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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
183/207

劣等種と呼ばれたら

https://www.youtube.com/watch?v=NrI-UBIB8Jk

1. Blue Swede - Hooked on a Feeling

MD215年 11/22 16:26


「あらよっ!」


 掌底を繰り出した右腕が、相手の感触を伝えた。

 硬質な金属の鎧を突き抜け、次に皮膚、内臓、そして骨を貫通する。

 一撃で絶命か、あるいは戦闘不能になるような一撃。


「なに!」


 だがそれを受けた人物は前のめりに倒れながらも自らを貫いた腕を抜かせまいとする。

 味方の行動を見た残りのナーガ達は、即座に味方ごと田崎へ向け死の魔術を放った。

 田崎は即座にナーガごと黒い靄に包まれる。

 靄が触れたナーガは、触れている部分が即座に萎れていきミイラになってしまう。

 だが田崎に触れた靄は、確かに田崎の腕を萎れさせるが直ぐに元の状態へと戻っていく。

  


「へっ! 効かねえんだよ!」


 右腕に張り付くようにして死んだナーガのミイラを、田崎は勢い良く投げ飛ばすと即座に地面を蹴った。

 

「がぁっ!」


 飛んできた同族の死体を振り払ったと同時に、ナーガの頭部に田崎の右膝が直撃した。

 その蹴りはナーガの頭骨を砕くと、田崎は続いてその左右に居たナーガ達へ両方の腕を突き出した。


「あばよ」


 掌からは光の様な衝撃波が飛び出し、二人のナーガは全身の骨を砕かれた。

 この間、たったの一秒であった。

 三人のナーガが倒れると、田崎は体の汚れを払って周囲を見渡す。

 凶鳥の背中の上では、相変わらず砲台が竜の女王を落とそうと稼働を続けていた。


「~~♪」


 田崎は口笛を吹くと、凶鳥と交戦を続ける女王を尻目に背後へ向き直った。


「大歓迎だな」


「えぇ、歓待は派手にやらなければいけません」


 田崎の視線の先には、銀色の体をしたロボットが立っていた。

 そのゴーレムの背後からは地下からエレベーターで先ほど殺したナーガ達と同じ顔をしたナーガが複数昇ってきていた。


「……それが本当の姿って訳か?」


「いえいえ、ミーの本質は変わらずあのままです。 単純に動きやすい体としてこれを選んだだけデスよ」


「そうかい」


 そういったやり取りの間に、田崎は目の前のイボンコの体に既視感を覚えずに居られなかった。

 人間を模した造形ではあったが、目は赤く、頬のある場所にはファンの様な物が入った穴が一つずつ開いていた。

 田崎のそんな態度を感じ取ったのか、イボンコは首を傾げた。


「おや、どうしたのデス? ミーのボディに何か?」


「……いいや、それより態々お前が出迎えに来たってことは死ぬ覚悟が出来てるってことか?」


「ミーが? ホワイ?」


「俺が此処に来た理由位は理解してるもんだと思ってたが、実はそれを理解できない程度には脳味噌のレベルが低いのか?」


「ン~、勿論あなたが来た理由は理解していますよ。 ですがミーは死なないし、負けません」


 チッチ、と言いながら人差し指を数回横に振るイボンコ。

 その態度は自らの権力を見せつける王族か何かの様である。


「数的優位もですが、あなたにミーが負ける要素は全くナッシングデス」


「戦ってもいねぇのに大した大口だな」


「あなたのデータは先ほどの動きで大方把握しました、それに……」


 イボンコは赤い目をぎょろりと動かし、飛び回る竜の女王を見た。


「ヴァラから聞いたのでしょう? この長老級がどういう存在なのか、ミーを破壊すればこれは自我を取り戻す様プログラムしています」


 竜の女王ヴァラは弾幕を掻い潜りながらミサイルを発射し、凶鳥の尾翼にある砲台の一つを破壊した。

 砲台は破片を撒き散らしながら爆散し……続いて燃え上がった。


「この調子で破壊していけば、ヴァラが死ぬのと同時位にはこの凶鳥も落ちるでしょうが……それで本当に良いのデスか?」


「目覚めた長老級が世界を食い荒らすって話か? そんなもん……」


「何とかすると? もしそう考えているなら大変シャロー……浅はかデス。 あなたが考えるような事を凶鳥と戦っていた黄龍が思いつかなかったとでも?」


「そいつが特別間抜けな可能性を考慮はしてるが?」


「黄龍の大きさはおよそ五キロ、人間の何十、何百倍以上の脳味噌を持つ生命ですら手に負えなかった生命を軽視しすぎデスね」


 ふん、と田崎は鼻を鳴らした。


「脳味噌の大きさが頭の良さを決めるんならとっくの昔に鯨が地球を支配してたろうぜ」


「あんな劣等種と一緒にされては困りますね、魔族は現状地球のどの種族よりも進化している種族なのデス」


「進化した種族ぅ? はっ、馬鹿も休み休み言え」


「認めたくない気持ちは理解しますが、それがミーの判断デス。 人類は魔族よりも劣っている、だから滅んだ」


 ほんの少し、田崎はたじろいだ。


「管理者計画、内容としてはおざなりと言わざるを得ないデス。 確かに現状の地球を滅ぼすことはできるでしょうが……本当のその後が上手く行くと思っているのデスか?」


「当然だ、そうじゃなきゃ始めない」


「残りのお二人も本当にそうデスか?」


「……どういうことだ」


「ミーはあなた方の拠点、エクィローのデータを見ているのデス、その中には──」


 イボンコが金属の顔でニヤリと笑い、口角を上げた。

 そして次の言葉を告げようとした瞬間。


「愚か者め、敵の言葉をむざむざ聞き続ける奴が何処に居る!」


 砲台の弾幕を避けながら、ヴァラが急降下をしながら背中へ無理やり着地した。

 着地地点に居たナーガ達を挽き潰しながら、十数メートル移動した後翼を広げ、ミサイルを砲台とイボンコやナーガ達に向けて放つ。


「オヤオヤ……もう少しだったのですが」


「オアーーーッ!」


 放たれたミサイルにイボンコは全く動揺せず、彼を守る様にナーガ達が肉の壁となって折り重なる。

 だが田崎は反応が遅れ、爆風に吹き飛ばされヴァラの足元に転がった。


「いててて……てめぇ、何しやがる!」


「愚か者め、敵と長々と話すなど何をしている。 戦士ならば戦いで己の証明をせよ」


「すまん」


「余を失望させるな人類」


 そう言って、少しの会話を行うとヴァラは自らへ群がってくるナーガを尻尾や翼で薙ぎ払いつつ大きく咆哮しながら飛び立った。

 それは聴いている者の鼓膜を貫き、近くで聞いたナーガ達の数名を絶命させる。


「…………って訳だ、少々気になる事は出来たが問答はもう終わりにするぜクソ脳味噌」


「もう少しで懐柔か、あるいは捕縛が出来そうだったのデスが……さっさと殺しておくべきでしたかあのトカゲは」


「死ぬのはてめぇの方だ! 行くぜ!」


「出来損ないの劣等種如きが、舐めた口を利かない事デス!」


 両者は走り出し、互いの拳が激突した。



9連休なので初投稿です

完全に転勤が決まったのでちょっと仕事的に投稿遅れるかもかも…9/1以降から投稿遅れたら仕事が忙しいと思ってくだち



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