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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
中国編
205/207

最後にはこうなると決まっている

https://www.youtube.com/watch?v=AUC1ynp97kY

[MGR]メタルギアライジング アームストロング戦BGM 「It has be this way」

MD215年 11/26(3週目) 16:42


 カムサの巨大な触手が、中国の大地を砕いた。

 地球に接近していた月の裏面から巨大な触手が無数に表れ、大地ごとクレケンズを叩き潰した。

 触手は地盤を砕きながら地中深くへ侵入し、クレケンズに7.347673×10の10乗kgの質量が圧し掛かった。

 それはおよそ月の質量の十分の一に相当する。


「クレケンズ!!」


 怒りの籠った声が月から響いた。

 それは最後の管理者、山坂の声であった。

 カムサの怒りを伴った触手が地面から引き上げられると地面には巨大な一本の線の様なクレーターが出来ていた。

 クレーターの地中奥深くからはマグマさえ湧き出している。


「お望み通り出てきてやったぜ……えぇ?」


 地球全土に響く声が、たった一人を恫喝していた。

 支配の神であるカムサから発せられる音声に大気は震え、植物は枯死し、生命はその精神に変調を来した。


「まさかあの程度で死んじゃあいねえだろう? てめぇはそんな軟な奴じゃあないはずだ」


 山坂の声と同時に、月面に無数の目が産まれた。

 それはたった一人を探すためにせわしなく目を動かし……それを見つけた。


「やぁ、やっとお出ましかい」


 クレケンズが、中国の大地に立っていた。

 相変わらずの不敵さを見せながら、乱れた髪を整える。


「待たせたか?」


「あぁ……千年前からずっと、君を待っていた」


 カムサの無数の目が、クレケンズを凝視する。

 途端、周囲の重力が数万倍になりまだ無事だった植物や生物があっという間に圧死した。


「てめぇは昔からきしょいんだよ」


「ぐっ……!」


 魔法の気配を感知したクレケンズは、寸での所で異常重力の範囲から転移する。


「いやいや、凄い力だね。 それが君が作っていた最後の三神かい?」


「そうだ、支配の神カムサ……こいつが完成する前に地球のゴミ掃除は終わってる予定だったんだがな」


「盗み見た情報だと完成まであと500年は掛かる筈だけど……どんなマジックを使ったのかな君は」


「ふん、如何に俺が天才でも五百年をこの数時間に縮めるのは不可能だ、なので普通に時間を経過させただけよ」


「成程……タリブか」


 クレケンズは遠方に見えるタリブの死骸を一瞥した。

 天使の光輪や、腕の残骸が中国のあちこちに落下して無残な姿になっている三神の一体。

 空間と時間を操る現実の王。


「道理で先ほど戦っていた時は時間の能力を使ってこなかったわけだ……あの戦いの最中、月の時間だけを加速させていたのか」


「流石はリープリヒ製薬の開発主任殿、ご明察だ」


「君には負けるよ、次席主任さん」


「一々腹の立つ……! 今度は逃がさんぞ!」


 カムサの目が、一斉にクレケンズを凝視した。

 再び異常重力が彼を襲った。

 今度は中国全土ごと。

 一瞬で、中国大陸はその原型を失った。


「カザフスタンの国境まで消し飛ばしてやったが……甘かったか」


 山坂はカムサの一部で吐き出されているエラーを見た。

 万を超える目の一つだけが閉じられ、眠っていた。

 カムサはその目を触手を用いて、子供を起こすように優しく突いた。

 すると閉じられていた目はきょろきょろと周囲を見ると、恥ずかしそうに再び目を閉じた。


「眠らされていたか、屑め小癪な真似を」


 山坂はカムサの中で、眼下に映る地球を眺めていた。

 中国大陸はたった今その半分以上を失い、跡地には龍脈が虹色の螺旋状の光を天へ向かって放出していた。


「あそこが龍脈か、さっさと爆破してりゃ永村も……」


 そう言うと山坂は天を仰いだ。

 永村、管理者三名の内の一人は先ほどカムサの起動援護の為に自らが駆るタリブの能力を使い……最後は自爆していた。


「時間の加速と起動用のエネルギーの転送……全く最低限の仕事はこなす辺りは流石だぜあいつは」


 山坂は天を仰ぎながら、カムサへ脳内で指令を出した。

 その指令を汲み取り、支配の神は中国の龍脈へ向け自らの触手を伸ばした。

 それは地中深くにある時空の歪みへ突き刺さり、水を汲むポンプの様に霊力を吸い取り始めた。


「だがな、そもそもこんなエネルギーさえ無ければ……」


「ノイチェが死ぬことも無かったと?」


 カムサの計器がエラーを再び吐き出した。

 神が生み出した無数の目が、徐々に一つずつ閉じられていく。

 それと同時に山坂を強烈な眠気が襲った。


「ちょこざいな……! 俺狙いか!」


 カムサの高度が徐々に下がっていく。

 それはまるでうつらうつらと子供が眠りに落ちていくような、ゆっくりとした速度だった。

 山坂と神が同調していることに気づいたのか、クレケンズは睡眠の魔法を山坂へと放っていた。

 それに対抗するため、山坂は自らの右腕に近場にあったペンを突き刺した。


「霊力があったから僕たちは産まれ、彼女に出会ったんじゃないのかい山坂君」


「善人みてえな台詞を吐くな、偽善者が! てめえが彼女を殺したんだろうがぁ!」


「あれは彼女の意志だったと言ったはずだ」


「死ぬかもしれない実験にあいつを誘う事自体が既に問題だっつってんだろうがぁぁぁ!」


 山坂が怒り、地球全体が震えた。

 カムサは怒りを発露し、世界中の活火山を噴火させる。

 濛々と、世界中から黒煙とマグマが噴き出していた。


「正気かい……!? 本当に地球が滅んでしまう、このままでは君達の計画も瓦解するぞ!」


「はっ、随分お優しいじゃねえか……俺たちの心配ってか? だがな──」


 カムサが、北太平洋の海面に触れた。

 水は一瞬カムサに纏わりつくように打ちあがり、次の瞬間には打ち返す波となって世界へ跳ね返った。


「俺からすればカムサの中に搭載されてる奴等なんざどうでもいい」


 大海嘯である。

 かつて神話で描かれた様な、世界を洗い流す洪水が巻き起こっていた。


「俺にとっての人類は彼女だけだ、そして彼女を殺したお前を殺す為なら……地球なんぞどうなってもいい」


「イカれている……!」


 全世界を、高度200メートルを超える巨大な津波が襲っていた。

 津波はあらゆる場所を襲い、一定の高さを超える山以外は全て海の中へと沈んだ。

 波が到達していない場所以外は。


「見つけたぜぇ!」


 一部だけ、波が到達していない場所があった。

 津波がそのままの形で時を止めていた。

 世界の端、ドイツである。

 カムサはすぐさま自らの触手で海面を叩き浮き上がると、ドイツ目掛けて急降下した。

 その衝撃の余波で、アメリカ大陸は壊滅した。


「ぶっ潰れろ!!」


 一度成層圏まで上がったカムサは、触手を下部に集めドリルのような形を作ると猛烈な勢いでドイツへと落下していく。

 だが途中で、見えない壁に神は遮られた。


「まだまだ……負けませんよ!」


 クレケンズお得意の時間魔術だった。

 時の止まった空間は物理法則を無視し、何物にも傷をつけられない。

 だが……何事にも例外は存在する。


「カムサは支配の神だ、あらゆる物を支配する……物や空気、時間や空間、何もかもをだ!」


 時の止まった空間を、カムサが支配していく。

 編み物から糸が一本ずつ解けていくように、時間が進んでいく。


「やめなさい! ここにはノイチェを復活させるために集めた品の数々が──」


「もう諦めろ、死んだ人間は帰ってこない。 報いを受ける時が来た」


「考え直してください、あなただって彼女が帰ってきた方が嬉しいでしょう!」


 停止した空間が破れ、カムサは落下する。

 再び、クレケンズが数枚の障壁を築く。


「他の人たちだってそうです、霊力を利用すればあなたの友人達だって生き返るのですよ!」


「あぁ」


 一枚目の障壁が破れた。


「霊力を用いれば、より豊かな生活が築けます! それに以前と違って魔族は人間と仲良くできるはずです! 彼等は私が導きましょう!」


「そうかい」


 二枚目の障壁が砕けた。


「何故です、何故! 何故君は僕の理想を理解してくれない! 君になら分かる筈です!」


「分かるさ、お前は俺より優秀な頭脳の持ち主だからな、そういう高尚な理想を抱くのは分かる」


「ならば、何故!」


 最後の障壁が、ぶち壊された。


「初めて会った時からな……俺はお前のことが最高に大っ嫌いなんだよ!!!」


「そ……そんな馬鹿な理由で────」


「くぅぅたぁぁばぁぁぁれぇぇぇぇぇ!!!!」


「私の、私の理想が、全ての生命が安寧に生きられる世界が────!!」


 巨大なドリルが、地球の地殻を深々と貫いた。

 その真下に居たクレケンズと言う男と共に。

 それと同時に、停止していた津波がドイツを覆いつくした。



ラスト付近はこの一撃に桃玉レボリューションが脳内で掛かっていたので初投稿です

次か次の次位で終わりかなぁ……?

地球環境もほぼ終わっちゃったしね……


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