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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
175/207

戦闘が始まったら

https://www.youtube.com/watch?v=RVouVxrcG5c

Magic: The Gathering Arena OST - Azorius Theme

MD215年 11/22 09:29


 ロシア某所。

 11月、暦の上ではれっきとした冬だが今彼らが立つロシアの大地はむしろ寒さよりも暑さが際立っていた。

 咽返る様な湿気に肌にこびりついた血は固まらず何時までも滴り、熱気によってその場にいる存在のほぼ全ての体力を奪っていった。


「151、152……! えーっと、次で何体目でござった!?」


「儂が知るか! 次、天使が空から3体!」


「ウ、ターモ、カル!」


 ぬかるむ地面の上で乱戦が繰り広げられていた。

 ゾンビの群れを切り刻む虎牙と、その背後で瓶詰された脳味噌を抱えたまま額に両手の指を当てる芽衣子。

 そして虎牙が切って捨てたゾンビを食べながら、更なる餌食を求め戦うターモ。


「ムホホホ、大量に押し寄せてきますねぇ!」


「えぇい、黙っとれ! 気が散る!」


 眉間に更に皺を寄せながら、芽衣子は手元の瓶詰脳──イボンコに対して怒鳴った。

 今、彼女は精神を集中しある一点をずっと探し続けていた。


「ホホ、これはソーリー! ですが現状の解決の一手を探せるのはユーだけですので頑張って!」


「言われんでもそうするわい!」


 青筋を浮かべながら、芽衣子は更に深く精神を集中していく。

 その合間にも、戦場ではベヒモスと言われる巨大な牛が木々を薙ぎ倒しながら吹き飛び、天使達とターモ、虎牙との剣戟音。

 更にはゾンビの唸り声等あらゆる音が鳴り響いていた。


「死の主の部下め、我らの国をやらせはしない!」


「ウ! オマエ、クウ!」


 芽衣子の前方では、ターモと天使が激突していた。

 天使が振るう両刃の剣をターモは右腕から伸びた無数の棘で絡めとり両者は力比べの様相を呈していた。


「ふっ!」


「ウ、ウウゥゥッ!」


 だが少しの間その状態を保ったかと思えば、天使はターモの顔面に蹴りを入れると一気に上空へと退避した。


「剣を鋤に、槍を刈り取り鎌に!」


 天使はその勢いのまま剣を上空へ掲げ、白の霊力を剣先へと集中させるとターモへ向け一気に振り下ろし霊力を飛ばした。

 霊力は一筋の線となり、ターモの体を覆うように彼女の体へ真っすぐと奔った。


「農業も尊い仕事ですよ、怪物────」


 光がターモを包むと確信した天使は、その予想が外れた事に驚愕した。

 ターモの左腕の棘が絡み合い、盾の様な形となり光線を別方向へと逸らしていた。


「ウオアアアアア!」


 ターモはその盾もどきを構えたまま、天使へと飛び掛かった。


「くっ、怪物め!」


「ターモ、マケナイ!」


 空中で両者はもつれあいながら急速に落下し、天使は頭部を岩に打ち付け即死した。


「カッタ! カッタ!」


 ターモは即座に天使の羽を引き千切ると、大口を開け……彼女は影に覆われた。

 別の天使が上空から剣を突き立てたまま彼女へ飛び掛かっていたのだ。


「よくもジェンマを────!」


「知らんでござるなぁ!」


 だが、更にターモを襲う天使は一瞬影に覆われ……顔面へ蹴り飛ばされ樹木へ激突した。


「すまぬが戦場なのでな、恨み辛みの類は聴かぬでござる!」


「ウ、ア、リ、ガト?」


「うむ、食欲旺盛なのは結構でござるがそういうのは終わった後にすると良いでござるぞ」


「ウ、ウマイ!」


「聞いてないでござるな……」


 ターモは引き千切った天使の羽を手当たり次第に口へ詰め込み、咀嚼していく。

 その様はブラックホールの様である。


「見つけた! 見つけたぞお主等!」


「むっ、目当ての場所が見つかったらしい、行くでござるぞターモ」


「ウ!」


 芽衣子の声にターモと虎牙は共に駆け寄ると、彼女が指し示した場所へ向けて全員で移動していった。

 彼らが過ぎ去っていったあと、その場には死体が残るだけだった。


────────────────────────────────────────

MD215年 11/0 10:42


「今後の方策?」


 図書館の一室で、虎牙は疑問の声を上げた。

 ……戦場に行く二日前、芽衣子と虎牙、そしてイボンコはある密談を行っていた。


「うむ、二日後にあの男がゾンビの大群と天使、他にエルフやらドラゴンやらと戦うのは一万歩譲って良いとしよう」


 だが、と彼女は言葉を切った。


「儂等がそれをやったら間違いなく一時間もせぬ内に死ぬじゃろう」


「うーむ、拙者は別に問題は……」


「あ?」


「あぁうむ、死ぬかもしれんでござるな!」


「二人のパワー関係ってどうなってるんですかねぇ……?」


 芽衣子がドスの利いた声で威圧すると、思わず虎牙も意見を訂正する。

 そんな二人にイボンコが珍しく困惑した声を上げた。


「儂は生にしがみ付く事に関してはマジで頑張るからのう、目の前の男がどんなに強くても儂は負けんのじゃが!」


「立派な主張なのか情けなさの露呈なのかよくわからない主張にござるな」


「ミーには情けなさが前面に出ている気がシマース」


「うっさいわ! ……とりあえず今後の方策じゃが、戦闘になったらまずはあの男から離れて屍術師を探そうと思う」


「屍術師?」


 と、虎牙が首を傾けた。


「うむ、簡単に言うとゾンビを産み出す術者じゃな。 死体を黒の霊力で無理やり蘇らせる魔術師の事を言うんじゃ」


「成程、つまりそ奴が今回の元凶にござるか」


「……恐らくはじゃが」


「えらく含みのあるレスポンスですねぇ?」


「そもそも居るか分からんからのう、国三つ分の人口を操れる屍術師など聞いたことが無い」


 目を天井へ向け、顎を触りながら芽衣子は思案した。

 彼女が生まれてから二百年は過ぎていたが、少なくともそんな尋常ならざる力を持つ存在は聞いたことが無かったのだ。


「では仮にその屍術師とやらが居る場合、どうやってゾンビ達を操っているのですかぁ?」


「恐らく、恐らくじゃが~……龍脈と繋がっているんじゃと思う」


「龍脈と言うと、あの男達が言っていた?」


 虎牙はその言葉に聞き覚えがあった。

 以前、日本で管理者達と共に居た際に聞いた覚えがあったのだ。


「それじゃな、サツホロの地下にもあったもので儂はそれを使って蟻を操っていたのじゃが……まぁそれと似たような事をしとるのじゃろう」


「となると屍術師と龍脈の二つを探す必要があるということでござるかな?」


「いや、その必要は恐らくないじゃろう」


「何故でござる?」


「術者は龍脈からあまり距離を取ることが出来ない、という推測が成り立ちマース」


 頭に?マークを浮かべる虎牙に、イボンコが答えを告げた。

 芽衣子はその答えに頷いた。


「正解じゃ。 儂もそうじゃったが龍脈から距離を取りすぎると力を汲み取れん」


「であれば龍脈を見つければ問題の術者も共に居るという事でござるな?」


「うむ、後は術者に術を解かせるか、あるいは……」


「首を飛ばすのでござろう?」


 若干言葉を詰まらせた芽衣子に、虎牙は躊躇なくその先を言ってみせた。


「う、む……まぁそうなるんじゃが、よくわかったのう」


「拙者がそういった話に巻き込まれる時は大体汚れ仕事でござるからな、簡単な話でござる」


「誇って言う事じゃない気がバリバリしますねー、ヌホホホ」


「ハハハ! 確かにそうでござるな!」


 イボンコのツッコミに虎牙は笑って答えた。


「いやまぁ頼もうとは確かに思っておったが……本当に良いのか?」


「確実さと言う上では拙者が一番でござろう、芽衣子殿では力強さに欠け、ターモは少々戦術に難があるでござるしな」


「……すまん、恩に着る」


「ま、屍術師が居ればの話でござるが。 居なかった場合はどうするのでござるか?」


 当然の疑問を口にする虎牙に、芽衣子はその薄い胸を叩いて自信満々に答えた。


「其処に関しては安心せい、儂に秘策がある!」


「あ、それミーの台詞!」


「若干不安になるのは拙者の気のせいでござるか……?」


「いやいや本当に大丈夫じゃ、龍脈操作をずっとしてた儂じゃぞ?」


 自信満々な顔をする芽衣子に、虎牙は少しだけ不安そうな顔で頷いた。


「まぁ……これだけ自信がありそうな顔してるでござるし多分大丈夫……でござるか?」


「失敗してもミーの瓶は壊れないので問題ナッシングでーす!」


「だから大丈夫って言ってるじゃろが! それでは明後日は戦場に着いたら龍脈探索開始じゃ、見つかるまで儂を守ってくれい!」


「うむ、任されよ!」


「ミーも足手まといとして付いていきマース」


「ターモもきちんと連れてくるんじゃぞ、あの男の傍に置いておくとそのまま殺されそうで不安じゃ」


 三人は二日後の方策を決めると互いに頷き合い、その日は眠りに就いた。

 そして、時間は二日後に戻る。



令和なので初投稿です

いや二回目かもしれないが初投稿です


Blossoming Defense / 顕在的防御 (緑)

インスタント

あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+2/+2の修整を受けるとともに呪禁を得る。


生まれながらにして、ゴイフは戦闘の天才だ。

それは自らの体を変質させ、敵を殺し……時にはそれで身を守る。

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