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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
南極編
148/207

泣きはらした後

https://www.youtube.com/watch?v=dAlJAeHi9VM&index=32&list=PLCOhGcSKAYYyLdGv1oHC4yJDvFYT1srrI

Persona Q OST 2-04 Tea Break

MD215年 10/31 16:37


「すっかり遅くなったな……まさか四時間近くも泣き続けるとは思わなかった」


「す、すみません……その、大分溜まっていた感情が爆発して……」


 恥ずかしそうに顔を赤らめながら、アリスは俯いた。


「別に良い、目覚めてから俺に会うまでの間お前は良く耐えた。 今更少しくらい吐き出しても文句はねぇよ」


「山坂さん……ありがとうございます!」


 ジーンと目を潤ませながら、アリスは山坂へ頭を下げた。


「おう、ところで手が止まってるぞ」


「あ、すみません!」


 アリスの方へ顔を向ける事もないまま、山坂は携帯用ガスコンロの上に置かれた小さい鍋を見つめていた。

 鍋の中ではお湯がぐつぐつと煮えており、その中に具材が投入されるのは山坂は待っていた。

 山坂のそんな態度を受け、彼女は顔先にあった乾燥した具材を一気に鍋に投入する。

 具材はお湯の中に入れられると、あっという間に元の姿へ戻り山坂の顔を明るくさせた。


「うーむ、早く食いたい……じっくり1分待つのが憚られる」


「そこはじっくり待った方が良いと思います」


 箸で鍋の中を掻き混ぜながら、山坂は真剣な眼差しで考えていたがアリスの言葉でそれを思い直した。

 そして、現在居る洞窟の中を改めて見回す。


「しっかし元々山の中にあった洞窟を更に広げて作った基地とは聞いていたが……こんな場所もあったとはな」


「え? この基地ってそうやって作られたんですか?」


「そうだが、知らんかったのか?」


「だって基地の主目的や自分の役割に関しては教えられますけど成り立ちなんて教えられませんし……」


「何と意識の低い、こういうのは勝手に調べて陰謀とかに気が付いてそのまま殺されるのがお前みたいな凡人の役割だろ!」


「そんな役割はごめんです!」


 アリスは頬を膨らませると、一分経ち鍋の中で元の大きさに戻ったウィンナーをフォークで突き刺すとそのまま口の中へ放り込んだ。


「あーーーっ! お前、俺の肉!」


「んーっ、美味しいー!」


「俺のニンジンーー! ニンジンは別に良かったな……」


 三十分後……。


「いやー美味しかったですねぇ!」


「6割くらいお前が食ってたよな? な?」


「ところでさっきから気になってたんですけど……山坂さんって基地の事に詳しいですよね?」


「話をはぐらかしに来たのかな?」


「純粋な興味です!」


 鍋の中に残ったスープを飲み干すと、アリスは山坂へとある疑問を投げかけた。

 遠慮なく山坂が持って来ていた非常食を平らげたアリスへ、ジト目を送っていた山坂だったが諦めたのか溜息を一度吐く。


「まぁお前に食われた食料は戻ってこないしな……いいぞ、質問に答えてやる」


「それじゃあ早速なんですけど、山坂さん前にこの基地に来てたことあるんですよね? なんでですか?」


「何でって……普通に仕事だが」


「仕事?」


「そう、この基地の運営母体に依頼されたんだよ、この基地の実験を手伝ってくれって」


 地面に置いていたバックパックから水筒を取り出すと、山坂はコーヒーをカップに注ぎ口に含んだ。

 砂糖とミルクをふんだんに入れたコーヒーに機嫌を良くしたのか、聞かれていない事も彼は話し始める。


「その実験ってのが、人類を再生させる為の万能細胞を開発してくれって奴でな? こいつには苦労させられた」


「万能、細胞……?」


「そうだ、魔族と負けた場合この基地が人類を『作り直す』 その為にあらゆる生物の原型になる細胞が必要だったのさ」


「えぇー……この基地ってそういう名目で作られてたんですか?」


「当初はな、俺は研究を直ぐ終わらせて出て行ったからその後には関わってない。 お前はこの基地についてどう聞かされてたんだ?」


 空のカップをもう一つ取り出すと、山坂はそれをアリスへ放った。


「きゃっ、え、え?」


「何だ、飲まんのか?」


「あ、い、いえ! いただきます!」


 コポコポと小気味良い音を立てながらコーヒーが注がれていく。

 コーヒーを注ぐ山坂の顔を、不思議そうにアリスは見つめる。


「何だよ、そんなに俺がコーヒー注ぐのがそんなにおかしいか?」


「いえ、その……はい、少し」


「俺だって人間相手なら少しは優しくする、女は嫌いだがそいつは俺の勝手な事情でお前が悪いわけじゃないからな」


「はー……」


 そんな答えに、アリスはカップを受け取ると暫く呆けていた。


「山坂さんも色々考えてるんですねえ」


「え? 何? 馬鹿にしてる?」


「あはははは……あっ、そういえば私はこの基地についてどういう説明されてたかでしたっけ!」


 アリスはカップに口を付けると、口を開いた。


「私はそもそも技師としてスカウトされたんですよ、何でも人類の未来の為に君の力が欲しい~って話だったんですけど詳しい話聞かなかったんですよねぇ」


「何で」


「え? だって今まで働いてた会社の五倍給料くれるって言うんですよ? おまけに土日祝日休みでボーナスは一回で半年分です!」


「ほーん、五倍はすげえな」


「ですよね! でも一度就職したら二度と此処から出られないってのは教えてくれませんでしたけど!」


「え、何それは……(困惑)」


 アリスの口から告げられた就労内容の最後に思わずドン引きする山坂。


「だからあまりこの基地については知らないんですよね……あっ、でも確か天才の人が基地に来て何か手伝ってたって話は聞いた事あります」


「天才ぃ? 俺の事か?」


「さぁ……というか山坂さんって天才なんですか?」


「そうだよ、当たり前だよなぁ?」


 自信満々にそう言う山坂に、アリスは……。


「そう思うならそうなんでしょうね!」


「よーし泣かす、もう一回泣かす!」


「きゃー! やめてくださーい!」


 と答え、二人は洞窟の中で戯れ始めるのだった。

 数分後……。


「この俺とした事が……子供みたいなことを」


「楽しかったですね! またやりましょう!」


「やらねーよ! ……いい加減真面目に動かなきゃいけないタイミングだ」


 洞窟の中を二人で転げ回ったせいでついたスーツの汚れを払いながら、山坂は真面目な表情でアリスの顔を見た。


「あの閉まっていた扉の先へ行くぞ」


「やっぱりそうなりますか……」


「行きたくないならあの狼と一緒に居ても良いが、こっちも足手まといが減るし好都合だ」


「……山坂さん、女心が分からないって良く言われません?」


「人の心が無いとは言われる」


 その答えにアリスはケラケラと笑うと、頷いた。


「私も行きます、私はこの基地の職員です。 もしあの中に私のように冬眠している人が居るのなら見過ごせません」


「ふん、なら精々足手まといになるなよ? 最悪俺の盾として死ね」


「私を助けに来た人が言う台詞じゃないと思うんですけどぉ!?」


「カカカカカ!」


────────────────────────────────────────


 程なくして、二人は洞窟から部屋に出来た空洞を通って基地の第三層へと戻った。

 内部は先ほど扉の前へ行った時から変わっておらず、二人の足音だけを響かせる。


「…………」


 アリスは緊張か、それとも恐怖からか山坂の一歩後ろを離れないように歩き続ける。

 暫くして山坂が立ち止まると、アリスはそれに気付かず彼の背中に激突した。


「あぅっ、す、すみま──」


 俯けていた顔を上げ、山坂の顔を見たアリスはそこで言葉が詰まった。

 目が合った。

 蟲の様な複眼を模した目が赤く、鈍く輝いていた。


「離れてろ」


 山坂は抑揚の無い声でアリスへ警告し、左腕で彼女を押しのけた。


「きゃっ……!」


 急に後ろに押されたアリスはたたらを踏みながら距離を取った。

 揺れていた視界が正常になり、アリスは再び山坂を見た。

 彼は扉から十メートル程離れた場所で真っ直ぐ伸ばした右腕に左手を添えていた。


「昇華」 


 言葉が終わると同時に、扉が消えた。

 空気が扉が元あった場所へ吸い込まれ……直ぐに猛烈な勢いで吐き出される。

 アリスの服が、体が突風で揺れそれに耐え切れず彼女は地面に腰を打つ。


「ひぃぃぃっ!」


 続けて高熱が彼女の肌を焼く……と思いきや、それは起こらなかった。


「あ、あれ……?」


 膜の様な物が、彼女の体の周囲一メートル程のところで展開されていた。

 それは煙や熱を弾き、彼女を守っている。


「行くぞ」


「あわわ、ま、待ってくださいー!」


 そんなアリスを気にも掛けず、山坂は一人で貯蔵庫へと歩き始める。

 暗闇の中に消えていく山坂を追って、アリスは駆け足で近寄って行く。

 山坂はスーツの機能を最大限用いながら、用心深く進んだ。

 何かに殴られた後の様なへこみは、進んだ先の地面にまでありバランスを取るのに多少苦労させられた。

 地面にはへこみと黒い染みの様な物がそこかしこに残っており、それは壁を伝って天井にまで残っていた。


「……一体何だ? これは」


 扉の先は、真っ暗であり天井で灯される筈の照明は頼りない明かりを時折照らしては消え、消えては照らすの繰り返しだった。

 山坂は軽く舌打ちをすると、こめかみを指先で二度軽く突いた。


「通路の先はどうなってる、シトリー」


<広大な空間が広がっています、内部に熱源複数あり>


「…………あいよ」


 スーツによって表情は見えないが、声色はより抑揚を失った。

 再び右腕を正面に突き出すと、彼は再び突き当たりの扉を蒸発させる。


「鬼が出るか蛇が出るか……どっちが出ても殺せる相手なら問題はねぇが?」


 再び空気が奥の部屋へと吸い込まれ、煙と突風がスーツを通り過ぎていく。

 煙が晴れると奥からは今居る通路とは打って変わって、光が漏れ出していた。

 

「さぁて、行きますかね!」


 足取りは軽快に、しかし気は抜かず、山坂は光の中に進んでいった。


「お、置いてかないで~! 山坂さぁ~ん!」


 少し遅れて、アリスも光の中へ飲まれる様に消えていった。



MTGアリーナのドラフトでようやく無敗で5-0したので初投稿です

さんきゅーギデオン!


青の巨兵/Hulk of Blue  ④青青


アーティファクト・クリーチャー


瞬速

青の巨兵が戦場に出た時、対戦相手がコントロールするパーマネントを全てタップする。

それは次の相手のターンのアンタップステップにアンタップしない。


4/6


「巨兵シリーズは各色に一体ずつ作製した、こいつ等は一体で小国を、五体揃えば大国を落とせる様に設計されている」


「まぁ乗りこなせる奴が五人もいねーからその条件はクリアされないわけなんだが?」


「「ワハハハハハハハ!!」」


──パイロットが五人揃う前の開発者達の会話

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