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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
23/207

交渉が始まったら

MD215年 5/5日 AM13:22


 永村はメインコンピューターの前で椅子に座りながらり札幌を治めているであろう人物、あるいはそれへの連絡役の到来を待っていた。


「いやー眠い…普段起きる時間がもっと遅いからなぁ…」


 永村は、左手で口を押さえながら欠伸をする。


「おい、まだその交渉ってのはおわらねーのか?やっぱ現地の連中とこっちが対等に話し合う必要なんて無いだろー? さっさと殺そうぜ」


 山坂が永村の後ろでソファーに寝転がりながら、1000年前の雑誌を広げ永村へ顔も向けず言う。

 永村は椅子を回転させ、山坂の方を向く。


「君は魔族に対する憎しみだけは私等以上にあるねぇ…っていうか交渉するってこの間管理者会議で決めたでしょ、相手から決裂してこない限りはこっちは手出さないよ」


「だったらさっさと交渉纏めろよー、お前は一々行動が遅いんだよったくよー」


「慎重って言って欲しいね山坂君、後遅いのは僕のせいじゃないから」


 と山坂の嫌味を受け流し再びメインモニターに目を戻すと、モニターの中に映る巨大戦車ワームもどきエンジンへ一匹の羽蟻が近づいてくるのが見えた。

 他にも結構な数の兵士と見受けられる存在が集合しつつあり開戦間近の雰囲気を感じさせた。


「おっと、どうやら相手は交渉する気があるみたいだね。 それじゃあ現地生命体と初会話だ」


 永村はコントローラーとマイクを手元に手繰り寄せ、笑顔になる。

 それを見ていた山坂は一瞬モニターを見て舌打ちをすると一言呟き雑誌へ目を戻しながら呟くのだった。


「速く戦争になぁ~れ」


──────────────────────────────


 羽蟻の手綱を強く握り、右足で蟻の腹を蹴ることで高度を上げる。

 彼女が交渉目的で羽蟻に乗るのは、随分久しぶりの事だった。

 羽蟻の上に乗っているのは妖狐族という獣頭人身の種族の巫女である。

 彼女は耳をピンと伸ばすと更に高度を上げ、巨大なワームの口を正面に見据える場所で静止した。


 彼女は息を吸い込み、肺に空気を溜め込んだ後大声で叫んだ。


「此度はこのサツホロまで良くぞ参られた!私はこのサツホロを治める市長の代理である! 我が言葉は即ち市長の言葉と心得られよ!」


 巫女はそう叫ぶと、正面のワームからの反応を待った。

 暫くして、ワームの口から男の声が響いてくる。


「へー…そういう言葉遣いとかってまだ残ってたんだ、私はもう消えたものかと…あぁいや失礼、まずはそちらの歓迎感謝します。


 永村はそう言うと、言葉を続けた。


「まずは自己紹介を、我々は管理者ルーラーズ、掻い摘んで話すと千年前、最終戦争前の時代の人間です」


 最終戦争前、という単語が聞こえると地表からどよめきの声が響くが一喝の声が響くとどよめきは収まる。


「…して、その過去の人間が此処サツホロへ何用か!」


 巫女が再び声を張り上げ問いかける。


「単刀直入に言わせてもらおうかな、君たちと友好関係を築きに来た。 私等の目的は全世界の制圧だ、その為に君たちと手を組んで世界制圧に乗り出したいと思ってね」


 巫女は少し呆気に取られた表情をしながらも、返答と質問を投げかける。


「友好関係か、なるほどそれはこちらにとっても利はあるのだろう。 ではなぜ話し合いの為に貴殿らは姿を見せない!交渉を行うのならば礼を尽くすのは当然のことだと思うが!」


 巫女は怒気を隠さず叫んだ。


「また最近近くの村で殺戮が行われた!その際目撃された化け物は金属で覆われた化け物だったと聞いている! 我々はその殺戮は貴殿らが行った物ではないかと考えている!それに関してはどうか!」


「あー…姿を見せられないのには哲学上…いや一身上の都合があるんだ、すまないとは思っているよ。 そしてその虐殺についてはうん、我々だ」


 巫女の言葉に、永村は悪びれもせず頷いた。


「ちょっと逸った二人が居てね、私としても本意ではなかったんだ。 その村に関しての補償は行うつもりだ、賠償と復興作業を手伝おうとは思っている」


「…自身の都合で殺戮を行っておきながらその物言いとは恐れ入る。 賠償や復興作業を行っても殺された者達はもう戻ってこないのだぞ!」


「では、私にどうしろと?」


「このサツホロの地よりの即刻の退去だ、それが適わぬというのならば…。」


 巫女が最後の言葉を紡ぐより前に、別の男達の声が響く。


「ほらなー? やっぱ魔族なんて殺す以外に無いんだって、さっさとやっちまおうぜ永村ー」


「馬鹿! 山坂、余計な事言うな!」


 永村以外の男二人の声が響いた後、巫女は腰に下げている鞘から小剣を抜き出し…。


「どうやらそちらの意図は決まったようだな? であらば……」


「はぁー、結局こうなるのか。」


 ワームへと突きつける。


「実力で排除させてもらう!」


 その声と同時に、地面では蟻に乗った部隊や投石器部隊等が進軍を開始していた。

──────────────────────────────


「ちょっと山坂君!何であそこで口出したのさ!」


 山坂はコントローラーをマイクを置き、山坂の方へ振り返った。


「うっせーな、いいじゃねーかよどうせあそこから纏めるのなんて無理だったろ? 大体相手の言い分真っ当だっただろ、流石にあんな態度で丸く治めようなんてのが無理なんだよ」


 山坂は特に悪びれた様子も無く、煎餅をバリバリと噛み砕きソファーで横になっていた。

 田崎はその隣で、腕組をしながら目を瞑っていた。


「まあ確かに相手の言い分は正しかった、でも悪いのは俺等だしなぁ。 何もあんな開戦速めるような言い方しなくたっていいだろ」


「あーはいはい僕がわるうございましたー」


 山坂は二人に指摘され、不機嫌な顔をする。


「それより対応しなくていいのか永村? 魔族が襲い掛かりに来てるぜ?」


 そして山坂は横になった体勢からソファに座りなおし、メインモニターを指差す。

 モニターには二足歩行をする大柄なサイの魔族が投石器を使い、巨大戦車へ攻撃する様や巨大な蟻に乗った兵士達が巨大戦車へよじ登っている様子が映し出されていた。


「はー…、全くもう少し穏便に行きたかったのに。 とりあえず応戦はするかぁ、こうなっちゃった以上さっさとトップ抑えて停戦しないと」


 永村はコントローラーを手に取ると、ボタンを押す。

 ボタンが押されると巨大戦車の鋼鉄で出来た鱗が持ち上がり、内部からソーレンと呼ばれるゴーレムが這い出てくる。

 それらはそのまま地表へと落下し、巨大戦車へ上ろうとしていた兵士や投石へと対処していく。

 ソーレンを射出し終わると、永村は再び別のボタンを押し鱗を閉じる。


「それじゃあ出来るだけ長引かせない、且つ相手側にあまり恨まれない感じで勝つとしようか。」


 鱗が閉じると体の頭部を含めた各部が回転を始める。

 体が回転を始めると上っていた兵士達は振り落とされていき、巨大戦車は頭部を地面へ押し当てそのまま地面へ潜りこんでいく。

 巨大戦車が地面に潜りこんだ後は不気味な地鳴りとソーレン、そしてそれに相対するサツホロの軍隊だけが残っているのだった。

次:交渉が決裂したら投稿します

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