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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
東京侵攻編
47/207

久しぶりに主人公達の出番が来たら

MD215年 5/29日 09:30


「いやー、久しぶりに僕達の出番だな!」


 エクィロー内部のメインルームにて、山坂が腕を回していた。

 メインルームにはいつもの3名が集まり、山坂だけが張り切っていた。


「鬱陶しいぞ山坂、やめろ」


「うん、ウザイ」


 田崎、永村の両名に罵られると山坂はしょげた顔をして、椅子へと座る。


「うぐぅ、何もそこまで言わなくても……」


「とはいえ久しぶりに仕事があるのは良いことだが、最近は漫画読むかアニメ見るかゲームするかしかしてなかったからなぁ」


 山坂が座ると、田崎が腕を組みながら首を縦に振る。

 事実、ベル達率いる南方開拓先発隊が出発してからというものこの3名の仕事は殆ど無く、暇を持て余していたのだった。


「いや僕はそれなりにやることやってたけどね?」

「札幌の市長に指示出したり」


 暇なのは君達だけ、という視線を永村は二人で送るが当の二人は知らぬ存ぜぬと言った態度で流す。


「ま、仕事があるのは良いことだ! 労働の喜びだよ田崎君!」


 山坂は田崎の肩を叩くと、メインモニターへと向き直った。


「あのさぁ……」


「はいはい、さっさと仕事しちまおうぜ、永村」


 そして残りの二人もまたメインモニターへと向き直る。

 メインモニターにはビルが突き刺さったベイロスの死骸が映されており、また函館の破壊の跡が見て取れた。


「おぉ~、こりゃ凄いな」

「動画で見させてもらったが、このベイロスって生物のやばさも相当だがこいつにビル突き刺した奴もクソやばいな」


 山坂は腕組をしながら目を閉じ、動画を見たときのことを思い出しながら話す。


「まあ個人的にはベイロスに単身挑んだあの女隊長も大分頭おかしいと思うが……」


「意地とか誇りって奴じゃないの? 死んだら終わりなんだしさっさと逃げた方が良かったと思うけど」

「あぁでも、あそこで彼女が時間稼がなかったら回収した生存者達は死んでたかもしれないし結局適切な判断か」


 田崎は肩を竦め、永村は冷めた視線で意見を述べる。


「ま、ともあれまずは状況把握から始めるか」


 山坂が手を打ち鳴らすと、メインモニターに仔細な報告書が現れる。


「今回は俺が仕切るぜ、前回前々回はお前等やったからな」

「では第五回管理者会議はじめまーす」


「「いぇー」」


 山坂の仕切りと声に、二人は手を上げると会議が始まる。


「んじゃまず最初にだが、どんだけ被害出たんだ?」


「えーっと、生存者が11名、死亡者が18名で行方不明が一人だね」

「死亡者のうち四人は行軍中に、残りは函館で死んだみたいだよ」


 山坂の問いかけに永村がタブレットを操作し、詳細なデータを読み上げる。

 其処へ田崎からの疑問の声が上がる。


「行方不明ってのは?」


「あれ? 田崎君動画見てないの?」

「ほら、ベイロスと戦ってたのが居たでしょ、あれが最後に隊長の女性を攫っていったんだよ」

「だから行方不明者一名」


 はー、と田崎は納得して息を吐く。


「なるほどなぁ、いや動画は実は見てないんだ」

「どうせお前等が見ると思ってたからな」


「うーむ、駄目人間ですな、まあお前には期待していなかったよ僕は」


 田崎の発言に、だろうなぁと言う目を送る山坂。


「はいはい」


「んじゃ次は連中が函館までに辿った道だが……どうだ? 町とか村に使えそうなもんはありそうか?」


 山坂が田崎へと質問すると、田崎は難しそうな顔をする。


「ん~、正直微妙だな」

「八雲町はあのベイロスとか言うのに完全にぶっ壊されてるし、森町に居たっては完全に消えてるし」

「何かあるとしても七飯町か……もしくは函館のまだ無事な建物の中だろうなぁ」


「あぁ、その消失してた森町についてだけど」


 と永村が田崎の言葉に割ってはいる。


「実は監視衛星がその時の映像を記録してたみたいでね、ちょっと動画に流すよ」


 そしてメインモニターに動画が流れ始める。

 動画には昼間の上空から映し出された森町が映っている。

 だが数秒後、映像が乱れると動画が終了する。


「「は?(威圧)」」


「「え、何この動画は……(困惑)」」


 田崎と山坂は永村へと困惑した表情を投げかける。


「まあ、ちょっと待ちなよ二人とも、町だけに」


「「死ね」」


 永村の冗談に、二人が真顔で答えると同時に再び先ほどと同じ動画が流れ始める。

 だが今度は動画は拡大されており、とある一点を映し出していた。

 其処には白い服を着た黒髪の女性が映し出されており、その女性は明らかに宙に浮かんでいた。

 そして、その女性が掲げていた右手を振り下ろすと映像が再び途切れる。


「って感じ、この女性が手を下したのかは分からないけど少なくとも町の消失に彼女が関わっている可能性は高い」

「それと森町が消失した原因だけど……解析の結果、どうやら大量の熱で蒸発したっぽいんだ」


「蒸発?」


「うん、町について調べてたんだけどビルの残骸とかがどう見ても融解してるんだよね」

「そしてそれは中心部から町の端に続いている、つまり球形の物凄い熱の塊みたいなのが町の中心部に落ちて其処に住んでた連中を根こそぎ蒸発させたっぽいんだ」


 田崎が聞き返すと、永村は手に丸を作り、それを机の上に落とす。


「末恐ろしいな、核弾頭もかくやって感じか」

「ん? だがそんな事があったのに他の札幌の連中は知らないのか?」


「みたいだよ? 少なくとも市長は知らないって言ってた」


 山坂が問いかけると、永村は首を横に振る。

 タブレットを用いて札幌の市長、芽衣子へ連絡を取り尋ねては見たが……彼女は長万部町以南については何も知らないと答えたのだとか。


「ふーむ、とりあえずこれについては調べておかないとまずいな」

「んじゃ次に移るか、えーっと何処まで話したんだったか」


「確か使える物があるかどうかだな、これに関しては現地で発掘作業をしてみないと分からん」


「OK、了解した」

「ならその発掘作業は現地の魔族どもにやらせるとするか」


 その発言を聞いて、田崎、永村の両名は驚いた顔をする。


「本気か?」


「どういう心変わりなわけ?」


 その二人の顔に、思わず山坂も驚く。


「何だよ悪いのかよ、連中に任せたら…」


「いや、いいけど意外だなーと思って、君魔族の事毛嫌いしてたし」


「まあ嫌いだが……危険な作業をやらせるんだったら魔族でいいだろってだけだ、この間の演説で民間開拓団ってのを作ってもいいって話してたしな」

「そういう民間の頭の悪い連中に作業やらせれば事故で死んだりしてもこっちは損失0なわけだし、っていう考え」


 その発言に二人は感心すると、同時に山坂の両肩に手を置く。


「そうかそうか、お前もついに成長したか……」


「いやぁ実に合理的な判断だと思うよ、これでもう少し効率的に物事が運ぶね!」


「うぜぇ」


 二人の行動に山坂はうんざりしながら、発掘作業を現地魔族に委ねることに決定するのだった。

 そして二人の手を払いのけると、山坂は次の話題へと入っていく。


「さて、んじゃ最後の議題だが……生存者の連中に補給して連中だけで再度調査に向かわせるのか、帰還させるのか、其処を決めるか」


 そう言うと、山坂は机の上にあるコーヒーへと手を伸ばす。


「生き残りは11人、現在は函館で治療中」

「先に進ませるにしても戻らせるにしても中途半端な戦力だな、こっちが予備戦力としてソーレンを同行させるってのは?」


 田崎が椅子の背もたれに寄りかかりながら、天上を見上げる。


「それは却下、こっちはあくまでも兵站線の確保しかしないって話で通してるからね」

「あんまり甘い事するとあっちも付け上がる可能性があるから駄目」


 永村がタブレットを弄りながら田崎へと釘を刺す。


「となると、札幌市長へ連絡して函館に居る連中に増援を送ってもらうしかねーか」

「その間の函館の防備等はソーレンが受け持つ、それでいいか?」


 山坂の声に、二人は声を合わせる。


「「異議なーし」」


「んじゃ第五回管理者会議はこれで──」


「申し訳ありません、提案をさせていただいてもよろしいでしょうか」


 山坂が会議を閉会させようとすると、メインルームに無機質な女性の声が響く。

 ペスの声だ。


「おいおい永村、今何か声が聞こえた気がしたんだが気のせいか?」


 山坂がコーヒーを机に置くと、永村の方へ前のめりになる。


「うん、確かに聞こえたね」

「ペス、管理者会議に君の発言権は認められていないはずだけど」


 永村もタブレットを操作する手を止めると、中空へ向かって発言する。


「申し訳ありません、しかしこれはご報告も兼ねての提案です」


「報告? それならこの会議の前に君から聞いてると思ったけど」


「はい、これは情報伝達後新たに得られた情報に関する報告です」


 三人のやりとりを聞いていた田崎は、椅子によりかかるのを止めると口を開く。


「いいんじゃねえの、別に報告くらい」

「提案ってのも報告と提案を兼ねて~とかそういう意味合いだろ」


 田崎のペスを庇う様な発言に、山坂はジト目で見つめる。


「相変わらずAIに甘いなお前」


「ま、其処が田崎君の良い所なんでしょ」

「個人的にはあんまりAIに入れ込むのは良く無いと思うけど」


 永村はタブレットを弄りながら冷めた感想を田崎へ飛ばす。

 二人に意見を言われると、田崎は再び椅子へともたれかかり椅子を揺らし始める。


「はいはい、わるうございました」

「んじゃあペス、俺が許可する、提案とやらを頼むわ」


 そして田崎が片手を軽く上げると、ペスが口を開く。


「発言の許可ありがとうございます、ではまず情報に関してですが函館駅地下から津軽海峡を横断する地下道がまだ通行可能であるとの報告を受けております」

「また提案に関してですがこれは函館に居る生存者の内、昏倒していた兵士一名からの行われたものであることを先に説明させていただきます」

「その兵士によると、攫われた隊長を救出すべく、何名かを救出へと向けたいとのことです」


「「却下」」


 ペスの発言に、山坂と永村が声を合わせる。


「助けに行く理由が僕等に無くない?」


「私も山坂君の意見に同じく、助ける事で得れるメリットとか何かあるわけ?」


 二人の冷淡な反応に、ペスが反論する。


「はい、助ける事によるメリットは先発隊隊長という人的資源の再利用、また攫われている間の情報などを得られる可能性があるということです」

「先に述べた地下道ですが、恐らくベイロスを討伐した人間が通ってきた道と考えられます」

「その人間を追う為に地下道を通り、救出作戦を展開する事は情報を得るという観点からも必要な行為かと思われます」

「隊長を攫った人間とも恐らく、南方開拓を進める上で何れ敵対する事になると予想されます」

「であるのなら、現状待機をさせるだけの人員をそのまま救出作戦、ないし情報収集へと向ける事は人的資源の有効活用にもなりえます」

「……いかがでしょうか」


 ペスは其処まで述べると、管理者達の反応を待った。

 そして管理者達の反応は三者三様であった。

 ちょっと悩む山坂、興味が無さそうな永村、椅子を揺らしている田崎。

 その三人の中で最初に口を開いたのは、田崎だった。


「いいんじゃねえか? どうせ待機命令しておくだけの連中だろ?」

「有効活用すりゃいいじゃねえか、それに現地の連中が行きたいって自分で提案してるって話だし」

「何が問題あるんだ?」


 田崎は腕組をし、二人へ話しかける。


「そんなん……どうせ失敗するに決まってるからだろ」

「よく考えてみろよ、11人だぞ?」

「奴等の平均戦力は1/1だ、あのベイロスにも勝てないような連中を更なる化け物退治に向けてどうするよ」


 山坂は右手のコーヒーを持った手で田崎へ指を指しつつ、左手を横に振る。


「別に救出作戦であって必ずしも戦うって訳じゃないだろ、それに情報収集に務めるだけってのでもよ」


 山坂の指差しにいらついたのか、田崎が椅子を揺らすのを止め、机に前のめりになる。


「うーん……、まあ使える人手を遊ばせておくのは勿体無いし、情報収集だけに納めるってんなら私は賛成しても良いけど」


 永村はタブレットを操作する手を止めると、顔を上げて二人へ話しかける。


「ほらな! 普段は冷酷に見える永村君でもこういうときは話分かってくれんだよ~」


 永村が同意したのに気を良くしたのか、田崎は山坂へと指を突きつけると勝ち誇ったような顔をする。


「まあ同意はしてもいいよ、でも田崎君、えらくペスが持ってきた提案に肩持つね」


 永村はその田崎の勝ち誇った顔へと顔を向けると、問いかける

 その言葉に、田崎は多少困った顔をするが。


「あー、あれだよ、何ていうかやる気出してる連中の提案ってのが気に入ってよ」


 直ぐに誤魔化す事に決める。


「ふーん……まあいいや、んじゃ私は賛成ってことで」

「反対1、賛成2だけど山坂君まだ反対する?」


「え? 何? 俺悪者みたいな雰囲気?」

「はいはい分かりましたよ、賛成します賛成」


 永村が賛成へと回った事で、反対派が一人になり居た堪れなくなった山坂は渋々賛成へと意見を変える。


「んじゃあ、現状函館で暇してる11名の内何名かを情報収集へと向ける」

「情報収集へ行く人間は現地の奴が決める、こっちからは人員は出さない、救出作戦については許可できない」

「これでいいなー?」


 山坂が気だるげに片手を上げ、提案を纏めると二人へ顔を向ける。


「「異議なーし」」


 こうして、第五回目管理者会議は終了した。

 そして後日、函館から3名が情報収集へと派遣される事になるのだった。



次:情報収集へ出かけたら

深夜1時だろうとなんだろうと更新は更新なので初投稿です

MTGのプレリリースへ参加していて更新が遅くなった事に関して僕は謝りません、2位でした(自慢


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