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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
北米編
128/207

世界薙ぎの剣/Worldslayer

https://www.youtube.com/watch?v=zsXPXMLmr6w

- 装甲悪鬼村正 -主題歌 「MURAMASA」 


「必ず……俺は強くなって見せる」


 決意に満ちた言葉を、アデルは呟いた。

 季節は八月の末、夏も終わり秋らしさを見せ始める中、アデルは強く拳を握った。

 後ろにはこれからアメリカへと旅立つベルとアレーラが互いに手を取り合いながら、何がしかを誓い合っている。

 そんな二人に微笑ましさを覚えながら、アデルは二人には声を掛けず歩き続けた。

 彼の左足は、右足に比べ動きが遅れていた。


「よう、相変わらず元気そうだな」


 暫く歩いていると、正面からそんな風に声を掛けられた。

 その聞きなれない声にアデルは脇にずらしていた視線を正面へと戻した。


「…………?」


 声を掛けてきた男にアデルは見覚えが無かった。

 いや、正確に言うのならばどこかで見かけた事がある気はするのだが……それが何処で、そしてこの男が誰なのかまったく思い出せなかった。

 白衣を着たがっしりとした肉体、だが筋肉にはある程度の脂肪が付いたプロレスラーを思い出させるような風体。


「あー、そうかそうか、この体で話しかけるのは今日が初めてか」


 白衣の男は、数秒の沈黙の後にアデルが何故何も反応しないのかについて思い至った。


「この体?」


「いや悪い悪い、そうだよな分からんよな、俺だよ、田崎龍次」


「ん?? タザキ……?」


「これでもわからんか……あぁ、あれだ。 山坂の同僚、昔札幌……いやサツホロだったか? で会った事があるはずだが」


「あーーーーっ! あの時の奴か! てめぇ、何しに来た!」


 目を細め、首を傾げるアデルに田崎はきちんと以前会った時の状況を伝える。

 するとようやく思い出したのか、アデルは大声を上げながら田崎を指差した。


「ようやく思い出したか、前のボディと似せた顔にもしたんだが……ちょっとショックだな」


「いや、何かすまん……」


「次はもっと分かりやすいのにするわ、こっちこそ悪いな」


「あぁいや、俺もすぐ気付けなくて悪かった」


「「…………お前、良い奴だな」」


 二人は一瞬で意気投合し、互いに右手を差し出しあった。

 だが握る瞬間、田崎は我に帰ると手を握らずそのまま引っ込める。


「ん?」


「いや、いやいや……魔族と仲良くしてもしょうがねぇ、俺はこんな事をしにここに来たわけじゃねぇんだ」


「何だ、握手しねぇのか」


 田崎は首を振り、腕を組みなおす。

 そんな田崎にアデルは少し悲しそうな顔をし、田崎の心に少しの罪悪感が生まれる。


「お前達と馴れ合う気は無いからな、それに俺は頼まれごとをしに来ただけだ」


 そう言うと、田崎はアデルの前まで近寄るとしゃがみ込み彼の左足へ手を触れた。


「おわっ!?」


 アデルは驚き、咄嗟に足を動かそうとするが田崎の強靭な腕力がそれを許さなかった。


「な、何のつもりだ!」


「ふむ……おい、これ痛むか?」


 田崎は左足を軽く握り、アデルの反応を確認する。


「あ、あぁ? いや痛くは無いが」


「ならこいつはどうだ?」


「ってぇ!」


「成る程……よし、症状はある程度分かった」


 田崎は何度かアデルの足を掴み、反応を確認し……最後に軽く左足を叩くとゆっくりと立ち上がりアデルへこう告げた。


「い、一体何なんだよ……急に人の足掴んで」


「お前、この間の戦いで霊力を吸い取られたな?」


「……な、なんのことだよ」


「誤魔化す必要は無い、足の調子が悪いのは今ので分かった」


「ちっ、そうだよ。 この間の戦いであの化け物に触られてから確かに調子は悪い、だがそれが何なんだよ」


 アデルは悪態をつきながら、田崎をむっとした顔で睨んだ。

 その表情は触って欲しくないところを指摘されたそれだ。


「ふん、やっぱりそうか。 だが安心しろ、その足は俺が治してる」


「は? 治す? 馬鹿にしてるのか?、うちのお抱え癒し手だって治せなかったんだぞ!」


「だろうな、そいつは普通の怪我や病気じゃあない、治せる奴が俺等以外に居るわけが無い」


「……どういうことだ」


「簡単に言うとそいつは普通じゃないのさ、だから普通じゃない俺達なら治せる」


 今一要領を得ない答えに、アデルは懐疑的な表情を浮かべる。


「さっき俺と握手を拒んで仲良くしないなんて言った癖に、何で俺の足は治すんだよ」


「あー……」


 そんなアデルの問いに、今度は田崎が顔をゆがめた。

 確かに魔族と必要以上に仲良くしないというスタンスと、個人の足を治療するというのは相反する事だ。

 田崎は少し考えた後、こう答えた。


「ま、どっかの照れ屋は約束はきっちり守る奴でな。 報酬なんだそうだ」


「んん?? 照れ屋?」


「ほら、あの俺と一緒によく居る白衣の眼鏡掛けた細い……」


「あっ、ヤマサカか!」


「本人の希望でそうだとは言えないが、まぁそういうことだ。 あいつからの言付けでな、お前の治療を担当することにした」


「それほぼ答え言ってねぇか?」


 呆れた表情で返すアデルに、田崎もまたにやにや笑いを返しながら頷く。


「んじゃ、早速施術開始だ! お前を地球で一番にしてやる!」


「お、おぉ……治してくれるってんなら頼むが……本当に大丈夫なのか?」


 田崎は頷くと、親指で後ろを指し示し歩き始める。

 そんな田崎の後姿にアデルは一抹の不安を抱きながら……彼の後に付いて行くのだった。


────────────────────────────────────────


MD215年 9/19 13:28


 ほの暗い室内に、陽の光が差し込む。

 ほんの僅かな光だったが……意識を失いつつあるアレーラにとって、それは希望の光に他ならなかった。


「ア、デル……さ……ん?」


「大丈夫だ、もう何も心配し無くても良い」


 アデルはそう言い放つと、腰に付けた鞘からゆっくりと剣を抜き始める。

 

「戦力測定完了、焼却開始」


 だが剣を完全に抜く前にゴーレム達は一斉に火炎放射を行った。

 180度、あらゆる範囲から放たれた火炎はアレーラとベル、そしてアデルを包み込み焼き払ったかに見えた。


「きかねぇな」


 アデルは剣を抜き放っていた。

 片側が紅、もう反面が白く輝く両刃の剣を。

 その剣の切っ先は、炎を吸いこみ、そして上下左右へ逸らしていた。


「あれは……?」


「戦争と平和の剣/Sword of War and Peace」


「!?」


 突如、倒れていたベルを何者かが抱き起こす。

 担ぐ様に自らを抱き起こす相手を彼女は見た。

 顔の半分を銀色の奇妙な仮面で覆った女。

 かつて、少しの間だが共に過ごした女……石元。


「あ、貴女……!?」


「お久しぶりです、そして色々と積もる話もあるかと思いますが……」


 石元はそこで言葉を区切ると、顔を上げアデルを見た。


「今は撤退が肝心です、ここに居ては巻き込まれます」


「ですが、アデルさん一人に任せる訳には──」


「問題ありません、今の彼は恐らく……貴女よりも強いでしょう。 それに……法魔術の足止めも機能し始めたようです」


「え?」


 ベルはゆっくりと顔を上げた。

 視界には未だ10を超えるゴーレムがこちらを向いていたが……その内の半分程度の挙動がどこか狂い始めていた。

 整然としていたゴーレムが体を捻り始める。

 下半身は左に、だが上半身は右にと言った具合に無理やりな形に捻り始めたのだ。


「い、異常……を検知……ボディの耐久を超える応力──がっ──」


 乾いた音が、部屋に響いた。

 続いて水晶が床に転がり、砕ける音が。


「行った罪を返す、恐ろしい魔術です」


「…………」


「ではアデルさん、残りの女性を回収した後は存分に暴れてください」


 石元はベルを肩に担ぎ上げると、そのままネットに絡まれたアレーラの救出を開始した。

 アレーラに絡まったネットを解きながら、石元は後ろで炎を弾き続けるアデルへ告げる。


「あぁ、さっさと行ってくれ。 少し……派手にやるぜ」


「了承、ではこれより離脱を開始します。 20秒後に攻撃を許可します」


「あいよ!」


 ネットを解き終えると石元は左肩にアレーラを、右肩にベルを、そして腰にイツカーを結わえて立ち上がる。

 そしてそのままアデルへ振り向くこともせず、指示だけを残して先ほど自らが入ってきた大きく切り裂かれたシャッターから出て行く。


「さて……と」


 アデルはゴーレムから再三発射された炎の熱気によって掻いた汗を、左手で拭った。

 そしてゆっくりと目を閉じると、腰を深く落としながら剣を鞘へと収める。


「Lightning tethers souls to the world」

(雷光は魂と世界をつなぎあわせるものだ)


 柄から少し手を離した状態で、鞘を抑える左手は赤の霊力を鞘へと流し、帯電していく。

 その鞘は銀色から徐々に赤く発熱していく。


「高純度の霊力を確認、霊力排出装置の稼動臨界状態……エマージェンシーレベルを最大まで引き上げます」


 法魔術から逃れ、未だ稼動を続けるゴーレム達が腰を落とすと一斉に突撃を開始する。

 その間にも、アデルの抑える鞘は発熱を続け、ついに赤色を超え、白としか言いようの無い輝きを放つ。


「こいつは……! アレーラと! ベルの! 分だぁぁぁぁぁ────!!」


 ゴーレムが突撃のそぶりを見せた瞬間、アデルは右手で柄を取り、剣を抜き放った。

 その剣は、鞘が纏っていた電磁力に押し出され猛烈な加速力を得……それはさながら……剣と鞘で行うレールガンとでも言うべきものであった。


「世界薙ぎ/Worldslayer!!」


 音速を超えて振るわれた剣は、まず鞘から抜かれた段階の衝撃波で展示場にあったアデル以外の存在に暴力的な突風を浴びせた。

 ゴーレム達はその突風に重さ一トンを超える巨体を揺らし、バランスを崩し倒れていく。

 その後に続くのは鞘に溜め込まれた強大な赤と白の霊力。

 先に赤の霊力がゴーレム達を包み、自らを構成する金属の原子を焼く。

 続いて白の霊力が焼失しつつある原子を完全に分解し……ビルの周囲一帯を切り裂いた。

 



胃腸炎で寝込んだり延長しまくってて悲しみを背負ったので初投稿です。

迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。


Sword of War and Peace / 戦争と平和の剣 (3)

アーティファクト — 装備品(Equipment)

装備しているクリーチャーは+2/+2の修整を受けるとともにプロテクション(赤)とプロテクション(白)を持つ。

装備しているクリーチャーがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、戦争と平和の剣はそのプレイヤーに、そのプレイヤーの手札にあるカードの枚数に等しい点数のダメージを与え、あなたはあなたの手札にあるカード1枚につき1点のライフを得る。

装備(2)

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