ご神木様の倒し方を思いついたら
「そんな…村が…み、皆が…!」
私はその一部始終を見ていました、巨大な何かが暴れる様を。
村の皆が殺されていく様を、私はただ呆然と見ていることしか出来ませんでした。
その時、ご神木様が呟きました。
「ふむ、金属と木材の複合戦車か……千年前の遺物だな、奴らの時代は終わったというのに哀れなことよ」
「…センシャ? ご神木様、あの化け物について何か知っているんですか?」
聞きなれない単語を聞き、思わずそう聞いてみた。
聞いてみたところで、私に何が出来るわけでも無いけれど…。
「うむ、あれは戦車…正確にはロボットというべきか。 ともあれあれは…千年前に使われていた兵器じゃ、人や魔族を殺す為のな」
私にそう説明するご神木様の声は、何処か呆れたような、悲しいような声をしていました。
「よもや今更蘇ってくるとは思っておらんかったが…それに…1000年前とは随分格好が変わっておる」
「ロボット…兵器…? 千年前?」
「今の世には不要且つ忘れ去られた単語じゃからな…お主の理解が及ばぬのも無理は無い。 兵器というのは要するに武器のことじゃ、ロボットというのは……まあゴーレムみたいなもんじゃな」
兵器は武器…、ロボットはゴーレム…千年前…。
「って言う事は、千年前のゴーレムが蘇って襲ってきたってことですか!? でも、何で村の皆を…酷すぎます!」
ご神木様の発言を元に情報を整理し、問いかけてみる。
もしそれが本当なら、酷すぎる…私達はただ平和に暮らしていただけなのに…皆三日後のお祭りを楽しみにしていたのに…!
「それはなアレーラ、あの戦車が製造された理由がワシら魔族を皆殺しにする為だからじゃ…千年前大きな戦争が起きたと言う事は知っておるな? その戦争の理由は人間が魔族を恐れたからなのだ」
恐れた?
どういうことだろう……今は皆、仲良く生活しているのに。
「当時人間と魔族の格差…この差というのは身体能力や魔法の習得…本来人間が得られない物を得たということの差、その差を人間は妬み、恐れたのじゃよ。 故に人間はその差を埋める武器としてああいった戦車を作り、魔族と戦争を起こした」
「そんな…!」
知らなかった、千年前人間と魔族はお互いに文明を捨てなきゃいけない程疲弊することが起きたというのは聞いていたけれど…。
そんなことが起こっていたなんて…でも!
「で、でも!今は皆仲良く暮らしてるじゃないですか! 魔族も人間も関係なく! そんな千年前の事なんて…!」
ドゴォォン!
その私の問いかけにご神木様が返す前に、強烈な地響きと地面を踏みしめる音が響きました。
「どうやら此処へ来るらしい…アレーラ、馬と一緒に社の中へ入りなさい、大丈夫…お前はワシが守ろう。 その後ワシと二人で村の皆の弔いをして…二度とこんな事が起きないようにしなければならんの」
「ご神木様……はい!」
ご神木様、あれと戦う気なんだ…。
先ほどの問いかけの答えが欲しかったけれど、今はその戦いの邪魔にならないようにしないと…!
私は轟音に怯えきった馬を社の中へ引き入れ、戸を閉めました。
戸を閉めると、社の前の地面から複数の巨大な根が生えてきて社を完全に覆いました。
「これで社は守れるじゃろう……それにしても戦車か、千年前の憎しみに未だ捕われている物が蘇らせたのか、それとも何処ぞの遺跡潜り(モグラ)達が起こしたか…」
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バキバキバキと木が倒れる音が聞こえる。
死に行く若木達の声が聞こえる。
徐々にその死の声が近づいて来る──そして見えた。
「ほう…近くで見ると中々の大きさじゃな」
正面から見たそれは初見で言うならば赤ん坊じゃった、鉄で出来た巨大な赤ん坊。
その赤ん坊の両肩からは巨大な金属の刃物が一本ずつ飛び出ており、前足や顔と思われる部分には村の住人達の物と思われる血がこびりついていた。
「止まれ!古代の遺物よ!今はお主が居るべき時代ではない!それ以上踏み出すならば──」
古代の戦車に無駄とは分かっているが呼びかけを行う、千年前…最早覚えている物など極少数であろう言葉を。
ああいった類の戦車には言語を解する能力など有していない事は承知だが、この時は声を掛けたくなった。
その時ザザ ザザ ガーピー という音が響いた後。
「ヌッ!ヌヌッ! おい! おいおいおい! 田崎! 永村! 今の聞いたかおい! 止まれだってよ!」
という声が戦車から響いてきた
……人間の声?
「止まれだぁ!? 化け樹木如きが舐めた口ききやがって! 霊力吸って喋れるようになった程度で調子乗ってんじゃあねぇ! だが驚いた! ほんとに千年経ってるんだよな? まだ日本語を話せる奴が居るとは思わなかった!」
化け樹木…とはワシのことか、それに千年を経過している、日本語…。
もしや…この声の主は千年前の人間か?
ワシが思案していると戦車が右足を踏み出す音が響いた
「まあどうでもいいんだがなぁ! どうせ魔族は皆殺しだ! 行くぜぇクソ化け物! 楽しませろよなぁ!」
今度は左足を踏み出す音が。
「…警告はした、お主たちが何者かは知らぬが皆殺しという言葉を聴いた以上抗わぬ訳には行くまい」
ワシは根を地面から複数出し、戦車の4本の足目掛けて横薙ぎに振るった。
容易くは当たるまいが──まずは小手調べ。
ガァン!
だが現実は容易く──横薙ぎに振るった根はそのまま戦車の足を掬い、真横に転倒する。
「……油断を誘う為の演技か? ともあれ倒れたのならこのままマウントを取らせてもらうとしよう」
そのまま伸ばした根を倒れこんだ戦車へ叩きつける、何度も何度も。
根を叩きつけるたびに戦車の金属がへこみ、破壊されてゆく。
もしかして、本当に転んだのか?こやつ…。
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「しぃまったぁ! 転んだ時に起きるシステム組み込み忘れた」
「「は?(威圧)」」
白い部屋──部屋の中央にはホログラフィックで作成された地球儀と巨大なモニター。
そしてそのモニターの前で、往年のゲーム機のコントローラーの様な物を操作する白衣の男一人とそれを眺めている男二人が居た。
「いやー自動殺戮モードだと姿勢制御とか勝手にやってくれるからそもそも転ばないんだが今手動だもんね、転ぶって選択肢入れ忘れてた」
「「あのさぁ……」」
「フハハハハハハハ! まあいいじゃねーか! 格好悪いけど! おもしれーし!」
「これだからジョニーは……」
コントローラーを握る男の右隣で眺めていた男が言った。
この男の名前は田崎龍次、身長174センチ、黒髪スポーツ刈り、体重84キロの男。
「一番槍は任せろとか言うから任せたのにこれとかあのさぁ……もっと真面目にやれないわけ?」
コントローラーを握る男の左隣で眺めていた男がやれやれと言った感じで言った。
この男は永村博太、身長175センチ、黒髪ぼっちゃん刈り、体重64キロの男。
「そんな責めなくてもいいだろ……傷つくんですけど」
コントローラーを握る男が言った。
この男は山坂憲章、身長174センチ、黒髪で天然パーマ、体重45キロの男。
この三人こそが千年前不老手術を受け人類の未来を担った男達……人類の管理者である。
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暇つぶしで書いているので更新頻度はマチマチです
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