表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
167/207

橋を渡ったら

https://www.youtube.com/watch?v=P2qO8fnfoWo

【DELTARUNE BGM】K.ラウンド戦 1時間耐久【デルタルーン 作業用BGM】

MD215年 11/14 07:26


 ボルコグラード。

 11月のロシアと言えば、外気温がマイナス50℃を記録することも珍しくは無い。

 だがそれは千年前の話である。

 今のボルコグラードは温暖な気候と、肥沃な大地に恵まれていた。


「………………ふわぁ」


 ボルコグラードは街の周辺に川が流れており、大きな橋が街をそのまま貫通する形を取っている。

 その橋からでしかこの街には入ることが出来ず、故に厳しい入国の審査があるのだが……。


「………………………………ふわ~ぁ」


 橋を守る衛兵達の中で、一際大きいサイの魔族──ロウクスと呼ばれる種族──は欠伸をしていた。

 煌びやかな装飾が施された鎧を身に纏った衛兵達は、そのロウクスを睨みつける。


「あっ、へっ、へへ…………すいません」


 ロウクスはその巨体に似合わない卑屈な笑みを浮かべると、その小さな角をポリポリと掻いた。


「全く、ロウクス一族は皆勤勉で真面目だというのにどうして我が隊のこいつは……」


「騎士階級の生まれとは言え小角ですから、仕方ありません隊長殿」


「ハハハハ、確かに」


 その発言に周囲は笑いに包まれた。

 そんないつもの展開に、ロウクスは小さく溜息を吐いた。

 彼らは年中同じようなことを繰り返していた。

 前線では天使がゾンビ達と戦い、彼らはゾンビが来ない平和な街を守る。

 故に彼らにはその平和という名の暇を潰すための何かが必要で、それが小角と呼ばれたロウクスだった


「ん? 隊長殿……誰かが近づいてきます」


 そんな折に、対岸の入り口に三つの人影が見えた。

 鳥の魔族──エイヴンと呼ばれる種族──は額に手を当てながらじっとそれを見つめる。

 

「どんな連中だゲルダ?」


「深く外套を被っていますが……そうですね、背丈からすると子供と大人二人と言ったところです。 恐らくは東から逃れてきた労働者階級の親子ではないでしょうか」


「成程、では遠方から来て直ぐで申し訳ないが退去してもらおうか……サイズ!」


「…………ふわぁ」


「サイズ!」


「あ、俺!?」


 サイズと呼ばれた先ほどのロウクスが、慌てて敬礼する。


「お前以外にサイズという名前は居ないだろう」


「へへへ……そうですね。 でもいいんですか隊長、階級やら何やらを聞いてからでも」


「ではそうしたまえ戦修道士、やり方は君に任せるが結果は変わらずだ」


「うっ、うす」


 サイズは頷くと戦修道士専用のメイスを担ぎ、対岸の人影に向けて歩き出した。

 身の丈2メートルを超える巨体が歩く度に、周囲が微かに揺れる。


「小角の性格は別にして……いきなり戦修道士を向けるのですか?」


「あの巨体は威嚇になる、それにもし戦闘になっても腐ってもロウクスだ、負けはしないさ」


「確かにロウクスは我が隊で一番の強さを持ちますが……性格が災いしなければよいのですが」


 ズシンズシンと重い音を響かせ、サイズは橋の真ん中付近まで辿り着いた。

 彼の鎧に着けられた印章が互いにぶつかり合い、重厚な音を奏でる。


「あぁ、邪魔くせえなぁ……重たいし、五月蠅いし」


 サイズにとってこの印章は自分の境遇と同じく煩わしいものだった。

 騎士階級に生まれながら、角の小ささと物覚えの悪さから疎まれ、蔑まれてきた。

 家督は継げぬ忌み子として、首都防衛という要職とは名ばかりの地位に飛ばされ馬鹿にされる毎日を彼は印章と共に直ぐにでも捨て去りたかった。

 

「……お?」


 そんなことを考えている間に、いつの間にか三人の人影は目の前まで迫ってきていた。

 サイズはその身の丈に相応しい戦槌の先端を地面に突き刺すように置くと、高らかに声を上げた。


「止まれ、其処の三人! 所属階級と此処に来た理由を述べよ!」


 だが、その三人は止まらなかった。

 先頭を行く一人の歩行速度が、同時に上がった。


「お、おい! それ以上近づいてくると怪我を──」


 サイズは戦槌を握り締め、構えた。


「やってみろよ」


「っっ! お、俺は騎士階級ボーラ家が長兄、サイ──ぎゅぅぅ!?」


 外套を被った男の声に、サイズは見得を切ろうとし悲鳴を上げた。

 男の後ろから、子供が飛び掛かってきた為だ。

 その子供は無数の棘を生やした右腕をサイズ目掛けて振るう。

 

「ぐおおおっ!? こ、子供ぉ!?」


 振るわれた腕は間一髪でサイズの鎧を避けたが鎧と印章を繋いでいた鎖を切り裂き、金属音を辺りに響かせた。


「ウ、コロシ、ソコネタ……タザキ、ナグル?」


「殴りゃしねぇよ、思う存分やってみろターモ」


「ウ!」


「あーあ、本当に喧嘩を売りよった……恐れを知らんのかこの男」


 三人は頭に被っていたフードを拭うと、サイズの奥に見える門を見据えた。


「先行ってるぞターモ」


「ウ!」


「危なくなったら逃げるんじゃぞ~、怪我もせんようにな~」


 可愛い孫と引き離される様な悲し気な声で、芽衣子はターモを励ますと田崎と共にサイズの横をすり抜けていった。


「あ、お、おい!? ま、待て待て! こっから先に進まれたら俺があいつに怒られちま──がぁ!」


 振り返り二人を止めようとしたサイズの後頭部に、痛烈な一撃が見舞われる。

 身長2.6メートルの巨体へ向けターモが跳躍からの殴打を行った結果、サイズはコンクリートの地面とキスをすることとなる。


「オマエ、クウ!」


「ひ、ひぃぃ!?」


 サイズは頭を抑えながらゆっくりと顔を上げ、捕食者の目をするターモを見て……悲鳴を上げた。

 同時に、サイズが守るべきだった場所からも悲鳴が上がった。

 この日、ボルコグラードは陥落し街は人間の形をした悪魔とナーガによって蹂躙されることとなる。





ミシックに行けるか割と怪しいので初投稿です


Rhox War Monk / ロウクスの戦修道士 (緑)(白)(青)

クリーチャー — サイ(Rhino) モンク(Monk)

絆魂


3/4


ロウクスの僧は精神の成長と学習に身を捧げ、数多くの学び手としての印章を受けている。 しかし、馬鹿や丁寧に扱われる彼らの教義に逆らうものを喜んで受け入れるわけでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ