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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
131/207

ベスボルをしたら

MD215年 9/27 09:00


 西暦……3418年、世界は核の炎に包まれた。

 地は裂け、海は枯れ……あらゆる生命体が絶滅したかに思われた。

 だが…………野球は絶滅していなかった!


「ギワーーーーッ!」


「うぎゃーーーーー!」


「ぐえーーーーっ!」


 時に西暦が終了して早千年、文明の名残を見せる野球場に3人の男の悲鳴が響き渡った。

 男達は順番に悲鳴を上げながら、バッターボックスに身に付けていた防具を残し消えていく。


「ひ、ひえええ……」


「……化け物かあいつ」


「し、信じられませんわ──」


 アレーラ、アデル、ベルは皆一様に口を開け放ち信じられないといった顔持ちでその光景を見ていた。


「スリーアウト! チェンジです! 挑戦者チームは直ぐに防御へ回るように!」


 ベンチで呆然としていた三人に、審判からの指示が届く。

 三人は指示を理解するまでに少しの時間を要し、そして互いの顔を見合わせるとベンチの下に置いてあった白旗を取り出した。


「「「こ、降参します……」」」


 時にMD215年、場所はボストン。

 かつては野球の試合が日常的に行われていたこのスタジアムで……三人は野球の悪魔を見た。

 ブラックホール寸前になった野球ボールを投げ、投げられた球を必ずホームランで打ち返す男を。


────────────────────────────────────────


「まさか雇った面子が全滅するとは、相手の戦力を過小評価していました」


「いや過小評価ってレベルじゃねえよな!? 何だあれ!? 何でボールが近く通っただけで人間が蒸発するんだよ!」


「正直正面から戦いを挑んだ方がまだ勝てる気がしますわね」


「あ、諦めましょうよ~……」


「「「「はぁ~……」」」」


 白旗を振り、対戦相手だった現アメリカの頭領、マイク・バーンズに降参した後、四人はアレーラとベルが世話になっている宿へと場所を移していた。

 四人は各々の意見をこぼし、そして同時に溜息を吐いた。

 長い沈黙が部屋を包み込んだ。


「…………で、これからどうしますの?」


 そんな沈黙を破ったのは、ベルだった。

 長引きつつあるアメリカでの生活でも汚れを知らない金髪を掻き揚げ、ベルは石元へ視線を向けた。


「先ほど司令部へ連絡は送りました、現状は司令部からの指示待ちです」


「司令部? あぁ、ヤマサカ達か……幾らあいつ等でも流石にあれはどうしようもなさそうだが」


「その判断を含め、現在検討を行っているのでしょう」


「……そうか」


 アデルは気落ちした声で返事をし、今日のあらましを思い返していた。

 

「頭領の座を賭けて、勝負ですわ!」


「いいよ!」


 宝石を集めて帰った後、返す刀でアデル達は頭領に試合を申し込みに行った。

 当初は難航する、あるいは数ヶ月や数週間時間が掛かるだろうと思っていた試合はすぐさま承認され、申し込んだ二日後には試合が組まれていた。

 

「プレイボール!!」


「ぐわーーーーーーーっ!!」


 試合を挑んだ時、頭領のマイクは即座に快諾した。

 アデル達はそれを少しもいぶかしむ事も無く今日の試合に臨み……地獄を見た。

 

「棒きれでボールを打つだけのゲームだと思ってたんだがな」


 マイクが投げる球がバッターボックスに近づくと、肌がひりつくのを感じた。

 次に皮膚がこそぎ取られるような感覚が続き、ベンチに居ただけのアデルにも死を感じさせた。

 当然それはバッターボックスに立っていた、雇われ選手も強く感じていただろう。

 最初は意気揚々と打席に立っていた打者も最後には哀れな悲鳴を上げて蒸発した。


「やれやれだ」


「…………」


 椅子に座ったまま項垂れ、首を振るアデルにアレーラは心配そうな顔をする。

 

「あの──」


 アレーラがアデルに声を掛けるよりも先に、ガタンと音を立てアデルが立ち上がった。


「アデルさん? どちらへ……」


「ちょっと散歩」


 言うや否や、アデルはベルの次の言葉を待たずに部屋から出て行った。

 どこか不機嫌そうな足音を立てて。


「……アデルさん、どうしたんでしょう」


「男の子ですから、負けた事が悔しいのではないかしら」


「そんなものでしょうか」


「だと思いますわよ、心配なら付いて行ってもいいですわよ? どうせ今はやる事もありませんし」


「いいんですか?」


 ベルは頷き、先ほどアデルが出て行った扉を右手で指し示した。

 それを見てアレーラは杖を手に取り、立ち上がる。


「そ、それじゃあ私も行ってきますね!」


「えぇ、気をつけてくださいねアレーラさん」


「はい!」


 笑顔で答え、アレーラもまた部屋から出て行く。


「はぁ~、私も少し疲れましたわね」


 部屋に残ったのは二人。

 たった今、ベッドに背中を倒し仰向けになったベルと。


「…………」


 沈黙したまま、窓から夕日を眺める石元だけだった。

 黄金色に街は染まり、今日もまた街には近隣の廃墟へ資材を探しに行っていた冒険者達や、それを出迎える客引き。

 または買出しに来た子供や主婦等様々な魔族が見て取れた。


「しかし、朝に報告したと言うのにまだ連絡が来ませんの?」


「未だ何も」


「存外、管理者の方々も万能ではないということかしら」


「…………」


 石元はベルの嫌味に答えなかった。

 最初は厭らしい顔をしていたベルも、少しの間を置いて目の上に掌を重ねた。


「私も少し気が立っていたのかもしれませんわね、すみません」


「お気になさらず、今回の敗戦は私のリサーチ不足でした。 こちらこそ申し訳ありません、金銭での関係とは言え無関係な人間を3名も……」


「……驚きましたわ、貴女そういう事言うタイプでしたのね」


「という言葉が士気が下がった時に言う言葉としては最適だと思いましたので」


 掌を少し上げ、ベルが冷ややかな、軽蔑するような眼差しを送る。


「冗談です」


「その言葉、今信憑性が大分下がってますけど大丈夫です?」


 石元が顔を変えず答えた台詞に、ベルは心持ち笑って答えた。


「ところで、アデル氏を追わなくても良かったので?」


「な、何でいきなりそんな話題を……」


「いえ、恋愛感情のようなものを感じ取っていたので、好感度を上げるためにはそういった行動が効果的なのではと」


「ああぁぁぁぁ、あああ貴女に心配されなくても問題ありませんわ! っていうか別にその私はそんな別にアデルさんの事……!!」


「あ、ご主人様マスターから連絡が来ました」


「ちょっと! 人の事突然おちょくっていきなり話題を変えるのは許しませんわよ!?」


 ベッドから跳ね起き、石元へと足音を鳴らしながら近づいていくベル。

 次の瞬間。


「来ました」


「はい!?」


 部屋は閃光に包まれた。


「やれやれ、まさか私が実地に出る時が来るなんて……」


「スポーツに興味が無い俺等も付きあってやるんだから文句言うんじゃねぇ」


「何で僕まで……普通に謹慎されてる方が良かった」


 閃光が晴れ、顔を覆っていた腕を除けたベルが見た人物は久しぶりに見る三人の姿だった。


────────────────────────────────────────


「それにしても驚いたよ、まさか本当に勝負を挑んでくるなんてね」


「恐らく、再戦、来る」


「それも予言かい? イツカー」


「違う、予測」


 夕刻、アレーラ達が集っていた別の場所。

 ホワイトハウスと呼ばれる頭領専用の施設、大理石の間に二人は居た。

 北米頭領であるマイク・バーンズ。

 そして、中米頭領であるイツカー。


「次は君も挑むかい?」


「内政干渉、法律ルール、守る」


「そりゃ残念だ、なら彼らは次も僕には勝てない」


「不明、増援、次第」


 白一色の部屋に白のテーブル、白の椅子。


「何れにせよ……負けるつもりは無いよ」


「両者、応援、しない」


「それが僕らの神が定めたもうた法だからね」


 マイクは椅子に座りながら、イツカーはテーブルに載ったまま、横に目を向けた。

 そこには、球形の頭部に天使の輪を浮かべた顔の無い巨像が据えられていた。




ランスXをやっていたせいで初投稿です

遅れに遅れてすまない…結果的にランスは一周目はBADEDだったことをここにご報告いたします


目覚めの兆候、アレーラ/Alera,Wake up Sign  白黒青赤緑


白:色を指定する。その選んだ色を持つ発生源からのダメージをこのターン全て軽減する。


1/1


「が、頑張ります!」


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