竜の女王
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RanceX ost 04 - ふしぎエリア
MD215年 11/19 13:01
「我が同胞よ」
火口の内部、周囲をマグマが取り囲み、壁面に空いた穴からは鋭い眼光が無数に見える中で竜は威厳ある声を発した。
四つの足を器用に折り畳み前足を交差させた状態でさえも田崎達よりも圧倒的に大きく、常人ならばその姿を見るだけで立っていられなくなるだろう。
「同胞?」
同胞と言う言葉に、虎牙はきょとんとし周囲を見回した。
自分の周りに居るのは隣に田崎、そして彼の背後に腰を抜かした芽衣子と怯えるターモだけである
「誰がでござるか?」
「俺か」
虎牙と互いに顔を見合わせ、田崎は自らを指差した。
「汝以外に誰が居ると言うのだ?」」
田崎の言葉に竜は疑問の言葉を返した。
「さあな、ターモとかか?」
「ウ……」
突然、田崎に名を告げられたターモは驚き、更に身を竦めた。
「確かにその娘は珍しいが……余とゴイフを同列ではない」
「ゴイフ? なんだそりゃ」
そんなターモを竜は一瞥すると、鼻息を鳴らした。
いや、正確には頭部先端の排気口から空気を噴出しただけと言うべきか。
「汝はそれが如何様な種族かも知らず、連れておるのか?」
「そうだが、それがどうした」
「カカカ、愚かな事よ、それとも所謂思いやりという奴か? 人間はつくづく度し難い」
「あぁ?」
高圧的な口調に、田崎が反応した。
ターモに食われなかった左腕を強く握ろうとし、突然の振動で体勢を崩した。
他の面子もまた一様に悲鳴を上げた。
「うぉぉ!?」
「ひえええええ!」
「むっ!」
「ウゥゥゥ!」
振動の原因は、竜が振り下ろした尻尾だった。
ただ尻尾を高く上げ、勢い良く叩きつける。
それだけの行為で、田崎達が立っている地面には亀裂が走り周囲のマグマが沸き立った。
「無用な敵意は身を滅ぼすぞ、人間。 千年前の様にな」
「ちっ……」
揺れが収まると田崎は地面に手を突いていた状態から、立ち上がった。
そして、眼前の竜から改めての威圧感を感じ取った。
また、視線は眼前だけではなく彼の周囲からも注がれていた。
「ふん、殺し甲斐のありそうな雛が沢山居るみてえだな」
「雛とてお前達を喰らうのに時間は掛からぬ、余の子等は皆強靭故な」
「そうかい、機械でも親バカってのにはなるんだな」
「そうかもしれぬな、その点は霊力に感謝しなければならぬか? お前たちの道具からの脱却を期せずして図れたのは正しく僥倖と言う他は無い」
「う~む……なぁ芽衣子殿」
剣呑な雰囲気の中、虎牙が腰を抜かしている芽衣子にそっと耳打ちをした。
「あのお二人は何の話をしてるのでござろうか」
「お、恐らく最終戦争前の話じゃろうが……もう気にしている余裕も無いんじゃが……!」
芽衣子は周囲から浴びせられる竜の雛達の視線にすっかり怯え、虎牙の背中に縋りついた。
「で、出来れば今すぐ逃げたいんじゃが」
「うーむ……拙者一人ならばなんとかなりそうでござるが、芽衣子殿とターモを連れてとなると中々難しい、腹を括るしかないのでは?」
「あ、あばばばばば──」
「む、気絶してしまった」
芽衣子は虎牙の言葉に絶望し、泡を吹きながら白目を向いて意識を投げ出した。
虎牙はそんな芽衣子をしっかりと背負うと、未だに竜と問答をする田崎へ視線を向けた。
「成程、やはりぺスの分析は間違ってなかったってことか。 機械が本当に霊力で命を得るとはな」
「然様、汝のその体ですら何れは生命として生まれ変わる」
「そうかい、しかし新しい命を得てやる事が子供を産んで増やすだけか? 空の王者だった頃はもういいのか、戦闘機さんよ」
「戦う理由が無い故な、一方的な狩りを戦いと呼ぶのであれば時折雛がそうしているが」
そう言って、龍は顔を真横の巣穴へ向けた。
その中には何かの骨や死骸が散乱しており、龍の雛達はそれを貪ったり、あるいは玩具として遊んでいた。
「ならどうだ、その玩具の中にゾンビを増やしてみるってのは」
「ほう……続けてみよ」
竜が僅かながらに興味を示した。
「俺達は今、この大陸の勢力を動員してゾンビ狩りを予定している。 戦力は十分だが──」
「余等の助力を請いたいと?」
「そうじゃない、単なる提案だ、新しい遊び場があるから一緒にどうだ? ってな」
「物は言いようだな」
「機械と違って曖昧さが人間の売りでな、それで? どうする?」
竜は暫し黙考し……口を開いた。
「人間、今は西暦何年だった?」
「あ? 西暦? あー……3418年の筈だが」
「そうか、ならば凶鳥の目覚めまでは少しばかりの猶予があるか──」
「凶鳥?」
「気になるか? ならばそのナーガが目覚めた折に尋ねるが良い、ナーガは死の国にのみ存在する一族……あれについては余よりも詳しかろう」
そう言葉を切ると、龍は再び小さく尻尾で地面を叩いた。
「戯れにしては有意義な時間であった、では去るが良い」
「なにぃ!? ゾンビ狩りはどうすんだ!」
「適宜必要なタイミングで雛が行くだろう、お前達が案ずることではない」
「ちっ、相変わらず上から物を言いやがって」
「空を飛ぶ生物が地を這う生き物に対してそうでなければ、誰が上から物を言うというのだ?」
竜が小さく笑うと、横の巣穴から2匹かの小型の竜が飛び出してきた。
小型と言っても3メートルを超えるそれらは田崎達の前に降り、自らの背中を彼らに向けた。
「では、開戦の日取りを余等は待つ。 今宵は去るが良い」
「しょうがねえ、おい、今日は帰るぞ」
「ん? 話が纏まったでござるか?」
芽衣子を背負った虎牙が、きょとんとした顔をして田崎へ問いかけた。
「気が向いたら参戦するとよ、んで帰り道はこいつ等に乗れってよ」
「おぉ、どらごんが戦場に出てくれるとはありがたい事でござるな。 おまけに送ってくれるとは至れり尽くせり」
と、虎牙は何時ものように笑いながら雛の背中に飛び乗った。
「さぁターモ、お前も行くぞ」
「ウ、ウ……」
残ったターモも、未だに怯えながらだが田崎の手に引かれもう一匹の雛へと飛び乗った。
全員が乗ったのを確認すると、雛は互いに顔を頷かせると翼の下にあるジェットエンジンがゆっくりと音を立て始めた。
最初は静かに、しかし徐々に盛大な音を立て……雛は真っすぐに飛び出した。
「うおおお!?」
雛達は真っすぐに壁へと高速で飛び、もう少しで激突するというところで壁に沿ったまま真上へ飛び上がった。
「落ちるわー!」
田崎の悲鳴を火口に残したまま、雛達はそのまま外へと飛び立っていった。
そうして内部に残ったのは、再びの静寂だけであった。
「さて次の一掃まで残りの時間は少ないが、果たして何処までやれるものか……中々面白い見世物が始まりそうだな」
と、竜の女王は雛が飛び立っていった空を見ながら呟くのだった。
仕事が忙しかったり忙しくなかったりするので初投稿です
エンドゲームと同日に灯争大戦とか胸が熱くなるぜ・・!
竜の女王、ヴァラ/Vala,Queen of the dragon ④赤赤
伝説のクリーチャー:ドラゴン・アーティファクト
飛行
あなたが赤い呪文を唱えるたび、竜の女王、ヴァラは飛行を持つ4/4の赤ドラゴントークンを戦場に出す。
あなたが山を戦場に出すたび、竜の女王、ヴァラはクリーチャーかプレイヤーかプレインズウォーカーに3点のダメージを与える。
6/6
「かつては空の女王、現在は竜の女王」
────戦争の国の王、エルザード




