熱源箇所を確認したら
https://www.youtube.com/watch?v=YQP6lAs2tdo&index=3&list=PLoiYGqaAWn9NVAn7J74BpYc--UmhGUgmI
Ever 17 PSP Arrange OST - 03 - Zweitestock
MD215年 10/31 11:57
「嘘だろ……」
「熱源数4……ってことは、私達以外にも生存者が居るってことですか!?」
「……そうかもな」
予想はしていたが、その予想通りの結果が出た事に山坂は暫く呆然としていた。
だが顔を横に振ると、再びパソコンを操作しながらアリスの質問へ答える。
半ば呆れ気味に答えると、パソコンの画面に映し出された地図を見て溜息を漏らした。
「場所は……近いな」
それは今彼らが居る第三階層と、その下にある実験棟と呼ばれる第四階層の地図であった。
地図は平面状に部屋を表示し、現在山坂達が居るメインルームに二つの光点を。
そしてメインルームから続く、未だ通った事の無い通路の先にある大きな部屋に一つの光点を示していた。
「おやおや? この部屋は~……貯蔵庫ですか?」
溜息を漏らした山坂が何を見ていたのか気になったのか、アリスは彼の肩越しに画面を覗きこみながらそう呟いた。
「近いって言ってんだろ! ぶっ殺すぞ!」
「私救助に来たのにそんな事言うとかどうなんです!?」
いつの間にか、自らの顔の隣まで近づいていたアリスに山坂は驚き思わず椅子から転げ落ちる。
「いや別にお前の救助に来たわけでは……」
「え?」
「あぁいや、口が滑ったもとい間違えた、何でも無い」
「…………ふ~ん」
「間違えただけだから! ね! ……ところでお前、今の部屋知ってるのか?」
怪しげに山坂を見つめるアリスに、劣勢と見た彼は即座に話題の変更を行った。
「唐突に話題逸らすとか余計に怪しいですね~」
「うるせぇ! 今はそれよりも近くにある怪しいポイントだろうが、化け物かもしれないんだぞ!」
「……言ってる事は一理ありますね、はい、あの部屋は知ってます」
「貯蔵庫とか言ってたな、食料のか?」
「はい、それ以外にも施設を維持するために必要な機械の予備部品とか……基地運営に必要な物が納められてます」
地面から這い上がり、倒れた椅子を起こすと山坂はアリスから距離を取りつつ地図を見つめた。
メインルームからの距離は離れているが一本道を真っ直ぐ行けば用意に辿り着けるルートだ。
「……そうか、其処にお前が落ちた冬眠装置はあるのか?」
「予備ならあるかもしれませんけど……」
「一応お前みたいなアホな生存者の可能性も捨て切れないか? いやだが……女、お前貯蔵庫には目覚めてから行った事あるのか?」
「あ、アホとは失礼ですよ! ドジと言って下さい!」
「どっちも同じ様なものなんだよなぁ……で、行った事あんのか?」
アホと呼ばれ気に障ったのか、アリスはその少しだけ人より大きい胸を前に出しながら威張るように言った。
山坂はアホを見る目で受け流しながら、再度質問を行う。
「はい、ありますよ! と言っても扉の前までですけど……」
「? どうして中に入らなかったんだ?」
「それがその~、扉が物理的にひしゃげてて入れなかったと言いますか」
「物理的に、ひしゃげてる? なんだそりゃ、お前貯蔵庫に化け物が居るかもしれないからってそんな言い訳……」
「ち、違いますよぅ! 本当ですって! 見に行けば分かりますよ!」
アリスに懐疑的な眼差しを送る山坂に、彼女は身を捩りながら必死に弁明する。
「うそくせー、なーんかうそくせー」
「本当ですってばぁ! だったらこれから見に行きましょう! ね!?」
「えぇー、まだもう一個の熱源反応も調べ──」
「いいから! 行きましょう! 行きますよ!!」
「うおお、触るんじゃねぇー! 蕁麻疹が出るーー!」
アリスは無理やり山坂の左腕を引っ張り、通路へと進んで行った。
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「マジか」
「マジです」
十分後、二人は貯蔵庫とネームプレートが掲げられた部屋の入り口に立っていた。
何故二人が部屋に入っていないのかと言うと……。
「マジに扉がひしゃげてやがる、というよりは……部屋全体がか?」
扉が、捻じ曲がっていた。
というよりは部屋全体だろうか、内部から何者かに殴られたのか凹凸が無数に扉やその周囲の壁に残されていた。
かろうじて隙間はあったが、その光景の異様さに内部を除くのは憚られた。
山坂とて命は惜しい、好奇心につられて意味も無く危険を冒す愚は避けたかった。
特に今回は。
「ね、凄いですよね」
「あ、あぁ……正直よくこんな場所があるのにこの基地で一人で耐えられたな」
「えっへん!」
「いや素直にすげぇよ……だがこの先に熱源反応があるってんなら避けてはいけんが……どうしたもんか」
「隙間から覗きます? かろうじて見えそうですけど~……」
扉の横合いに出来た隙間へ近づこうとするアリスを山坂は肩を掴んで制止する。
「やめておけ、下手に藪を突いて蛇が出てきたら困る」
「あっ、藪スイングスネークですか!? コトワザって奴ですよね! あちょー!」
「俺お前を助けたくなくなってきたわ……」
山坂の発言に、アリスは興奮し突然空中に拳や蹴りを見舞い始める。
「ど、どうしてですか!? 何かお気に触る事でも私しました!?」
「ちょっとアホ過ぎて……」
「ひどい!」
「しかし一体なんなんだ? この殴打の後みたいなのは……この基地の金属は戦車に体当たりされたって凹まないはずなんだがな」
そう言いながら、山坂は全身を覆っているスーツのスキャン機能を起動させた。
「…………ぶー、アホって酷いです」
「はいはい、捜査の邪魔だからどいてろどいてろ」
扉から一定の距離を保ちながら、山坂は周囲をスキャンしていく。
その間、先ほどのアホと言う言葉が気に入らなかったのかアリスは頬を膨らませながら作業が終了するのを待っていた。
数分後、作業が終わった山坂はスーツの顔部分を脱ぐと額に溜まった汗を拭う。
「お疲れ様です! ……どうでしたか?」
「駄目だな、内部からの激しい衝撃による変形ってこと位しか分からん。 内部のスキャンも出来んし」
「あっ、それじゃあ内部の監視カメラで見るのはどうでしょう!」
名案とばかりにアリスは両手を打ち鳴らすと、山坂に提案した。
そんな彼女に山坂は呆れ顔を返すばかりだった。
「あれ? あれ? だ、だめです?」
「そんなもんさっきやってる、だが駄目だ。 良く分からん汚れみたいのが付着して何も映らなかった」
「む、むぅ~……そうですか、それは困りましたね」
「ここは放置で良いだろう、とりあえず一旦メインルームに戻って残りの熱源反応をっ────!?」
「それじゃあ、気落ちしてるであろう山坂さんを良い所に連れて行ってあげます!」
扉を見つめながら、一度メインルームへの帰還を提案した山坂の左腕を再び引っ張り、アリスは元来た道を戻り始めた。
「おっ、おい!」
「さーいきましょー!」
「ふ、振り解けない……! こいつの偶に出る腕力はなんなの!?」
無理やり引っ張られる腕を何度も振るが、それによって腕が離される事は無く……結局山坂はそのまま拉致されていくのであった。
「いやぁぁーー! 蕁麻疹がーーー!」
山坂の悲痛な叫びを、通路に木霊させながら。
そして……彼らが去った後に、貯蔵庫の扉の隙間から黒い液体が滴った事を。
彼らはまだ知らない。
参加して来たGP千葉でサイドイベントのモダン選手権で4位になってネットにも掲載されたので初投稿です
まさか小説で賞を取るよりも先にカードで有名になるとはな……この小説がWOTCに消されるのも時間の問題




