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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
181/207

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https://www.youtube.com/watch?v=rGVZ5nM86n8&list=RDQMWcKk4X_xpbI&index=2

時空竜ビックバイパー BGM

MD215年 11/22 15:00


 竜とは、支配する生き物である。

 それを行う理由は存在せず、生きる上での目的の一つなのだ。

 支配とは竜が世界と関わる方法なのだ。

 

「そう、支配せよと余の体を流れる霊力が命じるのだ」


 口から炎を漏らしながら、その巨大な竜は一本の木の前に腰を下ろした。

 木は1.7メートル程の大きさであり、何処となく人の形を模している様にも見え、更にその胸の部分には深々と剣が突き刺さっていた。


「それは人も変わらないと思っていたのだが、汝の欲はその程度ということか?」


「…………うるせえ」


 竜は眼前の木に向かってそう言うと、木は吐き捨てるようにか細い返事をした。


「大口を叩いた割にこの体たらくとは、人類の名が泣くな」


「失敗位、たまにはあるもんだ」


「肉体を木にされる様な失敗がか」


 竜は口から炎を少しだけ漏らしながら、冷笑した。

 木──もとい、木にされた田崎はまだ無事な目で竜を睨みつける。


「カカカ、そんなに恐ろしい目をするな。 余まで木になってしまうではないか」


「ふん、竜ってのは存外暇なもんなんだな。 俺に嫌味を言うのがお前の言う支配って奴なのか?」


「何、汝の誘った遊びとやらを見に来たら当人がそのざまだったのでな。 愉快な物を愉快と言うのはおかしなことか?」


「口の減らない玩具だ」


 田崎はそう言うと、木になった義体を動かそうとする。

 だが義体からはバチバチと火花が散り、微かに指先が動いただけで停止してしまう。


「ちぃっ、やっぱ違う義体を持ってきた方が早いか」


「ほう? 新しい肉体があるのか」


「そりゃあるさ、一つの義体につき三つはスペアを作るのが俺の流儀でな。 お前達みたいな突然変異の機械生命とは違って替えが利くのさ」


「成程、だが替えを持ってきてどうするのだ? 凶鳥が目覚めた今、この地の生命は一掃される」


「凶鳥? 前に言ってた奴か? なんだ、さっきの地震と何か関係があんのか?」


 田崎の問いに、竜は笑った。


「成程、汝のその目は既に塞がっているか」


「御託はいいからさっさと知ってることを話せよ」


「カカ、良かろう」


 そうして、竜は過去に4度起きた凶鳥による一方的な粛清について語り始めた。

 凶鳥がかつては長老級エルダーの魔族だったこと、イボンコによって強制的に作り替えられたこと、そして二百年に一度に起きる凶鳥による淘汰を。


「ほーん……じゃあお前はその四回もあった粛清を全部逃げ延びたって訳か」


「安い挑発だな小僧」


「はっ、生き残ったって言ってほしかったのか? 偉大なドラゴン様の癖に人間のいう事が気になるのかよ」


「虫を潰すが如くに、耳障りな音であればそれを消すのもまた当然の事よ」


 竜は頭部に着いたレンズを一瞬光らせると、田崎へ向かってその大きな口を開き、噛みついた。

 鋭い牙は田崎の髪が変化した枝を引き千切ると、二度目の噛みつきで頭部へ牙を突き立てた。

 深々と頭部に牙がめり込み、頭部が徐々にひしゃげていく。


「うおおお!? やめろ! 俺のお気に入りのタイプなんだぞ!」


 後少しで田崎の肉体から頭部が消える……と言ったところで、突如竜は停止した。


「お、おぉ……!?」


 それどころか竜はめり込んでいた牙をゆっくりと引き抜くと一歩後退し、元の位置へと戻った。


「おぉ……? 何だ、ぶっ壊さないのか?」


「汝は不味そうだからな、余の体に悪影響があっては困る」


「んだと!?」


「……汝はセンサーが死んでいる故気づかなかっただろうが、奴に監視されていた故少し演技をしただけだ」


 奴、という単語に田崎はそれが誰の事なのか直ぐに気づいた。


「あぁ、あの脳味噌か。 ……見られてたのか?」


「存外繊細な奴故な、余が敵対するかどうかを見ていたのだろう」


「……? 何で大陸を粛清できる兵器を持ってる奴がお前が敵対するかどうかを気にする?」


「決まっている、余が奴に対抗できるからに他ならん」


「なら何でお前は敵対しない?」


 当然の質問に、竜は少し間を置いて答えた。


「……その必要が無いからだ、あれを落とすことは可能だがその後に蘇るあの凶鳥に世界は焼かれる。 勝負には勝てても試合に負けては意味が無い」


「蘇る?」


「そうだ、あの鳥は今は微睡んでいるだけに過ぎん。 目覚めればこの星の全てを焼き尽くすまで飛び続けるだろう」


「ほーん……」


「故に余は敵対しない、この大地が幾度滅ぼうとも余には関係が無い故な」


 竜はそう言うと、更に数歩後退し翼をゆっくりと広げていく。

 翼は金属で出来ているとは思えないほど流麗に広がった。


「何処に行くつもりだ」


「知れた事、戯れの時は終わった故宮殿へと戻る」


「成程、つまりお前は今回もあの鳥に勝負を挑まないで逃げるわけだ」


「……何?」


 今、まさに飛び立とうとしていた竜は頭部に着いたレンズの目に田崎を映す。

 眼前に木となった男は、先ほどの噛みつきによって頭部もズタズタの状態である。

 それでも尚、田崎は語気強く言い放った。


「支配が竜の本質だってのに、お前は自分より強い奴に支配されたままの状態を良しとしてるんだろう?」


「…………小僧」


「違うってのか? 自分より強い奴に生殺与奪の権利を握られてるが、歯向かわなければ生きていけるなんて状態の何処が支配されてないって言える?」


「言葉の使い方には気を付けろと言った筈だぞ!」


「うるせぇ負け犬! お前は単に自分よりも弱い奴を襲って食うだけの禿鷹なんだよ!」


 竜は吼え、周囲の木々がその咆哮に葉を散らし、揺れる。

 だが田崎もまた負けじと吼える。


「戯れとか言ってたが、お前も本当はあいつを何とかする手段が欲しかったんだろう? だからお前は俺と戯れてやろうと思ったんだ、違うか!」


「下らん戯言だ、汝に余の何が解ると?」


「お前の事なんて何一つ分からん! 分からんが……少なくとも俺にはあの鳥を二度と起き上がらせなくすることが出来るというのは分かっている!」


「馬鹿馬鹿しい、天使如きにやられたそのざまであれを墜とすと?」


「そうだ、お前がやらないことを俺が成し遂げてやる」


「カ、カカ────カカカカカ!」


 笑った。

 重油の流れる機械の竜が、全身を震わせながら大きく嗤った。


「木がそこまでの妄言を吐くとは、愉快なことだ」


「なぁにぃ? てめぇ──」


「その愉快さに免じて、今一度の戯れを許す」


「は?」


「竜の女王の背に跨る栄誉に浴する機会を与える」


 その言葉に、田崎はまだ少しだけ動く口角を上げた。


「へっ、素直じゃない奴だ。 だが良いぜ、俺とお前で……派手にぶちかまそうじゃねえか!」


 田崎は強く、そう叫んだ。


「だがその前に……まずは元に戻るのを手伝ってくれ」


「………………やれやれだな」


 竜は長い間を置いてからそう呟くと、翼の下にあるミサイルを発射し田崎を吹き飛ばした。

 …………凶鳥による粛清が始まる、少し前の出来事だった。




出世が決まったので初投稿です

仕事が忙しくならないことを祈ろう



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