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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
中国編
195/207

開戦準備

https://www.youtube.com/watch?v=uQOTK2xESeo

Persona 5 Scramble OST 18 - Crossover

MD215年 11/23 12:00


 中天に太陽が昇った頃、富士山の山頂では一人の女性が海の向こうを眺めていた。


「黄龍が目覚めたのね……」


 女性は真冬の富士山の上で下着一枚で立ちながら寒さに震えることも無く、むしろ周囲の雪は彼女の体温によって蒸発すらしていた。


「いや~ん、天ちゃんあんな化け物と戦いたくなぁ~い♪」


 等とぶりっこの真似をしながら体をくねらせる女性こそ、中国にて蘇った黄龍やクレケンズと同じ長老級の魔族、天照である。

 彼女は今、日課である女性漁りから起床し右腕をぐるぐると回しその感触を確かめた。


「よっし、天ちゃん腕もふっか~つ! 塵にされたときは焦ったけど治ってよかったぁ~」


 そう言って天照は右腕を頬に擦り付けながらうっとりしていた。

 だがそれが終わると遠い目をして、再び海の向こう……中国を見つめ始めた。


「……しかしクレケンズやグラーバも一緒かぁ、今回の戦い生き残れるかなぁ」


 彼らの実力を知る天照は、先ほど永村から受けた命令を思い出していた。

 日本の戦える魔族を全員引き連れて、中国へ侵攻せよというものだ。

 当然、彼女は反対しなかった。

 以前頭の中身を弄られて以来、天照は彼らの言う事に反抗できなくなっていたからだ。

 だがそれ以外は今まで通りの思考回路であり、それ故に彼女は憂いていた。


「行きたくないなぁ~、グラーバは兎も角クレケンズと黄龍の二人はやばいんだもん~」


 と嫌々と首を振っていた。


「ねぇ、戦ちゃんはどう思う~?」


 天照は振り返り、後ろで膝をつきながら頭を垂れている女性に声を掛けた。

 徳川戦……日本の首都、東京を治める総理の立場を天照より受けている女性はゆっくりと顔を上げた。


「天照様と同格の御仁についてですか? 私めの狭量な知識では判断は難しく……」


「んも~、戦ちゃんってばかた~い~」


「は……?」


「そういう時は~、天照様なら無敵だからダイジョブダイジョブって胸押し付けながら応援してくれないと~」


「はぁ……え? わ、私がですか?」


 呆気に取られていた徳川に天照はゆっくりとにやけた笑みを浮かべながら近づいていく。


「そうそう~、ほら早く~♪」


「は、お断りでございます天照様」


「いけずぅ~」


「今はそのようなことをやっている時ではございません天照様、我々の存亡は正しく天照様のご加護に掛かっているのです、然るべき準備を」


「その加護を振舞うための英気を養いたかったんだけどなぁ~」


「昨晩百人切りを達成したお方が何を仰りますか」


 徳川は先ほど自らが通ってきた、富士山内部にある天照の閨の光景を思い出した。


「百一人でも天ちゃんは平気だよ?」


「私は彼女──いえ、職務に身を捧げましたので」


「ふぅん……ま、いいけどね」


 浮かない顔をした徳川を見て、天照は表情をほころばせながら再び中国へ顔を向けた。


「彼我の戦力差はおよそ一万対一……ひっくり返すには天ちゃんが頑張るしかないもんねぇ」


「……左様でございます、芽衣子殿や虎牙の仇を取る為にも天照様のお力が何より必要でございます」


「分かってる分かってる~、んじゃ出陣の準備よ・ろ・し・く・ね」


「御意に」


 徳川は再び恭しく頭を垂れると、閨へ通じる穴へと降りて行った。

 富士山の山頂には天照と、彼女の力の源である龍脈を封じている楔だけが残っていた。


「あ~あ、魔族になる前もデブで不細工で頭の悪い男オタクとかいうクソみたいな貧乏くじだったけど魔族になった後も貧乏くじ引かされちゃったか~」


 雲海を見ながら、千年以上前の事を思い出す。

 学校でうだつの上がらなかった自分、虐められていた自分、親からの冷淡な対応。

 その全てが今でも天照のトラウマだった。


「ま……人生ここらが引き際かな」


 そんな事を呟く彼の顔は、いやに晴れやかだった。

 天照は笑顔を浮かべながら、周囲の霊力を手に集め槍を作り……後ろの楔へ全力で振りかぶった。

 槍は一瞬で音の壁を突き破り、楔に直撃し爆発音にも似た音を富士山の周囲の土地へ響かせた。


「でも悪くない、他人が俺に縋ってくるというのは。 そして、それを救ってやるっていうのは!」


 楔に突き刺さった槍から無理やり龍脈の力を引きずり出すと、天照は巨大な光球を頭上に作り出した。

 それは直径五メートルを超えており、どんどん大きくなっていた。


「まずは……ご挨拶!」


 天照はどんどん巨大になるそれを、中国へ向けて放り投げた。

 光球は恐ろしい速度でどんどん加速していき、およそ一分後に中国方面から広がっていた雲が衝撃波と共に一斉に消えた。


「東京軍、総勢三万! 出陣準備!!」


────────────────────────────────────────


「やぁやぁミスターナガムラ、元気だったかい!?」


「やぁマイク、元気だったよ。 君は元気だったかい?」


「勿論さ! それで今日はベスボルをしに来たのかい? いや、そうだろう!? それなら早速──」


「いや今日はベスボルをしに来たわけじゃあないんだよマイク」


「えぇーそうなの? 残念だなぁ……じゃあ今日は何をしに?」


 マイクの問いかけに、永村はホワイトハウスの奥にあるそれを見上げながら言った。


「これを起こしに来たんだ」


 飢餓の神に続く、詐欺の神タリブを。


「そして君たちにも仕事をしてもらおうかと思ってね」


 にっこりとタリブを前に微笑む永村の笑みと同時に、主の呼び声によって神が目覚めた。

 世界を滅ぼすために。


来週は多分更新が無いので初投稿です


詐欺の神、タリブ  ⑬


伝説のクリーチャー:エクィロー


被覆(これはあらゆるプレイヤーからの呪文の対象にならない)

滅殺5(このクリーチャーが攻撃するたび、防御プレイヤーはパーマネントを5つ生贄に捧げる)


このクリーチャーが唱えられた時、あなたは対戦相手がコントロールするパーマネント4つを対象とする、それのコントロールを得る。


13/13


「時間と空間を操れるという事はつまり、全てを管理できるという事だよ二人とも」


「「なるほどなぁ~」」


──タリブお披露目会での会話

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