表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
32/207

自己紹介を済ませたら

MD215年 5/6日 AM9:00


 戦いが終わった翌日、管理者の3名は地上に居た。

 永村は市庁舎へとまっすぐ向かったのだが…


「オーイオイオイ」


「壊れてるわコイツ」


 残りの二人である山坂は座り込み悲しそうに、田崎は笑いながら自爆した巨大戦車…ワームもどきエンジンの前に立っていた。


「畜生!俺と田崎で一生懸命作ったこいつが壊されるなんて!」


「まあしょうがねえだろ、これも戦いの常だ」

「相手のほうが強かったってだけだろ」


 田崎は山坂の肩に手を置き慰める。


「ぬぐぐ……おっのーれ!やはり次は破壊不能なマシンを作る他あるまい!」

「じゃけん、さっさと会合終わらせて帰りましょうね」


 山坂はそう言うと立ち上がり、ワームの残骸から市庁舎の方向へ向き直り歩き始める。


「うーむ、前向きな奴……」

「ところで既に待ち合わせの時間に遅れてるんですがそれは大丈夫なんですかね?」


 田崎は若干呆れながらも山坂と同じ方向へと歩き出す。

 そしてその二人を護衛するようにソーレン達も歩き始める。

 その光景をサツホロの市民達は敵意を込めた眼差しで見ているのだった。


──────────────────────────────


「うーん、遅いなぁ二人とも……」


 二人がワームもどきエンジンを眺めていた頃、永村はサツホロ市庁舎の一室で残りの二人を待っていた。

 永村は時計を見るがやはり待ち合わせの時間を過ぎている……。


「申し訳ない、どうやら残りの二人は遅刻しているようなので私達だけで話し合いましょうか。」

「そういえば自己紹介がまだでしたね、私は永村博太と申します」

「一応経理や事務その他諸々を担当しています」


 永村はそう言うと立ち上がり、部屋に居たもう一人、芽衣子へ自己紹介を行う。

 芽衣子は手に持っていた湯飲みを机に置くと、閉じていた両目をゆっくりと開くと立ち上がる。


「ま、こちらは負けた側じゃし……面子の問題に関しては別に構わぬが」

「っと……自己紹介じゃったな、儂は芽衣子、んでこの隣に立ってるのが秘書のエンリコじゃ」

「一応このサツホロの街を治める立場に立っておる」


 芽衣子は隣に立つエンリコと自分の自己紹介を済ますと椅子に再び座りなおす。

 芽衣子が座ると永村もまた席に着く。


「なるほど、芽衣子さんですね」

「それでは今回は宜しくお願いいたします」


「うむ、こちらこそ宜しく頼む」

「しかしお主も中々苦労してそうじゃな?」


「はは……まあ少し」

「では始めましょうか」


 永村は頭を右手で抑えながら苦笑すると、脇に避けていた鞄から薄い金属の板……タブレットを取り出し目的の画面を探し始める。

 芽衣子は永村が取り出したタブレットを不思議そうに眺める。


「ん?あぁ、気になります?」


 タブレットでデータを探していた永村が芽衣子の視線に気づき顔を上げる。


「これはタブレットと言って、簡単に言うと物凄い便利な本みたいなものです。」


 と永村は掻い摘んで芽衣子にタブレットについて説明する。

 そして目的のデータを見つけたのか、永村は近くに待機していたソーレンへタブレットと手渡す。

 ソーレンは芽衣子と永村の丁度中間地点で、芽衣子の秘書のエンリコへとタブレットを手渡す。

 そして芽衣子はタブレットを受け取り、画面を見ると其処には管理者・サツホロ同盟という字が大きく書かれていた。


「さて、話し合うべきことは多々ありますがまずはこれから」


「ふむ…驚いた、何時の間にこの時代の字まで把握したんじゃ?」


 タブレットを受け取った芽衣子は、まずタブレット自体にではなく其処に書かれていた字について訪ねた。


「ま、色々と勉強したので……」


 永村は芽衣子の質問を軽く流す。


「勉強のう…しかし同盟か」

「儂の記憶じゃと同盟と言う言葉は、国家・団体・個人などが同じ目的のために同じ行動をとるように約束することだったと記憶しておるが?」

「武力で制圧された身としては同盟よりも不平等な条約を結ばされると思っておったが?」


「確かに我々は武力を交えました、事の始まりもこちらの落ち度ではあります」

「しかし私達としては最初に言った友好を望んでいるという言葉は嘘ではありません」


「なるほどのう……、つまり友好を望んでいると言った後に続いた全世界制圧と言う言葉も真じゃと?」


 芽衣子は椅子に持たれかかると、再び湯飲みを片手にお茶を飲み始める。

 

「えぇ、肯定します」

「それとタブレットのページのめくり方ですが指で画面を軽く押して、めくりたい方向へすーっと掃くように動かしてみてください。」


 永村は芽衣子の問いに答えるとスワイプの仕方を芽衣子に教える。

 芽衣子は教えられた通りにスワイプをすると、シュッという音と共にページがめくれ次の画面に映る。


「ほー、こりゃ凄い……これがあれば本の保存状態とか考えなくても良さそうじゃのう。」


 芽衣子はそう言うと次の画面を読み始める。

 其処にはこう書かれていた。


・1 我々管理者とサツホロの街は協力関係である。

・2 サツホロの街は管理者側が求めた場合、街を守る為の軍備以外の軍備を他国またはそれに順ずる領土制圧の為に兵を出す。

・3 兵站に関して、管理者側も出来る限りの支援は行うが極力サツホロ側が支出すること。

・4 侵略している国の抵抗が激しい場合(※激しさの度合いは後述)、管理者側がそれを打倒する。

・5 管理者側はサツホロ側の負傷者の救助や治療、制圧した地域の損壊した建物の修復等を行う。


※ 彼我兵力差が圧倒的な状況あるいは巨大生物等によって甚大な被害がこちらに見込まれる場合に限る。



 芽衣子はそれを読み終わると多少眉を吊り上げると、エンリコも同様の表情を取る。


「なるほど、不平等条約ではなく不平等同盟かえ?」


 芽衣子がそう言うとエンリコが怒りの声を上げる。


「冗談ではない!こんな同盟は飲めません、市長!」

「こいつらは自分の懐を痛めることなく我々を便利な道具扱いしたいだけなのです!」

「突然この地に現れてこんな横暴が通ると──!」


「よさんか!エンリコ!」


 芽衣子は怒るエンリコを諌めると永村へ頭を下げる。


「市長……!」


「秘書が無礼な口を利いてすまんの、何分まだ若い身……許してやって欲しい。」

「エンリコ、お主も謝罪せんか。」


「ぐっ……、も、申し訳……ありません。」


 と芽衣子に言われ、エンリコも渋々永村へと頭を下げる。


「いえ、怒られるのも当然の内容だとは思っています」

「どうか頭を上げてください」


 それを見た永村は二人へ頭を上げるように言う。


「うむ、すまんの」

「しかしこの内容は少々厳しいのう、当然感情的な物もあるが先ほどの戦いでこちらの兵力も大分減ってしまった」


 芽衣子は頭を上げると永村へそう返す。


「減った……?」

「あぁ、もしかして貴方達が運用していた蟻の事ですか?」


 永村の問いに芽衣子は頷く。


「うむ、先ほどの戦いで蟻を産む女王蟻がお主らに何かされたようじゃからのう?」

「それに街の防備に兵を割くと……兵站の事を考えても出兵できるのはおよそ1500か2000が限界と言った所じゃろうなぁ」

「後はー……この同盟を呑むに当たって幾つか要求する事があるの」


「要求?」


「そう、要求じゃ」

「要求というよりは単に聞きたいことも含まれておるが……とりあえずまずはこれを読んで貰おうかの」


 芽衣子はそう言うと隣に立つエンリコに数枚の束ねた紙を渡す、そしてエンリコは机の中ほどへ行きソーレンへと紙を手渡す。

 紙を受け取った永村はその内容を眺める。 


・1 オシマンベの村で行った虐殺に対する理由とその釈明

・2 ゴーレムが放つ謎の波により白化現象の説明

 等他にも様々な事が紙には書いてあった。


「ふむ……なるほど」

「しかしあの戦いの後にこれを書かれたので?」


 永村はその紙を読みながら感心する、中には補償に関しての要求なども書いてあり、芽衣子の統治者としての能力の高さを窺わせるものだった。


「ま、寝て疲れを癒す以外にやることも無かったのでな」

「して、こちらの要求は呑んで貰えるのかの?」

「条約ではなく同盟、対等な関係であるというのならこちらの要求も通って然るべきだと思うのじゃが?」


 永村はその言葉に少し考え込む様子を見せる。


「……貴方は実に優秀な人、いえ失礼、魔族ですね」


「世辞は結構、して返答は如何に?」


「分かりました、貴方の要求を呑みましょう」

「代わりにこちらの要求もお願いいたします」


「うむ、そちらがこちらの要求を呑むというのならこちらも文句は無い」


 そう言うと永村は立ち上がり、永村の言葉を聴いた芽衣子もまた立ち上がる。

 二人は机の脇を歩き互いの前に立つと、互いに手を差し出す。


「では、これから良き関係を築き上げていきましょう」


「うむ、侵略戦争の手先になるのは正直不愉快じゃが……」

「そちらと協力する事は街の可能性を広げるという意味では大いに役立ちそうじゃからの」

「何事も前向きに考えないとのう」


 そして互いに手を結び、握手を行う。


「ところであのタブレットという道具の使い方なんじゃが───」


 芽衣子は握手を終えると、永村へ興味津々と言った顔でタブレットの使い方や様々な事を質問し始めるのだった。


──────────────────────────────



「オイオイオイ」


「迷ってるわ俺等」

「こんなことならソーレンに最初から道案内をさせるんだった……」


 芽衣子と永村が同盟の為の会談を終えた頃、山坂と田崎は札幌で迷子になっていた。


 そして、それを遠巻きに見ている一組の男女が其処に居るのだった。



暇つぶしで書いているので以下略

次:聞きたいことを聞いたら投稿します


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ