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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
中国編
194/207

現状を確認したら

https://www.youtube.com/watch?v=D_O2zAbZYeg

Persona 4 OST - Alone (Extended)

MD215年 11/23 08:00


「…………」


「…………」


 エクィローの内部は重苦しい静寂に包まれていた。


「さて、それじゃあ久しぶりの管理者会議と行こうか二人とも」


 疲れた顔をした永村は、同じ円卓に座っている残りの二人へ声を掛けた。

 

「おう……」


「あいよ」


 山坂もまた永村同様に疲れた表情をしており、この場でまだ疲労を匂わせていないのは田崎ただ一人であった。


「とりあえずまずは現状の確認からだ、山坂君頼むよ」


「へいへい、そんじゃあまず月全体の被害に関してだが……今のところ殆ど被害はない、精々割合2%の被害ってところだな」


「カムサはどうなんだい?」


「そっちに関しても問題はねぇ、資材が落下して建設用ロボが幾つか壊れた程度だ」


「そうか……カムサが無事ならとりあえずは何とかなりそうだね」


 円卓の中心に浮かぶウィンドウを見ながら、永村は安堵の溜息を吐いた。


「あぁ、とりあえず念の為だがアンカーの投下もしておいた」


「錨を!?」


 錨という言葉に、二人が反応した。


「山坂君、それは……」


「念には念をだ、これ以上遊びすぎて僕たちの計画が破綻するようなことは避けたい」


 田崎と永村は顔を見合わせると、そのまま押し黙った。


「他に聞きたいことは?」


「いや、もう大丈夫、あとは地上の報告を田崎君にしてもらうよ」


「あいよ、地上の状況だな」


 腕組をしながら、真面目な顔で返す山坂に気圧されたのか永村はそのまま報告を終えさせた。

 田崎は山坂の真面目な態度に首を傾げながら、ウィンドウを切り替える。


「まず中国の状況だが……あまり良くはないな、どういう原理かは分からんがマンジェニが塵にした地域が蘇ってきてる」


「中国の国土の7割は浄化したと思っていたが、今はどれ位霊力汚染されてるんだい?」


「マンジェニが浄化した内の二割ってところだな、中国全土は元に戻ってる様だ」


「ってことはインド辺りはまだ浄化状態を維持してるんだな?」


「そうなるがあそこは元々荒れ地だったからな、対した違いもねえさ」


「むしろ問題なのは起きてから一日足らずで土地が汚染されてるってことだ、原因は?」


 田崎は手元のキーボードを叩き、ウィンドウをその原因である龍に切り替えた。


「当然こいつだ、こいつが覆っている中国は霊力がとんでもなく活性化してる」


「流石は長老級かつ魔族の国初代書記長、とんでもない化け物だね」


「と言ってもロシアの鳥と殴り合って死んだと思ってたが……なんで蘇ったんだ?」


「さあな、元々仮死状態だったのかそれとも誰かが蘇らせたのか……」


「どっちにしろクレケンズが関わってるのは間違いないだろう、出なきゃ今更出てくるわけがねぇ」


 イラつき気味に山坂が口を開いた。


「なぁ、そのクレケンズってのは一体何なんだ? 映像で見る限りは慇懃無礼そうな奴ってのは分かるんだが」


「あー……」


 チラリと横目で山坂を見るが、当然彼は鋭い眼光で田崎を睨みつけていた。


「お、なんだ? やんのか?」


「あ、やんのか?」


「はいはい二人とも抑えて抑えて」


「「ちっ」」


 二人は永村の仲裁に同時に舌打ちをした。


「とはいえ山坂君、田崎君の言うことも最もだよ、私達は今は情報の共有は出来るだけしておいた方がいい」


「念には念をって言ったのはお前だろ、山坂。 それとも自分の過去は話したくないってか?」


「ちっ……仕方ねえな」


 先ほど自分が言った言葉を返され、山坂は困ったような顔をしながら観念した。


「あいつとは戦前同じ会社で働いてたんだ、俺が一応上司みたいな形だったが……実際の所仕事はあいつの方が出来た、性格は今と変わらず慇懃無礼な屑だったがな」


「君が自分より上の人間が居るなんて言うのは珍しいね」


「尤も、今は魔族みたいだがな」


 山坂は椅子の背もたれに深くもたれ掛ると、円卓に置かれたお茶へ手を伸ばした。


「まぁそんなこんなで俺とあの屑と……もう一人の三人で一緒に兵器開発とか新技術の開発をしてた」


「へー、どんな技術開発してたんだよ山坂」


「大体は今の三神に使われてるようなのだ、時間の遡行技術とか指向性を持ったマインドコントロール技術とか肉体変化とかオナホ化とか……山ほどある」


「何ていうか……お前の性癖の為の開発じゃないかそれ?」


「あぁ開発ってそういう……」


「よーし殺す!」


 三人は久しぶりに笑いあい、ひとしきり笑いあった後に話に戻った。


「ククク、いや、十数時間ぶりだがやっぱり笑いは良いな」


「心の余裕が出来るからな、んでその技術開発後はどうしてたんだ?」


「……まぁ、そうだな、ある実験にあの屑は女性を巻き込んで殺しその後姿を消した訳だ」


「成程、それはその……気の毒だったな」


「過ぎた事だ、あの屑も死んだろうと思ってたしな……生きてやがったが」


「しかも魔族としてだ、つまり一緒に働いてた時はまだ人間だったというわけだね」


 山坂は永村の言葉に頷くと、椅子を後ろに傾けた。


「そうだ、だから現状どんな能力を持ってるのかは分からんが……技術レベルは僕たちと同等だと思って良い。 実際南極にも声だけだが出張ってきたからな」


「南極……あぁ、君が独断で出撃した時のことか」


「あぁ、あの時も死んだ女性を蘇らせるために協力しろとか色々抜かしてきやがった」


「なるほどなぁ~、となると彼の相手は当然君になりそうだね」


「当然だ、奴は僕が殺す」


 後ろに傾けていた椅子を勢いよく前に戻すと、山坂は再び真面目な顔で言い放った。

 その彼の言葉に、残りの二人は頷くのみだった。


「まぁ僕が知ってる情報はこれ位だ、そろそろ本題に戻ろう」


「オーケー、んじゃとりあえずそのクレケンズって奴の事は分かったから次はあのクソデカドラゴンと牛だな」


「あの龍は皆知ってると思うけど……改めての復習だ。 かつて魔族を纏め上げて魔族の国を中国に興した魔族でとても優れた経済や生活基盤を整えた魔族だ」


「あとは人類の魔族化を推し進めた魔族でもあったか、そのお陰で人類から猛反発を受け……最終戦争になったと」


「その通り、あの戦争の後も生き続けていたみたいだけどそのすぐ後にロシアの鳥と相打ちになって海に沈んだ……という流れみたいだね」


「ならあの鳥はマンジェニで消さない方が良かったか?」


 田崎は少しばつの悪そうに言ったが、それはすぐに否定された。


「いや、あれはあれで生かしておくわけにはいかなかったから問題ないよ。 というか君も災難だったね色々と」


「昔お前が作ってた独自思考AI搭載型のロボが乗っ取られてたんだって? 因果応報だな」


「んだとてめぇ」


「まぁまぁ……もう千年前の事だから時効でしょ、今回は自分できちんと決着付けたんだから」


 再びの一触即発に永村が直ぐに割って入り仲裁する。


「ったく、嫌がらせされたら嫌がらせで返すのは相変わらずだな」


「お褒めいただき恐悦至極でございます、田崎様」


「はいはい話題を戻すよ、とりあえず黄龍に関してはもう少し情報を調べておく事にしよう、過去の人物ならデータが残っている筈だからね」


「調べる時間がありゃいいがな……」


 山坂の言葉に、場は沈黙に包まれた。


「急ぐしかないね、その為には今の会議もさっさと終わらせよう」


「んじゃ後はクレケンズ、黄龍と一緒に居た牛か……こいつはなんなんだ?」


「所謂ミノタウロスって奴じゃねーの? 発言と見た目からしてどう控えめに見ても脳みそ筋肉だが、田崎と仲良くできるんじゃね?」


「いやいや流石に田崎君に失礼でしょ、もうちょっとだけ田崎君の方が頭良いと思う」


「お前も十分失礼だからな?」


 ケケケと山坂は笑いながら、ウィンドウの内容を変えた。


「まぁこの牛に関しては未知の部分がでかい、黄龍と同じく調査が必要だな」


「あぁ、そんで最後は……」


「私達に残された時間だね、現状黄龍は中国の回復に力を使っているみたいで動きはないけど──」


「何れは殴りかかってくるな」


 永村は頷き、山坂が映した内容を更に細かく表示していく。


「だから私達も勝負に出る必要がある、こういう時の為に温存していた戦力を出すべきだ」


「温存してた戦力? あー……巨大戦車の資材はあるが建造間に合うか?」


「そっちじゃないよ田崎君、現地徴用した部隊があるだろう?」


 永村はそう言いながら、日本の東京部分を映し出した。

 其処には兵力数一万と書かれていた。


「あぁ、そういうことか」


「丁度札幌の市長も地震に巻き込まれて死んだみたいだしな、連中の怒りを煽る分には申し分ない。 きちんと怒りを煽る動画を作ってやるぜ」


「あとはアメリカだね、南米は好戦的な人狼の種族が多数居ると聞いてる、今から交渉すれば準備は間に合う筈だ」


「筈じゃ困るな永村、つーか地上の連中だけ集めてもしょうがねえだろ。 それだけで戦力足りるのか?」


「足りないだろうね……だからこの会議の本題に入りたい」


 訝しげな台詞を吐きながら田崎は首を傾げた。


「そう本題、私は三神の内マンジェニ、タリブの投入を提案したいんだ」


「ほぉ……」


「マジか」


 興味深そうにする山坂と、驚き気味の田崎に対して永村は頷いた。


「本気だよ、実際マンジェニ一体だとまたここまで放り投げられる危険性がある」


「俺のマンジェニが勝てないとでも?」


「可能性の話をしてるんだよ田崎君、相手がここまで攻撃してこれる以上私達は被害を抑える必要がある」


「確かに永村の言うとおりだ、あの屑も直々に出てこいとは言ってたしな、お前たち二人が出張れば文句はあるめぇよ」


 だが、と山坂はそこで区切った。


「僕はどうする? カムサは完成まであと五百年は掛かる、お前たちが負けたら終わりだぞ?」


「五百年戦って時間稼ぐか? 飽きなきゃ何とかなんだろ」


「そんな状況になったら殆ど私たちの負けでしょ……でも完成させるというのは正しいと思う、私も同意見」


「完成させるつったってなぁ、時間が……あぁ、お前もしかして……」


「ご明察、だからタリブを使うと言ったんだよ」


「はー……マジか」


 額に手を当て、山坂はため息を吐いた。

 そんな山坂を見て田崎は頭に?マークを浮かべながら、邪悪な笑みを浮かべる永村を見ていた。


「どういうことだ、永村」


「ま、それは後のお楽しみってことで……とりあえず三神の二機投入とカムサの完成を私は提案したい」


「よくわからんが……いいんじゃねえか? 俺は異議なし」


「滅茶苦茶めんどくせえが、僕も異議はない。 負けるよりは百倍マシだ」


「オーケー、それなら今回の管理者会議は終わりだ!」


「おぉ、やってやろうぜ!」 


「はぁ~……」


 意気込む田崎と永村を横目に、山坂は一人でまたため息を吐くのだった。




そろそろ終幕なので初投稿です

P5Sまだクリアできてないんですがこれは一体…


支配の神、カムサ  ⑮


伝説のクリーチャー:三神


能力不明


パワー/タフネス不明


「カムサが居る限り敗北は無い、どんな状況でもだ」

────管理者三名の認識

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