表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
29/207

ワームが分離したら

MD215年 5/5日 AM16:35


 札幌テレビ塔前には、剣戟の音が響いていた。

 そしてテレビ塔を防衛する衛兵達へ指示を飛ばす声も。


「魔術隊! 側面の部隊を援護、癒し手は正面の部隊へ回ってください!」

「絶対に芽衣子様へ敵を近づけないように!」


 エンリコが各部隊へ指示を飛ばし、その指示を伝令が各部隊へ伝えに行く。

 芽衣子が女王覚醒の儀を執り行ってから30分、エンリコは大通りへ続く道を衛兵達で塞ぎ大通りの中央に残った衛兵と魔術隊を配備、その後方に癒し手と呼ばれる治療を専門とする部隊を置いていた。

 ソーレン側は転移門での転送やビルの残骸を登攀して乗り越えてくるが、それも蟻の女王が生み出した小型の蟻によって破壊されていく。

 だが札幌市内へと侵入してきたソーレンの数は如実に増し、徐々に札幌テレビ塔前を包囲し始めていた。


「報告します!」


 其処へ険しい顔をした伝令が走ってきた。

 エンリコはその声に反応し、振り返る。

 走ってくる伝令の近くには蟻が居り、それに乗って移動をしてきたのだろう。



「どうしました?」


「はっ! 南区の一部がゴーレムによって突破されました!」

「現在南区の部隊が追撃を行っていますが、30体程がこちらに向かって侵攻中です!」


エンリコはその情報を聞き、伝令と同じく険しい顔をした。


「……そうですか」


「はい、また東区にもゴーレムが複数展開されたようです」


エンリコの質問に伝令が答える。


「これからどうしま……」


 伝令が次の指示を求めようとした所で、地鳴りが起きる。

 地鳴りは徐々に強くなっていき、一際巨大な揺れが起きると轟音が響きそれと共に大通りの北側に建物の破片や土塊、蟻の死骸等を巻き上げながら空中に飛び上がる巨大なワームの姿が映る。


「馬鹿な、何故あのワームが此処に……!」

「いやしかし、先ほどより小さくなっている?」


 飛び上がっているワームの大きさは最初に見た大きさの半分ほどになっていたが、それでも相手にするのは絶望的な大きさだった。

 そして土塊やビルの残骸などが地面に落下すると共にワームも着地し、甲高い声を発するように口を開く。

 それを見た衛兵達に、恐怖の色が浮かび上がる。


「……何にせよ困りますね。」


 とエンリコが呟き、自分の拳を強く握る。


「各自! 気をしっかり持ちなさい! 我々はサツホロを守る為に居るのですよ!!」


 エンリコは周囲の人間に渇を飛ばすと、先ほどの伝令に向き直った。


「一仕事お願いします、南区へ行ってギト士長に今見たことを伝え人員を割いてもらってきてください」

「伝えた後はギト士長の指示に従って行動してください、いいですね」


「……は、はい!」


 と伝令が答えると近くに待機させていた蟻へ飛び乗り、南区へ向かって駆けて行く。

 伝令に指示を出すとエンリコは残った部隊へ支持を出し始める。


「市長……後はお願いします」


 そう呟くと、無数の羽蟻がワームへ向けて飛び去っていくのをエンリコは見送った。


──────────────────────────────


 ブブブブという羽音がそこかしこに響く、大量の羽蟻が巨大戦車の周りを取り囲んでいるのだ。


「その数およそ50匹か…大歓迎だね。」


 永村がメインモニターの前でコントローラーを握り、呆れる。

 ソーレンを操り包囲網を作り上げていた永村だったが、画面に警告の文字が出たと思えば巨大戦車に搭載されたAIの判断によって巨大戦車が分離、更には殲滅モードで地上に出てしまったのだ。

 即座に分離した巨大戦車を手動操作に切り替えたのは良いのだが、時既に遅く完全に囲まれていた。


「いやー困ったね、此処で暴れると街が壊れる」

「かと言って暴れないとそれはそれでこっちの味方が五月蝿いし沽券にも関わる」


 永村は首を捻り、顎に手を当て考える。


「しょうがない、多少相手に被害を出す事になるけど目的地のテレビ塔まで一気に進んで制圧するか」


 そう言うとコントローラーを持ち直し、巨大戦車を移動させ始める。

 目的地は札幌テレビ塔1階に居るであろう市長。

 巨大戦車は体の向きをテレビ塔へ直すと、巨大戦車はぐねぐねとのた打ち回る様にしながら前進を始める。

 巨大戦車がうねるたびにガガン!という音を響かせ、戦前の形を保っていたビルや道路の名残を破壊していく。

、そして巨大戦車が動き出すのを確認した羽蟻達は、上空から液体を巨大戦車目掛けて発射し始める。

 その液体が巨大戦車に付着すると、白い煙を上げながら金属が腐食を始める。


「警告、蟻酸ぎさんによる攻撃を受けています」

「装甲に3%程の腐食を確認」


「蟻酸? あぁ蟻だからか…って凄いな」

「普通蟻酸って言うのは金属には腐食しないものなんだけど……これも霊力のお陰かな?」


 永村は巨大戦車の警告に思わず声を漏らす。

 永村が驚いている間にも、蟻酸が再び降り注ぎ続けざまに警告メッセージが現れる。


「警告、下方から魔族による魔術攻撃を確認しました」

「また腐食部分に蟻の侵入を確認」

「抗戦を提案します」


 警告が表示されているウィンドウを、画面に触れて消して画面の一部分を拡大する。

 確かに蟻酸が付着した部分に黒蟻が群れ始めている。

 また下方にはリザードマンや人間が集まり、魔術を巨大戦車目掛け放つのも見えた。

 それらを確認すると永村はおもむろにコントローラー、ではなく手元に置かれた紙を見始める。


「しょうがないなぁ、えーっと…分離した時の操作方法は……」

「お、あった。えーっと…接死/Death Touch…ボタンはこれかな?」


 ぺらぺらとページをめくり目当てのページを見つけると、紙とコントローラーを見比べながらボタンを押す。

 永村がボタンを押すと、巨大戦車の全身が薄緑色に発光を始める。



──────────────────────────────


「よし、効いてるぞ!そのまま内側からぶっ殺しちまえ!」


 大通り正面を防衛している衛兵の一人が声を上げる。

 羽蟻による蟻酸攻撃によって、腐食した部分に蟻が群がりワームの鱗一枚一枚へ穴を開けていく。

 ワームの前面には、ワーム討伐を担当していた特別部隊が個別に立ち並び魔術による足止めを行っていた。


 蟻が内部へ侵入しようとした時、ふと衛兵の一人がワームが薄緑色に発光を始めたことに気づく。

 それと同時に進入しようとしていた蟻が、全て同時に動きを止めてしまう。

 ワームは発光を始めると、再び体をうねらせながら建物を破壊しながら進み始める。

 ワームが進み始めると、鱗に張り付いていた蟻達がぽろぽろと落ち始め地面に叩きつけられ、移動するワームの鱗に磨り潰されていく。


「馬鹿な……! 何故いきなり蟻が……!?」


 ワームの正面で電撃を放っていたヴィーアは、驚きのあまり声を上げた。

 その間にもワームは移動を続け、テレビ塔を目指して直進を続ける。

 ワームを止めようと地面を掘り返し蟻達が複数湧き出てはワームへ飛び掛るが、触れた瞬間にピタリと動きが止まると地面に落下していく。

 それを見たヴィーアは上空を見上げる。

 上空には未だ蟻酸を振りかけ続ける羽蟻達の姿があった。


「羽蟻達は無事か、ということは奴の鱗に触れると動きが止まるのか?」

「各自散開して距離を取れ! 奴との接触は出来る限り控えろ!」


 ヴィーアは叫び自らが率いていた部隊へ声を掛けると、ワームの通り道を避けるように散らばる。

 ゴゴゴゴという地面を砕く音を響かせながら、ワームが巨体を徐々にテレビ塔へと近づけていく。

 すれ違いざまに電撃をワームへと放つが、まるで効果が有る様には見えずワームはヴィーアの存在を無視して移動していく。

 そして、ワームの移動の余波でビルが崩れ落ちヴィーアへと降り注ぐ。


「まるで山を削っているような気分だな……だが諦めるわけには!」


 それを回避しながら愚痴をこぼすが、折れそうになる心を奮い立たせ蟻酸によって腐食した部分へ電撃を放ち続ける。


 ワーム テレビ塔到達まで残り 400メートル。


暇つぶしで書いているので以下略

次:ワームがテレビ塔に到達したら

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ