我はカムサ
https://www.youtube.com/watch?v=yVIRcnlRKF8
Requiem For A Dream Full Song HD
MD215年 11/26 16:00
地球が荒れ始めていた。
タリブと長老級の戦いによって地球の地軸の傾きが更に大きくなり、強風が吹き始めたのに加え……。
現在は海の水が空へと吸い込まれるように水柱を作っていた。
「成程、最初から其処に居ましたか」
原因は明白だった。
本来地球から遠く離れている月が、徐々に接近しつつあった。
それにより本来保たれていた潮汐力が崩れ、月の重力に引かれて海水だけでなくあらゆるものが空中に浮かび上がっていく。
そんな人や大地すら浮かび上がろうとしている中で、クレケンズと黄龍は徐々に接近しつつある月を見据えていた。
「黄龍、あなた月を壊したことはありますか?」
「無論無い」
「あったらこんな話をする必要もありませんからねぇ……壊せそうですか?」
「可能だ、だがそれには時を要する……忌々しい置き土産のお蔭でな」
黄龍はその巨大な顔を動かし、忌々しそうに言った。
タリブが自爆して直ぐ、地球から霊力が根こそぎ消滅させられていた。
神は地球上の霊力を全て月へと転送していたのだ。
無論龍脈がある限り霊力は直ぐに生産されるのだが……消費量に対し、龍脈の生産量が追い付いていなかった。
結果、力ある魔族ほど力を振るえないという事態に陥っていた。
「斯様な事態に陥るとは、不覚である」
「仕方ないさ、必要な時に龍脈から力を引き出す僕と違って君は国を纏めるために常に圧倒的な力を持っていなきゃいけなかったからね」
「慰めは痛み入る、だが今はその様な慰めは何の解決にもならん」
「しょうがない、なら今は僕が何とかしよう」
黄龍はゆっくりと頷くと、力なく頭部を地面に横たえた。
クレケンズは吹き荒れる風を物ともせず、ゆっくりと地面から空中へ浮かび上がった。
「グラーバが居ればもう少し楽に壊せたかもしれないが……仕方ないか」
彼は両手を合わせると目を閉じ、精神の集中を始めた。
月の直径はおよそ3500キロ、これは地球のおよそ1/4の大きさであり流石のクレケンズでも相応の準備を必要とした。
彼はまず己の拠点があるドイツの龍脈から霊力の引き出しを図った。
「月の落下速度が増したぞ朋友」
「────」
黄龍の言葉にも、彼は答えなかった。
それ程深い集中が必要だった。
その間にも月からの引力は強まっていき、ついには大地が自らの引力を振り切り浮上していく。
「まだかクレケンズ、大地が繋がりを保てなくなってきたぞ」
「もう少しだ、もう少し────」
クレケンズの体に霊力が満ちつつあった。
ドイツにある龍脈は輝きを放ちながら急速に霊力を産み、それをクレケンズへ送る。
その霊力をクレケンズが右腕に編み込み、術式が完成しつつあった。
「もう持たんぞ!」
「──待たせたね」
黄龍の巨大な体すら浮き上がり、月が中国の空を覆った頃彼の魔法は完成した。
クレケンズは間髪入れず右腕を月の中心へ向けて突き出した。
すると彼の腕の中から、腕の大きさと同じ一本の槍が物凄い勢いで伸び始める。
槍はどんどん伸び、伸びていく最中どんどん巨大化していった。
「黄龍、貫いた後の破片処理は任せたよ」
「一番面倒な所を任されたが……仕方なし」
物凄い勢いで伸びた槍は、そのまま月を貫通し破壊した。
真っ二つに割れた月は、そのまま方々に罅が入り細かな破片となって地球へ落下していく。
その破片を黄龍が睨みつけると、途端にそれは燃え尽きてしまう。
「しかしおかしいな、山坂君ならこの後のリアクションが当然あると思うんだけど……」
月が壊れ、破片が地球に落下していくのを眺めながらクレケンズは首を傾げた。
敵対しているもう一人、最後の管理者である山坂からのリアクションが何もなかったのだ。
そう思案している最中、大きく鈍い声が地球に響いた。
「 オ ボ エ タ ゾ 」
────────────────────────────────────────
「!?」
瞬間、クレケンズの姿勢は拳を突き出した状態に戻っていた。
右腕からは白く巨大な槍がまっすぐ月へと伸びながら巨大化していく。
「い、今のは……」
真っすぐに槍は伸びていく、先ほどと同じように。
だが先ほどと違うことが直ぐに起きた。
先ほど月を破壊した槍が、今度は当たった瞬間に砕け散ったのだ。
それどころか、今度はその槍が月よりも早くクレケンズと黄龍目掛け意志を持つ様に落下していく。
「くっ……黄龍!」
「仔細なし」
破片はミサイルの様に無数に落下してきたが、直ぐに黄龍の体がクレケンズを覆うとそれは弾かれて地面に落下した。
「どうした、逸ったかクレケンズ」
「……今、確かに僕はあれを破壊したはずだ……黄龍、君は月が壊れるのを見なかったのかい」
「ふざけている……訳でもないな? だが議論は後だ、まずはあれを破壊せねば」
月が目前に迫っていた、あらゆる物体が月の引力に吸い込まれその地表に衝突し散っていく。
「そうだが……すまない、今の僕にはもう霊力が残っていない」
「ならば朕が行こう」
そう言うと、黄龍は自らを重力の軛から解き放ち空へと舞い上がった。
「黄龍! 待つんだ、あれは何かおかしい!」
「お前は黙って其処で休んでいるといい」
そう言って、黄龍は残った霊力を駆使し巨体を浮かび上がらせると月へと真っすぐに飛翔した。
五つの球は明滅し、彼の力が残り少ないことを知らせるようだった。
「よせ、よすんだ黄龍!」
龍は答えなかった。
そのまま月へと衝突すると、一度何かに弾かれたが直ぐにその障害を食い破ると内部へ突入した。
それを見ていたクレケンズの体もまた地面から浮かび上がっていく。
「くっ……地上に留まっていられない、地球が割れていく!」
彼が立っていた大地すらも浮かび上がり、地球の半分が月へと向かって浮上していた。
そんな中で彼は龍の咆哮を聞いた。
黄龍の声だった。
龍の咆哮が響いた後、月は割れ、その引力に引かれていた大地は今度は重力に引かれて急速に落下していった。
その月の破片ごと。
その中で、クレケンズは再びあの声を聞いた。
「 オ ボ エ タ ゾ 」
────────────────────────────────────────
再び、世界が巻き戻った。
今度は黄龍が月へと突入していく間近だった。
「………またか!? くそ、黄龍! 戻れ、戻るんだ!! 何かがおかしい!!」
だが、黄龍には既にその声は届かず。
先ほどの繰り返しの様に黄龍は月面へと衝突し……今度は月面から生えた槍で串刺しになった。
意趣返しにあの男が最初に突き立ててきた槍を突き立ててやったのだ。
龍の咆哮が世界に響いていた。
今度は月の崩壊を伴わず、その命の絶命を知らせる鐘として。
「黄龍──!」
千年前、魔族の国を興すと立ち上がった若き中国の友人は。
たった今その友人の前で死んだ。
龍が持っていた五つの球は色を失くし、我の表面に亡骸と共に転がっていた。
「山坂君、君は……!」
月が、迫っていた。
巨大な月が、地表の悉くを吸い上げながら。
何もかもを食らいつくさんという意思を見せながら地球に迫っていた。
そう、我は全てを支配する者。
「我はカムサ」
瞬間、我は腕をクレケンズに叩きつけた。
我はカムサでありお前達もカムサになるので初投稿です
来週はちょっと更新無理っす!許してください、センセンシャル!
支配の神、カムサ/Kamsa,God of rule
伝説のクリーチャー:エクィロー
飛行、呪禁、破壊不能、二段攻撃、警戒、速攻、絆魂、瞬速、到達、威迫
プロテクション(有色の呪文)
滅殺6
支配の神、カムサが唱えられた時あなたはこのターンの後、ただちに追加の1ターンを得る。
このクリーチャーが戦場にいる間、全てのダメージは軽減することが出来ず、回復することも出来ない。
⓪:新しいゲームを支配の神、カムサが居る状態で始める。 そのゲームに勝利したものがこのゲームの勝者となる。
15/15
「敗北は無い」




