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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
185/207

北へ。

https://www.youtube.com/watch?v=RqqBgk7TdSA

DC 北へ op

MD215年 11/22 17:00


 冬も始まり、雪が積もりつつある中国。

 そんな中でも、荒野を見渡せる小高い丘では酒宴が盛況だった。


「全く疲れるぜ」


 巨漢の男が、息を吐きながら力強く倒れ込むように椅子へ座る。

 男が椅子に座った事によって振動が起き、彼の居る天幕全体が揺れた。

 それによって、机の上に置いてあった書類の束が何枚か地面へ舞い落ちた。


「あー、まぁいいか」


 舞い落ちていく書類に目を向けながら、男は視線を机の上のコップへ移した。

 コップの中にはコーヒーがゆらゆらと波打っており、次第にその波打ちは収まっていく。

 男は波が収まりつつあるカップを手に取り、口を付けた。


「将軍!!!」


「ぶっ!」


 突然勢いよく天幕の外から大声で自らの役職を叫ばれ、男は飲みかけていたコーヒーが気道に入り咳き込んだ。


「やっぱり此処でしたか! サボりは終わりにして戻りますよ、まだ議員の皆さんの接待は終わっていないのですから」


「勘弁してくれよリー……あいつ等はどうせ食料の浪費だの俺におべっかを使いたいだけなんだからよ」


「駄目です、議員の皆さんの思惑はどうあれ私には副官として将軍の責務を果たさせるという大役が黄龍様より与えられているのです!」


「黄龍様本人じゃあなく、その代理人からだろ?」


「将軍!!」


 椅子に座っていた将軍を視認したリーと呼ばれる小柄な女性は、将軍に近づきながら今すぐ外へ出るように指示するが。

 将軍は逆に彼女に言われた言葉に余計な一言を追加し、リーを怒らせてしまう。


「わかったわかった、悪かったよ。 ……ったく、黄龍様信奉も行き過ぎだぜ」


「何か言いましたか?」


 最後の呟きをリーに聞かれ、将軍は慌てて椅子から立ち上がった。


「なんでもねぇ、それじゃあ行きたくねぇが酒宴に行くとしますかね」


「はい、そうしてください将軍。 今日は巨人撃破の戦勝祝いですから」


 リーは嬉しそうにそう言うと、将軍の為に天幕の入り口を開けた。

 暖かな光が差し込み、将軍は目を細めながら外へ出る。


「中つ国、ばんざーい!」


「かんぱーい!」


 外に出た将軍の目に映ったのは、酒杯を掲げる兵士達の姿だった。

 彼らは皆席に着き、酒杯を傾けながら豪勢な食事を取っていた。


「あ、将軍!」


 席に座っていた兵士が男に気づき、手を振った。

 男もまた手を振り返しながら、足はある方向への歩みを進める。


「おぉ、ガドゥ将軍! ようやく会えましたな、さぁこちらへ!」


 兵士に手を振り返し、正面を向いた将軍は突然眼前に出てきた脂ぎった男に怯まされた。


「チ、チン先生……」


 陳と呼ばれた脂ぎり、恰幅の良い──悪く言うとデブ──男は将軍の右手を両手で無理やり握手をしながら彼を酒宴会場まで無理やり引っ張り始めた。


「先生なんて付けなくても良いですよガドゥ将軍、今は貴方の方が立場が上なのですから」


「や、どうも学生時代の印象が抜けきってないもので」


 ガドゥは左手で頭を掻きながら、自らの身の丈の半分ほどの男に困惑していた。

 だが陳はそんなガドゥには気づかず、どんどんと大きな笑い声が響くテーブルへ近づいていく。


「しかし先生が議員になったのも驚きでしたが、今日の酒宴にまで来るとは……」


「何を言っているのですガドゥ将軍、今日はあのウブンカの巨人を退けた戦勝の日ですぞ。 そんな目出度い日に顔を出さないとあっては黄龍様に顔向けできません」


 ガドゥの言葉に陳は振り向くと、子供の様な眼差しを彼に向けながら胸を張り言った。

 彼の言葉や態度には、何ら嘘偽りが無いように見える。

 そんな彼の事がガドゥは昔から苦手だった。


「……相変わらずですね先生は」


「ガドゥ君も、あまり変わっていないようですね」


 陳は少し残念そうな顔をしたが、そんな表情を彼に見せずに振り返った。


「ごほん、君の性格は兎も角目覚ましい成果を上げている事を私は誇りに思います」


「ま、その方が俺を教育した先生も表彰されるってだけでしょう?」


「ガドゥ君……」


 褒め言葉に嫌味で返すガドゥに、陳は彼の左足を叩いた。


「君は成績優秀で私の一番の教え子でした、その君が優秀な成果を上げることが私は純粋に嬉しいのですよ」


「あー……」


 真面目な顔で自分よりも二回りも年上の男にそう言われ、ガドゥは再び困惑した。

 学生の頃から、陳はこういう人物だった。


「分かった分かった、分かりましたよ先生。 俺が悪かったですよ」


 ガドゥはそっぽを向きながら陳の手を振り払うと、大きく足を地面に打ち付けるように不機嫌そうにテーブルへと向かい始めた。

 彼が一歩歩く度に、近くのテーブルが揺れた。


「ふふ、全く彼は変わりませんね」


 陳は笑いながら、ガドゥの後ろ姿を兵士学校時代の彼と重ねていた。


「しかしあの時よりも成長した様ですね、彼が遠くに行っているというのに振動がまだここまで…………んん?」


 ガドゥの姿が遠ざかっていく度に、振動がより強くなっていることに陳は気づいた。

 その揺れは、彼が歩みを止めた後も続いた。


「ガ、ガドゥ君! 君、何かしたのかい!?」


「いや……何も、何もしてねぇ。 何だ、何か近づいてきてるのか!?」


「おわわわ、て、天幕が……!」


 揺れがどんどんと大きくなり、テーブルの上にあった食事や杯は地面に転がり落ちていく。

 人間もまた立っていられなくなり、酒宴の席は悲鳴や驚きの声が響きだした。


「監視兵! 監視兵は何処だ! 何が起きている!」


 揺れによって天幕が倒れ、人さえも地面に転がる中でガドゥは叫びながら物見台がある方へ向かって叫んだ。

 叫び、そして見た。

 彼ら中国に居る魔族が呼ぶウブンカの巨人を。


「────────────」


 飢餓の神、マンジェニ。

 エクィローの三人が作り出した、地球環境浄化用の装置。

 三神の一体が、彼らの丘のすぐ横を歩いていた。

 その顔の無い神が丘を視認した時、ガドゥ達の人生は塵となって消えた。


「──────────」


 その塵の中から、ドローンと呼ばれる小型の眷属達が無数に生み出され……それら全てを引き連れながら神は北を目指していた。

 神の製作者であり、搭乗者の男……田崎が呼ぶロシアの大地へ。



北へー行こうらんららん、北へー行こうらんららんなので初投稿です

待たせてすまない…普通にデモンエクスマキナとかやってました…許して許して

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