時間対空間
https://www.youtube.com/watch?v=EnDXGQmCz3U&list=RDEnDXGQmCz3U&start_radio=1
Mittsies - Vitality
MD215年 11/26 09:01
地面が激しく鳴動した。
タリブのパンチは地面を貫通しながらクレケンズを地中深くへ叩きつけた。
その威力は腕が伸び切った後もクレケンズを地中深くへ送り続けていた。
「もう二度と顔を見せないでくれると助かるねぇ」
永村はタリブの操縦席で、今彼自身が開けた穴を見つめていた。
腕を引き抜いた後に出来た穴は巨大で、先ほどまでそこにあった小さな湖が地中送深くへ流れ込んでいく。
「ま、戻ってくるよね」
穴の底で赤い光が迸った。
瞬間、タリブの頭部を熱線が貫いていた。
「やぁ、お待たせ」
「いやいや、私も今来たところだから」
デートの待ち合わせでもしていたかのような会話をしながら、穴の底から再びクレケンズが現れた。
相変わらず無傷の姿で。
「しかし君、ずるくないかい? 攻撃するときはこっちに干渉できるのにこっちからは干渉できないなんて」
「そういうコンセプトで作ってあるからねぇ、君達魔族はほら、色々ズルが出来るからさ」
「成程、お互い様ってわけだ」
「そうそう」
和やかに話をしているように見えるが、もしこの場に田崎や山坂が居れば怯えていたことだろう。
その位二人の圧は凄まじかった。
「さて、確か君の名前は……永村君だったね」
「お見知りおきを頂いて光栄だよ、クレケンズさん……いや博士と呼ぶべきかな?」
「それなら僕も君の事を偉大な投資家さんと呼んだ方がいいかな?」
タリブの天使の輪、その一部がクレケンズ目掛けて伸びた。
クレケンズは空間の一部の時間を止め、再び無敵の壁を作成してそれを止めた。
「いやいや永村でいいよ、クレケンズ博士」
「そうか、ならそう呼ばせてもらうよ永村君」
不意を突く攻撃を意にも介さずクレケンズは会話を続ける。
「それで、君も僕と戦うのかい永村君?」
「もちろん、君達に生きていられると不愉快だからね」
永村の言葉にクレケンズは少し驚いたような表情を浮かべ、直ぐにそれは落胆へと変わった。
「驚きであり残念だ、僕が聞いていた君の人物像と今の君はかなり違うらしい」
「他人からの伝聞は歪んで伝わるものだよクレケンズ博士」
「だとしても一致している部分が少しはあると思っていたのだけどね、君は自分の一時の感情を優先して大局を見れない人間なのかい?」
今度はクレケンズが動いた。
天使の輪を抑えている時間の壁の範囲を増やし、ゆっくりとその輪へと押し込んでいく。
「投資家としての私なら確かに君達と協力するのが無難な選択肢なんだろうけど……分の悪い賭けも嫌いじゃないんだよ私は」
「だから破産して自分の全てを失ったんだろう? 家も家族も富すら無くしてこんな無謀な計画に身を任せている様じゃ君の能力も知れているね」
輪の棘を抑え込むと、クレケンズは次の攻撃を即座に行う。
タリブの頭上から巨大な槍がタリブ目掛けて飛来し、彼を貫いた。
だがそれも、やはり別の空間に潜むタリブを素通りするだけだった。
「やっぱりズルいなぁ、攻撃が効かないのは」
「でもそれも直ぐに対処してくるんでしょう?」
「はは、頑張るよ」
永村はクレケンズの挑発を軽くいなしながら、軽口を返した。
「ところで、僕に構っているだけでいいのかい? そろそろ彼も起き上がってくると思うけど」
「あ~、嫌な事思い出させるねぇ君は~」
突如、地面の数か所が大規模に抉れた。
空には暗雲が立ち込め、雷鳴が轟き、それは現われた。
「皇帝である朕を抑えつけるとは許されざる暴挙である……万死に値する」
「遅かったね黄龍、寝坊かい?」
黄金色の龍にして魔族の国を興した者、黄龍が空に浮かんでいた。
巨大だった。
タリブやマンジェニと言った三神ですら圧倒的な巨大さだが、黄龍は格が違う大きさである。
中国の国土全てをその体で覆うことが可能な龍の顔は怒気を纏っていた。
「其処の小僧に眠らされていた、この朕がだ」
黄龍が言葉を吐き出すたびに、雷鳴が大地へ落ちた。
彼の周囲に浮かぶ珠もまた燦々と輝く。
「実に不愉快であり、不敬である」
「私が見せた夢はお気に召さなかったみたいだね」
「どれだけ不愉快な夢を見せていたんだか……彼があんなに怒るのは珍しいよ?」
「ははは、内緒」
無数の稲妻がタリブへ向けて落下し……タリブは直撃する寸前に空間に穴を開け、それをクレケンズの居る場所へ向けて繋げた。
自らの横に開いた空間から、即座に落雷がクレケンズを焼いた。
「ぐっ……!」
「なるほど、確かに君にダメージが通るくらいには怒ってるみたいだね」
「相変わらず不意打ちとは卑怯な手ばかり使うものだ」
「いやいや、君なら避けてくれると思っていたんだよ? それとも僕が君の力を少し買いかぶりすぎていたかな?」
先ほどの皮肉の意趣返しとばかりに笑顔で嫌味を送る永村。
どうやら、既に第二回戦は挨拶を終え開幕のゴングが鳴っていたようである。
「中々言うじゃないか……だが僕と彼の二人に勝てるつもりかい?」
「さっきも言っただろう? 分の悪い賭けは嫌いじゃないんだよ私は」
「ではそれが口だけではないという事を、朕に見せてもらおうか……!」
かくして、1対2の戦いが始まった。
この戦いは数時間にも及び、中国全土の地形そのものを書き換えてしまうほどの戦いとなるのであった。
エゴサしてたらツイッターで自分の作品の評価があったので初投稿です
褒められるのは嬉しいなぁ!
でも更新遅くてすまない…すまない…




