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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
21/207

三人で話し合ったら

MD215年 5/2日 AM10:25


「終わっちまった……僕の東漫画大王…。俺はこれから何を糧に生きていけばいいんだ……」


「まあそう落ち込むなよ、人類復興すればまたこういう作品作る奴も出てくるさ」


 肩を落とした様子で通路を歩く山坂と、山坂の肩に手を置きながら慰める田崎。


「とりあえず遅めの朝飯でも食って遊んでようぜ!」


「お前は元気だなぁ……」


 二人は通路の突き当たりにある扉を抜け、いつものメインルームへ入っていく。

 メインルームの中では永村がメインコンピューターの前で仕事をしており、それを見た二人は驚く。


「おい、あいつがこんな朝早くから仕事してるとか夢か?」


「うーむ……これが夢ならまたアニメの続きが見れる……?」

「だが悲しい事はこれは現実! この胸の痛みは夢ではないのか! 畜生!!」


「君ら朝から元気だね……」

「ふわぁ~あ、眠い」


 と入ってきた二人に気づいた永村は振り返り、二人の顔を見ながら欠伸をする。


「何だお前寝てないのか? またお前の大好きなおクイズでもしてたのか?」


「馬鹿、こいつにだって朝から抜きたい時があるかもしれねーだろ! 抜いてたに決まってる!」


「お前抜く事しか頭に無いのか……?」


「そうやって君らみたいに遊んでる暇があればよかったんだけどねぇ…」

「田崎君があの戦車で暴れた後の処理とか全部私に投げるから、遊んでる暇も無いんだよね」


 永村はそう言うと近くのテーブルに置かれていたカップを手に取り、中に入っているコーヒーを飲み干した。

 永村の言うとおり田崎が巨大戦車を操作しオシマンベ村の霊木を破壊した後、巨大戦車を駆動する為の霊力が枯渇し面倒になった田崎はその後の処理を全て永村に任せたのだった。


「いやぁすまんなぁ…、でもそういう処理はお前の方が向いてると思ってな?」


「あのさぁ……」

「まあいいけど、朝飯行くんでしょ? 私も行くよ。」

「ちょっと話し合いたい事もあるしね」


 永村は立ち上がり、山坂、田崎と共に食堂へと歩いていった。


──────────────────────────────


 食堂、白い机に白い椅子に白いトレーの広大な食堂で三人は食事を取っていた。

 朝食の献立は純和風に豆腐の味噌汁、白米、辛口の焼き鮭、梅干、海苔、納豆である。


「よーし食うぜー!」

「いただきます、っと」

「ねむー…」


 と田崎だけが両手を合わせて食事を取り始め、残りの二人は思い思いの言葉を発しながら食べ始める。

 食べ初めて直ぐに山坂が永村へ問いかける。


「そういや村を制圧してから何か動きあった? 例えば現地勢力が襲い掛かってきたとか」

「僕らあれから只管遊んでるだけだったからな、いい加減情報共有といこう」


「それは別に普段から遊んで無いで私と一緒に仕事してれば良かっただけでは……?」

「まあいいけどさ」

「うん、実は最近山坂君が言う様に現地の魔族と幾つか小競り合いが起きたんだ」


 永村の言葉に田崎が箸で鮭を摘みながら聞く。


「へー…で、勝ったのか?」


「まあ当然勝つよね、ただ結構損害が出た」

「どうやら私等が思うよりも地表の魔族は強いみたいなんだよね」

「ペス、例の映像を」


「了解しました。」


 永村が施設を管理するAIのペスへと指示を伝えると、三人が座っている場所の中空にホロビジョンが浮かび上がりとある映像が流れ始める。

 その映像には管理者達にソーレンと呼ばれている二足歩行のロボットと複数の二足歩行の生命体、そして巨大な蟻が戦っている様子だった。

 戦っているというよりは追いかけっこをしている様な状態だが。

 その映像を見た田崎と山坂は…。


「「ア○トマンじゃん!!!」」


 と大変興奮していた。


「いや厳密にはア○トマンじゃなくて単なるでかい蟻だが、いやでもこれすげえな! 興奮するわ!」


「ピ○粒子を作らざるを得ない」


「まあ君らが興奮するのは知ってたけど、其処だけじゃなくてこれ、この蟻と一緒に戦ってる魔族」


 永村がホロビジョンに指を二本近づけ映像を停止し、ある点を拡大する。

 其処には緑色の表皮に覆われた大柄な人間には似つかない生命体と蜥蜴が二足歩行をしている生命体とが武器を取りソーレンと戦っていた。


「おー…こりゃトロールとかって種族だっけ?ゴリラと人間の相の子だったか」


「こっちはリザードマンだな、蜥蜴人間」

「でこいつらがどうかしたのか?千年前にも居ただろこんな奴ら」


「あぁ、けど私等が知ってる限りこんなに強くなかったと思うんだけどどうかな?」


永村はそう言うと再び映像を再生する。

再生された映像には、トロールが手持ちのハンマーでソーレンを一撃で粉砕する様子や、蟻がソーレンの装甲を噛み砕いている様子が映っていた。


「おぉ、こりゃ……確かに」


「蟻やばすぎだろ……霊力鉄れいりょくてつを鍛造して作ったソーレン噛み砕くのか…」

 

 映像を見ていた二人の食事の手が止まる。


「あぁ、現地の魔族の戦闘力も然ることながら一番厄介なのは蟻だと思ってる」

「流石に私らが居るエクィローまでは来ないとしても蟻はその数の多さが厄介だからね」

「それにこの現地魔族は蟻と一緒に戦ってるって所を見るにおそらくこの蟻はこいつらに手懐けられてると思っていい」


 其処で提案なんだけど、と永村は食事の手を止め二人の顔を見る。


「この現地魔族を手駒として取り込みたい」


「却下だ!!!!!!!!大却下!!!!賛成できませんねぇ!!」


 永村の言葉を聴いて一番最初にその言葉を発したのは山坂だった、机に両手を叩き付け怒りを露にしている。


「てめぇ本気で言ってるのか!? 俺たちの使命を忘れたってのか!? あぁ!?」


 山坂は永村の言葉を聞き、普段からは想像できない怒りの形相を露にする。


「選び抜かれた冷凍睡眠している人類を再び繁栄させると共に変異種…つまり魔族を駆逐して霊力を根絶する、だろ?」

「まあ座れよ山坂、まずは永村の意見を全部聞いてから反対でもいいだろ」


 と山坂を宥める田崎。


「田崎てめぇ…まさかこの案に乗るつもりじゃねえだろうな」


「乗るとは言ってねーだろ! あくまでも話を全部聞いた上で判断しようって言ってるんだよ」


 山坂と田崎が互いに睨み合うが、永村が山坂へ言葉を掛ける。


「ちょっと二人とも落ち着いて」

「まあ山坂君が怒るのは承知の上だったけどまずは落ち着いて聞いて欲しい」


「……ちっ」


 山坂は永村の言葉に渋々従い、着席する。

 ふんぞり返った態度ではあるが、一応話を聞く気にはなったらしい。


「ありがと、んでまず私らの使命について私の解釈を説明しておきたい」

「私らの使命は人類を復興させ魔族を駆逐して霊力を根絶することだ、でもそれは最終的な目標だろ?」

「つまり過程は問われてない、だから最初に魔族を完全に駆逐するよりも私らに都合よく使ってそれから駆逐したって同じ事でしょ?」


「あー…つまり俺らがこの間三神を即座に起動させずに、楽しさ目的に戦車で駆逐する事を選んだってのと同じく違う方法を取りたいと?」


「そういうこと、ぶっちゃけこのまま今の現地勢力と戦ってると資源が幾らあっても足りないんだよね」

「そりゃ転移門でこっちに現地の物資は送ってこれるよ?でもそれじゃあ何れジリ貧だ。」

「それでその内三神を起動させる事になるだろう、だったら私は今現状で取れる最良の手を取って楽しみたい」

「君らが戦車で遊んでるように、私は私で遊びたいんだよ」


 其処まで言うと、永村は二人の顔を見て意見を求める。


「…なるほど、お前の言い分は分かった」


「いいんじゃねえか?俺は永村の意見に賛成だが」


 田崎は賛成するが、山坂はまだ納得できずに居るようで質問を投げかける。


「言い分は分かったが具体的にどう連中を手駒にするんだ?洗脳でもすんのか?」

「後駆逐の仕方と霊力の根絶についてもだ。現地魔族を引き込んだら絶対楔を打ち込んだらばれるぞ?」


「あぁ、手駒にする事に関しては現地魔族へソーレンを送り込んで懐柔を試みたいと思う」


「それいけんのか?ついこの間村滅ぼしたばっかりだぞ?」


「いやー…多分駄目だよねぇ、だから一方的な宣戦布告を突きつけて武力制圧になるとは思う」

「それで駆逐の仕方だけどこれに関しては手駒にした戦力をそのまま現地制圧に使えばいいと思ってる」

「具体的に言うと北海道全域の魔族を引き込んで南下、東京、沖縄を制圧して今度はハワイ、南米、中米、北米…と続けて戦わせていけば程よく数が減るはずだ」


「だいぶえぐい事考えてるなお前…」


 田崎が若干引いた顔をする。


「いきなり村に現れて虐殺始めるよりは大分マシだと思うんだけど?」

「それで霊力の根絶方法についてだけどこの間の村みたいに制圧したら即楔を打ち込むんじゃなくて全世界の龍脈を確保し終わったら同時に楔を打ち込もうと思う」

「楔は一度打ち込めば龍脈の中に潜りこんでいって直接取り出しは不可能になる」

「だから一斉に打ち込めばばれたとしても魔族側には対抗手段は無くなるはずだ」

「まあ蟻の地面の掘削速度が毎秒5キロとかじゃなければね」

「もし仮に楔に対して何らかの対処をされるようならその時は三神を起動させればいい」


 説明を終えると、永村は山坂へと顔を向ける。


「で、質問には全部答えたけどこれ以外に質問何かある?」


「……普通に正論かつ真っ当な方法だ」

「むかつく」


「うん、意見を認めてもらえたようで何より」

「それじゃあ最後の纏めに入ろう、現地魔族を手駒として迎え入れる事に賛成の人は挙手!」


「まあ俺たちの意見通してもらった手前反対には出来ねえな、筋も通ってるし俺は賛成」


 永村が問いかけると、田崎は即座に手を挙げる。


「むぐぐ……問答無用で魔族を虐殺できるから志願したってのに」

「しょ、消極的賛成……」


 山坂は下を向き、恨み言を呟きながら渋々賛成の手を挙げる。


「はい、それじゃあ第三回管理者会議、これにて終了!」

「お疲れ様でしたー。」


「お疲れー」

「お疲れ……」


 と三者三様の態度を取りながら、今後の方針が決まるのだった。

H

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