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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
174/207

死の国の巫女だったら

https://www.youtube.com/watch?v=ovypLjsiHM0

Rance X BGM - のんびりランス

MD215年 11/19 17:40


「うぅむ……儂何かしたかのう?」


 徐々に陽が沈みゆくロシア。

 午前中は世界を照らしていた六つの太陽は、時計の針が重なり合うようにゆっくりと世界の端へと消えていく。

 そうして世界は暗闇の中に沈みつつある中で、芽衣子は灯りの灯った図書館の室内で正座していた。

 彼女の前には田崎が立ち、周囲には虎牙やターモが地面に座っていた。


「何かはしてないが、お前……何か隠してることあるだろ」


「そ、そそそそんな事は無いぞよ?」


「嘘が下手か!」


「いや、芽衣子殿流石にそれは誤魔化せてないでござるよ……」


 田崎の言葉に、芽衣子は猫背を突然シャキッと伸ばし大量の冷や汗を掻きはじめた。

 

「あのドラゴンはお前みたいな蛇女は死の国にしか居ないとか言ってたんだが、お前は最初出身を別の国って言ってたよな? そりゃどういうことだ?」


「う、ううむ、そ、それは……」


 芽衣子は目を泳がせ、少し逡巡した後に観念したように項垂れると少しずつ口を開いた。


「察しの通り、儂は死の国の生まれじゃ。 大体二百年ちょっと位前に生まれた」


「話には聞いてたが、マジで二百歳だったのか……」


「二百歳には見えない位、お肌ピチピチじゃろ?」


「そりゃ脱皮するからだろ……」


「で、儂は二百年前は死の国で巫女をやっとった。 と言っても見習いじゃけどな」


 そういって笑うと、芽衣子は滾々と語り始めた。


「死の国は……まぁそういう名前じゃが別段普通の国じゃった、強いて言うなら労働力がゾンビだったっていう事位かの」


「大分イカれた国だな」


「考え方の問題じゃな、後世の者の為に死した者が尽くす、そうやって尽くされたものが後世の者にまた尽くす訳じゃ」


「まぁ価値観の違いを論議するつもりはない、それで結局何で出身を騙ってたんだ?」


「その話はとある事件を思い出したくなかったからじゃ」


 何処か遠い目をしながら、芽衣子は顔を俯けた。


「儂が巫女として選ばれたのは所謂予知の様な能力があったからなんじゃが……ある時、儂は巨大な鳥が星を国へ落とすのを見た」


「鳥? じゃあそれが……」


「あのどらごんが言っていた凶鳥とやらでござるかな」


「恐らくそうじゃろう、で、その凶鳥が星を落とす数日前に儂は──」


「儂は?」


 そこで、芽衣子の言葉が止まった。

 彼女の下半身に置かれた両手は固く握りしめられ、少しだけ震えていた。


「──儂は怖くて国から逃げだしたんじゃ、それも予知の事を誰にも告げずにの」


「……お前」


「臆病者と笑うが良い、儂は……それでも生き延びたかったんじゃ」


 芽衣子の服に、幾つかの水滴が零れ落ちた。

 

「どうして、予知を他の者達に伝えなかったのでござるか? 事件の数日前に予知したのならば伝えられたと思うのでござるが」


「国の決まりがの、死の国で生まれた者は死の国で死ななければならないという決まりがあったんじゃ」


「それはまた難儀な法にござるな」


「うむ、おまけに国の住民は皆その考え方に好意的での、死の運命が近くにあるのならばそれに従うのも運命という考え方が根強かったんじゃ」


「でも一人くらいは他の考え持ってた奴も居たんじゃないのか?」


 当然の疑問を田崎は芽衣子に問い、彼女は首を横に振った。


「いや……儂の親も、友人も皆口を揃えて言いおったよ。 もしお前の言う予知の通りなら、それに従おうとな」


「そう、でござったか……」


「で、最終的にお前は国を見捨てて一人で生き残ったって訳か」


「田崎殿!」


「いや、良い……それが真実じゃからな」


 辛辣な言葉を投げかける田崎に、虎牙は声を荒げたが芽衣子は手を横に振る。

 そして服で目を拭うと、彼女は顔を上げた。


「ま、そういう自分の後ろ暗さから目を背けたくて黙っていたという訳じゃ、これで満足かの」


「いや、まだだ」


「む?」


「黙っていた理由は分かったが、まだ一つ疑問が解決してねぇ」


「疑問……あぁ、もしかして星を降らせた凶鳥の事かの」


 田崎は頷いた。


「あぁ、お前その凶鳥ってのは見たのか?」


「うむ、見た」


「おっ、マジか。 どんなんだった?」


「と言っても覚えておるのは、この間登った山よりも大きい鳥の様な巨体が飛んでいて、それが死の国に赤い何かを腹から打ち出したってこと位じゃ」


「要領を得ない説明だな」


「ふん、人の思い出したくない記憶を思い出させたんじゃからこれ位で文句を言うでないわ」


 頬を膨らませ、芽衣子はそっぽを向いた。


「へいへい、しかし今まであちこち行ってたがそんなでかいのが飛んでれば直ぐに気づくだろうし、今はロシアにはいねぇってことかね」


「あのどらごんは目覚めと言ってたでござるし、どこかで眠っているのではござらんか?」


「山よりでかい鳥がか?」


「海の中とかに?」


「海の中で鳥が寝てるって、それ死んでねーか?」


「確かに……!」


 ハハハハ、と男達は笑う。


「ま、一応対策はしておくとしてだ。 次の展開についてだが」


「うむ、打って出るのでござろう?」


「そうだ、ゾンビ使いっぽい格好をして天使どもを釣りだして──」


「天使とゾンビを戦わせつつどちらも打ち倒すと」


「おうよ!」


「なんつー適当な作戦じゃ……」


 男二人の会話を横で聞きながら、芽衣子は話に付いていけず眠ったターモの髪を梳いていた。


「いやはや、実にテキトーな作戦で思わずミーも笑ってしまいますねぇ!」


「むっ、脳味噌殿。 作業とやらは終わったのでござるか?」


 室内の隅にあるスピーカーから、耳障りの良い声が響いた。

 この図書館の主、イボンコである。


「おう、イェース! NINGEN様に頼まれていた作業も終わったのでその報告と、一つお願いが」


「お願い?」


「YES、次の戦い、ミーも興味がありまーす。 故にミーを背負ってプリーズ!」


「え、やだ、めんどい」


「即時却下!? ノーーー!」


 頼みを即座に却下され、スピーカーから甲高い声が響く。


「うるせー!」


「そんな事言わないでくださーいよー! ミーも是非天下割れ目のバトルに連れて行ってプリーズ!」


「分け目な、分け目」


「おーう、ちょっとしたバグです、ソーリーソーリー、流石は死の国のナーガ、頭脳明晰」


「死の国は余計じゃ、しかしお主連れていけと言ってもどうやって運ぶんじゃ? と言うか死ぬんじゃないかの」


 至極もっともな質問を返す芽衣子。

 それも当然である、何故ならイボンコは瓶の中に浮かぶ脳味噌でしかなく、取り外したところで五感が蘇る訳でもないのだ。


「それに関しては問題ナッシング! あくまでも私は瓶が壊れなければ死にませーん、それに五感に関しても専用の器具を付ければOKっでーす」


「成程、それなら問題なさそうじゃな」


「いや問題あるだろ、誰が運ぶんだよ」


「そりゃぁお主じゃろ」


「うむ、頼まれたのは田崎殿でござるしな」


「えぇ……しょうがねえなぁ」


「オウ、ホントニ? やったー!」


 田崎は渋々承知すると、スピーカーから喜びの声が流れた。


「それではミーは器具の準備をしておくので、忘れずに後で迎えに来てくださーい!」


「へいへい」


「うむ、とりあえず話は決まったようじゃな。 討ち入りの日は何時にするんじゃ?」


「あー……三日後とかで良いだろ」


「ならそれまで儂はのんびりしておくかの、ほれターモ、寝るならベッドのある部屋で寝るんじゃぞ~起きれ起きれ~」


「ウ……ネム、イ……」


 話が纏まり、芽衣子はターモを軽く揺すって起こすと二人で部屋から出ていく。


「では拙者も鍛錬でもするでござるか」


 その後に続き、虎牙も出ていった。

 部屋には田崎が一人残り、そのまま夜は更けていった。






GWの10連休が気が付いたら終わっていたので初投稿です

すまない、投稿しようと思ったら気が付いたら月曜日を完全に通り過ぎていたのだ……


ターモ   ①緑


クリーチャー:ゴイフ


タルモゴイフのパワーは、すべての墓地にあるカードのカード・タイプの数に等しく、タフネスはその点数に1を加えた点数に等しい。


*/1+*


「育たぬものは死ぬ。 死はターモを育てる」

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