銀の竜の背に乗って
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【BGM】Shin Megami Tensei/真・女神転生ⅡオーケストラバージョンHEROISM
MD215年 11/22 16:43
「ウ?」
芽衣子と虎牙の声に気づいたターモは、疑問の声を上げながら振り返った。
ターモは元気そうに手を振ると二人へ駆け寄り……途中で見えない何かに頭をぶつけ後ずさった。
「おぉ、ターモ! 元気そうで……ってなんじゃ?」
「何かに頭をぶつけたようでござるが……ともあれ拙者達も近くに行ってみるとしよう」
頭を抑えるターモの元へ二人は駆け寄り、手を差し伸べようとした所で芽衣子の手が止まった。
「むっ」
「どうしたのでござるか、芽衣子殿?」
虎牙はそんな彼女を横目にターモへ手を伸ばし……。
「これ、よさんか!」
「あばばばばばばば!」
虎牙は昔のゲームやアニメ演出でよく見る感電姿を見せ、数秒後に後方へ弾き飛ばされた。
「ほれ見ろ、言わんこっちゃない!」
「わ、分かっていたんなら先に言ってほしかったのでござるがぁ!?」
「止める前に触ったのはお主じゃろ!」
「確かに」
両手で相槌を打つ虎牙を無視しながら、芽衣子は見えない何かから一歩離れ懐から干し肉を放り投げた。
放物線を描きながらゆっくりと干し肉は空中を進み、先ほど虎牙やターモがぶつかった箇所へ進んだ瞬間灰になって消えた。
「領域へ侵入する異物を排除するというわけか、結界に似ておるが……」
「結界ならば斬れば良いのでは?」
「似てはいるがこれが結界なのかが良く分からんのじゃ、こちらからの通行を電撃で止め、反対からの通行は単なる壁となる結界なぞ儂は知らん」
芽衣子は顎に手を当てながら興味深そうに見えざる壁を見た。
虎牙は首を捻りながら、ターモへ声を掛けた。
「結界の事はさておき、ターモ、無事でござるか?」
「ウ、ヘイキ」
「それは良かったでござる、しかしここは一体何なのでござるか? ターモ、知ってるでござるか?」
虎牙の質問にターモは首を縦に振った。
「ウ、ココ、キカンシツ」
「き、きかん、しつ? 何でござるか、その聞きなれない言葉は」
「ウ、ワカン、ナイ……」
「ふん、成程な、此処がこの鳥の機関室か。 どうりで厳重な蓋がしてあったわけだ」
「む、この声は」
機関室とは何であるのか、という問いにターモは首を振ると俯いた。
だが直ぐに田崎の声が虎牙の隣から羽音と共に聞こえてきた。
「田崎殿、きかんしつとは何でござるか?」
「人間で言う所の心臓だな、俺達の頭上にあるあの赤い奴をぶち壊せばこの鳥は恐らく墜落する筈だ」
「成るほど、では早速あの丸いのを斬るとしよう」
「いや待て待て待て! どうしてそう血気盛んなんじゃ!? 墜落するって今こ奴が言ってたじゃろうが! どうやって地上まで降りるつもりじゃ!」
「そこは気合と根性で飛ぶ他あるまい」
「飛べるか!」
意気揚々と刀を抜いた虎牙に、芽衣子はチョップを放ち刀を納めさせた。
「儂等はターモを助けろとお主が言ったから来ただけじゃ、こいつを墜落させるつもりは無い」
「ならターモを助けた後にこいつを墜落させろ」
「無茶言うな! この結界の突破方法すら分かっておらん上に地上まで戻る方法も無いんじゃぞ!?」
「やはり気合と根性で飛ぶしか……」
「ウ、ガン、バル!」
「お主等は黙っとれ!」
力こぶを作る二人を叱りながら、芽衣子は蟻型ロボットへ真剣な顔を向けた。
「良いか? 儂等はお主に助けられた恩義はあるがそれだけでお主の為に命を投げ捨てるなんて事はせん、協力関係というのは対等に物事をじゃな……」
「分かってる、地上へ降りる手段さえあればいいんだろ? それなら既に用意してある」
「うむ、分かれば──ってなに? 既に用意しておるじゃとぉ? ……何か嘘くさいんじゃが」
「そこは知らねえよ、俺の言うことが信用出来る出来ないはお前の考え方じゃねえか」
「今までまともな事殆どせんかった癖にいきなりまともなことを抜かしおって……」
渋い顔をしながら、二人は居眠りをしている虎牙とターモへ向き直った。
「とりあえず、降りる方法はあるらしいが……どうしようかの?」
「拙者は別にどちらでも良いでござるが、そもそもターモはここから抜け出すというので問題ないのでござるか?」
「ウ、ターモ……イキタイ、デモ、イボンコ、ターモ、ホノオクウ、メイレイ」
ターモはそう言うと大きく口を開き、息を吸った。
すると真上にある深紅の心臓から漏れ出した炎がターモへと吸い込まれていく。
「おぉ、お見事」
「ターモ、スゴイ?」
「うむ、凄いのう。 ……しかし炎を吸い込む様に命令されているというのは些か不可思議じゃな」
「確かに疑問は残るが、現状それを探ってもしょうが無いでござるな」
「それもそうじゃな、ターモが儂等と行く気を示しているのなら、儂等もそれに応えなければ」
虎牙と芽衣子は目線を合わせ、頷き合うと互いに武器を取り出した。
「ウ?」
「離れておれターモ」
「お主と拙者達を妨げるその壁、切り捨てる!」
「デモ、メイレイ……」
「なぁに、そんなもんは後から考えればいいんじゃ! やらなきゃいけなかった事だと言うのなら、後で儂等が一緒に手伝ってやるわい!」
「えー、拙者もでござるかぁ?」
不満そうな声を上げながら、虎牙は笑っていた。
「では!」
「派手に暴れて候!」
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「では、やはり交渉のテーブルに着くしかありませんね。 あの子の命を握っているのはミーなのですから」
時は再び現在へ。
田崎へ差し出された銀色の右手を、彼は述べも無く払いのけた。
「──断る「
「ほう? では彼女がどうなっても良いと」
「あぁ、構わんぜ。 お前にどうにか出来るんならな」
「どういう……まさか!?」
イボンコの顔に赤い光が煌めき……鉄を切り裂く斬撃の音と共に凶鳥が猛烈に傾き始めた。
「よくも……ミーの凶鳥に傷を!」
「へっ、元々こいつだって人間だったんだろぉ? だったらこいつはお前のもんじゃあなくて、こいつ自身のもんだ!」
「このまま凶鳥が墜落すれば再びこれが目を覚まし、世界を燃やすと分かっているのでしょうね!」
「構いやしねえ、こんな鳥一匹ぶっ潰してやる! だがな……!」
言葉を区切ると、田崎はイボンコとは反対側へ一気に走り始めた。
「そいつはまた後でだ」
「待ちな───くっ!」
咄嗟に止めようとしたイボンコだったが、爆発が追撃を遮った。
そして、田崎はそのまま甲板から飛び降りる。
「あばよ!」
ゆっくりと崩れ落ちつつある船尾──もとい、凶鳥の尻尾──目掛けて田崎は飛び降りていき……彼女を呼んだ。
「ヴァラーーー!」
崩れてゆく瓦礫の中を縫うように、その呼びかけに竜の女王が応えた。
その背に三人の人影を乗せて。
「へへっ、作戦成功だな!」
田崎は笑いながら、背後からのイボンコの叫びを聞きながら、竜の女王の背に着地した。
新サクラ大戦限定版を予約してきたので初投稿です
つまり15日の投稿は絶望的ってこったぁ!




