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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
190/207

KEEP YOUR FAITH

https://www.youtube.com/watch?v=xTH2g1JQxXc

Persona 5 Royal OST 24 - Keep Your Faith

MD215年 11/22 17:38


 巨大な質量同士が衝突する。

 歩くだけで大地を殺す無貌の神と、世界を薪として燃える鳥の形をした炎。

 両者の激突は、モンゴルとロシアの境目であった山脈を易々と崩し、溶かした。


「山が燃えて……いや、溶けておるのか!? というかなんじゃあ、あの巨大な気持ち悪いのは!」


「ハワイで見たのと似ているでござるが……兎も角今はここを離れるべきでござるな!」


「お前らはその方がいい」


「お前等? ……お主はどうするんじゃ?」


「聞くまでもねえだろ、あいつは俺のだからな、近くで見てくるさ」


 子供の様に顔を輝かせながら、田崎は芽衣子に振り替えることも無く自らの作成物を見ていた。


「ふん、ならお言葉に甘えて儂等は逃げるとしようかの、行くぞ二人とも!」


「うむ、暇があるなら戦いたかったでござるが流石にこの暑さでは拙者も無理があるでござるからな」


 芽衣子と虎牙はそう言うと凶鳥からより離れようと駆けだしたが、田崎の元から離れない存在が一つあった。


「お前は行かないのか、ターモ?」


「……アレ、ターモ、ナカマ」


「あん? 仲間ってどういう──」


「これ、ターモ! 何をボケっとしとるんじゃ、一緒に避難じゃ避難!」


「アッ……」


 ターモの言葉を問いただそうとした田崎だったが、ターモが一緒に居ないことに気づいた芽衣子が戻ってくると彼女の手を引いた。

 そして、そのまま返答の間も与えずに連れ去っていってしまう。


「行っちまったよ、まぁいいか……」


 ものすごい速度で走り去っていく二人を見ながら、田崎は頭を掻いた。

 彼の仕事は地上の魔族を全滅させることである。

 だが何となく、田崎はその使命とは逆の思いを今抱いていた。


「死ななきゃいいな……あいつら」


 そう呟きながら、田崎は飛び上がった。

 燃えながら崩れ落ちていく木を飛びつぎながら、彼が呼び出した飢餓の神を追っていく。

 凶鳥のあまりの熱量でドロドロに溶けていく地表の上を渡りながら、神の足である触手に乗り移ると今度は頭部を目指して飛んでいく。


「さて、一丁派手に暴れさせ──」


 飢餓の神、マンジェニの腰まで登った所で二発の弾丸が田崎へ直撃した。

 

「ぐおっ……な、なんだ!?」


 空中で被弾した田崎は、バランスを崩しながら落下していく。

 その中で、彼は自らの少し下にある存在を見つけた。

 凶鳥を操っていた者、イボンコの姿を。


「やべっ!」


 田崎は咄嗟にマンジェニの触手を一本操り、彼を受け止めさせた。

 そしてゴムの様な弾力の触手の上で起き上がると同時に、イボンコも少し離れた触手の上に降り立った。


「てめぇ……生きてやがったのか」


「おやおや、ご自身で作った被造物の性能もお忘れデスか? ミーは壊れない……そうでしょう?」


「そうだったな、だが塗装も破壊不能じゃないらしい。 お前にそっくりな色合いになったじゃないか」


 田崎の目に映っているイボンコは、凶鳥の上で相対した時の美しい銀色とは違っていた。

 凶鳥が目覚める際の大爆発の影響で表面の銀は溶解し、素地である黒が全身に表れていた。


「腹黒という意味デス? それを言うならあなた達の方でしょう」


「確かにな、自己の目的の為に他を利用してるってんならその通りだ」


「素直に認めるのデスね、てっきり反論されるものかと思っていましたが」


「事実だからな、正しいことは素直に認めるさ」


「ならば、ミーの考えにも素直に納得してほしかったのデスがね」


「そりゃ駄目だ、お前の考えは正しくない」


 そう言うと、田崎は右手を前に出し構えを取った。

 それに合わせるように、イボンコもまた左手を前に突き出しながら構えを取る。


「そうデスか、まぁ凶鳥が目覚めた今、もうミーにはもう一つしか残されていないからどうでも良いことデス」


「一つ?」


「えぇ、あなたを破壊するという事。 それだけデス。 それだけ……それだけが今のミーを、支えているのデス!!」


 イボンコは強く触手を蹴り上げ、弾丸の様にまっすぐに田崎へ突っ込んだ。

 

「ちっ!」


 田崎は咄嗟に真上に飛び、別の触手へ乗り移った。


「馬鹿馬鹿しい、お互いに壊れない体で無限に遊ぼうってのか?」


「確かに千日手ですが……ミーがあなたの拠点をクラッキングしていたことを忘れている様デスね」


「はっ、成程? 今度は俺を経由してマンジェニを支配しようってのか?」


「ご理解が早くて助かります……よ!」


 イボンコは背中から小型ミサイルを数発田崎へ向け発射すると、彼もまた上へと逃げていく田崎を追った。

 マンジェニを登りながらの戦いが激しくなるにつれ、凶鳥と神の戦いもまた熾烈さを極めていた。


────────────────────────────────────────


「HYAAAAAAAAA!」


 空を切り裂くような甲高い声をあげながら、凶鳥は嘴から炎をマンジェニへ向けて吐いた。

 とてつもない熱量に空間が歪み、余波で大地は溶けていく。

 ロシアの大地は最早凶鳥が復活する前のような色合いは一つも残っていなかった。

 あるのはただ、一面の赤である。


「%$&99────」


 人間の頭蓋骨を模した頭部、その大きく裂けた口から乾いた声の様なものが漏れ出た。

 吹き付けられる三千度の炎を物ともせず、マンジェニは漫然と凶鳥に向かって腕を伸ばす。

 人間の腕を模したその腕が翼の先端を掠めると、太陽の如き炎が塵を残して消滅する。

 しかし、直ぐに残っている本体から炎が追加されると凶鳥は再び炎でマンジェニの腕を焼いた。


「!”#────」


 幾度かの接触の後、マンジェニは姿勢を少し低くし……凶鳥へ雄大に飛び掛かった。

 マンジェニが飛翔の為に跳躍した大地は、即座に彼の飛翔のためのエネルギーを吸い取られ塵と化した。

 

「KEEEE!」


 だが、当然自由に空を飛ぶ凶鳥にとって避けるのは至極簡単な事である。

 凶鳥は翼をはためかせ、右に避けようとし……それに絡めとられた。


「!?!?」


 塵と化した地面から、マンジェニが歩き喰らった中国の大地から産まれた無数のマンジェニの眷属が彼の内部に潜んでいたのだ。

 それらは飛翔と同時に一斉に飛びつき、凶鳥に焼かれながら少しずつ彼の体を食らい始めた。


「KEKEK!」


 飛びつく眷属は触れるたびに蒸発していくが、雲霞の如く放たれるそれによって処理が少しずつ遅れ始めた。

 それを不愉快に思ったのか凶鳥は自らの肉体の温度を更に上げ……一瞬の暗闇に覆われた。


「S<────」


 両方の腕、その肘部分から更に一本ずつ生えた腕。

 累計四本の剛腕が、一瞬凶鳥が気を取られた隙に振り下ろされ……凶鳥の頭部から胸に掛けてが塵となって地面に舞い落ちた。



新年二発目の投稿なので大体初投稿です


たまには設定でも書き連ねてみようのコーナー


飢餓の神、マンジェニ ⑩


田崎が担当の神。

三神の中でも除菌を担当される存在であり、常にエネルギーを求めて移動している。

彼の胃は常に空腹であるが、何かを摂取した瞬間にうんことして眷属を生み出すので彼の胃が満たされるときは存在しない。

移動するたびに大地から霊力を吸い取り、大地から子供を生み出す。

その子供が周囲の生物を殺し、周囲の生物もまた眷属になる。

最終的に地球上の生物はマンジェニの子供で埋め尽くされ、エネルギー不足で死滅する。


また外敵からの脅威に備えるために壊れるという概念を消されており、物理的に破壊することは不可能となっている。

地球上の存在でマンジェニに対抗できるのは三神のみである。


上半身は人間の骸骨を模しているが両腕の肘部分から一本ずつ腕が追加されており、また足の代わりに無数の触手が生えている。

移動の際には地面深くに突き刺し、エネルギーを吸い取り、前進していく。

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