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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
28/207

女王が目覚めたら

MD215年 5/5日 AM16:12


 ジャリ…という砂を踏みしめる音が、地下に響く。

 周囲のあちこちに砂が高く積もり、最終戦争以前は塞がっていなかった複数の入り口は、土砂に埋もれ今はその面影を残すのみだった。

 アデルとベルが地上で小型の蟻の群れを見つける少し前……。

 中央区衛兵士長であるリザードマンのヴィーア…他西区、北区の副士長を含めた特別部隊は会議の後部隊編制を終えると札幌の地下にある大通りを小型の蟻3匹の先導の元歩いていた。

 最終戦争以前、此処札幌の地下には札幌を縦に貫くような大通りが存在しており、その大通りは札幌のあらゆる場所への徒歩の移動を可能にしていた。

 普段は蟻の飼育と休眠に使われている場所だが、このような有事の際には秘密の通路となって札幌全域へと兵の送り出しを可能にするのだ。


「む、どうやら此処で一旦別れるようだな」


ヴィーア達を先導していた3匹の蟻が、正面に三つ開いた巨大な穴の前で一匹ずつ別れて進み始める。


「ですね、では我々は左側の穴へ行きましょう」


そう切り出したのは、西区の衛兵副士長のニーリィだった。


「了解した、では右側の穴は……」


「私が行こう」


 ヴィーアが頼む前に、北区の衛兵副士長であるテランが進み出た。


「どの道をどう行こうとも、敵の側面を突く事に変わりはあるまい」

「であるならばこの様な問答に時間を掛ける事自体が無駄ではないか?」


 テランはそう言うと右手を上げ、配下のロウクス部隊を引き連れ右の穴へと進んでいく。

 ニーリィはテランの言葉に頷き、ヴィーアもまたそれに納得すると二人も右手を上げ各々が進むべき穴へと入っていく。


「では、各自に武運を!」


 ヴィーアの言葉が地下に響くと、その後には静寂だけが残るのだった。


──────────────────────────────


 カキン! と甲高いボールを打つ音がする、少し経つとガシャン! と金網にボールが当たる音が響き…再びカキン!という音が響く。


「あークソ! ファウルばっかじゃねーか!」


 打席に立っているのは山坂である、投手はソーレンでありかれこれ10分ほどではあるがその10分間山坂は只管ファウルにし続けていた。


「お前も飽きないな……つーか野球なんてそんなに楽しいか?」


 田崎が一人ベンチに座りながら、缶ビールを開けつつ山坂を眺めていた。

 田崎の言葉の少し後に山坂がバットを振るが、キャッチャーミットにボールが収められ山坂は三振してしまう。


「ファック! お前が話しかけるから三振しちまったじゃねーか!」


 山坂がバットを放り投げながらベンチの方へ歩いていく、代わりに打席に入るのもまたソーレンであり試合は続行される。


「ワハハ、ざまぁみろ」


「死ね!!」

「……んで? なんだって?」


 山坂が少し切れ気味になりながら、田崎の隣に腰掛け缶ジュースを開ける。


「いや、だから野球なんてそんなに楽しいのか? って話をしたんだよ。」


「いや別に? 単純にやりたくなったからやってるだけだよ、スポーツなんて面倒だから嫌いだ」


 山坂はジュースを飲み干しながら、田崎の質問に答える。


「そんな理由で俺に野球場の整備させたとか殺すぞ……」

「ところでよ、永村の奴はまだ終わらないのか?」


 カシュッ、と缶ビールを開ける音が響く。


「あと少しらしいぞ? まあ殺さないように~ってやってるからな、制圧とかに時間掛かるんだろ」


「殺さないようにねぇ……、なんつーかあいつも真面目だよな」

「俺たちならさっさと殺して終わりにするのに」


「まああいつ自身が言ってた様にああいう遊びがあいつは好きなんだろ」

「お、出塁した」


 山坂は飲み干した缶ジュースをゴミ箱へ放り投げると、ソーレン達による野球を眺めていた。


「……まあしかしだ、折角俺が作ったワームもどきエンジンが活躍しないのは悲しい所ではある」

「今回の永村の趣旨とはかけ離れるからしょうがないんだが」

「せーっかくこれでもかって位堅実的且つアド取れる様に設計したのに……僕ちゃんは悲しい!」


「あーそうかい、そりゃ大変だな」


 田崎がどうでも良さそうに返事をすると、山坂は突然立ち上がり野球場を出て行こうとする。


「おい、どうした?」


「いや……飽きた」

「ちょっと散歩しながら地球でも眺めてくるとしよう」

「地球は青かった! だが……」


「神は居なかった」


 そう返すと、田崎も立ち上がり山坂へと小走りで追いつく。


「ま、暇だから俺も散歩に付き合ってやるか」


 そして、野球場には試合を続けるソーレン達だけが残るのだった。


──────────────────────────────


 ヴィーア達が地下を進軍している頃、件の巨大戦車は札幌の地下を潜行していた。

 目的地は札幌において最も霊力が高まっている場所である。

 金属で出来た体の口の周囲の部分が回転しながら地面を掘り進めていく、このワームは開戦当初から掘削を続け徐々に進んでいたのである。

 バゴォン!という破砕音が響くと人為的に作られたと思わしき場所へたどり着く。

 戦車は二対の目を光らせると周囲のスキャンを開始し、其処が最終戦争前の時代に作られていた地下鉄道の駅であることに気づく。

 巨大戦車は目的地がこの地下鉄の先にあると判断し再び周囲を掘削しながら体をくねらせ前に進んでいく。

 かつて電車が走っていた駅も全長50メートルの巨体には狭すぎるのだ、掘削するたびに、移動するたびに色々な物が崩れていく。


「ダメージを確認」


 掘削移動を続けていると、突然戦車を動かしているAIに警告が走る。

 移動の最中、体の最後尾の部分に何かが張り付き鱗に当たる金属部分を引き剥がしているのだ。

 AIは即座に体中のスキャンを行う、すると最後尾の部分に無数の黒い蟻が集っているのだ。

 巨大戦車は最後尾部分を高速で回転させ、蟻を振り払うが次から次へと無数の蟻が集ってくる。

 次第に周囲の土から無数に蟻が湧き出し、最後尾のみならず真ん中や先頭の部分にまで集まってくる。

 巨大戦車は集まってくる蟻に対して体全体を高速で回転させながらのたうち、駅の壁面に体を当てる事で蟻を磨り潰していく。

 

「今だ! 全員魔術で攻撃! 近寄りすぎるなよ!」


 という声が響くと、ワームが掘削してきた道の側面に穴が開きヴィーア達特別部隊が現れる。

 現れると共にテラン率いるロウクス部隊が巨大戦車の金属を腐食させていき、ニーリィ率いるレオニン部隊が光で出来た槍を投擲する。

 そしてヴィーア率いるリザードマン部隊が、巨大戦車へ電撃を放つ。


「─────!!」


 攻撃を受け巨大戦車が声ともとれない高音を発すると、巨大戦車は回転運動を止め、停止する。


「やったか!?」


 ヴィーアが魔術を止め、叫ぶ。


「あぁ、その台詞は駄目です!」


 それに続いてニーリィが叫ぶと、ガゴンという音が巨大戦車から響いてくる。

 そして同時に巨大戦車の真ん中から最後尾に掛けての部分が分離し、徐々に後退を始める。

 分離した真ん中から最後尾に掛けての部分が徐々に変形していき…分離した部分が新たに口となる。


「……二体に増えたか」


 テランが横穴から覗き込むと、分離した二つは元の巨大戦車だった頃と同じ形をしており完全に二体に分離していた。


「─────!!」


 その二体は口を広げると、再び高音を発する。


「テラン!退避しろ!!」


 ヴィーアが叫ぶと一体は口の周囲を回転させ始め、テラン達ロウクス部隊が居る場所へ向けて掘削をしながら襲い掛かり始める。

 残ったもう一体は再び目的地へ向けて、掘削をしながら進んでいく。


「くっ…!もう一体が何処へ行くのかは知らんがこちらとしては好都合だ!」

「襲われていない部隊は襲われている部隊を援護しながら攻撃を続けろ!」


 ヴィーアはニーリィへと声を掛けると再び魔術を放ち始め、再び無数の蟻が壁面から湧き出してくる。

 かくして狭い地下鉄駅構内において、全長25メートルのワームとの戦いが始まるのだった。


暇つぶしで書いているので投稿ペースは不定期(Ry

次:ワームが分離したら投稿します

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