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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
171/207

溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle

https://www.youtube.com/watch?v=TR9NAu8nz8k

Age Of Ondins

MD215年 11/19 8:58


 ロシアの大地に、地鳴りが響いた。

 その振動と音に何かを感じたのか、木々に止まっていた鳥達は一斉に何処かへと飛び立っていく。

 濛々と煙を吐き出す、赤黒い山が男の眼前に見えていた。


「おーおー、活発な火山だこと」


「うむ、山が吼え猛る様を見るのは拙者も初めてにござるがいやこれは絶景絶景」


「気が合うな、ああいう大地の力強さってのは俺も好きだ」


「はっはっは、お主と意見が合っても拙者は嬉しくないでござるなぁ」


 噴煙を上げる火山を見ながら、田崎と虎牙の二人は剣呑な雰囲気を醸し出す。


「仲違いする気なら儂とターモは帰るぞ」


「マタ、シタイ、クウ?」


 今にも互いに襲い掛かりそうな二人から大分距離を離した状態で、芽衣子は苦言を呈した。

 芽衣子の隣にはターモが手を引かれて立ち、ターモは右手に若干腐りかけている何かの腕を持っていた。


「これ、不衛生だからそんなものは食べてはいかんと言ったじゃろ。 そんなもの捨てなさいターモ」


「ウ……ワカ、ッタ」


 ターモは名残惜しそうな目で引きちぎられた腕を林へ放り投げる。


「おいおいお婆ちゃんそりゃないんじゃねえか?」


「うむ、ターモが折角自分で倒した死体の腕、言わば戦利品をそんな無碍にすることは無いと思うでござるぞ」


「これだから倫理観に欠ける戦闘馬鹿どもは……こんな幼子にゾンビの部位食べさせるとか馬鹿じゃろ!」


「「えー」」


「えー、じゃないわ! お主らの言うようにしてたらターモが一人前の乙女に育たんじゃろ! なぁターモ、お主も可愛くなりたいじゃろ?」  


 男たちは同時に不満の声を漏らしたが、芽衣子はそれを一蹴しながらターモに笑いかけた。

 だがターモは困惑した顔を彼女に返すばかりだった。


「カワ、イイ? ウマイ?」


「う~む、これはまず基本的な教養から教えないと駄目じゃな……」


「しかし、このターモ嬢は一体どういう子にござるか? 大人顔負けで何でも食べる上に、拙者の部下達よりも戦闘慣れしている等不可思議な部分が多いでござるが」


「と言われてものう……実は儂等も襲われたのを手懐けた、もとい仲良くなっただけじゃからな」


「ふぅむ……本人に聞いてみるでござるか?」


 腰の刀に手を当てながら、虎牙は唸った。

 ターモと虎牙が出会ってからまだ数日であるが、元々誰にも分け隔てなく接する男である虎牙は彼女の事が気になりつつあった。


「聞いても首を傾げるだけだろ、それよりもあの脳味噌に喋らせた方が早いと思うがな」


「あの瓶詰脳もなぁ……情報は正しいみたいじゃが、どうも信用できん」


「芽衣子殿、まだ今回の事を恨んでるのでござるかぁ?」


「まぁそれもあるが、どうも話し方とかが胡散臭くてのう」


「でもよぉ、すげぇ良い声だぜ?」


 田崎の言葉に、ターモ以外の全員が頷いた。


「確かに」


「じゃなぁ……いやそれでも胡散臭いがの!」


 芽衣子がそう言うと、三人は同時に笑い出す。


「それでも今まで有用な情報だったんだ、使える所は使ってやるさ」


「拙者としては強者と戦えるのならばそれで構わんでござる、ところで今回の獲物は如何な存在で?」


「なんじゃ、お主聞いておらんかったのか?」


「いやいや、聞いてはおったが名前に全く聞き覚えが無かったのでな、とりあえず付いてきたという次第にござる」


「何だお前何狩りに来たかも知らないのかよ~」


 と、小ばかにする様な表情で虎牙を田崎は小突いた。


「ははは、面目ない」


「今回狩りに行くのはドラゴンって奴だ、簡単に言うと翼の生えたでかいトカゲだな」


「ふむ……?」


 視線を上に逸らし、虎牙の脳内にあるイメージが浮かび上がった。

 ヴィーアシーノと呼ばれる、所謂リザードマンに翼が生えた姿である。


「おぉ!」


「いやいやいや」


 と、そんな虎牙の脳内イメージに突如大きな×が現れる。


「そりゃヴィーアシーノじゃろ、ドラゴンと言うのはこれじゃ!」


 そしてすぐさま虎牙の脳内に、今度は正しい形のドラゴンが描き出される。


「おぉ、これがどらごんでござるか流石は精神感応テレパシーの使い手、実に見事。 しかしこれは……」


 その姿は西洋の伝説によく出てくるドラゴンの姿そのものだったが、幾つかの差異が見受けられた。

 それはまず体を構成する物が骨と筋肉ではなく、金属で出来ているということである。

 全身を覆うメタリックな輝きを放つ金属と、戦闘機の名残を残す流線型のボディ。

 背中にはコックピットの名残を残し、翼の下にはジェットエンジンが融合している。


「何か乗れそうな箇所があるでござるな? それに翼の下に何かよく分からない筒が付いてるでござるが」


「うむ、以前聞いたことがあるがドラゴンはかつては最終戦争以前に使われていた兵器だったらしい」


「ほう……つまり古代の金属製の鳥、と言ったところにござるか」


「そんなところじゃな、詳しい事はあそこの男に聞くとよいじゃろ」


 芽衣子はそう言って、田崎を指差した。

 田崎は何食わぬ顔でこれから登る山の上空を旋回している存在を眺めていた。


「田崎殿にでござるか? そういえばあの御仁は……」


「最終戦争以前から来た男じゃからな」


 最終戦争という単語に、二人の顔が陰った。

 今や口伝で伝えられるだけの、神話の世界の様な話。

 その時代から来たと名乗る三人の男たちに、自らの国や生活を台無しにされた二人にとってこの単語はあまり口にしたいものではなかった。


「ウ? ハラ、ヘッタ?」


「……むっ、いやすまんすまん、怖い顔しておったか?」 

 

「ハハハ、しかめっ面ばかりでは小皺が増えるでござるぞ芽衣子殿」


「お主そんな事ばっか言うから島流しされる時も止められなかったんじゃろ」


「うむ、その通り!」


「ウ??」


 虎牙の返答に、二人は笑うと地面に卸していた荷物を背負った。


「談笑は終わったか?」


「うむ、待たせたの」


「同じく、戦う相手が分かるなら後は戦う方法を考えるだけでござる」


「カリ、イク!」


「おっし、それじゃあ一丁派手に行くか! 目指すは山頂に居るドラゴン捕獲だ!」


 おー! という鬨の声を上げた。

 彼らの胸中にある思いはそれぞれだが、今のところ、彼らは纏まっているのだった。

 

────────────────────────────────────────


 同時刻。

 山頂、火口の内部。

 肉灼き、骨焦がすマグマの内部にてそれはまどろみから目覚めた。


「…………懐かしい波形だ」


 巨大な顔を火口の上へ気だるげに向けると、ドラゴンは再び顔を下ろし眠りに就く。

 彼を起こす者が訪れるその時まで。

 この火口の中で。


 


ミシックに到達はしたけど1000位以内に入れなかったので初投稿です

ちぃくしょおおおお!

そして投稿遅れてごめんなさいね!

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