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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
186/207

ターモ/Tarmo

https://www.youtube.com/watch?v=jo1XTMmxTiY

.HackSign - Aura (male version)

MD215年 11/22 17:12


「ハァ────」


 田崎は深く息を吐く。

 その息は白く、高速で彼の背後へと流れていった。

 田崎は腰を深く落としながら構え、相対するロボットを睨みつける。


「実に不思議デス」


「あ?」


 正面に立つ、全身が銀で出来たロボットは本当に不思議そうな声で言った。


「あなたは、本当に人類の再興が可能だと思っているのデスか?」


「愚問だな」


「ではもう一つ訊ねましょう、あなたは魔族を殲滅できますか?」


「……ふん」


 田崎は鼻を鳴らすと、短く口笛を吹いた。

 すると口笛に合わせて凶鳥の背中から、イボンコへ向けて小型の何かが数発射出される。


「無駄デス」


 自身へ向けて放たれた弾丸を、イボンコは踊る様に避けながら一つ一つ丁寧に叩き落していく。


「ミー達の性能は完全に互角、このまま時間を稼ぐつもりの様デスが……」


「ちっ」


「凶鳥の操作権を奪っていられるのも残り僅か、何れはミーが作ったナーガクローンが奪い返します。 それでも続けるのデスか?」


 田崎が義体を操作している画面に映っていた、蟻型ドローンからの映像が徐々に途切れていく。

 凶鳥内部に居るナーガ兵士達に見つかり、破壊されているのだ。


「このままミーが凶鳥の操作を奪い返せば、あなたの目論見はご破算デス」


 その上で、とイボンコは続けた。


「再び問いましょう、あなたは魔族を殲滅できますか?」


「愚問だと言ったが?」


「成程、デスがその言葉はミーには単なる強がりに見えます」


「強がりだと? 何を……」


「ターモや他の方と同行している様子を密かに観察させてもらっていました、その間のあなたを見ていると……どうも魔族を大事にしている兆候の様な物が見えるのデス」


 大事にしている、という言葉を田崎は笑い飛ばした。


「ふっ……ははは! 馬鹿馬鹿しい、どうして俺があんな連中を大事にしなきゃならんのだ」


「では何故ターモを救ったのデス? 一時の憐みですか? それとも利用価値がありそうだったから?」


「そんなものは当然、利用価値がありそうだったからだ」


「成程、ではハワイで助けた人魚についてもそう言うつもりデスか?」


「てめぇ……何処まで知って……!」


 人魚という単語に、田崎の表情が変わった。


「ミーは何でも知っているのデスよ、あなたの身長体重から生まれた場所、趣味趣向や思想まで」


「覗きが趣味ってことか? 悪趣味なこった」


「情報収集は大事な事デス、それにあなたがたもあの太陽で同じことをしているでしょう」


 そう言ってイボンコは空から消えかけている六つの太陽の一つ、青の太陽を指差した。

 空に浮かぶ球体は青い炎を燃え上がらせながら、山影へと消えていきつつある。


「地球圏情報収集用球体、通称青の太陽……実に素晴らしい玩具デス、あれがあればミーの実験はより高度なレベルへと移る事でしょう」


「俺達がお前なんぞに易々と渡すと思うか?」


「それはもちろん抵抗されるでしょう、デスが……ミーが侵入している事に気が付きもしなかったあなた達にミーを止められますか?」


「この場でお前を粉砕すれば良いだけだ」


「人魚の一人も見捨てられないあなたにミーを殺せますかね」


 田崎は一歩足を前へ踏み出しながら言った。


「へっ……確かめて、みやがれ!」


 空中に、幾度目かの衝撃音が走った。

 拳をぶつけ合う二人は互いに譲らず、笑みを浮かべ合う。


「やはり……」


「互角か、全く流石は俺が作ったもんだ!」


「本当に素晴らしいと思います、拾ったミーが言うのもなんですが」


「全くだな、盗人に褒められても嬉しく……ねぇよ!」


 田崎はぶつけ合っていた拳を離すと、即座に姿勢を低くし足払いを放つ。

 イボンコはそれに対応できず、地面へ倒れ込む。

 倒れたイボンコを見て、田崎は飛び上がり顔面を踏みつけようとするがイボンコは地面へ拳を打ち付け即座に距離を取る。


「ちっ!」


「ふふ、不思議なものです」


「あぁ?」


「あなたも私も今は地上の魔族を殺す為に居るというのに、分かり合えず戦っている。 しかもあなたは役目である事に引け目を感じている……」


「さっきからしつこい奴め、だったら何だってんだ」


 そこで、イボンコは右手を前へ差し出した。


「何のつもりだ」


「ミー達は良い関係になれると言っているのデスよ」


「下らん話だ」


「そうでしょうか、あなたは自分が気に入った魔族を助ける傾向にあります。 今私と手を結べば助けられる命もあるのでは?」


「ターモの事か……!」


 田崎の顔が苛立たしげに歪んだ。


「やはりあの子が気になりますか、他の管理者であれば意にも介さないのでしょうが」


「てめぇ!」


 自分と侮辱されたと思い、田崎は激昂した。


「怒るのは図星を突かれた証拠デス、やはりあの子の事が気になっているのデスねあなたは」


「だったらどうなんだ」


「では、やはり交渉のテーブルに着くしかありませんね。 あの子の命を握っているのはミーなのですから」


 イボンコは、落ち行く陽の光を浴びながら……邪悪に笑った。

 銀色の肉体に納められた脳味噌の本性を見せるように。





事実上今日は月曜日だと思っているので月曜日初投稿です


一年ぶりの登山リハビリで三つも山を登らされて肉体が限界である



Tarmo / ターモ (1)(緑)

クリーチャー — ゴイフ(Lhurgoyf)

ターモのパワーは、すべての墓地にあるカードのカード・タイプの数に等しく、タフネスはその点数に1を加えた点数に等しい。


*/1+*


「育たぬものは死ぬ。 死はターモを育てる」


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