世界が平和になったら
MD215年 4月20日 AM9:14
春…。
チリエージョも咲き乱れ、半年近く続く降雪も止み雪解けの季節…村はお祭りムードです。
狐娘の稲荷さんや絡新婦の雲糸さん、他にも様々な人達が喜んでいます。
そして勿論私も。
雪女の白雪さんは雪解けが嬉しくないみたいですけど。
そんな風に家の窓から外を眺めていると、外から声が聞こえてきました。
「おーいアレーラー、すまんがちょっと手伝ってくれんかー」
外から私を呼んだのは、隣に住んでいる村長の宗形さんでした。
私は家の中から返事を返し、家から出て宗形さんに会いに行きます。
「おう、おはようアレーラ」
「おはようございます宗形村長、今日もいい天気ですね、チリエージョも咲いて……とっても綺麗です」
「そうじゃのう、三日後には皆でチリエージョ祭りじゃしアレーラも楽しみじゃろ?」
「えぇ、雲糸さんや稲荷さん、白雪さんや皆とチリエージョを見ながら食べるお団子は最高ですから」
「はっはっは、確かにな、ついでに酒も美味いと来て…一年に一度の楽しみじゃからなぁ」
宗形村長は髭を手で触りながら、笑う。
「っと話が逸れたな、でアレーラお主を呼んだ訳なのじゃがそのお祭りに関してなんじゃ」
「お祭りに関して…ですか?」
何だろう…と少し考えた結果、私はとある答えに行き着いた。
「あ、もしかして御神木様へのお供え物ですか?」
私がそう聞くと、村長は右手で顎鬚を触りながら「そうじゃ」と答えた
「祭りの準備でワシは今は手が離せなくてのう…今日中に御神木様へのお供え物を届けに行ってきてくれんか? 山奥じゃし一人では危ないかもしれんが……」
と、村長は心配そうな顔をしながら私に聞いてきました。
御神木様…200年以上前から村の近くの山奥に生えている神木で、お祭りの時期になると今年の村の豊作や凶作。
他にも村の未来をある程度予測して備えさせてくれる生きた神木。
「宗形村長、そんな心配そうな顔しなくても大丈夫ですよ! 御神木様には昔からよく会いに行ってますし、ちょっとお供え物をして帰ってくる位なら私一人でも!」
私がそう答えると村長は顎鬚を触りながら笑顔を浮かべ。
「おぉ、そうかそうか! そりゃありがたい! お供え物の御神酒は馬車に載せてあるのでな、気をつけて行ってきておくれ」
と村長さんは馬小屋を指差した後、自宅の中へ入っていきました。
「うーん…御者とか久しぶりだから上手くやれるかなぁ…」
と私は歩きながら馬小屋へ歩いていき中へ入る。
中では1頭のお馬さんが馬車へと繋がれ、いつでも出発できるという形で待っていました。
私は早速、荷台に乗り込み手綱を握りました。
「よーし、ご神木様へ向かって出発!」
馬車はゆっくりと動き出し、ご神木様が居る山へと向かって走り出しました。
山道へ入ると薄汚れた黄色い板が見えました、薄汚れた板には可愛らしい動物と私の知らない言語で何かが書いてあります。
村長曰くあれは1000年前の文明が遺した「看板」というものだそうです。
1000年前…とても大きな戦争が起きて、私達人間と魔族の人達は築き上げてきた文明を捨てなければいけないほど疲弊したそうです。
その後人間と魔族が共に手を取り合い…お互いに協力し合って復興し今この世界があるのだとか。
看板を通り過ぎた後は、特にめぼしいことも無くご神木様が居る山奥へと到着したのでした。
私はご神木様の社の前に馬車を止め、荷台から御神酒を卸し始めました。
「ほう、今年はお主が運んできたか……アレーラ」
お神酒を運んでいると頭上から声が聞こえてきました、ご神木様です。
「はい、ご神木様、今年は私が村長に頼まれて」
社にお神酒を卸すと。社の外から私の体程もあるご神木様の根が入り込んできてお神酒の樽の中へ根を入れました。
「うむ……今年も良い出来だな、では今年の村の未来でも───」
そうご神木様が言った直後、私の背後──私の住む村の方から轟音が響きました。
私が振り返ると、村には巨大な火の手が上がり───見たことも無い何かが其処に居たのでした。
それは私の住んでいる家の3倍はある巨大さで──四つんばいになった赤ん坊の両肩から巨大な包丁が飛び出ているような何かでした。
暇つぶしに書いているので投稿は不定期です
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