閃光/Flash
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KOWLOON YOU-MA GAKUEN KI ~BGM~『Fire brigade』
MD215年 11/26 15:23
永村と長老級の魔族二体が戦い始めてから、およそ六時間が過ぎていた。
この三名の戦いにより、中国大陸は最早その原型を留めてはいられなかった。
大地は霊力をタリブに吸い取られ続け、元の自然豊かな姿から幾何学的な模様をした鉱石が露出する姿へ作り替えられていた。
空も雷雲が常に轟き、タリブとその間にある物を悉く焼き尽くす。
川や湖はクレケンズによって永久に壊れることのない武器として使用され、空中に固定された雨粒は全てを切り裂く盾であり剣となった。
「…………遅いな」
しかし、そんな状況下でも変わらないものがあった。
三名は未だ誰もが傷を受けておらず、遠巻きから眺めていた第三者達にはこの争いは永遠に続くかに思われていた。
そう、戦っている三名以外には。
永村の口からぽつりと言葉が零れた。
「おや、誰か待ち人かい?」
「少しね」
クレケンズの問いかけに、永村はそう返す。
そしてタリブの指が返事と同時に動き、紫色の波がタリブの周囲に迸った。
「またそれかい? やれやれ……」
「いい加減余興にも飽いたな、クレケンズ」
タリブの全身から放たれる波からクレケンズ、黄龍の二人が距離を取った。
波は揺れながら高速で伸び、波と波の間にある空間を切り取る。
それはさながらケーキを切り分けるように綺麗に分断された。
「パイの切り分けには便利そうな能力だ」
「あぁ、よく切れるんだよこれ。 君の体でも試してみるかい?」
切り取られた空間は空中に球の様に浮かび上がり、元あった空間は切り取られた前後の空間と接合していた。
そんな空間が中国のあちこちに浮かんでいた。
「皇帝がその様な玩具で遊ぶとでも?」
「それは残念」
タリブは腕を伸ばし、切り取った空間が入った珠からその腕を黄龍の腹部目掛けて飛び出した。
「むぅっ……!」
黄龍の腹部が僅かに浮き上がり、苦悶の表情を一瞬浮かべた黄龍だったがそれは直ぐに笑みへと変わった。
「捕らえたぞ、クレケンズ」
「流石」
「ッ!?」
地面に巨大な物体が落下した。
今しがた黄龍の腹部を殴りつけたタリブの左腕だった。
「大した技術である、朕をここまで手こずらせたのはあのロシアの鳥以来であろう」
先ほどタリブの腕があった場所から、紫色の液体が洪水の様に溢れ出した。
「……無限に近い広がりを持つ虚数空間の中に居るタリブの場所を掴まれた?」
「朕は皇帝であり、この世の森羅万象全てを掌握する者である」
「六時間も君と遊んでたんだ、それ位は簡単にいけるさ」
「なるほどね、それは困った」
永村は本気で困っていないような顔でそう呟いた。
「道化師、舞台に上がる時だ」
黄龍の持つ五色の球が明滅した。
それに合わせて、半透明だったタリブの体が徐々に色を取り戻していく。
「時間稼ぎをしていたのはお互い様ってことか……一号、計画変更だ」
永村は必死にタリブを虚数空間に留めながら、とある相手に連絡を送った。
それは以前、日本で永村がサイボーグに改造した女へとだ。
「…………もしもーし?」
だが、彼女からの返信は無かった。
代わりに。
「君の待ち合わせ相手なら残念ながら、正気に戻ったらしい」
「あ~……そういうことか」
クレケンズの返事に、永村は右手を顔に当てた。
「君、ロシアの最後で干渉したね?」
「ご明察、あの脳みそのデータを頂いておいたよ」
「やられたなぁ」
「ふふ、しかし君も大した計画を立てたものだね。 まさか龍脈に爆弾を仕掛けて中国諸共吹き飛ばそうとするなんて」
笑いながら、クレケンズは言った。
「今までに支配した地域の全魔族を投入して中国各地にある龍脈に爆弾を仕掛け、最後は黄龍諸共吹き飛ばして掃除する……あくどいなぁ」
「効率的と言ってほしいね」
「だがその企みもこの男によって封じられた訳だ、詰みだな道化師」
「あぁ、悪いが君が煽った人達にはきちんと死んだと思われていた人達を生かした状態で返してあげたよ」
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凶鳥が死ぬ間際、地面に飲み込まれ消えていった芽衣子、虎牙、ターモの三名。
だが実際はクレケンズによって密かに回収されており、管理者達の計画への一手として秘匿されていたのだった。
結果として彼らは……。
「いやー死ぬかと思ったでござるよ」
「儂は完全に死んだと思っておったんじゃが?」
「ウ、オトコ、タスケテ、クレタ」
「え、死んだって聞かされてたからここまで戦いに来たのに私達はじゃあ何を……?」
と言った感じに自然に永村の計画は瓦解した。
その後、事のあらましを聞かされていた芽衣子は軍の指導者である徳川に永村の計画を伝え……爆弾代わりのエクィローの眷属達を残らず掃討したのだった。
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「今頃はここから逃げ出してる頃じゃないかな」
「なるほどね、そりゃ……参ったな」
クレケンズの言う通りだった。
永村の計画は概ねがその通りであり、あとは爆弾の配置完了の連絡を待つだけだったのだ。
だがその連絡が来る前に、長老級の二人と戦うことになったことだけが彼の計画の狂いだった。
「さて、これからどうする? 降伏するかい?」
「したら生かしてくれる?」
「僕は許そう……だが黄龍は許すかな?」
「許さぬ」
「死刑宣告だったかー、ならお断りだ」
永村はそう言い切ると、コックピットにある巨大なドクロマークのスイッチを押した。
白色の体が赤と白に点滅を始め、両腕や体についた目は止めどなく動き回り、タリブの体はどんどん膨張を始めた。
それは水風船のように膨れ上がっていき、タリブが切り取った空間の中にもそれは映っていた。
「正気かい、そんなことをしても意味は──」
「無いかもしれないね、結局私達はちゃぶ台をひっくり返そうとしているだけだ」
永村はコックピット内の計器を操作しながら、片手間に呟いた。
「魔族は人類と違って個ではなく種の事を考えることが出来る、どちらかが滅亡しないと種が滅亡するような状況ならどちらかは喜んで死ぬだろう」
「その通り、それこそが朕の目指す理想の国家である」
「対して人間は種じゃなく個の生存を優先する生き物だ、お互いに核を持ったらどっちかが滅亡すると分かってても撃っちゃう生き物なんだよ」
話している間もタリブは膨れ上がり、ついには地球の全天にタリブの歪んだ姿が映った。
天使の輪は歪み、肉体も原型を留めず、肉体は赤く膨れ上がっている。
「そんな愚かさが私や彼等は好きなのさ」
「愚か者め、貴様程度が爆発した所で朕が傷つくとでも思っているのか?」
「やってみなければわからないさ」
「全くどうして君たちは……」
膨れ上がり、地球を覆ったタリブに対して黄龍は泰然として構える。
クレケンズもまた自らの周囲の時間を止め、攻撃に対して完全防御の構えを取った。
「さて、派手に爆発してみようか!」
永村のその言葉を最後に、地球は激しい閃光に包まれた。
空間は捻じれ、地球の地軸が傾く程に巨大な爆発が起きた。
だがその巨大な爆発はほんの一部を除いて、残りは全て宇宙のある場所へ向かってエネルギーを届けていた。
……爆発の後、空には月が輝いていた。
九龍妖魔学園記の移植版が発売されていたので初投稿です
九龍はいいぞぉ!でも移植版は何かバグがくっそ多いらしいのでPS2版のリチャージを皆で買おうね!
アロマがうまいぜ……
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インスタント
あなたは、あなたの手札にあるクリーチャー・カード1枚を戦場に出してもよい。そうした場合、あなたがそのマナ・コストを最大(2)まで減らして支払わないかぎり、それを生け贄に捧げる。
「あとは任せたよ、山坂君」




