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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
札幌制圧編
18/207

市長へ報告したら

MD215年 5月1日 PM13:04


「うむ…報告ご苦労じゃった」

「ガラールの家族への補償や手続き等はこちらで行うのでな…今はゆっくり休むと良い」


 儂がそう言うと、斥候から帰ってきた巫女と新たに隊長となったリザードマンは頭を下げて部屋から退出していった。


「ふむ、ゴーレムか…それにそのゴーレムによる白化現象……」

「おまけに斥候部隊の隊長は死亡、補償金も出さねばならぬし……ゴーレムの部品も持って帰って来れなかったからのー……」


 状況は思ったよりも大分切迫してきた、儂は思わず右手で額を抑える。


「こりゃだいぶ面倒な問題になってきたかもしれん」

「ちゅうよりもあの小娘が持ってきた情報にそんなゴーレムなんて情報無かったと思うんじゃが……」

「後で改めて話を聞きなおさなきゃならんのう……」


 儂は執務室にある自分の椅子に座りながら、窓の外へ目線をずらした。

 ゴーレム…最終戦争前に人間が産み出したと言われている金属で作られた兵器、意思を持たず与えられた命令のみをこなす存在。

 何故今になって、そして何処からゴーレムが出てきたのかはわからんのじゃが…サツホロを治める巫女としてこれは見過ごせぬか。


「何せ斥候の話じゃとオシマンベに付く前にゴーレムと接触したと言う話じゃからな……徐々にこちらに近づいてきていると見るべきかの」

「にしてもゴーレムか…旧時代の遺物のう…このビルとかいう建物とかゲームキとかいう玩具の様に何とかこっち側で利用できんもんかの、エンリコ?」


 儂は椅子をくるりと反転させ、窓から入り口を警護する男…エンリコへと問いかけてみた。


「……難しいでしょう、ゴーレムの命令を書き換えるためには少なくともそれに精通した技術者かもしくは青の呪文に精通した魔術師が必要です」

「芽衣子様は青、緑、白の呪文に精通してはおられますが…サツホロから出るということは蟻のコントロールを失うと言う事になります」

「それは即ち、サツホロの終焉を意味しています。」


 エンリコは入り口に立ったまま、顔をこちらへ向け答えた。


「うーむ……じゃよなぁ、古代技術に精通した技術者か……お主心当たりあるか?」


 エンリコは顔を横に振る。


「では青の呪文に精通した魔術師は?」


「南方のオギナワ……そのオギナワが交易している相手は海の民という噂は聞いたことはありますが……」

「海の民ならば青の魔術に通じていると思われますが」


「オギナワ?あー…あのすんごい遠い場所かえ?」

「そんなもん却下じゃ却下、そもそも南方からゴーレムが攻めてきてるのにどうやって更にそのもっと下にある場所まで向かえっちゅーんじゃ」


「はい、しかしゴーレムを我々の配下に加えずとも破壊すると言う方向性ではいけないのですか?幸い我々には赤と緑の霊力を使う者も多い事です。」


 エンリコのその提案に、儂は渋い顔をして返した。


「むー……倒せば倒すほど増えるゴーレム相手に正面切って喧嘩を売るというのは悪手だと思うのじゃが?」

「そりゃああれじゃよ?増える数には限度があるかもしれぬ、じゃがもし限度が無かったら?」


「しかし、現状他に取れる手段は…」


「分かっておる、だから考えておるのではないか」

「とは言えあまり無い物強請りをするのはいかんの、打てる手は打っておくべきじゃな」

「もし仮に戦うことになったとしても有利に働ける様にの」


「・サツホロを防衛する各所に通達!本日よりサツホロ周囲への警戒を厳とする!」

「・またサツホロ四方への斥候部隊を日に2度各衛兵部隊は出撃させること」


 そう宣言すると市長命令! と書かれただけの白紙を4枚用意し其処に上記二点を記した。


「またサツホロ市内の掲示板にも儂直々のお触れとしてこれを出しておくが良い!」


・二本足で歩くゴーレムへの対抗策、またはサツホロ市外での目撃情報を提供した物には市長直々に金一封。

・遺跡潜りにて有用なゴーレム対策を発見した場合は市が買い取りを行う。


 と再び白紙を取り出し、上記二点を書き記しエンリコへ先ほどの紙も含めて渡す。


「というわけで張り出し作業の指示と連絡業務は任せるぞ、儂は他の執務があるからの」


「畏まりました」


 エンリコは紙を受け取ると、そのまま部屋から退出していく。


「う~~む……しかし参ったの、倒せば倒すほど増えるゴーレム相手に取れる手段が破壊する以外は皆無とは…」

「奴等の休眠を解くか?いやしかしのー…解いた後が問題なんじゃよなぁ…」


 儂は椅子の上でくるくると回りながら考え…、再びあの娘を此処に呼ぼうと決意し机に溜まった書類の処理を始めるのだった。


──────────────────────────────



「訓練?」


 アレーラは衛兵用に割り当てられた部屋の一つ、アデルの部屋のベッドに座りながらアデルを見上げた。

 アデルは両刃の木製の杖と盾を持ちながら頷いた。


「あぁ、お前の世話を任されたとは言っても流石にずっと付きっ切りって訳にはいかねーからな」

「自分の身は自分で守れる程度にはなってもらわなくちゃ困る」

「ってわけで訓練だ、訓練!」


「って言われても……私、魔術とか使えませんよ?力もあんまり無いですし。」


「大丈夫だ、そこら辺も含めてしっかり考えてある!ってわけで訓練場へ行くぞ!」


 そう言うとアデルはアレーラの手を引き、訓練所へ連れて行く。


「あわわわ……で、でもアデルさん!私実はよく魔術のこともわかってませんし……やっぱり無理ですよ!」


 アレーラがそう言うとアデルは立ち止まり、多少の逡巡をしたが…。


「まあそこら辺も含めて説明する! 大丈夫だ!」

「駄目でも大丈夫だ! さっさと魔術覚えて俺をお前のお守りから解放させてくれ!」


「お守りって……酷いですね……あ、ちょっと!分かりました行きます、行きますって!」


 と言うと、再びアレーラの手を引っ張り訓練場へ連れて行くのだった。


 訓練場は各地区の詰め所の近くにあり、半径100メートルほどのグラウンドの形をしていた。

 中ではアデルやアレーラの他にも、何人かの男女が模擬試合をしていた。

 訓練場へ着くとアデルはアレーラの手を離し、杖と盾を彼女に手渡す。


「いたたた……アデルさん、ちょっと強く引っ張りすぎです」


「む、すまん……ちょっと訓練だってんで張り切りすぎた」

「大丈夫か?」


「はい、ちょっと赤くなっただけですから…」

「ところでその、訓練をするって言いますけどそんなに簡単に魔法…? って覚えられるんですか?」


 アレーラはアデルに掴まれていた右腕を擦りながら、アデルへ問いかけた。


「いや? 無理だな、魔法の習得ってなるとそれこそ100年くらい掛ける必要がある。」


「えぇ!? ひゃ、百年!? そんな…私そんなに長生き出来ませんよ!」


 アレーラは両腕を首を横に振り、無理だとアピールをする。


「あぁ、其処で使うのがその杖と魔術だ。」


 アデルは腕組をしながら頷いた後、右手で杖へ指を指しながら言う。


「いいか? アレーラ、魔法と魔術の違いについてまずは教えよう」

「魔法って言うのは大地やそこら辺に漂ってる霊力から、呪文を織り上げて作りあげられる現象の事を指す」

「例えば……うぬぬぬぬ……! はぁっ!」


 アドルの右手の人差し指に一瞬だけ火が灯り、消える。

 それを見てアレーラが「おぉー」と拍手をする。


「はぁ……はぁ……一瞬だけだが火が灯ったろ?」

「これが魔法だ、俺の周りにある赤い霊力を指先に集めて一瞬だけ火を灯したんだ」


「凄いですねアデルさん…魔法が使えるなんて」

「あ、もしかして実は百年以上生きてるんですか!?」


「違うわ!」

「まあこれ位の魔法なら今の世の中誰でも出来る、知らなくても学べばやれるんだよ」

「俺が習得に時間が掛かるって言ってる魔法はもっと大それた魔法だ、例えば地震を起こすだとか空から石の雨を降らすだとか……」


「……未来を予測するとか、ですか?」


 アデルが幾つか例を挙げると、アレーラが間に入る。


「ん?あー…そうだな、青の魔法には確かそういうのもあるって聞いたな。」

「でも何でそんな事知ってるんだ?」


 アデルが不思議そうな顔をして、アレーラへと問いかける。


「いえ、あの……村のご神木様が毎年村の未来を予測してくれていたので…もしかしたらと思って」


「そういやお前の村にあった神木って1000年前からあったんだっけ?」

「だったら確かにそういう魔法が使えてもおかしくないな…って話が脱線した」

「何処まで話したっけな…あぁそう大それた魔法って話だな、魔法ってのはさっきも言ったが周囲にある霊力を集めて何か普通じゃない現象を起こす事だ」

「じゃあ魔術ってのは何なんだ?って話になるが答えは簡単だ、魔法が起こす威力や範囲、規模を小さくして扱いやすくしたものだ」


「えーっと、どういうことですか?」


 アレーラは首を捻り、アデルへ問いかける。


「そうだな…例えばさっき魔法の例えで石の雨を降らすって言ったが魔術で言うなら石の雨じゃなくて石を一個落とすとかになる。」

「村の未来を予測する魔法を魔術にすると誰か一人の未来を予測する…とかな。」

「要するに規模が大きくなりすぎない魔法の事を魔術って言うんだ、んで魔術ってのはある程度道具に仕込んでおける。」


「道具に……仕込む、ですか?」


「そう、例えばそういう杖とかが一般的だな」

「そういう杖とかの道具には術式…要するに小さい魔法を掘り込んでおけるんだ、後はその術式に適した色の霊力を流し込んでやれば魔術が使えるってわけだ」

「分かったか?」


「はー……な、なんとなくですが……」


 アレーラは首を横に傾けながら、斜めに頷く。

 それを見たアデルは水平にした左手の上に右手をぽんと乗せ、答える。


「随分器用な頷き方するなお前…、まあいきなりは難しすぎるか…そーだな…例えるなら」

「剣と食事用ナイフか?」

「剣は使いこなせれば強いが使いこなすのに技術が居る上に食事にはとてもじゃないが使えない」

「だが食事用のナイフはちょっと使い方教えてもらえれば食事に使う分には不自由なく使えるだろ?」


 それを聞いたアレーラはアデルと同じ動作をし、頷く。


「なるほどー……」

「あの、ところでさっきから青とか色とかって言ってますけど…色って何ですか?」


 それを聞いて、アデルはぎょっとした顔をする。


「マジか……」


「え…あの、もしかしてこれってそんなに非常識な質問でした?」


「いやーオシマンベとかそういう戦いとは無縁な村に住んでいたのなら色に関しては特に関わる事も無い話題じゃろうてしょうがあるまい?」


 と背後から最近聞いた事のある声がする。

 その声を聞いてアレーラは驚いて振り向くと……。


「ぬふふ、来ちゃった♪」


 其処には市長が立っていた。


HIMA(ry

次:色について説明したら投稿します

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