうやってするかは決めてるの?」


 永村は山坂の発言に思うところがあったのか、あっさりと引き下がるとそのまま話題を変えることにした。


「さっきの話だと代替戦力として子機を渡すってのしか決まらなかったけど、結局方針はどうするんだい?」


「それなんだが、実は子機に水上歩行機能を付けておいた」


「はい?」


 さらりと出た水上歩行という言葉に思わず永村が問い返す。


「なのでだな……青函トンネルを使わないでそのまま直接水の上を渡って夜に中泊まり町を攻めるという手を取るのはどうだ?」


「あー……いいんじゃない? よく考えたら前回の札幌攻めは私がやったし次は山坂君が好きにやればいいんじゃない?」


「ああ! で、あのクソ侍を足止めする方法だが……予見者と獅子を出そうと思う」


「随分大盤振る舞いするね」


 山坂は首を横に振り、これでもまだまだと言ったモーションを示す。


「実感としてこれ位出してもまだ足りないとは思うがな、まあ足止めには最適だろう」


「なるほどね、それじゃあ私は田崎君と一緒に見学してるかな」


「フハハハ! 指を咥えて見ているが良い! あのクソ侍は絶対に殺す! いざとなれば凧形二十四面体を使ってでもな!」


「そうさせてもらおうかな、ところでその右腕さっきからずっとブランブランしてるけど大丈夫なの?」


 と永村が山坂の右腕について指摘する。


「ふふふ……駄目に決まってるだろ! 医者を呼んでくれ!」


 そして、その日の内に子機は函館へと届けられ、今後の方針についても決まり中泊まり町侵攻への準備が始まるのだった。



シャドバのアリーナばっかりやってて執筆が滞って申し訳ナス!許してください!何でも(ピック)しますから!

次:シノビに出会ったら


服部半蔵  青黒白


クリーチャー:人間・忍者


瞬速、接死


服部半蔵が戦場に出た際、クリーチャー一体を対象とする。貴方はそれを追放しても良い

そうした場合、そのクリーチャーを次の終了ステップの開始時に戦場へ戻す

白黒:服部半蔵を追放する、次の終了ステップ開始時に服部半蔵を戦場へ戻す

3/3

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