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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
31/207

敵の鼻っ柱をへし折ったら

MD215年 5/5日 PM16:51


「よーしよしよし!流石は儂の衛兵達じゃ!」


 芽衣子はそう叫ぶと、大量の蟻をワームに開けた穴目掛けて殺到させる。

 ワームの内部はソーレンが収まっていたであろう格納部と、その奥に複雑に赤や緑、黄色の線が絡み合い更には複雑な金属が組み合わさって動いている駆動部分があった。

 内部に侵入した蟻達は、強靭な顎でそういった金属や線を噛み千切り内部を蹂躙していく。

 そして更に複数の蟻がワームの頭部部分へと侵入すると、脳にあたる部分に一際輝く赤い球体を発見する。

 蟻がその球体へ近づこうとすると、ワームの内部全体に電流が流れ始め蟻達を焼き焦がしていく。


「のわっ!あちち!」

「な、なんじゃ!?」


  蟻に流れる電流の感触が芽衣子にも伝わってきて、思わず芽衣子は内部の蟻から女王蟻へと意識を切り変えてしまう。。

 その直後地上から微かな音と揺れを感じ取る。

 芽衣子は再び地上の蟻へと意識を繋げようとするが──。


「繋がらん……」


  芽衣子は何度も意識を飛ばすが、やはり地上の蟻には意識が届かない。


「これは……もしや上の蟻は全滅したかの?」


 芽衣子は少し考え、そしてゴーレム特有の行動を思い出す。


「なるほど、自爆かえ?」

「であるなら上の蟻に繋がらないのも分かるが……上の蟻が全滅するほどとは、そんな爆発で儂の体無事かの?」


 自身の体の心配をしていたその時、再び揺れと音が地下に響く。

 しかし、その揺れと音は先ほどのように微かなものではなくより巨大な掘削音だった。

 その掘削音は徐々に女王蟻が居る部屋へと近づいて来る。


「……上のに少々気をやりすぎたか」

「じゃが良いタイミングで来たのう」


 そして激しい振動と共に女王蟻の正面の壁が崩れ、もう一匹のワームが大きく口を広げて現れる。

 その口と思われる部分には無数の蟻の血やミンチになった死骸がこびりついており、此処に辿りつくまでにかなりの数の蟻を殺してきたことが窺い知ることが出来た。

 ワームは女王蟻を見るとキイインという高音を発し威嚇を行う。


「相変わらず五月蝿い音じゃなこやつは、それとも金属で出来たワームはまともに啼けもせんか?」

「とはいえ歓迎しようではないか、後はお主を利用して女王蟻を始末すればこちらの勝利条件は達成できるしの」

「最も奴がどう動くかは分からぬのが問題なのじゃが」


 芽衣子は悪態をつくと、玉座に座っているような姿勢だった女王蟻を立ち上がらせ地面へと降り立たせる。

 ワームはその女王の動きを見ると、大きく開いた口の奥からブッという音が放たれる。

 その音が響いたと同時に、女王蟻の体に金属で出来た釘の様なものが刺さる。

 それは徐々に女王蟻の中へと進入していくと女王蟻、そしてそれに繋がっている芽衣子へとてつもない虚脱感を覚えさせる。


「ぬっ、これは?」


 釘のようなものを打ち込まれた女王蟻は、自らの足で地面に立つことが出来なくなり地面に倒れ、意識を繋げている芽衣子もまた視界がぼやけていく。


「くっ、睡眠魔術か何かか?意識が……」


「楔の……擲を完………脈の…圧に成功し…した」

「本…はこれより……リープ……ードへと入りま……す……」


そして虚脱感に襲われる芽衣子は、そんな不明瞭な言葉を聞きながら女王蟻から意識を切り離すのだった。



──────────────────────────────


「止まりなさい!これ以上神聖なる儀式の場を荒らすというのであれば容赦は…!」


 物が散乱している札幌テレビ塔に声が響く。

 その声の主である巫女達は、倒れている市長の前で薙刀や弓を構えたまま声高に叫ぶ。

 叫ばれている相手は13体ほどのソーレン達である。

 ソーレン達は巫女達を包囲するようにテレビ塔内部に配置されていた。

 またその足元にはエンリコや複数人の衛兵、他にも数体のソーレンが倒れておりワームの自爆に乗じたソーレン達とエンリコ達の交戦を窺い知る事が出来る。


「まさか此処まで踏み込まれるとは……!」


 黒髪長髪の人間の巫女が、手に握る薙刀へと霊力を込めるとソーレン達も反応し一歩前進しようとするがそれよりも先に声が響く。


「あー、聞こえてますか?」

「こちらは管理者……えーっと平たく言うとこの機械達を操っている者です」

「……もう勝負はつきました、投降していただけませんか?」


  その声は開戦前に巫女と交渉をしていた永村の声であり、永村はソーレンを通して市長を守る巫女達へと話しかける。


「そちらの奥で倒れている方が、この街の支配者であることはこちらも既に把握しています」

「それにこの状況下で、これ以上無為な犠牲や労力を払う必要も無いと私は思いますがどうでしょうか」

「加えて言うのなら、其処で倒れている市長さんや外で怪我をしている方への治療を行う為にも速やかに…」


「黙れ!」


 と永村の言葉を遮るように巫女の一人が薙刀を振るう。

 その巫女は一歩前に進み出ると、紫電を纏わせた薙刀を手に市長を庇うように立つ。


「お前達の戯言に付き合うつもりは無い! 我等は市長を守る盾にして剣……降伏等するつもりは毛頭無い!」


その言葉に続くように、市長を中心に半円形の陣形を巫女達が取り始め、武器を構え始める。


「ならしょうがないな、このまま制圧しちゃうかぁ」


 その言葉と共にソーレン達が一歩前に進もうとするが、途中で脚が止まる。

 ソーレン達は前進しようとしていた脚を元の位置に戻すと、そのまま直立不動になる。


「……どういうつもりだ?」


 巫女の一人が呟いた後、テレビ塔の中にはバサバサという音が響く。

 巫女達が振り向くと其処には芽衣子が、お手製の白旗を仰向けの状態で振っている姿があった。


「市長!」


  巫女達が叫び、市長が答える。


「うむ……皆良く頑張ったな、儂の体を守ってくれていた事……儀式に付き合ってくれたこと、感謝するぞ」

「しかし、此度は儂等の負けじゃ」


  芽衣子のその言葉に巫女達は驚愕した顔をし、抗議する。


「しかし、市長! 私達はまだ戦えます! 何も此処で諦める事は……!」


「では此処で何時終わるとも知れぬ戦いをするか?」

「此処まで踏み込まれている以上もう儂等に勝ちの目は無い、そもそも最初からあったのかも怪しいが」

「……お主達の憤慨、よく分かる」

「すまんの、精一杯やってくれたというのに」


 芽衣子のその言葉に巫女達は武器を下ろし、顔を俯ける。


「というわけじゃ、今回の戦いはお主らの勝ちじゃ」

「儂はこうして降伏するので各地での戦闘を取りやめて早急に話し合いの場を設けたいのじゃが……ええかの?」

「それとこれ以上こちらの者に危害を加えぬことを約束してほしい」


 芽衣子は体を起こすと、体を擦りながら巫女達を分け入ってソーレン達の前に出る。


「まずは賢明な判断、ありがとうございます」

「分かりました、ではこちらの機械の動きは停止させましょう」

「それでは各地で戦闘を続けている人たちへの語りかけをお願いします、この機械で各地の機械に貴方の言葉を届けますので」


 永村がそう言うと、芽衣子の前に立つソーレンの球体が輝き始め、他のソーレン達の球体も輝き始める。


「ほー……便利なもんじゃな……では早速、んん、ごほん」


──────────────────────────────


 南区では未だに戦いが続いていた、南区の入り口から札幌内部へ侵入しようとするソーレン達を食い止める為に戦っていたのだ。


「うおおおおおおおおぉぉぉ……!?」


 アデルはソーレンに馬乗りにされ、顔面を殴打されようとしていた所で突如ソーレンの動きが止まる。

 アデルは驚き、周囲を見てみると周囲のソーレン達も動きが止まっており、突如一斉に動きが止まったソーレン達に困惑していた。

 その時、動きを停止したソーレンの球体が発光し始め声が響き始める。


「各地で戦う者達よ、儂じゃ」


  その声は市長のものだった。

  市長の声がソーレンから響き戦っていた衛兵達は喜びの声を上げる。


「おいおい、まさか市長がゴーレム達を乗っ取ったとかか!?」


「もしそうなら俺たち……勝ったのか!?」


 だが、この後に続く市長の言葉はそんな喜びとは正反対のものだった。


「この戦い、儂等の敗北じゃ」

「各地で交戦していた皆は、武器を収め負傷者や破壊された建物の修復に当たって欲しい」

「繰り返す……」


 その市長の声を聞いた者達の反応は様々だった、敵のデマだと言うものも居れば今の市長の発言が受け入れられずソーレンを破壊する者、武器を収め負傷者の救護に回るもの。

 アデルは……。


「クソ……ちくしょおおおおおおおお!」


 嘆き叫ぶ者だった。


 此処に今回開かれた戦いの幕は降りる。


 時刻は17:03、おりしも夕日が札幌を照らしていた──


だいぶ遊んでいたので久しぶり(4日ぶり)の初投稿です

暇つぶしで書いているので投稿ペースがガバガバだけど許してチョーネンテン

次:自己紹介が終わったら投稿します

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