時間稼ぎを始めたら
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テイルズオブファンタジア BGM39.FINAL ACT
MD215年 11/22 16:34
二つの人影が、物凄い速度で凶鳥の背中へ着地した。
その衝撃で二人の着地地点に居たナーガクローン達は全身の骨や臓器が破壊され死亡するが、二人はそんな彼らの事は意も介さず互いに正面だけを見つめていた。
「ははっ、驚いたぜ。 意外とやるじゃねえか、えぇ?」
「あなたも中々……」
二人は笑みを浮かべながら、体勢を立て直し構えた。
互いに徒手空拳ではあるが、両者に内蔵された動力によっておよそ信じられない動きを可能にさせていた。
「まさか俺の義体と同じ出力が出せるとはな。 …………どこで拾った?」
「さぁ? 私は貢物として魔族達から献上されただけですので、何処かの墓守をしていたとも聞きましたが真偽は不明デス」
「墓守……墓守か、そうか」
田崎は墓守と言う言葉を聞き、拳をより強く握りしめた。
「ありがと……よっ!」
そして再び地面を力強く蹴り上げ、田崎はイボンコへ突進した。
灰色の羽毛と鉄板が散りばめられた地面を、一蹴りごとに均していく。
「おらぁ!」
音の壁を突き破り、音速の拳がイボンコに向けて放たれる。
だがその拳をイボンコは左手で弾き、間髪入れずに田崎の顎へ右手でアッパーを見舞った。
「むぐっ……!」
田崎の体が浮かび上がり、無防備となった腹部にイボンコは回し蹴りを放つ。
咄嗟に左腕で腹部をガードするも、田崎はナーガの群れへ蹴り飛ばされる。
「SYAAAAAAA!」
ナーガ達は地面に倒れる田崎へ、怒声を上げながら手持ちの槍を突き立てていく。
「ぐおおっ!」
深々と何本も突き刺さる槍に、田崎は苦悶の声を上げるが直ぐに槍を引き抜くと、槍を掴みナーガを引き寄せる。
「三下がよぉ、俺に触ってんじゃねえ!」
いきなりの事にナーガの一匹は対応できず、田崎へ倒れ込むように引き寄せられた。
するとナーガは田崎に触れた瞬間、蒸発する様に消滅した。
「ちっ、三下じゃあ傷の治りが悪いな……だがまぁ数を吸収すりゃいいだけか!」
田崎はゆっくりと槍を引き抜きながら、腹部を摩った。
先ほど突き入れられた槍の傷跡がみるみる内に煙を上げながら再生していくのを、田崎は愚痴りながら見ていた。
「SYAA!」
腹部の傷を見ていた田崎へ、ナーガが再び槍を突き出した。
「うるせぇ」
だが田崎は体を捻って槍の一撃を避けると、そのまま体を回転させて裏拳をナーガへ見舞った。
拳が触れた瞬間、ナーガはやはり先ほどのナーガと同じく蒸発する。
「成程、霊力を吸収する義体ですか、大したものデスね」
「あぁ、俺の自信作でな。 うちの兵器は皆こうやって出来てるのさ」
イボンコは遠くからゆっくりした拍手をしながら、田崎の義体を褒めた。
それに気分を良くしたのか、田崎は鼻を指で擦りながら頷く。
「そうでしたか、ならば……」
そして、自らの近くに寄ってきたナーガへイボンコは手を触れ……蒸発させた。
「ミーと同じデスね」
「…………」
イボンコの行動を見て、田崎は何かを察したのか小さく舌打ちをすると再び構えを取った。
「どうします? お互いに千日手になると思いますが続けますか?」
もっとも、とイボンコは言葉を続ける。
「ミーとしては現状、地上の生命を滅ぼす事だけが目的なので続けることに異論はナッシングデスが」
「残念だな、利害は一致してるんだがその仕事は俺らのもんでな」
「そうデスか……残念デス!」
イボンコは両手を田崎へ向かって突き出すと、掌の中心についていた球体から光線を発射する。
「ちっ!」
田崎は瞬時に真横に転がって避けると、イボンコへ向かって走り出すと彼は背後を見て再び舌打ちをした。
光線が通った後には、地面に灰が残るだけだった。
「やはりダストか……! 面倒くせぇもんを発掘しやがって!」
「ふふふ、歓待の用意はまだまだありますよ!」
イボンコは楽しそうに言うと、彼の両肩の装甲が開いた。
肩の中には蝗の様な形をしたロボットが複数入っており、それらが一斉に田崎へ向けて飛び立つ。
「だぁぁ、めんどくせぇのが!」
蝗の軍団は高速でナーガ達を弾丸の様に貫きながら、田崎へ迫っていく。
続いて、イボンコの掌からの光線とナーガ達が迫る。
田崎も続いて自らの肩から羽蟻型のロボットを射出すると蝗を迎撃させる、そして彼もまた自らの掌から光線を放った。
「ふふふ、やはり同じ人間が作った兵器、同じ武装が積まれている様デスね」
「兵器だと? ふざけるな! 俺はそいつを兵器として作ったわけじゃあない!」
「デスが実際に兵器として使われている現状についてはどうなのデス? 製作者の思惑がどうあれ生きていれば変化をしていかなければいけないのデスよ!」
光線と光線は互いに拮抗し、両者は再び相対した。
「そう! 人類はより高度な頭脳を産むために変化していき、そして今人類を超えた頭脳であるミーはより高度な生命を産み出さなければいけないのデス!」
「知るかぁ!」
「究極の生命を、アルティメットライフの創造こそがミーの生まれた理由なのデス! その邪魔をするのならあなたも排除する他ありません!」
「何が究極の生命だ、人類こそが生命の頂点だ!」
「魔族に滅ぼされた分際で大きな口を叩きますね」
両者は全く同じタイミングで光線の発射を止めると、互いに駆け寄り再びの殴り合いとなった。
「滅んだのも計画の内だ!」
「自滅する生物の何処が生物の頂点だと言えるのデス? それに無意味に数も多い! 高度な生命体とは完成されているが故に繁殖の必要も無く、完全無欠!」
「そんな生命を作るなんて出来る訳がねぇだろうが、イカレ脳味噌!」
「あなた方には無理でもミーには出来るのデス、その試作体にあなたも会っている筈デス」
「なにぃ?」
両者は互いに技巧を凝らし、致命の一撃を食らわせていく。
だが両者の傷は直ぐに癒え、距離を離す。
「一体誰の事だ」
「この大地で一番最初に出会い、最近まで行動を共にしていたのが居たでしょう? そう、ターモデスよ」
「……! 成程、得心がいった。 道理であの体であの身体能力があるわけだ」
「ご理解いただけましたか? 最も試作体なので常にエネルギーを得続けなければいけませんがね」
「道理で常に何かを食ってるわけだ……よっと」
田崎は足元に転がっていたナーガの槍を蹴り上げ、手元まで器用に運ぶとそれを構えた。
「で? 試作が上手く行ったから今度はきちんとしたのを作れると思ったってか?」
「イエス、理論が正しいのであれば後はそれを証明するだけデス」
「へっ、馬鹿馬鹿しい……」
田崎は笑いながら、両手を顔の前で打ち鳴らした。
「そいつが単なる偶然の産物だってことを思い知らせてやる」
「笑わせますね、どう思い知らせると言うのデスか? 現状ではお互いに決めての無い状態だと言うのに──」
首を傾げ、嘲笑を浮かべるイボンコだったが突然凶鳥が大きく揺れ、体勢を崩し地面に手を突いた。
「な、なんデス!?」
凶鳥は大きく体を傾かせながら旋回し始め、ある方向を向くとそのまま前進を始めた。
「これは……凶鳥の操縦を!?」
「あぁ、さっき蟻を出した時に何匹か飛ばしておいた。 部屋探すのは苦労したが……ようやくこっちの勝利条件が見えてきたぜ」
「一体何処へ飛ばして……」
イボンコは凶鳥の操作権を奪い返そうとするが、完全にロックされておりそれが不可能なことを悟る。
そして行き先だけでもと思い探し当てた先に驚愕した。
「この行き先、あなた……正気デスか? 中国へ向かうなんて!」
「当然、こっちの勝利条件は丁度中国で暴れまわっててな」
「凶鳥が接近すれば、黄龍が目覚めるかもしれないというのに……!」
「知ったこっちゃねえ! 覚悟しろイカレ脳味噌! 派手に時間稼ぎをさせてもらうぜ!」
イボンコは金属の口を歪ませながら、構えた。
中国で暴れまわる、田崎の切り札に到達するまでの長い時間稼ぎが始まった。
仕事がくそ忙しくて更新が止まっていましたので初投稿です
エルドレイン楽しみだね…!
皆はトレーラー見たかな?まだなら見てみようぜ!
https://www.youtube.com/watch?v=NQ8w0mTp8PU




