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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
180/207

クローン/Clone

https://www.youtube.com/watch?v=wjEWyvRsfu0

違和感

MD215年 11/22 14:17


「ようこそ、凶鳥の司令室、ミーの部屋に」


 全空を一望出来る広大な室内で、銀色のロボットは恭しく頭を下げた。


「その声……お主、イボンコか?」


「はい、その通り。 今まであなたに抱きかかえられていた脳みそ、イボンコですよ」


 下げていた頭をゆっくりと上げ、イボンコはその光り輝く顔を芽衣子へ見せる。

 その骸骨の様な顔の両目は紅く光り、肉体の隙間からは紅い光が明滅していた。

 

「……お主、ゴーレムだったのか」


「肉体はですがね。 ミーの本質はあの脳みそに違いないのデスよ、この肉体は単なる仮住まいに過ぎないのデス」


「端末?」


「イエス、このボディは拾い物なのデスよ、元々ミーに誂えた物ではない、だから仮住まい」


「で、そのヤドカリは結局儂を招いて何がしたいんじゃが?」


 芽衣子は両手を後ろ手に回しながら、ゆっくりと霊気を練り上げていく。

 返答次第で、直ぐに攻撃に移れるようにする為だ。


「先ほど申した通りデスよ、ミーは究極の生命の作成を目指している」


「それと儂が此処にいることが関係があると?」


「えぇ、今回ロシアは五度目の滅亡を迎える訳ですが……最近は成長の速度が鈍っていたのデス、そんな折に現れたのが貴方達だった」


 イボンコはロボットにしては珍しい、感情豊かな顔で外を見ながら右手をゆっくりと上げていく。


「儂等?」


「イエス、最近は進歩のペースが遅かったのですが……貴方達が現れてからは一気にそれが進みました!」


 そうして太陽と拳が重なる位置まで右腕を上げると、拳を強く握りしめる。


「やはり淘汰圧というのは、外的要因によって齎されるのデス!!」


「……要するに儂等が来てお主に得があったという事が言いたいのかの」


「イエース、貴方達には実に感謝しているのです、ですので貴方達をもっと有用に活用したいと思いまして」


「は? どういう──」


「こういうことデース」


 頭の上に?マークを浮かべる芽衣子に、イボンコは握った拳を一度開き、指パッチンをする。

 すると芽衣子の足元が開き、彼女は一気に落下していく。


「のわああああ!?」


「同族の皆さんと一緒に、今後もミーの為に役立ってくれる事を願いマース」


 芽衣子が穴に落下すると床の穴は何事もなかったかのように塞がり、部屋にはイボンコ一人だけとなった。


「さて、残るは────」


 満足そうに右手を動かしていたイボンコは、独り言を呟きながら部屋の天井を見つめた。

 

「彼ですね」


 その言葉と共に、司令室の照明が明滅した。


────────────────────────────────────────


「うーむ、高く高く昇っていくのを見ている間に……思えば遠くまで来たものでござるなぁ」


 全身に強く叩きつける風の中で、虎牙は額に手を当てて景色を眺めていた。

 彼の視線の先には、この間田崎達と踏破しドラゴンと出会って山が見えている。

 

「しかし、ここは一体何処でござろうか」


 自らが立つ灰色の足場を何度も踏みしめながら、虎牙は首を捻った。

 彼の立つ地面は金属部分と灰色の羽毛のようになっている部分がまばらに存在し、彼を混乱させた。


「それに今しがた切り倒した連中……」


 虎牙は背後で真っ二つに分離された無数の死体を横目で見る。

 それら死体は芽衣子と同じくナーガのものであったが、少々奇異な姿をしていた。


「まさか全員同じ顔と姿とは、実に面妖にござるな」


 その死体たちは全員が同じ顔と格好をしていた。

 更には動きの癖すら同じであり、虎牙は薄気味悪さを感じていた。


「とりあえず此処から帰る手段を考えなければいかんでござるな……お、そうだ! 手当たり次第に切り刻めば落下するのでは?」


 名案とばかりに手を打つと、虎牙は早速抜刀し構えた。


「うむ、それが良い! では早速────」


「ノンノン、そのアクションはストップした方がベターデスよ?」


「む? その声は……イボンコ殿でござるか?」


 そんな折に、背後から聞きなれた声が虎牙を呼び止めた。


「おぉ、おぉ……?」


 しかし、振り返って虎牙の視界に入ったのは銀色のゴーレム一体だけだった。


「イエス、ミーは──」


「イボンコ殿の声を真似た敵でござるな! チェスト!」


「ホワッツ!?」


 目にも留まらぬ速さでイボンコまで踏み込むと、虎牙は左手の刀を振り下ろした。

 刃は銀色の肉体に確かに傷をつけると、虎牙は即座に右手の刀を首に向けて薙いだ。


「死ねぃ!」


 刀は一切の抵抗を感じさせず、するりと頭と胴体を分離させる。

 イボンコの肉体を刀は深々と切り裂き、虎牙は相手の絶命を確信した。


「他愛ない、鋼の肉体を纏おうとも鍛錬が足りんでござるな」


 そして、瞬時に後ろへ跳び退り納刀する。

 虎牙が着地すると、遅れてイボンコの肉体がゆらゆらと揺れ、前のめりに倒れると同時に先ほど切り離された頭部も地面に落下した。


「恨むなら、拙者の知り合いの声を騙った己の愚かさを恨むと良いでござる」


「あー、成程、では次回からは気を付けましょう」


「むむ? 何と、まだ息がある」


 倒れていたイボンコの肉体が地面に転がった頭部を手探りで探し当てると、それを元の位置へ嵌め込み立ち上がった。


「正確には、この肉体は生命ではありませんから呼吸もしていないのデス」


「ふぅむ……ではやはり動かなくなるまで細切れにするしかないでござるか」


「あなたは脳味噌が筋肉で出来ているのデスか?」


「はっはっは、よく言われるでござる。 して、お主は何者でござるか?」


「貴方が先ほど呼んだ名前の存在ですよ、肉体は仮初デスが」


「何だ本当にイボンコ殿でござったか、だったら切りかかる前に言えばよかったのにー」


 と、虎牙は笑いながらイボンコへと近づいていく。


「説明の間もなく切りかかったのは誰なんデスかねぇ……?」


「はっはっは、いやすまんすまん、拙者ゴーレムには良い思い出が無くてな!」


 虎牙は頭を掻き、イボンコの肩を何度か叩きながら笑った。


「しかし、その体はどうしたのでござるか?」


「えぇ、その説明は──」


「ん、んん……?」


 肩を叩いていた手に、虎牙が違和感を感じた瞬間にはそれは始まっていた。

 掌に、小さく針が刺さったような傷が出来ていた。


「次に貴方が目覚めた時にでも説明しますよ、ミスターバーサーカー」


 強烈な眩暈と眠気を感じ、刀を引き抜こうとするも体の自由が急速に失われていき……イボンコのその言葉を最後に虎牙の意識は途切れた。


「やれやれ、まともに殴り合って止めようとしたら本当にこの凶鳥を落としかねないデスね彼は」


 そう言って倒れた虎牙を担ぎ上げると、イボンコは眼前に広がるロシアの大地を見渡した。


「これであの人間以外は回収完了デスね、さて彼はどうして居るのか……んん?」


 大気に混ざっている霊力で、詳しく補足することが出来なかったがイボンコの目は確かにそれを捉えた。

 体の内側から樹が生え、機能を停止している田崎の義体と……。

 その前に立つ、ロシアの火山を支配するドラゴンの姿を。


「彼女が大掃除の前に出てくるとは珍しいデスね、さては久しぶりの機械を取り込みに来たというところデスか」


 イボンコの言う通り、田崎達が火山の中で出会ったドラゴンは大口を開き、今正に田崎を食らおうとしていた。


「あれでは回収は不可能デスね、仕方ありません、現在の回収した部品で計画を進めるとしましょう」


 そして、田崎へ食らいついたドラゴンを見てイボンコは溜息を洩らすと虎牙を背負ったまま凶鳥の内部へと消えていった。

 ロシアの大地には頭上を舞う凶鳥への驚きの声と、未だゾンビ達との戦いの音がいつまでも続いていた。




昨日投稿しようとしたらなろうが重くてできなかったので初投稿です

二週間も待たせてすまなかった…


Clone / クローン (3)(青)

クリーチャー — 多相の戦士(Shapeshifter)

あなたは、クローンが戦場に出ているクリーチャー1体のコピーとして戦場に出ることを選んでもよい。


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本物とまったく同じ複製。

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