死の国が広がったら
https://www.youtube.com/watch?v=x-xmueSQNZc
【作業用BGM】穏やかな昼休み【休憩/息抜き】
MD215年 11/14 10:25
「正直──」
「あ?」
「正直、儂はお主が人助けとかする様なタイプに見えてなかった」
椅子に器用に腰を掛ける芽衣子が、対面で座っている田崎へそう呟いた。
二人の間には、鉄パイプで出来たベッドがありその上ではつい数時間ほど前に怪我を負ったターモが眠っていた。
「いきなり侮辱から入るとか喧嘩売ってるのかな? あ? 買うぞ?」
「いやいや! 喧嘩早いってレベルじゃないんじゃが!? 褒めてるんじゃが!」
「何か俺を上から見てるような発言に見えたんだが」
「いや、儂等の事を使い捨ての戦力みたいに見てる相手は見下げ果てられててもしょうがないと思うんじゃが……」
「確かに……」
芽衣子の言う事に納得したのか、田崎は頷きを返す。
「そこは納得するんかい……ともかく、そういう人種だと思っておったが優しい部分もあるんじゃな」
「そりゃある程度はな、俺は別に永村や山坂みたいに心に悪魔飼ってる訳じゃねーからな」
「お主とあの二人の違いがあまり分からないんじゃが……」
「あいつ等は殺戮を楽しんでるからな……いや俺も戦いは楽しむが、殺す事が主眼じゃない」
やれやれと、肩を竦める田崎。
「目の前で犬が捨てられてたら可哀想になるだろ? 仕事で犬を殺してたってプライベートでまで殺したいって奴はいねぇよ」
「儂としてはそもそも犬を殺す仕事を止めて欲しいんじゃがなぁ」
「そこら辺はしょうがねえだろ、こっちはこっちの職務でやってんだ」
「千年も前の人類の為に、か? 真面目な事じゃの」
最後の台詞は、ありありと嫌味が込められていた。
「お前等には千年前でも、俺達にとってはつい数か月前の事なんでな」
「むぅ…………」
二人の間に、気まずい沈黙が訪れた。
ここ数日の間、田崎と芽衣子は二人で旅をしてきたが互いに口を開くといつもこうだった。
生来の真面目さ故年齢故か、つい話が説教気味になってしまう芽衣子。
そして人類を守護するという立場ではあるものの三十歳という二人が対立するのは立場の違いからも、年齢の差からも当然だったのかもしれない。
だが最近、そんな雰囲気を打破する者が現れた。
「ン……」
二人の間で眠るターモが、身じろぎをした。
どうやら話に夢中になっている間にも動いていたらしく、毛布が乱れ上半身が露出していた。
「おっと、娘が寒そうにしてるぞ」
それに気づいた田崎は芽衣子へ向かって顎を動かした。
「子供の世話は女の仕事とは考え方が古いのう小僧、貞操観念も苔生しとるのか?」
「そう言いながらしっかり整えてやるお前は嫌いじゃない」
顎で指図をされた芽衣子は一瞬ムッとした顔をするが、直ぐにターモに毛布を掛けなおす。
「お主のそういう素直な所、儂も実は嫌いではない」
「ふふっ」
「ほっほっほ」
二人は互いに苦笑すると、同時に椅子から立ち上がった。
「では本題の情報収集に行くとするかのう」
「あぁ、あの脳味噌には色々聞くことがある」
田崎と芽衣子は、そのまま部屋の扉を開け外へと出ていく。
そんな二人の姿を、うっすらと目を開けたターモが見ていた。
「おやおやおや、ビカムヒューマン、生きていましたか、ダブロー パジャーラヴァチ!」
「……何て言っとるんじゃ? あれ」
「ようこそだとよ、あれとの交渉は俺がするからお前は黙ってろ」
「うむ、時折口を挟むとしよう」
二人はイボンコと自らを呼ぶ脳味噌が入った円柱のある部屋へと入る。
内部では数時間前に見た姿と変わらない円筒と、室内に無数の焦げ跡が残っていた。
「ターモは健康……ガガ、検出中……ヒット、あー無事でしたか?」
「あぁ、異常な治癒力を見せてる。 最初に見た時は魔族の小娘だと思っていたが、ありゃ何だ?」
「個人情報保護法違反ですのでお答えはしかねます、ノーセンキュー! コンプライアンス違反でーす!」
「うぜぇ……」
「ハハハ、失礼。 久方ぶりの知性的なヒューマンと出会えて興奮しています、ドーパミンどぱどぱなのですよ」
イボンコは自らの言葉を証明するかのように、円筒の中で無数の水泡を作り出した。
「さて、ではターモ以外の事に関してはお答えしましょう。 このロシアが誇るグークルを超える検索エンジンに何をお望みで?」
「じゃあ今のロシアの状況」
「ラジャー了解、検索中…………一件ヒット」
「おっ、まじで出るの?」
「ネットが死んでいるので、この周囲でミーが集めた情報から推測したデータですが無いよりはグッドでしょう」
イボンコがそう告げると、天井からプロジェクターが降り壁面に映像を映し出した。
その映像には黒く淀んだタールのようなもので覆われた大地と、その中で蠢くゾンビ達が映っていた。
「誰がゾンビ映画映せつったよポンコツ」
「早とちりや誤解、不和は人間特有で実に結構! こちらは現在のロシアの映像となっておりまぁす!」
「嘘つけ!」
「あー、いやこりゃマジじゃな……」
映像を黙ってみていた芽衣子が、田崎の言葉を否定した。
「デジマ?」
「サジマジバーツじゃ、こりゃこの間話した死の国じゃ。 ……こんな風景は見た事ないがの」
「流石はナーガレディ、話がお早い。 どちらの国の出身で?」
「…………秩序の国じゃ」
「なぁるほど、それでこのロシアに関する知識がおありなのですねぇ!」
二人の会話に田崎は首を捻る。
「あー、出身国談義はどうでもいいんだが結局この映像がなんなんだ?」
「これが現在のロシアの大半の姿……と予想されるものデース」
「予想? こうなってねぇってことか?」
「はい、何せネットが繋がっていないので物理的に繋がっているカメラやら盗み聞きした情報やらそちらから盗んだデータで現状に最も近いデータを出しただけです」
「なんだそりゃ……っててめぇ、盗んだだとぉ!?」
そちらから盗んだ、という単語に田崎が食いついた。
この脳味噌、どうやってか田崎が動かしている義体と繋がっているエクィローに侵入しデータを盗み出したのだ。
「ザッケンナコラー!」
「ニョホホホホ、願ったのはそちらで私は正確なデータを提出しただけですので、ニョホホホ」
「あーはいはいお主らのじゃれ合いはどうでもいいとして、つまり今映ってるこれが今のロージアってことかの?」
「ダー、国土の半分がこのような状態であると推測されています、国土の丁度真ん中から右端まで全てあなた方の言う死の国状態かと」
「……その隣にあった戦争の国と古の技術の国はどうなったんじゃ」
芽衣子の質問に、プロジェクターは別の映像を映し出した。
「滅びました。 これはおよそ200年位前の勢力図です、当時は均衡を保っていましたが……」
ロシアの地図が映像に出ていた。
丁度ロシアを五等分する様に色分けをされていた五つの国の内、黒く染まった一つが徐々に染みの様に広がり始めた。
「何かが起き、均衡が崩れたという風に記録されています。 その際ミーのまだ無事だった回線も幾つか殺されました、不愉快!」
「滅んだ……そうか……そうか」
落胆の色を隠そうともしない芽衣子を無視し、イボンコは更に説明を続けていく。
「ごほん、その後現在に至るまで死の国は拡大を続け現在は既に国土の6割を掌握するに至っています」
「死の国のリーダーはいねぇのか?」
「ゾンビですからねぇ、居るかもしれませんが居るとしてもこの国の右端でしょうねぇ、探しに行きます?」
「倒してこの国が制圧できるんならな」
「いや、よした方が良いじゃろう。 主を失ったゾンビが暴走することもあるしの」
好戦的な意見を出す田崎を、芽衣子が制止する。
「そもそもこの国はまだ二つ国が残っておる訳じゃし、誰を倒したからすぐ制圧できるってもんでもないからのう」
「うーむ……よし、ちょっと保留! 今日はおしまい!」
「おや、よろしいので? 定時まであと8時間はありますがぁ?」
「サボれる時はサボる性質でな、一番楽しそうなのを少し考える」
「楽しめそう、なぁ……どうせ一番危険な道選ぶんじゃろうなぁ……」
冷ややかな目線で田崎を見た後、芽衣子は元来た道へと戻っていく。
「ま、今日はもうこれ以上何もしないというなら儂はこの建物の中でも見て回るとしよう」
「おう、いってこいやー」
胴体を地面と擦りながら去っていく芽衣子を見送り、田崎は思案した。
「……一番危険な道か、楽しそうだな」
どうやったら、一番危険で、一番面白いルートになるのかを。
浦島効果によって事実上前の投稿から一週間後の初投稿なので初投稿です。
ま、まにあ……ってない!
オカエリナサイ
ガンバスターいいよね……
Brain in a Jar / 瓶詰め脳 (2)
アーティファクト
(1),(T):瓶詰め脳の上に蓄積(charge)カウンターを1個置く。その後あなたは、点数で見たマナ・コストが瓶詰め脳の上に置かれている蓄積カウンターの総数に等しいインスタント・カード1枚かソーサリー・カード1枚を、あなたの手札からそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
(3),(T),瓶詰め脳から蓄積カウンターをX個取り除く:占術Xを行う。
「ミーはロシア一の頭脳なのでーす!」




