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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ロシア編
162/207

安全な場所に案内されたら

https://www.youtube.com/watch?v=ClrL9D9PCRQ

P3 CD1 #12 When The Moon's Reaching Out Stars


─────────────────────────────────────

 炎が見えた。

 炎の周りには自分と同じナーガ達が体に様々な色のボディペイントを施し、舞う。

 そのナーガ達の中には自分が良く見知った顔もある。


「あぁ……」


 そんな彼女たちを見て懐かしさがこみ上げた。

 今見ているこの光景こそ、自らが生きた土地での記憶。

 願わくばこの眺めが永遠に続けば……そう思っていた、幼い頃の記憶。


「じゃがのう」


 これは夢だ。

 ワシはこの後の結末を知っている。

 友がワシを呼び、輪に加わり……凶星が瞬き全てが焼き尽くされる。


「ミエトゥー」


 あぁ、友がワシを呼ぶ。

 手を振り、歩み寄ってくる。


「いかん、だめじゃ、来てはいかん」


 ワシの言葉が聞こえていないのか、友は近づきワシの手を取る。

 体は自らの意思に反し、ゆっくりと輪へと近づいていく。

 年に一度の祭りを楽しむ友は、左手で真っ暗な空を指差した。

 それに釣られるようにワシも空を見上げ、それを見つけた。


「凶星……」


 赤い星の瞬きを。

 それを見た次の瞬間には、ワシの視界の全てが赤に包まれていた。


─────────────────────────────────────

MD215年 11/11 19:50


 パチパチと、木が音を立てて焼ける。

 全てが傾いた世界で、芽衣子はその音で目を覚ました。


「ん……んん?」


 彼女の視界には再びの火が見えた。

 その小さな焚火は粗雑に木が入れられており、焚火の隣に居る男の性格を表していた。


「おっ、起きたか」


「お主は……」


 芽衣子の視線の先に映る男はきょとんとした顔をした後、右手で頭を掻いた。


「お前、大丈夫か? さっき吹っ飛ばされた時の衝撃でどっかおかしくなったか?」


「あー……いや、いや、大丈夫じゃ」


 地面から起き上がり、傾いていた視界を元に戻すと芽衣子は頭を二度程振り、頬を両手で叩いた。


「ワシをこんな場所まで連れてきよった男の顔は忘れんよワシは!」


「そうかい、元気だってんなら何よりだ」


 男──田崎は軽く笑うと、近くに置いてあった木の棒を手に取り焚火を突き始める。


「しかし、何でワシ寝てたんじゃ? 最後に記憶があるのは確か昼間の筈じゃが」


 それに、と口にして芽衣子は周囲を見た。

 昼間に居た場所は林か森と思われる場所だったが、今居る場所の壁と地面は明らかにコンクリートで出来ている人工物の内部だった。


「ここ、何処じゃ?」


「ロシアに居るのは間違いねぇさ、お前がドラゴンにぶっ飛ばされて気絶した後にまたゴブリンどもがわらわら寄ってきたんでな。 舎弟にして安全な場所に案内させた」


「ほうほう、成程……ゴブリンの──ってなにぃ!?」


 ゴブリンに案内させた、と聞いて芽衣子は飛び上がった。


「何そんな驚いてんだよ」

 

「ば、馬鹿者! 連中の安全というのは即死よりはマシって意味じゃぞ!」


「えぇ……でもここ特段何も無さそうだがなぁ」


「どうせ長く留まったら死ぬ呪いが掛かった場所とかそういう場所なんじゃろ! この土地にはそういう場所が山ほどあるからの!」


 そして、芽衣子は窓から身を乗り出し景色を確認し始めた。


「むむ、流石に年月が経ちすぎたかの? いやでも割と見覚えがある……」


 そんな彼女を不審に思ったのか、永村は彼女の背中を眺めながら訊ねた。


「なぁ……お前、もしかしてロシアについて知ってるのか?」


「ロシアというのがこの土地の事を指しておるんなら、知っとる。 この地域の者はここをロージアと呼ぶがの」


「おっ、マジかー。 俺やるなぁ、現地でゴブリン達に案内させなくても良くなった」


「出来れば二度と来たくなかったんじゃが……これ以上言うても詮無き事かの」


 と芽衣子は溜息を混じらせながらがっくりと肩を落とした。


「何で来たくなかったんだ?」


「……嫌でも後で分かる」


 芽衣子は窓に寄り掛かっていた体を元の姿勢に戻すと、田崎の近くへ行き手を差し出した。


「ほれ、行くぞ若造」


「行くって何処に」


「大方今回もここを支配しに来たんじゃろお主、ならワシが近くの村まで案内してやろう」


「えらく積極的だな?」


「ま、思うところが少しあっての。 ほれ、さっさと立たんか!」


 差し出した左手を掴まない田崎に、芽衣子は彼の背中を思いっきり叩く。


「へいへい……ったく手荒いばあさんだ」


「ワシは婆じゃなーい! まだピチピチ現役の二百歳!」


「何かサバ読んでない?」


 田崎は面倒そうに立ち上がるとそのままゆっくりと階段を降りていく。


「しかし夜なのに本当に行くのか? 朝行った方が良いんじゃねえのか?」


「構うまい、ゴブリンが案内した場所に長く留まる方がそれこそ危険じゃ」


 芽衣子もまた田崎に続く。

 道すがら、無造作に置かれた黄色いドラム缶をすり抜けながら。


「それに夜はドラゴンも眠っておるからの、危険地帯さえ避ければ何とかなるじゃろ…………多分」


「今多分って言った?」


「言ってない言ってない、さぁ頑張ってワシを負ぶって進めい!」


「おっも! 何キロあんだお前!?」


 田崎の体に芽衣子はナーガの下半身を強制的に巻き付ける。


「乙女に体重聞くのはご法度じゃぞ」


「二百歳は乙女じゃねえよ!」


「えぇい、良いからさっさと進めーい!」


 口答えをする田崎の頭を、芽衣子は両手で叩きながら二人は夜の森を移動し始めた。

 彼らが去った後の廃墟にはハザードマークが記されたドラム缶と、その中身を食べるゴブリン達だけが残されるのだった。


 




放射線マークなので初投稿です

すまない、FGO三章とPQ2をやっていて遅くなった・・これからもPQ2クリアまでは遅くなると思うが許してくれるだろうか

許してくれるね

グッドトリップ

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