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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
25/207

市長の顔が割れたら

MD215年 5/5日 AM14:19


 アレーラが蟻に助けられてからおおよそ35分後、南口では騎乗部隊とゴブリン達がソーレンとの乱戦を繰り広げていた。

 そして味方の部隊を救出する為にアデルが居る部隊もまた乱戦へと参加していた。


「くそ!かっっっっってぇ!!」


 アデルは自らが突き出した剣を、ソーレンの胸部へ突き刺しその動きを止める。

 アデルの頭を捕まえていた右手が力なくぶら下がり、完全に機能が停止した事をアデルへ伝える。


「ふぅ……あぁくっそ、引き抜くのもやっとだな!」


 アデルは寄りかかるように倒れてきたソーレンの体に足を当て、剣を力任せに引き抜く。

 剣を引き抜きもたれかかってきたソーレンを、そのまま地面に横たえると即座に周囲を見渡し状況の把握へ移る。

 周りには自分と同じく多種多様な兵士達が戦っていたが、何処を見ても自分の所属する部隊の隊長であるギトの姿は無かった。


「はぐれちまったか……! こういう状況は割りと死に直結するからせめて誰かと一緒に居たいんだが……!」


「キャーー!」


 これからの事を考えていると、近場から悲鳴……悲鳴? が聞こえアデルは振り向く、その視線の先……およそ30メートル程先にソーレンに押し倒されているピンク色の鎧を着た兵士が居た。

 その兵士は、足をじたばたさせながらもがいていた。


「キー! わ、私に手を出すとバスティーユ家が黙っていませんわよ! 三日後百倍ですわよ!!?」


「ピンク色の鎧とはまた派手だな……」

「とりあえず助けに行くか!」


 アデルは、その兵士を助ける為に走り出す。


「くっ、この!おどきなさいな! 無礼ですわよ!」


 ソーレンにのしかかられている兵士は、右手と頭部をソーレンの両腕で押さえつけられながら残った左腕でソーレンの腹部を殴打していた。

 しかしその殴打にソーレンは微動だにせず、頭部を押さえた腕から光波を迸らせ光波を上下させていく。


「あぁもう……! おどきなさいってば!」


「だったら、退かすの手伝ってやるよ!」


 アデルの声は叫ぶと、兵士を抑えていたソーレンに背後から近づき両腕を羽交い絞めにする。

 それにより拘束が緩んだ兵士は、横に転がって即座に脱出する。


「た、助かりましたわ……。」


「そりゃ良かった、ところで今俺が抑えてるこいつを何とかするまでは助かってないと思うんだがあんたどう思う?」


 アデルはそう言うと、羽交い絞めしているソーレンの背を蹴り飛ばし横に転がすと剣を引き抜く。


「あんた、戦えるんだろうな!」


「……当然! ですわ!」


 ピンク色の鎧の兵士も立ち上がり、細剣を抜き構える。

 それと同時にソーレンが足を地面に突き刺し立ち上がると、胸部にある球体が一瞬発光した後アデルへ向け走り始める。


「っと、今度は俺か」

「けどなぁ……馬鹿の一つ覚えみたいに頭と利き腕狙いじゃ直ぐに読めるんだよ!」


 ソーレンが右腕を伸ばしアデルの頭を掴もうとするが、アデルは左腕に付けた木製の盾をソーレンの右腕に下から叩き付け、右腕を浮かせる。

 右腕を浮かされたソーレンは、即座に左腕を伸ばしに掛かるがそれよりも速くアデルの剣が球体へ叩きつけられる。


「かっっってぇって!」


 球体には多少の傷が付くが、機能を止めるにはまだ浅く未だ動いていたソーレンの左腕がアデルの頭部へ掴みかかる。


「うお、やべっ……!」


「おーっほっほっほっほ! ボディががら空きですわ!」


 アデルが頭部を掴まれた瞬間、ピンクの鎧の兵士はアデルが先ほど傷を付けた位置へ細剣を突き出す。

 するとその細剣は驚くほど簡単に球体を貫通し、ソーレンは機能を停止しアデルへ寄りかかるように倒れる。


「お見事、いや助かった」


「いえ、こちらこそ先ほどは助かりましたわ」


 アデルは、寄りかかってきたソーレンを地面に横倒しながら兵士へ感謝を述べた。

 状況は未だ戦いの真っ只中だったがこちらが優勢なのか、アデルと兵士の周囲にはソーレンの姿は無くアデルへ地面へ剣を突き刺し兵士の方を向いて寄りかかった。


「少し休めそうだな……ちょっと休むか。」


 そしてアデルはその兵士を見ていると、ある事に気がついた。

 戦闘中は良く見ていなかったので分からなかったが、その兵士は頭部、上半身までは普通の鎧のように見えるのだが下半身がまるで違った。

 何が違うのかというとほぼ裸なのである、レオタードが股間を隠している以外はほぼ素足でありかろうじて足に金属製のグリーブを付けているという状況である。


「あ、あんた……えらくその、凄い格好で戦ってたんだな……」

「え? って言うか女? 痴女?」


「痴女ではありません! 失礼な! この鎧は我がバスティーユ家が代々受け継いできた由緒正しい鎧なのです!」

「そして私は女ですが何かいけませんこと? 女が戦場に立つことが何か文句がありまして?」


 剣を鞘に収めると、痴女発言に怒り出す兵士はそのまま兜のフェイスガードを開き文句を言い始める。


「あ、あー……すまん、別に貶すつもりじゃなかったんだ」

「つい胸を突いて出た言葉というか、本心というか……ともかくすまない」

「よし、話題を変えよう、助けてもらって名前を名乗らないのもあれだし」

「俺はアデル、アデル・レスディン、さっきは助けてくれてありがとう」


 と話題を切り替えることにしたアデルは、体勢を直し右手を女兵士へ差し出す。


「露骨な話題変えですわね、とはいえ構いませんわ、私は痴女と呼ばれる事には慣れていますもの」

「私はベル・バスティーユ、東区衛兵隊の士長を務めています」


「東区? あぁ……そういや聞いた事があるぞ、変わり者の士長が居るって」

「そうかあんただったのか……いやうん、確かにその格好は変わり者呼ばわりされてもおかしくないな」


 アデルは改めて、上から下まで眺めてみた。

 青い瞳に整った顔、豊満な胸にスレンダーな腰…綺麗な脚…うーん素晴らしい。

 此処が戦場じゃ無かったら、その体目当てに求婚している所だった


「ちょっとアデルさん、鼻の下が伸びてますわよ」

「全く何処を見ているのかしら……」


 ベルに指摘され、慌てて顔を真顔に戻すアデル。


「おっとすまん、つい魅力的な女性を見るとこうなっちまう、男の性だと思って許して欲しい、」

「そういやあんた東区の士長なんだろ? 何で此処に居るんだ? 後南区の士長知らないか? ギトってんだけど」


「まあ……お世辞が上手ね、此処が戦場でなかったら真面目に答えて差し上げても宜しかったのだけど」

「私が此処に居る理由は単純に東区の戦力を此処に割いているからですわ、東区の防衛は副士長に任せて3割ほどの人数を引き連れて此処に来ましたの」

「まあ部隊の皆とははぐれてしまったけれど……」


 そう言うと、ベルは溜息を吐く。


「それとギト士長については私は知りませんわ、この広い戦場のどこかには居るのでしょうけど」


 アデルがそうか……と返事を返そうとした際、空に閃光が走り戦場のあちこちに再び複数のソーレンが空から舞い降りる。

 アデルたちの周囲にも、3体程のソーレンが着地しアデルとベルを囲むように動き始める。


「ちっ、またか!」


「しつこいですわね……とはいえ息を吐く暇を与えてくださった事には感謝いたしますわ」


 ベルは兜のフェイスガードを展開し、アデルと共に剣を引き抜く。

 アデルは地面から剣を引き抜くと、ベルの背後へ移動し声を掛ける。


「なあ士長さん、俺実は初陣でな! 悪いが俺のお守りしてくれねえか!」


「えぇ、よろしくってよ、その代わり私の指示には従っていただきますわよ?」


「お安い御用だ、それじゃあベル士長……早速だが命令頼むわ。」


「……包囲は正面突破が一番有効ですわ、味方の居る方向へ向かって一点突破あるのみ!」



 ベルが掛け声と共に細剣を突き出すと、その細剣から物凄い速度で光が奔り、ソーレンの胸部を打ち抜く。

 光に打ち抜かれたソーレンは、そのまま前のめりに倒れていく。


「いきますわよ! アデルさん!」


 とベルは、アデルへ声を掛けると同時にそのソーレンが倒れた方向へ走り始める。


「あいよ!」


 アデルはワンテンポ遅れてベルと共に走り始める。



 そんな戦場の光景を、遥か上空で羽蟻が一匹眺めているのだった。

暇つぶしで投稿しているので投稿ペースは不定期です

次:皆で話し合ったら投稿します

この辺にぃ、後書きとサブタイトルだけ変更した作者、居るみたいっすよ?

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