残りの色と例外について話したら
MD215年 5月1日 PM15:53
「うーむ…やはりお茶は良いのう、生きているという実感がうんぬんかんぬんじゃ」
芽衣子は詰め所の一室で、アレーラと共に向かい合いお茶を飲んでいた。
「そうですねぇ…云々かんぬんですねぇ…」
「あの…すみません、私のために色々と…。多分、私のことを元気付けてくれてるんですよね?」
コトッ、と湯飲みを机に置きアレーラが言う。
その言葉を聴いた芽衣子も、湯飲みを机に置く。
「さて…どうじゃろうな?単に知識をひけらかしたくてやってる事かも知れんぞ?」
「青は可能性の色じゃからな、お主に新しい可能性を授けたいという自己満足かもしれんのじゃぞ?」
芽衣子は瞑っていた両目の内、右目だけをうっすらと開きアレーラへと返す。
「それでもいいんです、突然来た余所者の私に気を使ってもらえるだけでも嬉しいんです」
「お主…ええ子じゃのう、ちょっと阿呆じゃけど」
「ありがとうござ…え?アホ?」
アレーラの反応を無視しつつ、芽衣子は再び自身の前に指で輪を描き再び時計回りに五色の玉を作り出す。
「それでは授業の続きといこうかの、先ほどまではえーっと……」
「そうそう黒まで話したんじゃったな?白、青、黒について話したが改めてどういう特色の色か覚えておるかの?」
「えーっと…確か白が皆の為に皆で頑張ろうって色で…青が可能性を広げる事を重視する色…黒が自分の事を一番大事にする色、でしたよね?」
「うむ、正解じゃ」
「偉いぞアレーラ、何処ぞで立ちながら居眠りこいてる阿呆よりよっぽど偉いの」
「あははは……ありがとうございます。」
「では此処からは残りの色、赤と緑について説明するとしよう」
芽衣子はそう言うと五色の内、赤い玉を突付き発光させる。
「まずは赤じゃ」
「赤は自由を求める、人生で最も重要なこととは、自分の感情に従って自分が望むことを望むときに行うことだと信じている色じゃ」
「赤はその時々で変化する心をありのままに受け止める、そのために赤は無秩序を許容し法や規則を嫌う。」
「黒とは異なり、赤が指針とするのは自分の利益ではなく自分の感覚である」
「これには友情、愛情、忠誠心なども含まれる、よって自分の利益を投げ打って他者のために尽くすこともまた赤の取りうる行動の一つなのじゃ」
「赤はまた炎と破壊の色であり、最も近視眼的で刹那的な傾向が強い色でもある」
「……どうじゃ?分かったかの?」
「えーっと……要するに赤は、感情的な色ってことですか?」
「説明のまんまじゃな…、まあそういうことになるの。自分の気持ちに従って動く色じゃ」
「仲間に出来ても敵に回っても面倒な色じゃよ赤は、何せ約束する事を嫌う上に束縛も嫌う」
「赤がする約束なんて約束しない事を約束する、位なもんじゃ」
芽衣子はそう言うと、苦々しい顔をしながら赤への文句を言う。
「あははは……」
昔赤色の人と何かあったのかな……と思うアレーラであった。
「ごほん、では次は緑の説明といこう。五色の中の最後の一色じゃな。」
芽衣子は咳払いをすると緑色の玉を突付き、発光させる。
「緑は受容を求める、世界が自然のまま、ありのままに存在することが正しいのだと考える。すべての生命は自然の秩序の一部として相互に依存しあっていると考える色じゃ」
「緑は人に必要なことは、その秩序を知ってその中で生まれもった役割を受け入れることだと考える」
「緑は世界が人為に干渉されず、その自然な姿のまま広がっていくことだけを望む」
「白と異なり、緑は秩序とは人の手で組み上げるものではなく、元からあるものだと考える」
「緑は植物の色であると共に、保守的で心霊主義的な面が強く、不要な人為の象徴として最も機械を嫌う色でもある」
「緑の説明に関してはまあ何となく体感で知っておるじゃろ?お主」
芽衣子は右手で湯飲みを持ち、啜る。
「なるほどー……確かに私の村のご神木様も戦争前に作られた~って言うキカイ?とか言うのは嫌っていました」
「じゃろうなぁ……グロウラは文明毛嫌いしておったからのう……」
「グロウラ?」
聞きなれない単語に、アレーラが聞き返す。
「むむ?お主知らぬのか?。お主が住んでいた村の神木の名前、グロウラって言うんじゃよ」
「へー…そうだったんですか…知らなかったです」「
「あれ? でもどうして市長さんがご神木様の名前を知ってるんですか?」
「ん?言うておらんかったか? 儂あの神木の弟子じゃ」
「えぇ!?」
芽衣子の発言にアレーラは驚き、思わず立ち上がる。
「おわっ!急に大声出すでないわ!」
アレーラの大声に思わず、芽衣子は湯飲みを倒しそうになり慌てる。
「あ、す、すみません……でも知らなかったです、ご神木様…あぁいや、えっとグロウラ様? にお弟子さんが居たなんて。」
芽衣子に怒られ、慌てて謝罪しながら椅子に座りなおすアレーラ。
「まあずっと昔、お主が生まれるよりもずーーーーーっと前じゃからのう。知らなくても当然じゃろ」
「へー……お弟子さんって普段何をしてたんですか?やっぱり修行とかです?」
「こう魔法の習得とか…」
アレーラはそう言うと、自分の右手を突き出し左手で押さえぷるぷると震えながら魔法を作る真似をした。
「うーむ…そうじゃなぁ、基本は勉強じゃよ、魔法の習得もあったが過去に何が起きてどういう歴史を辿ったのか、とかな」
「後はまあ人身掌握とか戦術、戦略に…街の作り方とか…まあ色々じゃ」
「サツホロを作り上げる為に必要な事をあやつには教えてもらっておった…じゃから今回の事件は正直私怨も入っておってな」
そう言うと、芽衣子に窓から光が差し込む。
その白い髪と和服に包まれた白い肌が、夕焼けに包まれていく。
「正直市長としては私怨で動くなんて良くないんじゃろうが…まあ何れお主の村を襲ったであろうゴーレムどもが此処に来るんじゃろうし?」
「速いか遅いかであるのなら速い方が良いに決まっておる」
「……お主を助けておるのもそういう個人的な理由じゃよ」
「市長さん……。」
そう言い終ると、芽衣子は笑みを作り。
「なんて暗いのは儂には似合わんか!ぬふふふ!」
「お主に優しくするのは儂の都合、お主はお主の都合でそれを享受していれば良い」
「では、五色の説明も終わった所で例外の色の説明に入るとするか」
「あ、はい……って例外ですか?」
「うむ、例外じゃ、色は五色あると説明したが実はこのカラー・ホイールにはとある色が含まれておらん」
「厳密に言うと色ではないから入ってないんじゃが…」
芽衣子はカラー・ホイール…時計回りに配置された五色の玉、その中心部分に新たに灰色の玉を浮かべる。
「これがその例外の色じゃ、名を無色と言う」
「色に分かれる前の原初の色だとか色を使い切った後に出る絞りかすの霊力だとか色々言われておるが…」
「実は無色に関してはよく分かっておらんのが実情じゃ」
「分かっている事は今から言うことだけじゃ」
「無色は色ではない」
「無色に主義主張は存在しない、無色が持つのはたった一つの役割だけである」
「現実への対応、これが無色が唯一持つ役割である」
芽衣子はカラー・ホイールの中心に位置する灰色の玉を突付きながら以上の3点を説明する。
「因みに無色と言う色は主に機械」
「要するに最終戦争前に人間によって作られた創造物に当てはめられる色じゃ」
「なるほどー…。」
「さてそれで此処からが本題じゃ、最近オシマンベに向けて儂は斥候を放った」
「結果から言うとオシマンベに到達する前にゴーレム…要するにその機械じゃな」
「それらと遭遇して斥候は撤退した。」
芽衣子は机に頬杖を付き、右手で無色の玉を何度も突付きながら言った。
「しかしじゃ、お主から聞いた話ではそんなゴーレムの話は聞いておらん」
「なので今一度確認をしようと思ってな?」
「お主が目撃したのはグロウラと同じ大きさの化け物…まあ多分大型のゴーレムだと思うんじゃが」
「それだけなんじゃな?」
芽衣子は頬杖を付きながらも、真面目な顔をしてアレーラへと問いかけた。
「はい、私が見たのはご神木様と戦う二体の大きなその…ゴーレム?だけです」
「ふぅむ…そうかそうか。うむ、すまなかったな」
芽衣子はそう言うと、いつの間にか用意していた紙とペンにアレーラの証言を書きとめる。
書き留めると椅子から滑り落ちるように地面に着地し、蛇の下半身を地面に擦りながら出口へと進んでいく。
「今日はもう遅い、魔術の訓練は明日にしてアデルと共に帰ると良い」
「は、はい…でも市長さんは?」
「ぬふふ、儂はこれからまた仕事があるのでな。お主から改めて情報を聞けて助かったわ」
そう言うと、市長は真面目な顔をしながら出口から出て行ってしまう。
詰め所の通路を一人で歩きながら芽衣子は考える。
「オシマンベに現れたのは二体の巨大なゴーレム…内一体は最初に出現したゴーレムが破壊されてから即座に出現した」
「…そしてオシマンベ近郊に突然現れた統率の取れた小型のゴーレム」
「どこぞの遺跡の機械が勝手に動き出した、もしくは遺物掘りが間違って起こしたと考えるよりは…」
「誰かがゴーレムを操って、襲わせているのか?」
「それもかなり高度な知識を持ち合わせている誰かが…」
考え事をしながら詰め所を出る芽衣子、彼女を夕日が照らしていた。
「これから、忙しくなりそうじゃ…」
HI(ry
次:3人で話し合ったら投稿します




