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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
135/207

小細工を弄したら

https://www.youtube.com/watch?v=E692yc5U93c

逆襲の時!

MD215年 10/14 10:00


「さぁ、それではこれより第百回目となるスーパーチューズデーの開催となります。 実況は私ウルチーと!」


「アメリガンタイムズのベルボル専門記者、東雲がお送りいたします!」


「さて本日は歴代王者であり現北米頭領であるマイク氏が率いるスピリット・オブ・アメリガ対──」


「異国の地、日ノ本……もといニホンからやってきたチーム、ルーラーズの対戦となっています」


 日本から遠く離れた異国の地、ボストンにあるフェンウェイ・パークに試合開始のラッパが鳴り響く。

 それと同時に、実況席に座る鷲頭のエイヴンとそれに対照的な人間のコンビが互いに実況を開始する。

 

「おっと、まずはアメリガチームからの攻撃となるようです……一番バッターは──」


「アメリガチームで一番の足の速さを持つゴブリン三兄妹の長男、スワイト選手ですね」


 試合開始の合図と同時に、まず守備側である日本チームの面々が守備へと着く。

 ファーストにはナーガの巫女である芽衣子、セカンドには長身の戦が。

 続いて遊撃手には赤毛のアデル、サードには石元。

 その奥には我らが管理者の三人がライト、センター、レフトを飾り……ピッチャーをベル、キャッチャーをアレーラが担当していた。


「彼はバットのどちら側が持ち手なのかを理解した事により見事サードの地位を獲得した選手です、ゴブリンの中のエリートと言えます」


「ゴブリンの知能指数は相当低いですからね、これは驚くべきことです!」


 ウルチーは打席に出てきた50センチほどの大きさのゴブリンに対しての解説を行う。

 そのゴブリンは体表は一般的なゴブリンと同様に赤く、だがその面構えは平時の呆けた顔ではなく戦いに赴く時の顔をしていた。


「さぁ、大してニホンチームの投手はな、なななーんと! 以前高速飛来物事件を起こし投獄された女性です!」


「彼女のニホンでの経歴は不明ですが……何と投獄された後にベスボルの試合を監獄で行い見事自らの釈放を勝ち取った女性です」


「ナーント、素晴らしい!」


「因みにその監獄でベスボルの試合によって釈放されたのは彼女で丁度20人目だそうです、さてその釈放された試合でも彼女はピッチャーだったとお聞きしています」


「成る程成る程、それでは彼女の投球を見てみるとしましょう」


────────────────────────────────────────


 ズバァン! という重量感のある音がアレーラの耳に届いた。

 続いて、手の痺れが。

 

「ストライークッ! バッターアウト! スリーアウト、チェンジ!」


 遅れて審判の声と、歓声が響いた。


「おぉーーーっと! これは凄い、ベル選手なんとゴブリン三兄妹を見事討ち取りました!」


「素晴らしい投球センスです、まさかバットが振られるよりも早くキャッチャーミットにボールが入るとは、正しく技術の勝利と呼べるでしょう」


 実況も観客に負けじと声を張った。

 未だ稼動を続けるマイクを通し、球場のスピーカーから声が溢れる。


「おー、すごいすごい!」



 ゴブリン三兄妹の末弟、ググが三振に終わった事でアメリカチームのベンチは沸き立った。

 それは久方ぶりに現れたかもしれない好敵手に対する期待だったのかもしれない。

 マイクは柵へと身を寄りかからせながら無邪気に手を叩く。

 そんなマイクを横目に鷲のエイヴンが驚きの表情を隠せないまま、後ろに立つ鉄で出来た体を持つ龍人へと問いかけた。


「ガガ兄妹が討ち取られるとは……以前の試合の時からかなりの成長を?」


「測定完了、以前と比べて戦力およそ303%増し、急成長である」


「300%!?」


 龍人の言葉に、腕組をしていたレオニンが驚きの表情を見せた。

 両耳をピンと立て、最早開く事のない左目ではなく右目をしっかりと見開かせながら。


「……元より見くびるつもりはありませんでしたガ」


「あぁ、面白い試合になりそうだ!」 


 マイクは柵から身を降ろすと、愛用のグラブを左手にはめ込んだ。

 その顔は心底楽しそうであり、また彼の後ろに立つチームメイト達もまた不敵な、だがどこか楽しそうな表情を浮かべていた。


「さぁ僕らの守備だ、行こう!」


 そしてチームのキャプテンの号令を元に、全員がグラウンドへと駆けて守備に着く。

 ピッチャーには当然アメリカチーム最強のピッチャーでありバッター、マイクが。

 キャッチャーには岩を骨とし、鉄を表皮にするエレメンタルが着いた。

 対して日本チームのバッターは……。


「ばっちこーーい!」


 アルビノのナーガであり、巫女である芽衣子だった。

 いつも来ていた和服も脱ぎ捨て今回はきちんと野球のユニフォームを身に纏い、右打席に立った。

 バットを構える姿は何処か雄々しく、堂に入っていた。


「ナーガか……珍しい種族だ」


 マイクはグラブに球を掴みながら芽衣子を見据えた。

 アメリカにもナーガは居る、居るがそれはあくまでも南米でのことであり北米で見かける事は稀である。

 増してやナーガは気性が荒く、狡猾であり、謀を好む性質がある。

 なのでマイクが聊か芽衣子に対して警戒心を抱くのは当然の事だった。


「…………」


 ボールを入れたグラブを口の前で構えたまま、マイクは少し悩んでいたが直ぐにそれを止めた。

 そしてフリーな右腕でキャッチャーにサインを送ると、岩石のエレメンタルは顔らしき部分をチームメイトだけが分かる様に小さく上下させる。


「むっ!」


 マイクが左足を高く上げ、構えた。

 必勝の構えである。

 過去の百戦で、この構えを見て生き延びたバッターは居ない。

 極限まで握りこんだボールは重力を超え、超崩壊するマイクロブラックホールとなる。

 それをこの男は60.5フィート──距離にして18.4404メートル──先まで投げ飛ばすのだ。


「さぁ──行くよ!」


 左足を勢い良く振り、足が地面に着地すると同時にその球は投げられた。

 重低音と強烈な振動を巻き起こしながら球は真っ直ぐキャッチャーへと進んでいく。


「──……!」


 最初に違和感に気付いたのは、マイクだった。

 今まで何千、何万と投げてきた感触と違う。

 いや投球のフォームは同じであり、力加減も同じの筈である。

 だが……何かが違った。


「ちぇすとーーーー!」


 その違和感は、芽衣子の掛け声と小気味良い打撃音で確かなものとなった。


「なっ……!」


 白球は空に吸い込まれるように、レフト方面へとぐんぐん伸びていく。


「お……おっしゃーー!」


「良いぞババアーー! 走れー!」


「誰がババアじゃ誰がー! 儂はまだ300歳のピチピチじゃー!」


 誰もが声を上げなかった空間に、アデルの雄たけびが響いた。

 続いて、日本チームの面々の声が。

 そして、ほんの数秒ではあるが呆けていたアメリカチームの声が響いた。


「ガ……ガウェーク!! 行ったぞ!」


「──はっ! く、くそ!」


 レフトを守っている鷲のエイヴンがマイクの掛け声で現実を認識すると、ボールまで飛び上がった。

 

「マイクの球が打たれたのは予想外だが、この程度の球──!?」


 右手でグラブを構え、スタンドに向かって飛んで行く白球を捕らえようと手を伸ばしたところでエイヴンは地上へ落下した。


「ば、馬鹿な!? 体が言うことを聞かない!」


 エイヴンが落下し、ボールもまたゆっくりと曲線を描き……その二つは同時に地面に落下した。


「うおおおーーーーー!」


「なぁなななななななぁぁぁぁぁんとぉおお! み、見ましたか東雲さん!?」


「はいはいご覧になっていましたよウルチーさん! なぁんと言うことでしょう! ニホンチーム、マイク頭領のミスボールをそのままホームランへと変えました!」


「これは、これはマイク頭領にとって初めての出来事ではないでしょうか!? 今まで頭領のボールが撃たれたことは一度たりとてありません!」


「一体何が起こったのでしょうか!」


 ボールがスタンドへ落ちると同時に、観客達は総立ちとなった。

 無論それは実況席の二人もである。

 だが実況席や観客の盛り上がりとは別に、日本チームもアメリカチームもお互いに冷ややかな視線を交錯させていた。


「へへっ……成る程、どうやら一筋縄じゃ行かないらしい」


 マイクは右手で鼻をこすると、ベンチに座る管理者の三人を見た。


「上手く行ったな……このままばれる前に点を稼いで終わらせるぞ!」


「次の奴さっさと行けおらー!」


「次鋒、石元いきます!」


「今の名乗り、次のコマで殺されそうな名乗りじゃない?」


「気にせずどんどんいけぇ!」


 かくして、謀がばれるまで日本チームの快進撃は進んだ。





何だかんだ一週間もお待たせしてしまって申し訳ないので初投稿です

ドミナリアの発売日が近いねー、君達

プレリリースやりたいのうヤス…

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