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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
中国編
197/207

神の怒り/Wrath of God

https://www.youtube.com/watch?v=c2XM5cyNd5o

【P5S】Axe to Grind

MD215年 11/26 08:03


「おやおや、勢揃いというわけですか」


 クレケンズはモノクルの位置を直しながら、モノクルがずれた原因を見た。

 天まで届かんとする二体のおぞましい姿の巨人と、その足元や空を蠢く眷属達を。


「それに懐かしの顔も居るのですね」


 六つの太陽が浮かぶ地球に、今日は七つ目の太陽が浮かんでいた。


「久しぶりですね、天照」


 その七つ目の太陽は神々しい光を放ちながらゆっくりと地上へ舞い降り、クレケンズを見た。


「相変わらずねちっこい嫌味な視線ねぇ」


 彼女を見つめ返すクレケンズの視線に、天照は嫌そうな表情をした。

 クレケンズはそんな彼女の表情を見て苦笑する。


「全く……ほんっと貧乏くじ引かされる運命ね~」


 数キロ先に見えるクレケンズの顔と、その手前で頭部を失って倒れているグラーバを見て天照はため息を吐く。

 今死んだように見えている巨体のミノタウロスは直ぐに起き上がり、再び挑みかかってくることを理解しているからだろうか。

 またはこれから戦うであろうクレケンズの魔法を知っているからか。

 はたまた、この中国国内を自らの肉体で覆っている黄龍の強大さからなのか……あるいはそれら全てか。

 だが何れにせよ彼女は三神と共にこの地を踏んだ、それが今彼女をやる気にさせていた。


「以前は戦う前からブルって逃げの一手だったけど……もう俺は背中を見せない」


 天照はそう言うと、両手に白の霊力を集めると一本ずつ手の中に槍を形作った。


「過去にも、今にも、そして奴らにも!」


「はっ、いい気概じゃねーか! そういうの嫌いじゃないぜ」


 天照の啖呵を聞いていたのか、マンジェニから田崎の声が響いた。

 田崎もまたその台詞を聞いてテンションが上がったのか、マンジェニが中国の大地から眷属を産む速度が上がった。

 マンジェニが大地から霊力を吸い取る度に、その大地は真っ白な塵へ変換されていく。


「あはは、なら天ちゃんの事殺さないでいてくれる~?」


「それは駄目だ」


「やっぱり? 天ちゃんがっくし」


「初めから通ると思ってねえ癖によく言うぜ」


「確認は大事よん?」


「そらそうだ」


 天照はがっかりした様な態度を取るが、直ぐにその演技を見抜いた田崎によっておどけた態度に戻った。

 彼らは決戦の場の前であってもいつも通りの表情を見せていた。


「で?」


「あん?」


「要するに作戦通り思う存分暴れればいいんでしょう?」


「そうだ、全力でな」


「それは良いけどさぁ……本当に黄龍は抑えられるわけぇ? 天ちゃんこわ~い、しんぱぁ~い」


 身をくねらせる天照に、一体の眷属が飛び掛かった。

 それは天照の顔に取り付こうとし、即座に彼女の腕で跳ね除けられた。


「ちょっと、何すんの!」


「お前が馬鹿な事ばっか言ってるからだ」


「何よ~、天ちゃんはちゃんと心配して……」


「問題無いさ、山坂は仕事はきっちりこなす男だ」


「……ふ~ん」


 信頼関係を匂わせる言葉に、天照はオタク特有のニチャっとした笑みを浮かべ、再び眷属を嗾けられるのだった。 


「それじゃ、そろそろ始める?」


「おうよ、こっちの軍勢は多くてドローン五万だが」


「相手は中国各地から集まってくるから50万以上……もっと言うなら雑魚の数よりもそれを招集するクレケンズ達の方がやばいけど」


「キルレシオがこっちのドローンに対して1:3万の予想が出てたが……実質の所はドローンだけで一人殺せれば大儲けだな……」


「ま、だからこそ切り札切ったんでしょ~ん? 期待、してるからね」


「はっ、言われるまでもねぇ!」


 田崎の声と同時に、マンジェニが大きく一歩を踏み出した。

 中国の大地が僅かに揺れ、踏み出された大地が死んだ。

 大地が揺れるたびに、数キロ先にある万里の長城前に集まりつつあった兵士達が浮かび上がる。

 恐らくマンジェニは後十数歩で戦闘圏内に入るだろう。

 だがそれよりも早く、クレケンズは中国国内から戦える兵士達を転送させる。


「時間との戦いなのは分かってるが……どこまで時間を稼げるかねぇ」


 田崎はゆっくりと動くマンジェニの中で、後方で静止しているタリブを見ていた。

 タリブは地上に現れて以降、全く動くこともせずに静止していた。

 彼が連れてきたアメリカの天使達もまた、その周囲で浮くのみで静止しているのみである。


「まぁ派手に暴れるとしますか! 女ぁ!」


「ほいほ~い、そんじゃあ久しぶりに使っちゃいま~っす♪」


 マンジェニの行進、その戦闘を歩いていた天照は空中に浮かび上がると両手を用いて胸の前で円を描いた。

 その円はそのまま光の輪となり、鏡へと変化した。


「悪戯な子供が蝿を叩きつぶすよう、神々は勝手気ままに我らを殺す」


 天照は鏡をそのまま上空高くへ放り投げると、どんどん大きくなっていき。

 最終的に鏡は太陽を覆い隠すように固定された。

 それは丁度……巨大な虫眼鏡で太陽の光を集めるようだった。


「神の怒り/Wrath of God」


 そしてそのレンズの角度が一定を向いた瞬間、中国の大地が焼けた。

 レンズの焦点部分は温度がおよそ1万℃に達し、高熱によって溶解蒸発させる兵器となっていた。

 天照はそれを何の躊躇も無く、クレケンズへ向けた。

 ソーラシステ〇よろしく、それは一直線に光の速さで中国を焼き焦がしながらクレケンズを包み込んだ。

 万里の長城の一部は溶融し寸断され、煙が濛々と立ち上った。


「あ、あれ? あれあれ? も、もしかしてワンチャン油断してる感じのクレケンズにぶっ刺さって死んだ? 天ちゃん大金星!?」


「よし! やったか!!」


「あ、この台詞出るってことは駄目っぽそ~」


 当然ダメだった。

 煙が晴れた後で、クレケンズは何事もなかったかのようにその場に立っていた。

 そうして、彼はやれやれと言った感じで左手を振った。


「あ、やっば! 天ちゃんここまでかも!」


「は?」


 天照はその動作を見て叫んだ。

 それが彼女の最後の台詞だった。

 次の瞬間には、彼女は日本に向かって物凄い勢いで吹き飛んでいった。


「挨拶には返礼しないとね」


 クレケンズはそう言うと小さく頭を下げ、右手を鳴らした。


「それじゃあ改めてゲームを始めるとしようか」


 彼の指パッチンと同時に、中国各地から無数の兵士達と……首の再生を終えたグラーバが現れた。




待たせてすまなかったので初投稿です

因みに来週もちょっと危ういぞ!


時の引き潮/Time Ebb


Time Ebb / 時の引き潮 (2)(青)

ソーサリー

クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーのライブラリーの一番上に置く。


「昨日までの君は管理者たちの空想の産物に過ぎなかった。 僕にとってはその時の君の方が望ましい」

────大魔導士、クレケンズ

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