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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
168/207

黙示録のハイドラ

https://www.youtube.com/watch?v=aiIbv74bHKQ

DELTARUNE OST - Field of Hopes and Dreams


MD215年 11/14 17:36


「しっかし、つまらん戦いだったなぁ」


 田崎は、鬱蒼としたジャングルの茂みをかき分けながらそうぼやいた。


「奇襲は卑怯だの、騎士道に悖とらない行為だ~って話じゃろ? お主それ何回言うんじゃ……」


 田崎が均した道を後ろから芽衣子、ターモの二人が続いていた。

 芽衣子はうんざりした顔で田崎のぼやきを受けながす。


「とは言ってもあそこまで平和ボケしてるとは思わなかった、なんなのあれ」


「天使に守られてるからのう、儀礼的な戦闘しかしてない国ならああもなるじゃろ」


 それに、と芽衣子は付け加えた。


「本命はあの騎士達じゃなくて今儂等を探してる天使達じゃろ?」


「まあな」


 と田崎は頷いた。

 秩序の国の首都に殴り込みを掛けた三人は、首都で大暴れをした。

 だがある程度暴れた所に上空から天使達が現れ……。


「で、敗走中と……当初の目的は達成できたんじゃろうがこれでは命が幾つあっても足りんわ!」


「あんなに大量に来るとは正直思わなかった、次は負けない」


「勝ち負けじゃなくて儂等の命の話しとるんじゃが? 馬鹿なんじゃが? じゃがじゃが?」


「じゃがじゃがうっせーよ! ターモも何か言ってやれ!」


「ウ、キンゾク、ウマイ! ツギ、テンシ、クウ!」


 芽衣子の後ろで、大量に奪い取った印章を歯で噛み砕くターモはそう意気込みを語った。


「あぁこれ、ターモまた印章を……それは食べ物じゃないと言っておるじゃろ」


 体に大量に括りつけた印象を一つ千切ってはそれを口に運び、食べ終わるとターモはまた印象を口に入れる。

 それを芽衣子は止めると、懐から卵を一つ取り出してターモへ手渡した。


「アリ、ラト!」


「うむうむ、お礼を言えるのは偉いぞ~ターモ~」


「すっかりお婆ちゃんだな」


「誰がじゃ! 儂はまだ──」


「っと、天使だ! 伏せろ!」


 年寄り呼ばわりされたことに対する抗議の声は、天使の飛翔音によって中断された。

 田崎達は一斉に身を屈めると、草むらの中に身を潜めた。


「ウ……タマゴ、オチタ……」


「後でもう一個やるから、大人しくしておれターモ」


 悲しそうな顔をするターモを芽衣子があやしながら、彼らは視線を上へ向けた。

 その先には鎧に身を包み、剣を持った翼を生やした女性……天使が何人か飛行していた。

 それらは眼下の茂みの上を飛行し、誰かを探しているようだった。


「うーむ、しつこいうのう……この辺りはそろそろ野生の国との境目なんじゃが」


「いや、どうやら引き返すみたいだぞ」


 暫く田崎達を探した後、天使達は幾つか言葉を交わし再び元来た方向へと飛び去って行った。


「イッ、タ?」


「みたいじゃな、ふぅ……あの剣を見るだけで肝が冷える」


「臆病だな」


「慎重なの、慎重! お主みたいにバトルジャンキーじゃないの儂は!」


「はいはい、悪かった悪かった」


 面倒臭そうな顔をしながら田崎は立ち上がると、再び前進をし始める。

 芽衣子もまたターモと自らの服の汚れを払うと彼の後を追い始めた。


「しかしさっきの捜索はえらく手早く終わったな、今までのはそれこと草場燃やしたりしてたのに」


「さっきも言ったがここから先は野生の国じゃからな、あまり森を燃やすと不要な怒りを買うからじゃろ」


「怒り? 誰の?」


「誰のと言われるとちょっと困るんじゃよなぁ……一番強い奴かのぉ」


 ポリポリと頬を掻くと、芽衣子は空を見上げた。


「あん?」


「野生の国はじゃな、一番強い奴が法律という国なんじゃ」


「割と俺好みだなそれ」


「じゃが儂が居た頃と今では恐らく代替わりが起きておるじゃろうし」


「つってもどうせ人間とか竜とかが治めてるんだろ?」


 芽衣子は首を横に振った。


「儂が居た頃に野生の国を治めてたのは牛じゃ」


「牛ぃ? 牛ってあの牛か?」


「うむ、四足歩行の牛じゃ、ミノタウロスとも違う、まじで凄いでかい牛」


「ウ、シ? ニク?」


「ほほ、牛が居たのは二百年も前じゃよターモ。 今は何処にも居らん、現に──」


 その時、周囲に地鳴りが響いた。

 続いて振動が。


「お、おぉ……!?」


「地震か?」


「ウゥ……ナニカ、クル!」


 遠方で、何かが倒れるような音が響いた。

 それも連続で。


「何だぁ? 何か馬鹿でかい熱源が遠くにあるな……ちょっと見てみるか」


 田崎は手近な樹の枝に飛び乗ると、そのまま樹木の上まで飛び上がった。


「ど~れどれ……ってげぇっ!?」


 其処には、天まで届かんと言うかのような威容を冠する蛇が居た。

 しかも無数の首と頭部を持った、まるで八岐大蛇の様な存在が。


「おーい、何が見えたんじゃー?」


 下から聞こえる芽衣子の声に、田崎は珍しく少し焦ったような声色で返答した。


「何か首がすっげぇ沢山生えた巨大な蛇みてーのがこっちに向かってきてる」


「首の沢山ある蛇? 首の、沢山……蛇ぃ!? い、いいいいかん! 田崎、それは──」


 それの特徴を伝え聞いた芽衣子は、焦り、怯え始めた。


「ハイドラじゃ!! お、大きさはどれくらいじゃ!?」


「ハイドラぁ? 大きさはー……ざっと見て10メートル位か?」


「メートルってなんじゃ!? 儂にもわかる単位で話さんかい!」


「お前の部屋があった建物の二倍以上はあるぞ!」


「なんじゃとおおおおお!?」


「ナンジャトー?」


 驚愕する芽衣子と、その真似をするターモを見ながら田崎は今の状況をどうするか考え始めた。

 遠くに見えるハイドラは、目測でおよそ8から10メートルの大きさに見えた。

 距離としては10キロ以上は離れている様に見えるが、それは猛烈な速度で周囲の森を食べながらこちらへ向かっているのだ。


「首の数は……駄目だな、数え切れん。 うーん、巨大戦車ジャガーノートを今から派遣させて何とか間に合うか……?」


「冷静に考えとる場合かー! 逃げるんじゃよぉーー!」


「ジャヨー」


「つってもなぁ、後数分でこっちまで来るぞあれ、お前秒速100メートルとか出せるか?」


「火事場のクソ力でなんとかするわい!」


 と、芽衣子はターモを片手で持ち上げると逃げるべき方向を田崎へ訊ねる。


「いやぁ間に合わないだろ、戦うしかねぇな」


「ぎゃー! いやじゃー! こうなったら捕まっても良いから儂は秩序の国に戻るぞ!」


「へっ、その前にあいつの腹の中だろうよ! 腹ぁ括れ!」


「ターモ、タタ、カウ!」


「どーしてお主達はそう戦闘に好意的なんじゃー! えぇい、やけっぱちじゃー! 自爆奥義──天秤バランス──を……」


 田崎はそう言うと、存在しない右手と建材の左手をかち合わせるように動かし、構えた。

 巨大なハイドラと田崎達の距離は如実に迫っており、激突は間近……というところで突然ハイドラは動きを止めた。

 無数にある頭部が一斉に停止し、怯えだしたのだ。


「ん?」


 ハイドラの無数の頭部たちは、何かに怯えだすと我先にと逃げようと動き始めるが途中で頭部同士が絡み合ってしまう。


「アタマ、カラマ、ッタ」


「む、ま、まさか儂の奥義に恐れをなしたか!?」


 その内まだ絡まっておらず無事な頭部が一つ、突然千切れ飛んだ。

 それは勢いよく飛び上がると、田崎達に程近い木々を薙ぎ倒しながら秩序の国方面へ吹き飛んでいった。


「あぶね!」


 倒壊する木々によって、田崎が乗っていた木もまた倒れ、田崎は飛び退いた。

 ゆっくりと降下していく風景の中で、田崎は千切れ飛んだハイドラの首元に赤い何かが居るのを見つけた。


「……あれは」


 それは、何処かで見た事のある赤さだった。

 鮮血の様な赤を全身に纏ったそれを、しかし田崎ははっきりとは思い出した。


「ひえええ! ハイドラが怯えだしたと思ったら今度は首が飛んでくるとかなんなのじゃ!?」


「アノクビ、ウマソウ!」


「……ナーガ、ターモは任せる。 俺はちょっと気になるものが見えたから行ってくる」


「は? え? ちょ、ちょっと待てぇい! あぁこらー! なんでもかんでも儂に押し付けるのはやめーーーーーいーーーー!」


 飛んで行ったハイドラの首に対して食欲を見せるターモのお守りを芽衣子に任せると、田崎はハイドラの本体が居る場所へと急行した。

 先ほど見た物体がハワイで見たとある人物と同じであるとは思いたくはなかったが、田崎はそれを確認せずにはいられなかった。

 木々の間をすり抜け、邪魔な岩を破壊しながら進む間もハイドラの悲鳴が上がり、首が一本、また一本と何処かへ千切れ飛んでいた。

 否、切り飛ばされていった。


「居た!」


 そうして、田崎がハイドラの胴体に辿り着くころにはその場所はハイドラの猛毒の血で覆いつくされていた。

 一面が紫がかった鮮血の中に、それは居た。

 真っ赤な鎧に身を包み、二刀を担ぐその男に田崎は見覚えがあった。


「お、お前……」


「ん? おぉ、もしかしてお主の獲物でござったか? いやぁ失敬失敬、拙者も腹が減っておってな!」


 日本からオーストラリアへの島流しを命じた筈が、何故かハワイで三神の一体と戦い。

 そして今、ロシアの地に居る男。


「あ、そういえば名乗ってござらんかったな。 拙者、虎牙伊織と申すもの。 よろしく候!」


 虎牙伊織だった。

 

「して、お主以前何処かであったことがござらんかったか?」



最初にミシックは591位で終わったので初投稿です

つ、次があるから…(小声)


Apocalypse Hydra / 黙示録のハイドラ (X)(赤)(緑)

クリーチャー — ハイドラ(Hydra)

黙示録のハイドラは、それの上に+1/+1カウンターがX個置かれた状態で戦場に出る。Xが5以上の場合、それは追加の+1/+1カウンターがX個置かれた状態で戦場に出る。

(1)(赤),黙示録のハイドラから+1/+1カウンターを1個取り除く:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。黙示録のハイドラはそれに1点のダメージを与える。


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