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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
136/207

対策を講じられたら

https://www.youtube.com/watch?v=svFh2MfXNtM&vl=ja

アヴェンジャーズのテーマ

MD215年 10/14 10:18


 広いスタジアムに、ボールを打つ乾いた音が響く。

 ボールはそのまま上空へと吸い込まれていくが……今回に限ってはいつも巻き起こる歓声は沸きあがらなかった。

 むしろ……。


「な、なぁ……流石に一方的過ぎないか?」


「あぁ、いつもの頭領らしくねぇプレイだ。 一体どうしちまったんだ?」


 ざわめきが目立った。

 そしてそれは、実際にグラウンドでプレイをしているアメリカ側も同じだった。


「審判、タイムだ!」


 たった今6点目となるホームランを打たれたマイクが、掌を合わせTの字を作り叫んだ。

 

「おぉっと! ここでアメリガチーム、タイムを取るようです! これは珍しい光景となりました」


「そうですね、マイク頭領になってからは初のタイムです。 さて何故かエラーが多いアメリガチームに冷え冷えだった観客の皆さん、今の内に暖かい食事を取る事をお勧めします」


「それではスポンサーの紹介を行います、暖かいご飯! 素敵なお家! 全てはお金があるからです! 安心安全簡単会計のレイス商会────」


────────────────────────────────────────


 実況の二人が今回の大会のスポンサーを紹介する中、アメリカチームの選手は皆マウンドに集まっていた。


「ジェフ、今回の皆のミスについてどう思う?」


 開口一番、マイクは真剣な面持ちで自らの護衛も兼ねる天使に問いかけた。


「作為的なものを感じル、間違い無く相手の妨害だろウ」


「魔術、それも呪いの類か?」


 ジェフの答えに、左目に十字の傷を持つレオニンが右目で日本チームのベンチを眺めながら問い返した。

 呪い……魔術の一種であり、主に体調の悪化や精神に異常を来たす事に特化したもの。

 レオニンはそう考えたのだ。

 このベスボルに参加している選手はあらゆる特技や魔術、または魔法──それが使えるのなら──が許可されている。

 今まで幾度と無く試合をこなしてきたこの選手も、当然今までの試合で呪いを使われたことがある。


「もし呪いだと言うんなら、試合前に掛けられてたって可能性もあるが」


「どっちでもいいさ、試合前だろうが試合中だろうが呪いだってんなら解呪をこれから……」


 レオニンが厳しい顔つきを日本側のベンチへ向けた。

 日本側のベンチでは山坂やアデルが小躍りしながら浮かれており、相当な余裕を持っているようだった。

 その隣では、鷲のエイヴンが右手を二度ほど握りこみ白の霊力を手へ集中させていた。


「いや、これは呪いではない」


 そんな折に、チームで二番目に背の高い龍人がそう答えた。

 全員の視線が、彼に集まった。


「どういうことだ、ドラッへ?」


「皆がエラーをする瞬間を個人的に分析していた、どうもエラーをする寸前に一種の音波で体の動きを奪われている」


「お、音波ぁ? 音波ってぇと……なんだ?」


「シッテルシッテル! オンパ、ウマイ!」


「え、お前音食えるの……?」


 ドラッへと呼ばれた龍人の答えに、チームメイトは各自好き勝手な反応を返す。

 レオニンは首を傾げ、ゴブリンは俺は分かっているとばかりにはしゃぎ、エイヴンはゴブリンに引いていた。


「話を戻そう、音波とはつまり言葉だ。 皆がエラーする寸前に魔術的な言葉が届いている」


「つまり、魔術に対してバリアを張れば良い?」


「そうなる、が……」


「止まっているならまだしも、常に動き続ける9人にバリアを張り続けられる者は居なイ」


「うーん駄目か! じゃあ耳塞ぎながらやる? もしくは──」


「話は最後まで聞ケ、私が何とかする」


 マイクの提案にドラッへは頷くが、その仮定の成立の難しさをジェフは語る。

 彼女の返答に朗らかにマイクは笑うと両耳を両手で閉じるようなモーションを見せる。


「OK! なら君に任せるよジェフ!」


「……毎度の事だが、お前はもう少し疑うと言うことを覚えた方が良イ」


「え、なんで? ジェフが何とかするって言ったんなら僕はそれを信じるだけさ、チームメイトを信じないで何を信じるって言うんだい?」


「────」


 ジェフの何とかするという言葉に、マイクは直ぐに親指を立ててそう答えた。

 そんな頭領のいつもの行動にジェフは苦言を呈する。

 だがマイクは心底何故そんな事を言うのか、と言うような顔で問い返す。


「はっはっは! お前の負けだなジェフ、マイクの人の良さは筋金入りだぞ!」


 呆然とした顔をしていたジェフの背中を、レオニンが強く叩いた。

 猫類特有の尖った牙をニッと見せながら、観念しろとでも言うような笑みを見せながら。


「マイク氏はいつもこうですからな、今更何かを言うのもどうかと」


「マイク、シンジル!」


「……私は頭領に使える者、そうしろと仰られるのであればそうしましょウ」


「よし、話は決まりだ! 審判、プレイ再開だ!」


────────────────────────────────────────


「へっ、長い事待たせやがって……負けた後の身の振り方でも話し合ってたのか?」


 浅くヘルメットを被った山坂が、打席でバットを構えながらそう呟いた。

 

「(ケケケ……馬鹿め、人間の可聴域は精々が3000Hz。 だがあのメハメハとか言う女は100000Hzで歌っているんだ、お前等には一生聞こえねえさ)」


 山坂は地面へ顔を向け、笑った。

 

「お前も大変だなぁ、岩石君よぉ。 後四点取ればこのままゲームセットだ、惨めに負けさせてやるよ」


「………………」


「ふん、ゴーレム相手に嫌味を言っても意味は無いか。 さっさと終わらせて寝るとするか!」


 山坂は自らの右側に座る巨大なゴーレムへ嫌味を向けたが、ゴーレムは何も答えない。

 そんなゴーレムに山坂はつまらなさそうな顔をすると、ピッチャーへと顔を向けた。


「(あの女の歌は一種の魔法だ、聞いた奴は従いたくなる。 全く役に立つ女を手懐けたもんだぜ田崎も)」


 ピッチャー……マイクはヘルメットを深々と被るとボールを強く握りこんだ。


「(音を防ぐなんてのは、無理なのさ! 魔族風情は大人しく人間様にやられてりゃあいいんだよ!)」


 自然に、心の中の思いに比例して山坂のバットを握る力も強くなる。

 腰を深く落とし、山坂は次に飛来するであろう最も打ちやすい球へ向けて姿勢を作った。


「さぁー! それでは試合再開です、果たしてマイク投手は不調を直す事が出来たのでしょうか!」


「注目の一球となりますね、はい」


「マイク投手、第一球振りかぶって────投げた!」


 山坂は最初、その放たれたボールの速度に驚いた。

 そのあまりの遅さにだ。

 試合当初に見せた凄まじいまでの砂埃も轟音もまるで変わらない。


「(そう、変わっていない……速度以外はだ。 それとも速度も実際には変わっていないのか? 単に体感の速度が──)」


「…坂! ……ろ!」


「(……なんだ?)」


 まず最初に気付いたのは、声だ。

 自らの所属するベンチから声が聞こえてきたのだ。

 それは掠れ、言葉としては機能していなかったが。


「(……何かが)」


 そして次に気付いたのは、視界の明るさだ。

 青空の見える球場に、何故か暗闇が覆いつつあった。


「(おかしい……!)」


 最後に気付いたのは、球の速度だった。

 マイクが投げた球は最初の位置から動いていないように見えた。

 だが……おかしな事に気が付いた。

 その球が連続して、分身したかのように自らの真横を通り過ぎて行くのが見えたのだ。

 それを目で追っていくと……先ほど山坂が馬鹿にしたゴーレムのミットに球が収められており……。

 気が付けば、山坂の視界は完全な暗闇に覆われた。


「き────決まったーーーーーーーーー!」


「マイク投手、完全復活です!! 相手バッターを完全に蒸発させました!!」


「や、山坂ーーーー!」


「あの屑が消えたんじゃが!?」


「オイオイオイ、完全復活してるわアイツ」


 山坂は消えていた。

 マイクが放った渾身の投球を、メハメハは歌で防ぐ事が出来なかった。

 それゆえにボールは極小のブラックホールと化し、山坂は蒸発したのだ。


「さぁ、試合はここからだ!」


 ベンチから身を乗り出す日本チームに対して、グローブに右手を打ちつけマイクはそう高々と宣言をした。


────────────────────────────────────────


「素体が消滅、地上への干渉を終了します。 お疲れ様でした」


「くっそおっせぇボールだなおらぁん! ってあれ?」


 アメリカの球場で自らの肉体の代わりとして送り込んでいたからだが蒸発し、山坂はベッドの上で目を覚ました。


「あれ? ……もしかして、俺死んだ?」



GW? ウチにはそんなもの…無いので初投稿です。


流石に二週連続更新なしは防げましたね…

皆ー! ドミナリア発売してるから買えよ買えよ!

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