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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
34/207

名前を決めたら

MD215年 5/7日 AM10:03


「で? 君等昨日は何やってたの、会合にも来ないで」


 永村は厳しい顔をして二人を糾問する。


「いやーすまん、迷ってなぁ……」


「こいつが道を碌に調べもしないで進んだのが悪い」


「てめぇ! お前だってお前が決めたんならきっとそうなんだろ、とか言って付いてきたじゃねーか!」

「僕だけのせいじゃないだろぉ!?」


 永村の糾問に山坂と田崎は言い争いを始めてしまう。


「はぁ……分かったよ、それで二人で夜まで街をブラブラしてたのね?」


 永村は呆れた顔をする。


「ぬっ、ただ街をブラブラしていただけと思われるのは心外であります!」

「ただブラブラしていたのではなく、めちゃくちゃブラブラしておりました!」


「えー、それではこれより第四回管理者会議を行いたいと思います

「……四回目だったよね?」


「スルー!?」


 山坂の言葉を無視すると永村は管理者会議を始める。


「覚えてない」


「右に同じ」


 田崎が答えると、机に突っ伏した状態で山坂も答える。


「うーん、回数は割りと重要なんだけど……まあいいか」

「じゃあ会議始めるよー」


 永村はそう言うと手元のタブレットを操作し始める。

 人類保護用施設エクィロー、そのメインルームに管理者達は会議の為集まっていた。


「で、議題だけどまずはサツホロ……要するに札幌だね」

「ここの市長から提案された要求をどの程度飲むのか、後は今後の方針をどうするのか決めなきゃいけない」


 永村はそう言うと、タブレットの画面をメインルームのモニターへと転送し大画面へ映す。

 其処には以下の様な項目が書かれており、それを見た田崎と山坂はげんなりした顔をするのだった。


・1 戦闘によって発生した物的、人的損害の補償、又は補填

・2 戦闘によって失った女王蟻に変わる代替戦力の補填

・3 意思疎通をスムーズに行う為の大使、またはそれに準ずる者の派遣

・4 白化現象への説明

・5 虐殺を行った理由とその釈明


 ……等他にも様々なことが書かれていた。


「めんどくせー……つーか要求項目凄いなこれ、蟻の女王を失ったことによる代替戦力の補填要求とか何だこれ」


「こっちは破損した建物や商品の補償要求とかだぜ? 戦いに勝ったのどっちかわかんねぇなこれ」

「こんな要求呑む必要あるかぁ? 僕たち戦勝者側だぞ?」


 田崎と山坂が口を揃えて不平を言う。


「そもそも山坂君が余計な事言わなかったら戦いにはならなかったかもしれないんだよなぁ……」

「そりゃ私の交渉態度が悪かったのは認めるよ? けど明らかに交渉を妨害した君の方が悪いでしょ」


「お、何? 誰が悪かったか競争する? 負けないよ?」


 永村の言葉に山坂は上体を起こすと永村と向き合う。


「よせよせお前等、全員悪かったでいいだろめんどくさい」


 永村と山坂の言い争いの気配を感じ取った田崎は仲裁に入り、二人を落ち着かせる。


「とりあえずまずはこの札幌……じゃなくてサツホロか?」

「こいつらの要求を通すかどうかだけ決めようぜ」


「しょうがねぇなぁ(孫悟空)」 


「ま、そうしようか」


 田崎の仲裁により二人はモニターへと顔を向け、話し合いの姿勢に入る。


「んじゃこっからは俺が仕切るぞ、まず1番目についてだがこいつはどうする?」

「因みに俺はやっても良いと思ってるぞ」


「私は良いと思う、開戦の理由はともかくとしてこちらが与えた被害の方が大きいしね」

「今後建前上ではあるけれど協力関係を続けていく上で必要だとは思う」


「気分的には気に入らないが必要だとは僕も思う、とはいえやるとしても最低限度でいいとは思うが」

「何から何まで修理しちまうと連中が僕たちに全部任せればいいや~って気分になられると困るしな」

「最低限度の補修でこちらへの不満を募らせてやればそれをバネに連中も色々と頑張るだろう」


 永村が発言し、山坂がその意見に賛同する。


「んじゃ全会一致だな、どの程度の規模でやるのかはまた後で決めよう」

「次に二番目だが……なぁ永村、俺等戦闘中は遊んでたから良く知らないんだがこの女王蟻を失ったってどういうことだ?」


「あー……全部説明すると長くなるから掻い摘んで話すけど、札幌の龍脈部分が要するに女王蟻だったんだよ」

「で、巨大戦車で女王蟻に楔を打ち込んだんだけど多分その際に死んじゃったんじゃない?」


「「はえー……」」


 田崎と山坂は同時に感嘆の声を漏らす。


「龍脈って生き物にも出来るのか……」


「つーことはこの代替戦力の補填ってのは……」

「女王蟻が居ないから今後蟻が増えないのでどうにかして蟻の代わりの兵器を補填しろ、ってことか」


「蟻の親玉殺されたから補填しろっつーのも横暴な話のような気がするなこれ」

「つーか蟻って普通女王が居なくなっても違う蟻が女王になるんじゃなかったか?」


「えーっと…その種にもよるはずだけど普通はそうだね、女王が4匹とか居る種も居るみたい」


 永村がタブレットを操作し、蟻について検索を掛け答える。


「だよなぁ? ってことはこれは別にいいんじゃねーの?」

「もし仮に女王が二度と生まれないんだとしてもそれはその時考えておけばいいし」


「だな、というわけで2番に関しては却下の方向で俺は賛成」


「うーん…私は保留かな、今札幌に居る蟻の生態とかが分からないから其処を調べてから結論出したい」


「却下1、保留1か……なら俺は保留に入れておくか」

「別に今すぐ戦力の増強が必要って訳でもないしな、色々準備してる間に蟻についても調べておくか」


「よーし、じゃあ次は3番目についてだが………」


──────────────────────────────


「うっし、じゃあ纏めるぞー」


・議題1,については最低限の補償行う

・議題2については蟻の生態を解明してから

・議題3については外交用に特別設計したロボを送り込む、インターフェースはペスを用いる

・議題4、5については建前上の理由を説明して本当の理由は伏せる


「以上! お疲れ!」


「やっと終わったか……、疲れた」


 バタッと山坂が机に突っ伏す。

 山坂が突っ伏すと田崎と永村は同時に伸びをし、声を上げる


「ん~~……ちょっと休憩するかぁ?」


「だねぇ……お茶でいい?」


 永村は机に置かれていた急須から湯飲みへお茶を注ぎ始める。


「おう、ありがとよ」


「うむ、貰ってやろう」

「ありがたく思うのだ」


 二人はそのまま湯飲みを永村から受け取ると永村が切り出した。


「ところで君達、昨日は何してたの?」

「まさか本当に街をブラブラしてただけじゃないよね?」


「失敬な、さっきも言っただろ? めちゃくちゃブラブラしていたのだ!」


「で、実際はどうだったの? 田崎君」


 山坂が語気荒く返すが永村はそれをスルーし田崎へと問いかける。


「えぇ? あー……まあ街中の状況見て回ってたか?」

「どんな魔族が居るのかとかどの程度の技術レベルなのかとか?」


 田崎は気の抜けた返事をすると昨日の出来事を思い返す。


「ふーん……」


「あぁ、後言い争いというかそんな事もしたな」


「言い争い? 田崎君と山坂君で?」


「いや、現地魔族とだな」


 言い争いと言う言葉に永村が反応し尋ねると田崎が答える前に山坂が割って入る。


「僕等が最初に襲った村があるだろ? あそこの生き残りが札幌に居てな」

「何で村を襲ったんだとか人としての良心の呵責は無いのかとか吠え立てられて」

「まあ大した話でも無いだろ、言い争いってレベルでもないし」


 と永村へ説明すると山坂は肩を竦める。


「しかしお笑いだな、魔族に人としての~とか言われるなんてよ」

「人間もどきが自分を人間だと思っていることの何と滑稽な事よ」


「ま、確かに僕等の定義では彼等は人間じゃあないね」

「とはいえあんまり余計な諍いとかはやめてよ? 彼等には僕等の駒として働いて貰わなきゃいけないんだから」


「うむ、確かに」

「気をつけるとしよう、ヌハハハハハ! 魔族なんて皆殺しよ!」


「ハハハハハ」


 永村と山坂が笑い合い、その二人を田崎は何ともいえない顔で見ているのだった。


──────────────────────────────


「んじゃそろそろ最後の議題に入るか、ずばり今後どうするか……だが」


 と暫く3人で談笑した後田崎が湯飲みを置き、話題を変える。


「おっと、もうそんな時間?」

「それじゃあ残りの方針決めちゃおうか」


「えー…めどいでござるー」

「まあやるんだけど」


 永村と山坂は湯飲みを置き、姿勢を正す。


「じゃあ最後の議題だな、今後の方針についてだ」

「とりあえず札幌の制圧は終わったわけだが今後はどうすんだ? 北海道全土の制圧か?」


 田崎は手元のタブレットを操作し現在の世界地図をメインモニターへ映し出す。

 地図には北海道が映っており札幌の地点に赤い光点が出ていた。


「んー、私的には地盤固めをしたくはあるね」

「だから北海道全土の制圧……というか開拓をソーレンや札幌の兵士達に任せるのもいいかなと思ってる」


 永村はそう言うと手元のタブレットを操作しモニターに映る札幌を中心に矢印を北海道全土に伸ばしていく。


「開拓ねぇ……開拓しきるまで待つつもりか? つーかそんなに人員が居ないだろ札幌側に」

「僕としてはこのまま南下して青函トンネルだったか?」 

「2000年代初期に作られたトンネルを通って東北地方制圧に出たいんだが」


 山坂もまたタブレットを操作し札幌から南下する矢印を描き出す。 


「南下か……攻めに行くのは構わんが兵站とかはどうすんだ?」

「補給地点とかも作らないといけねえしよ」


「うーむ……流石に初っ端から補給無しにして兵士を使い捨てにするのも不味いか」

「なら永村の案と折衷して南部方面へ開拓しながら進軍していくってのはどうだ?」


 山坂はモニターに映る札幌からの光点に南側に放射状に矢印を書く。


「おー…いいんじゃねえか? 嫌いじゃないぞ俺こういうの」


「悪くないね、補給地点とかの設営にはソーレンを使うのかい?」


 山坂の意見に田崎と永村が色よい意見を言う。


「まあそうなるんじゃないか?」

「補給基地設営場所に事前に転移門でソーレンと物資を転移しておいて兵士達が来るまでに設営」

「その後は開拓作業や従軍行動に従事するでどうよ」


「うーん……普段の言動はクソだけどこういう時はやっぱり使えるね山坂君は」


「あぁ、普段はクソでどうしようも無い奴だけど有能な時もあるな」


「てめぇら貶したいのか褒めたいのかどっちなんだ」


 田崎と永村が感心し、山坂を褒めながら貶す。


「ったく……んじゃ札幌から南方へ放射状に青函トンネルまでの道を開拓しながら東北地方へ進軍する、でいいな?」

「補給基地の設営や開拓の手伝い等はソーレンが行う」

「これに賛成の奴は挙手な」


「「賛成ー」」


 山坂が纏めると挙手し、残りの二人も同時に挙手する。


「はい!じゃあ今回の議題はこれで終──」


 山坂が会議を終わらせようとすると、永村が思い出したように手を打つ。


「あ、ごめん、もう一個議題あったんだった」


「「えぇ……(困惑)」」


 終わりムードが漂っていた田崎と山坂の間に困惑ムードが流れる


「いやーごめんごめん、と言っても簡単な事なんだ」

「実は昨日札幌の市長と話してたときに私たちのことをどう呼べばいいのかって聞かれてさー」

「ほら、私達管理者として名乗ってるけどそれ役職でしょ?」

「一応国としての同盟関係を結んだから国としての名前を教えてもらいたいって言われてさ」


 永村の発言に田崎と山坂は顔を見合わせると。


「「そんなんエクィローでええやん」」


「決めるのが速すぎる……そんなに会議終わらせたいの?君たち」


「「当然です!!」」


 二人は同時に答え、永村は溜息を吐く。


「はいはい、んじゃ市長にはエクィローって名前で説明しておくよ」


「うむ、では他に何も無いな? ありませんね!?」 

「では会議終了! お疲れ様でしたー!」


 山坂は早口に会議の終了を告げると立ち上がり、小走りでメインルームの出口へ駆けていく。


「ふわぁ~……久しぶりに長話したから俺も疲れたぜ」

「昼寝してくらぁ」


 と田崎も立ち上がり出口へ歩いていく。


「はいはい、お休み」


「おう、お前も根詰めすぎるなよ?」

「んじゃあな」


 そして部屋には永村だけが残り、書類を纏め始める。


「うーん……結局僕一人で仕事する事になるのか」

「何か不平等じゃない? 楽しいからいいんだけどね」


 その後、永村の手により管理者達改めエクィローとサツホロの同盟関係は正式に締結され。

 本格的な日本制圧作戦が始まることとなる。


暇つぶしで以下略

次:街の復興を始めたら投稿します

モンティホール問題について納得できたので初投稿です

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