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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
191/207

全ては塵/ALL IS DUST

https://www.youtube.com/watch?v=50gyCJlDWW4

ゼノギアス BGM - 飛翔 -

MD215年 11/22 17:44


 轟音が大気を切り裂いた。

 四つの腕を用いて、飢餓の神の剛腕が世界を焼く鳥の頭上へ振り下ろされたのだ。


「やったか!?」


 飛翔したマンジェニから揉みあって落下しながら、田崎はその瞬間を目撃し声を上げた。


「甘いデスねぇ!」


 視線を逸らした田崎の顔面にイボンコの肘打ちが決まった。

 そのまま左手で彼の首筋を捕まえると、指先で触れられている部分が徐々に変色し始めた。


「ぐっ、てめぇ……! 諦めの悪い!」


「諦めが悪い? はは、何故デス?」


「見たら分かんだろ、あのクソ鳥はもう……」


「死んだ、と? そう思うのなら些か彼を過小評価しすぎデスね」


 体が徐々に変色させられていくにつれ、田崎が使っている義体の節々からエラー画面が表示され始める。

 

「汚い手でいつまでも……触ってんじゃねえよ!」


 肘打ちのお返しとばかりに、田崎はイボンコの胴体へ膝蹴りを叩き込むと無理やり距離を離す。


「クラッキングとは小賢しい手を使いやがる……殴り合いで勝てる気がしねえってか!?」


「勿論勝てますよ、ですがこのまま決着を何十年も長引かせるつもりはありませんので……手っ取り早い方法を取ることにしました」


 空中をきりもみ回転しながら、イボンコは田崎へ冷静に狙いを付けながら言った。


「デスので、まずはあなたを触媒にさせてもらいますよ!」


 イボンコは左腕を田崎へ向けると、内蔵されたワイヤーを発射した。

 それは田崎の右足へ絡みつき、イボンコはそれを高速で巻き取りながら田崎へ近づいていく。

 あと少しで再びの接触を迎える……というタイミングで、大規模な爆風が二人を襲った。


「うおっ!」


「しまった、復活デスか!」


 爆発は飢餓の神の真正面から起きていた。

 二人は爆風によって近場の地面に叩きつけられ、幾度かの回転の後に起き上がった。


「今の爆発は……オイオイオイ」


 ゆっくりと起き上がり、爆心地を見た田崎は思わず声を上げた。

 其処には先ほど頭部を塵にされた凶鳥が再び飛んでいた。

 凶鳥とマンジェニの周囲の地形は、完全にマグマが沸き立つ死の大地と化していた。


「死んでないわあいつ」


「だから過小評価だと言ったのデス、あの鳥は本当に世界を焼き尽くすまで止まらないのデスよ」


「へっ、頭を潰して死なないんなら存在ごと消し飛ばしてやるだけだ……マンジェニ!!」


 田崎の呼びかけに、神が動いた。

 足元から噴き出すマグマも彼の足である触手が触れるだけで塵となっていく。


「ではお手並みを拝見させていただきましょうか、あなたの体を奪った後でデスが」


「やってみろ木偶の坊が、俺の作品は返してもらう!」


 二人が激突する寸前、小さな揺れが起きた。


────────────────────────────────────────


 揺れは少し続いた後、収まった。

 この地震がマンジェニによる地殻の霊力搾取による地盤沈下なのか、それとも別の原因なのかは今はまだわからない。

 どちらにせよ今分かっていることは一つだけである。


「KIYYYYYYYYYAAAAAAAAAAA!」


 久方ぶりの目覚めによって、凶鳥が怒っているということのみだ。

 先ほど塵にされた頭部も、周囲の熱を集結させることによって起こした爆発ですっかり元通りである。

 凶鳥はその唯一人間であったことを感じさせる瞳を血走らせながら、マンジェニを睨みつける。


「──────」


 だが当のマンジェニは口を大きく開きながら佇んでいた。

 体の各部位からは眷属が無数に湧き出し、地面を漂白しながら凶鳥へと向かっていく。

 

「HUUU!」


 しかしそれらの眷属は大地に降り立った瞬間にマグマによって、そして最後には彼らに意識を向けてすらいない凶鳥の翼の羽ばたきによる熱波で焼け死んでいく。

 その犠牲すら気にせず、何万もの眷属が地を埋め尽くし突撃していく。

 ロシアの大地には、ゴムが焼けたような匂いが充満していた。


「&&&&────」


 地鳴りのような低い呻き声の後、マンジェニが動いた。

 地面に蠢く眷属を踏みつぶしながら、大きく口を開き、四本の腕をゆったりと動かしながら進んでいく。


「KIIILLL!」


 そんな緩慢な動きが癪に障ったのか、凶鳥は突然マンジェニに向かって突撃した。

 高速で突撃をしてきた凶鳥に対してマンジェニは四本の腕を用いて、合掌をするように頭部を、その次に胴体を塵へと返した。

 だが塵に出来なかった凶鳥の炎が三神へ直撃すると大爆発を起こし、マンジェニはぐらついた。


「%%%%%」


 爆発によって大地は焼け爛れ、散らばった炎が更に大地を焼き殺した。

 そうして広がった炎が再び集まり、凶鳥は蘇る。

 文字通り、灰の中から蘇ってくるのだ。

 千年前、彼はそういった行為を繰り返し世界を焼かんとしていた。

 世界が再び、鳴動していた。


────────────────────────────────────────


「これが伝説に伝わっていた凶鳥の力か……!」


 凶鳥とマンジェニの戦いを三人は眺めていた。

 ターモと芽衣子を背負ったまま、虎牙は血で汚れた服で汗を拭った。


「うーむ、流石の拙者もあれを起こす手伝いをしたと思うと罪悪感が押し寄せてくるでござるな」


「ターモを救うためには仕方がなかった、と思う他は無いのう。 そこについては今は考えるべき時ではあるまいて」


 小高い丘の上から凶鳥を見ながら、芽衣子は虎牙の背中から所々が砂漠の様になった地面に降り立った。

 芽衣子が降りると、少しだけ地面に敷き詰められた塵が舞い上がった。


「今は逃げ場所を探さねばならん、先ほどから続いている地震は嫌な予感をさせる」


「とはいえ何処に逃げるのでござるか? あれが通ってきた道を行けば恐らくは先ほどの様に……」


 虎牙はマンジェニを指さし、先ほど遭遇した神の眷属と切り結んだことを思い出した。


「この変な匂い、拙者嫌いでござる」


「匂いは兎も角あの物量ともう一度やりあうのは儂もごめんじゃ、じゃが……」


 芽衣子はそう言うと地面に座り込み、大地へと手を触れる。

 彼女が触れた地面は一度だけ緑色の光を輝かせたが、直ぐにそれは消え失せてしまう。


「大地の霊力が消え失せておる、いつもならば無事な土地を探す指針になったのじゃが……」

 

「見知らぬ土地で指針も無く迷子とは、遭難死確実ではござらんか?」


「おまけに定期的に空から炎や熱波が降り注ぐからのう……」


 二人はため息を吐いた。

 そんな二人を余所にターモはじっとマンジェニを見つめていた。

 まるで家族を見るかのような眼差しで。


「ターモ、どうしたんじゃ?」


「…………ワカラ、ナイ」


「分からない?」


 芽衣子は首を傾げた。


「アレ、ターモ、シッテル……カモ」


 ターモは虎牙の背中でマンジェニを指さしながら言った。


「カンガエ、ワカル……ココ、アブナイ!」


 咄嗟に背中から降りると、ターモは二人の腕を引いて走り始めた。


「タ、ターモォ!? きゅ、急に動かされると腰が!」


「お、落ち着くでござるターモ!」


「モット、トオク、イク! アブナイ!!」


「危ないって何がじゃぁ!?」


「カクレル! クル!!」


 遠方では相変わらず、凶鳥が自爆特攻を繰り返していた。

 マンジェニはただそれを受け、大きく口を開きながら……顔を大きく左へ向けていた。

 芽衣子たちの方を見ていた。

 そうして、それは前のめりに四つん這いになり……口から光を放った。

 マンジェニの顔が高速で左右に振られ、その射線上にあった全てが一瞬で塵へと還った。

  


今日はゼノギアス発売から22周年なので初投稿です

GP名古屋は惨敗でしたが友達が二日目残ったので良し!更新遅れてごめんな!


All Is Dust / 全ては塵 (7)

部族 ソーサリー — エクィロー(Equilor)

各プレイヤーは、自分がコントロールするすべての有色のパーマネントを生け贄に捧げる。


「もし、万が一無限に復活するような奴が居た場合に備えてこの兵器を搭載する。 大陸一個分を纏めて浄化できるだろう。 使うような相手が居ればだが」


────開発者、山坂のメモ

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